機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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ここのカガリは無鉄砲さもあるけど、冷静なところもある、はず?


第5話 運命の息吹

血のバレンタインから約1週間後のC.E.70年2月22日、地球連合軍の月への橋頭堡であるL1のスペースコロニー「世界樹」で起きた地球連合軍とザフトの攻防戦。

 

そこで、連合軍は不可思議な現象に苦戦を強いられる。

 

 

「どういうことだ!? 遠距離ミサイルの精度が悪すぎるぞ!!」

 

「おい!? どうなっている!? レーダーが使えんぞ!!」

 

連合軍は、通信障害と遠距離ミサイルの精度の悪さに難儀することになる。何せまともにターゲットをロックオンすることもできない、敵は未確認の兵器を投入し、まるで宇宙を自由に飛翔しているのだ。

 

 

宇宙の王者は、貴様らではないといわんばかりに。

 

 

第1から第3艦隊を投入した連合軍は、早期戦争終結を目指していた。物量差は歴然だった。

 

 

「たかがモビルアーマー如きに、このジンがやられるかよ!!」

 

背部には、白い翼を連想させる大型スラスターを搭載するザフトの新たな武器、ZGMF-1017、機体正式名称はジン。Zero Gravity Maneuver Fighter 、翻訳すると「無重力下用機動戦闘機」を意味するこの機動兵器、通称MSは、連合軍のモビルアーマー部隊を次々と葬り去っていく。

 

ジンの腰にスカートされている実体剣が、連合軍主力MAミストラルのコックピットを死角から貫いた。

 

ちょうど、コックピットの頭上。宇宙での機動性、旋回性能において圧倒するMSは圧倒的なキルレシオの数値をたたき出す。

 

「くっそう!! 振り切れないっ! 援護してくれ!!」

 

「空の化け物め!! これでもくらえ、くらえつってんだよ!!」

 

 

「うわぁぁぁぁ!!!!」

 

断末魔はこだましない。人間にとって過酷な空間では、人間の悲鳴すら簡単にかき消される。

 

そのうえ、大艦巨砲時代を行く連合艦隊は、小回りの利くジンにブリッジをピンポイントに破壊され、轟沈する事例が多発した。

 

 

「回避っ!! 取り舵っ!! 迎撃はっ!?」

 

「間に合いません!! ダメです、敵人型兵器に取りつかれました!!」

 

甲板の目の前には、漆黒の闇をバックに戦艦の上に立っているジンの姿。その白い翼も相まって、死を呼ぶ天使のような光景だった。

 

 

数秒後に戦艦はブリッジをつぶされて轟沈。乗組員の運命はすでに終わっていた。

 

 

 

圧倒を続けるザフト軍。その軍の中に、一際大きな戦果を挙げる者がいた。

 

「――――実に歯ごたえのない」

 

白いパーソナルカラーのジンが、38機目のMAを撃破した時に、その搭乗員が発した言葉だ。

 

白い仮面を顔に着ける怪しい雰囲気の男。大戦果に酔うザフト軍の中で、彼は不思議なほど冷静だった。

 

敵はすでに恐慌状態。勝敗は完全に決した。世界樹攻防戦で連合は惨敗を喫した。

 

「だが、これも仕方なかろう。連合は目と耳を破壊された状態で新兵器と戦う羽目になったのだからな」

 

彼は連合に対して憎しみを持っているわけではない。地球に居場所がなかったから仕方なくプラントに来たのだ。そして、その過程で芽生えたある野望のために動いている。

 

「――――完全に消したと考えていたが、まだその血筋が生きていたとはな」

 

中立という傘の中で、未だに安寧を得ている彼にとっては憎しみの対象である富豪の名家。

 

「分家も完全に根絶やしにするべきだったが、今は手を出せないか」

 

だが、必ず奴らは滅ぼす。今は、それを今すぐにできない憤りを奴らにぶつけよう。

 

「そら、死にたくない奴から死ぬがいい。貴様らの最後の瞬間を見届けてやろう」

 

