大衆食堂アンリミテッド・マンプク・ワークスからお送りします。 作:ヒロエル
ここでは、アーチャーエミヤを筆頭に様々な英霊(サーヴァント)達が給仕を担当し、英霊だけでなくカルデア職員達にとっても貴重な憩いの場となっている。
そこには、セルフサービスのコップ入り水のみをテーブルに置き、メニューを見て固まる
───カルデア大衆食堂
本日の日替わり定食は、胃に優しい精進料理であった。
健康重視の味薄めな和食がずらり。常日頃からジャンクフードばかりを好んで食べていた
「……僕の欲しい物が、まるでない。
(ふざけるな……これでは部屋で暗殺計画も立てられないじゃないか!片手にハンバーガーは基本中の基本だろう!)」
その手を震わすは
「ハァァ!?フライドチキンが無いってどういう事よ!
このメニュー考案した奴は私の前に立ちなさい、燃やしてあげるから」
黒いドレスを身に纏い、今すぐにでも暴れ出しそうな少女をを見て、
ジャンクフードに依存しているのは、彼だけではなかったのだ。
「……(あれはジャンヌ・ダルク・オルタ……かの聖女様の別側面……か)」
反転した聖女の傍らにはもう一体、暴走しかけの英霊が居た。
「常にハンバーガーは用意できるようにしておけとあれほど言っていただろう!アーチャー!からあげは無いのか!」
セイバーアルトリア・ペンドラゴンのオルタナティブ側面。
最近、モードレッドと通常通り召喚されたセイバーアルトリアが和解した姿を見て、やたらとイラ立っている。
その片手には、禍々しく煌めく聖剣エクスカリバー・モルガンが握られていた。
「…(現界しているとは言え、僕らはサーヴァント……本来、食事等不要なはずだろうに
こうも食事に依存できるものか……いや、僕も人の事は言えないか)」
文句の矛先を厨房に突き付ける二体の反転英霊。
厨房から出てきたのは割烹着を着用したランサー、宝蔵院胤舜であった。
「生憎と、
拙僧の用意した料理に難を示すのであれば、食す必要はない」
「なんですってぇ?……」
戦旗を抜き胤舜に突き付けるジャンヌオルタ。
もはや戦闘は避けられないか、と
「もう一度言おう。気に食わないのであれば食すな。
この精進料理は主に、日頃から幾多の英霊相手に仲介しているマスターの健康を労わってのもの。
それでも文句があると言うのであれば、拙僧の槍がお相手しよう」
「……イキがってんじゃないわよハゲ。ぶっこむわよ!」
「
このままでは、食堂が火事になってしまうと感じたのか、マスターが慌てて席を立ち、急ぎ
「……承知した。
双方が武器を構え、互いに間合いまで踏み出した瞬間に、マスターが
彼が指示を受諾した刹那、二人が衝突する前に武器はその手から消えていた。
「…?はぁ?どこに…」 「…!十字槍が……」
二人の横には、先ほどまで立ってすらいなかった
「面倒事は嫌いだ……特に、身内のくだらない言い争いなんてものには、虫酸が走るね」
彼の宝具【
これは彼が生前に有していた自身の能力で、家系に伝わる魔術"固有時制御(タイムアルター)"を基礎として扱っている。
自身の時間流を加速させる事によって、通常ではありえないスピードで任務遂行を可能とする。
「私の旗を返しなさい、アサシン
時間を操作して武器を奪うだなんて卑怯よ」
「……卑怯と思うか? なら、それがお前の敗因だ」
「こいつッ!なめんじゃないわよ…」
ジャンヌオルタは
「…
エミヤの挑発により、ジャンヌオルタの拳が強く握られた。
このままではまずい、と胤舜が勢いよく前に出て頭を下げた。
「じゃんぬおるた、そして
国が違えば、舌に合わない事もあろう。
それに、
必死に謝罪する胤舜を見て、周囲の目がジャンヌオルタに集中する。
「……フン!興が削がれたわ 帰る」
ジャンヌ・オルタはその様子を見るや、歯を食いしばって旗を霊体化し、足早に食堂を出て行ってしまう。
「これ、待たぬか!……まったく
マスター、面目ない。滑稽な姿をお見せした」
その場はマスターが取り治めたとして、マシュが報告書を提出した。
───後日。
非武装区間による無許可の決闘に対し、罰として胤舜は2週間の謹慎、加えて
毎日メニューを眺める
マスターは、あの場で
「……サーヴァントとしての務めだけは果たす。
命令されたから、遂行した……それだけだ」
マスターは、精進料理が気にくわないのかどうか問うた。
マスターから顔を逸らす
そして再び、精進料理が気にくわないのかどうか問う。
「……いや、決してそういう訳では…」
気まずそうにす視線を逸らす
マスターは、
「………
(全く、このマスターは普段は惚けている癖に……
英霊の行動パターンの事となると、これだ)
よく視ている、という点では……評価しよう。
だが、別に精進料理を嫌っている訳ではない。色々と、思い出すんだ
それで、ジャンクフードが恋しくなっているという点では、正解だ。……多少な」
マスターは、助けてくれた
「……あんな些細な事で謝罪する必要はない。僕はサーヴァントだ。食事がなくても活動はできる。
それに…あれが最適な方法だったとは限らない」
「まだ、何かあるのか?マスター」
マスターは、その状況下において頼み事があるのは気が引けるとしながらも、
一人で向かうには危険だと付け加えて。
「…(そういう事か、目的があるなら最初からそう言えばいいものを)
……それは護衛を依頼していると認識して、いいんだな」
マスターは状況を説明する。
ここカルデアで、夜中に空き室であるはずの場所が稼働している形跡が発見されたこと。
英霊の外出記録から察するに、ジャンヌオルタやセイバーオルタがその時間帯と一致するとのこと。
マスターとして、受け持ったサーヴァントの行動は把握しなくてはならないという旨を
「……なるほどな
(そういった噂なら、僕も耳に挟んだことがある……
あの騒動以来、
その依頼、僕が引き受けよう」
マスターは安堵した様子で、夜中にマイルームへ来るよう
───22時、マスターのマイルーム
時刻丁度になり、
「時刻だ、マスター」
照明が落とされ、真っ暗な廊下。
カルデア館内は節電の為、使用されていない区画は照明を落としている。
マスターと
マスターは、懐中電灯は使わないのかと
「必要ない。暗闇の方が、動きやすいからな……」
たわいのない会話を交わしながら、目的地へとたどり着く
部屋の中からは、確かに複数人の会話らしき音が聞こえてくる。
ふいに、マスターは扉の入口に看板が立てかけられている事に気づく。
「ん?」
扉の傍にある小さな黒い看板には【
「……どうする?マスター。ここが件の部屋で間違いないだろう……
上手い作戦があると言うなら……聞くだけは聞いておくが。」
実際、マスターは何も考えていなかった。
夜な夜な徘徊するサーヴァント達から、直接事情を聴きだすつもりだったようだ。
「……そうか…
(案の定、この通りか。まぁいい。最初からこのマスターに戦力としての期待はしていない。
俺に出来る事といったら、万が一戦闘行為が発生した場合の抑止力……という算段だろう。
…いいだろう。
マスターは、意を決してドアを開けた。
後編へつづく
次回、マスターは大人の階段を登ってしまうのか。それとも……