 

狂気をのぞかせるゆがんだ笑みを仮面の下に隠し、男は連合軍に牙をむく。

 

 

 

世界樹攻防戦は、世界の予想を裏切り、ザフト軍の大勝に終わった。戦力差をひっくり返す勝利どころか、連合は多大な犠牲を支払う結果となった。

 

 

そして、これを見て動かないオーブではなかった。

 

 

「では、手筈通りに」

 

「うむ。これもオーブの剣を強くするためだ」

 

記録的な惨敗で劣勢の連合軍に対し、オーブは内密に技術交流を提案。モビルスーツという壁に対して、備えをしなければならない。

 

 

オーブの氏族の一つであるサハクにより、その準備が本格的に始まったのだ。

 

 

そして、その予想は的中することになる。

 

 

第一次ビクトリア攻防戦により、地上の援護が不足したザフトは敗北を喫したが、その数日後の3月15日にオペレーション・ウロボロスを採択。

 

また、採決と同時にプロパガンダ的な意味を込め、複数のモビルスーツを公開したのだ。

 

 

ZGMF-515シグーはジンに代わる次期主力兵器として期待されている。ジンの性能の上位互換であり、先行量産機はそのまま指揮官専用機として積極的に導入されていく。

 

 

AMF-101ディンは、重力圏での高速戦闘に主眼を置いた空戦用MS。CEにおいても空中における主戦闘速度は亜音速以下であるために、優れた機体制御機能とそれによる運動性を駆使し、後にニュートロンジャマー適用下の制空戦闘で高い戦果を挙げることになるこの機体は、連合を幾度となく苦しめることになる。

 

 

TMF/A-802バクゥはディンとは別ベクトルで特化した機体であるといえよう。

地盤や地形の不安定な環境での高い走破性や機動性を確保するために、本機は低重心かつ安定性に優れた四足歩行を採用している。

その動きは正に肉食獣さながらの敏捷さであり、開戦当初はリニアガン・タンクをはじめとする地球連合軍地上部隊の機甲兵力をことごとく打ち破ることになる。

各脚のふくらはぎには独自のキャタピラを内蔵しており、伏せの姿勢を取ることで砂漠や氷原など比較的平坦な地域での高速走行が可能となる。

 

TFA-2ザウートは、陸戦用砲戦型MSだ。宇宙用の建設作業機である作業用MSから発展したこの機体は、そのルーツを宇宙用作業服に持つジンよりも旧式に当たる。

武装は豊富だ。肩に2連装のキャノン砲を2基、左腕に固定式の2連装砲を備え、右腕にはジンなどのM8A3型とは形状の異なるショートバレルの重突撃機銃を所持している。  

砲撃時の安定性確保、被弾面積の低減を目的としたタンク形態への簡易変形機構を持つなど、戦場における後方支援に特化した機体といえよう。

 

最後に、海戦用モビルスーツ、UMF-4Aグーン。イカのような流線型のフォルムを持ち、高速移動時はより水流抵抗を抑えた巡航形態へ変形が可能。

この状態では、水上をジェットボートのように滑走することも可能である。また、水中型独特の装備としてサメの感覚器であるロレンツィーニ器官を人工的に再現した周辺電位センサーを標準装備しているので、水中での高い機動性を誇り、連合の潜水艦を藻屑へと変える。

 

 

 

そして、オペレーション・ウロボロスにより、無数のニュートロンジャマ-が地球に降り注いだ。

 

4月1日。エイプリルフール。

 

なかなかに笑えない後世に語り継がれる厄災が起きてしまう。

 

対戦国中立国に関らず、無差別に地中深く埋め込まれたニュートロンジャマーの影響から、以後ザフト、地球連合軍の双方のみならず全地球上で核分裂装置の使用が不可能となり、この影響で核分裂炉の原子力発電をエネルギー供給の主としていた地球上の各国家は、それが使用不可能となり、地球全土で深刻なエネルギー不足が問題になった。

 

これにより地球上の国家は多数の餓死者、凍死者を出し、人々の反プラント、反コーディネイター感情は最高潮となる。

 

しかし、戦術、戦略的優位に立つザフト軍への対策すらままならない連合軍は、敗北を重ねることになる。

 

後に、エイプリルフール・クライシスと呼ばれた惨劇の翌日。親プラント国家である大洋州連合・オーストラリア地区の湾、カーペンタリアに軌道上から基地施設を分割降下させ、48時間でカーペンタリア基地の基礎を建設。

 

連合の太平洋艦隊が迎え撃つが、革新的な戦略もない連合に止める手立てはなく、大敗。多数の戦死者を出すだけとなった。

 

宇宙では今後も第一次ヤキン・ドゥーエ攻防戦、グリマルディ戦線、新星攻略戦で連合は憂き目にあう。新兵器、メビウス・ゼロを投入したが、ムウ・ラ・フラガ、エリク・ブロードウェイの2名を除く大半のパイロットが命を散らすことになる。メビウス・ゼロはパイロットに求める空間認識能力がなくてはまともに動かせない代物であるため、量産は間もなく中止された。

 

地球圏でも第一次カサブランカ沖海戦、スエズ攻防戦で、機動兵器による局地戦闘を想定したザフト軍の計画的戦略に太刀打ちできるはずもなく、その勢力圏を徐々に削られていくことになる。

 

 

 

 

CE70年7月。そんな地球圏の連合諸国の劣勢とは関係なく、平和を維持していた国がいた。

 

 

オーブでは、いち早くエネルギー問題についてはクリアしており、NJについてはタッチの差と言っていいほどだった。これも、フラガ家の暗部が世界各地で情報をかき集めたからだ。

 

 

「―――――こうなったか。リオンの記録のオマージュとなったわけだ。」

キュアンは、NJによる世界規模の打撃を見て、そうつぶやいた。

 

「――――ええ。NJによる核分裂の抑制は、原子力発電にも大いに影響を与えています。風力、地熱、波力、太陽光等。そしてわが国で最重要視している燃料電池、並びに大容量バッテリーの開発。フラガ家の人間は、時代の流れを読むのがお上手です」

 

「NJは予測できなかったが、ザフトのMSにおける自信から、何かあると踏んだだけだよ。連合の長距離での高精度の砲撃、物量差を意に介さない勝利、そして核ミサイルへの対処。ならばまず考えられるのは、レーダー機能を阻害する通信障害、核攻撃の無力化だ。」

 

まず人差し指を立てて、エリカに説明するキュアン。

 

「二つ。宇宙空間で連合の主力MAの弱点は何か。それは小回りと、頭上からの攻撃に対する脆さ。これはMSが簡単に解決してくれたよ。レーダーを阻害するような原因がある以上、有視界戦闘に持ち込まれてしまう連合は明らかに不利だ。」

 

二つ目の要点を説明し、得意げに語るキュアン。

 

「まあとにかくだ。これで戦争は長期化、膠着状態が続くだろう。幸運なことに、連合の名将、デュエイン・ハルバートン氏の提案がなければこうもスムーズにはいかなかっただろう」

 

ハルバートン氏は本当に得難い人材と感じているキュアン。連合の由緒ある家柄の軍人家系ではあるのが本当に惜しい。ブルー・コスモスの思想には染まっておらず、敵対勢力を冷静に分析する力もある。オーブ軍は技術力こそ高いが、こういった優れた指揮官があまりにも足りない。よく言えばそれだけ平和だったといえるが。

 

「――――カガリ様は怒るでしょうね」

 

「極秘と言っても穴がないとも限らない。万が一ばれてもプラントに追求できる余裕はない。連合も文句は言えないだろう。ただ、バイオセンサーの技術流出だけは防がないとな」

 

現在試験的に運用が開始されている「遺産」から抽出された技術のことだ。

 

これは、機体制御システムにおけるオーパーツの領域に位置し、搭乗者の意識を駆動システムに反応させ、機体の反応速度を高める狙いがある。

 

「――――彼が持っていたT型のペンダント、そして「彼」の残した証言から、使用効果は恐らく間違いがないだろう。サイコフレームと呼ばれる構造部材はまだ先になりそうだが」

 

しかし懸念もある。あちらの世界では、ミノフスキー粒子の電波障害に対応するために開発されたサイコ・コミュニケーター技術だが、NJ環境下でどこまでできるかという試験運用がまだなのだ。

 

さらに、倫理問題もある。搭乗者の精神力に大きく起因するこのシステムは、彼らへの負荷が重く、精神疾患を発症するパイロットも存在する、いわば諸刃の剣。

 

 

「ええ。バイオセンサーの即応性は目を見張るものがありますが、パイロットが現段階では持ちません――――我が国のコーディネイターの軍人にも要請しましたが、長時間戦闘ではドクターストップです。精神疾患の危険性が、出撃回数に応じて高まるとの報告もあります」

 

エリカが関係者から配布された資料をキュアンに説明する。そして、このシステムを乗りこなせるのは、強靭な身体能力と精神力を有す人間のみだということ。現段階では大人しか搭乗させていないので、これが最も近い回答なのだろう。

 

子供をこの機体に乗らせるなど、正気の沙汰ではない。

 

「開発者も、完成から次第に明るみに出てきた致命的欠陥の意味合いも込めて、不吉なネームになったとか」

 

パイロットの力量に大きく依存したワンオフ機。それは現在オーブが推し進めている高性能機の量産化においては無用の長物だ。一刻も早く安全性を高めないと話にならない。

 

「ORB-00ストライクグリント。この機体は封印処置が必要です。まず時代に反するオーバースペックであること。まだまだ安全性を追求できていませんから」

 

 

企画中のヘリウム3を用いた核融合炉の研究も、ミノフスキー粒子未発見により、小型化は絶望的。

 

現状動力部は、NJを阻害する技術開発のほうが期待出来る。

 

ストライクグリント。連合が提唱したストライカーシステム、そしてパイロットの安全性を実現できない欠陥機。データ上の機体。

 

まだまだ理論上のNJC技術、新しく提唱された推進器システムも新技術導入により、当初のひな型とは違う、現状最強の万能機ともいえるMS。

 

 

 

「NJでミノフスキー粒子の代用はできないだろうか」

 

「ミノフスキー粒子の簡単な資料を拝見しましたが、これは特殊な力場を発生させ、原子炉全体にフィールドを構成。炉内のエネルギーを電磁誘導することにより、圧縮、安定化させることで、プラズマを安定させるものです。」

 

ミノフスキー粒子の万能を語るエリカ。ここまで反則的な物質があったあちらの世界を少し恨ましく思う彼女。

 

「対して、NJは核分裂を抑制する物質であり、ミノフスキー粒子同様通信障害を発生させます。しかしNJは自由中性子の運動をあくまで阻害するだけなので、電磁誘導ほどの高度な方法は、まだまだ未知数の部分が多いです」

 

「現状、ミラージュコロイドによる重力制御方式を検討中ですが、まだ手探りの状態です。逆に、ミラージュコロイドを用いたスラスター技術が進歩しているのが思わぬ収穫です」

 

スラスター技術の思わぬ進歩があった。研究が進めば理論上推進剤の補給が不要となる革命的な技術。

 

理論自体は前々から存在していた。太陽から太陽風を利用したソーラーセイル技術からの合流となっており、これに莫大な核のエネルギーが集合すれば、量産性を度外すれば現段階でも開発は進むだろう。

 

しかし一方で、燃料電池による量産実現はかなり難しいものとなる。

 

核エンジンの量産化、その過程での必須条件となるヘリウム3の安定供給、ミノフスキー粒子の代わりとなる融合炉の安全性の実現。

 

核分裂方式、核融合炉方式のどちらも研究が進んでいるが、どちらも課題を残しており、実用化に向けての道のりは遠い。

 

「商人としてはこれを見ると血が騒ぐが、他国が独自で開発するまで機密扱いでいいだろう。こんな技術が世に出れば、オーブの国益にも影響する」

 

 

「ところで、T型のペンダントはどこに?」

 

「ああ。完全複製に成功したから、オリジナルはリオンに預けている。おそらく、彼以外には、無用の長物だろうからな」

 

感情の昂ぶりとともに、リオンが手にしたT型ペンダントは、緑色の光を時折発していた。おそらく、サイコミュとの相性のいい人間ほらど効力を発揮する代物だ。

 

 

そして、それに連なる系譜でもあるリオン。偶然ではなかった。

 

「ところで、ハルバートン氏が提唱するGAT計画はどこで?」

 

 

「まずは誤情報を流す。2つほど誤情報を流すのだが――――」

歯切れの悪いキュアン。エリカはそんな彼の様子に気づき、ある予想を彼にぶつける。

 

 

「まさか―――――」

 

「――――ああ、そのまさかだ。私は反対したのだが、サハクを抑えられなかった。あの家の長男坊には困ったものだ」

肩をすくめるキュアン。よりによってヘリオポリスでそれをするかと。ようやく赤字を回収し、黒字に転換した矢先だというのに。ヘリオポリスで事を起こすとなれば、かなりのリスクがある。

 

 

「これは私に対する、人質の意味合いもあるのだろう。ウズミ氏の思惑ではないが、セイラン、サハクが結託したのだろう。これは私に対する枷なのだ」

 

彼に不備があれば、おそらくヘリオポリスは火の海となる。彼らとキュアンはオーブの繁栄を願っているが、その在り方は違う。

 

キュアンは世界の中で存在感を出す、強国の一つであるオーブの姿。

 

対してサハクの長男坊は、オーブが世界の覇権を握るところまで考えている。連合の反攻作戦の立役者となり、オーブの存在を内外に高める。彼には見えているのだろう。MS導入により、連合が息を吹き返すビジョンが。

 

いずれそのような流れもあるかもしれないが、性急すぎると考えるキュアン。まだまだオーブは技術云々を抜きにして、強国とは言えない存在だ。降下作戦をされれば対処できるわけでもない。

 

第一波を防いでも、第二波を防ぎきることは現状困難だ。

 

恐らく、そのためのセイラン家との結託だろう。

 

連合とのパイプの強いセイランは、おそらくその為だけにサハクの声がかかった。

 

サハクはモルゲンレーテとも関わり合いが深い。セイランはサハクのぶら下げたエサに食いついたというのが実情だろう。

 

 

「―――セイランの長男坊は不安しかない。奴はうかつなことを言い出しかねないからね。頭の回転はいいが、まだまだ経験不足が否めない。推進器のシステム、核関連はサハクにも秘匿しているし、コトー氏には強く言ってある。奴らもオーブの首を絞めるほどのバカなことはしないだろう」

以前会食を共にしたことがあるが、まだまだ青二才だ。まだまだ次代を担うには足りない。

 

 

「――――カガリ様の暗殺未遂。リオン君が知れば飛んで戻ってきたでしょうが、それも内密に終わりました。サハクの方針は苛烈に過ぎます」

 

無能な獅子の娘を早々に処分する。サハクにとって目の上のたん瘤ともいえる存在。いずれウズミの後を継ぐのは彼女だろうというのが大方の予想。彼はそれを何としても阻止したいのだろう。

 

「けど、彼女は最近よく頑張っていると思うけどね。政治学、帝王学にも熱心になったし。まだまだ清濁使い分けることが苦手だが、いずれは成熟とともに克服するだろう。」

 

カガリはリオンとの出会いによって自分なりに政治と向き合う覚悟が出来ていた。まだまだ未熟なのは全員が知っている。その事実に対しての、彼女の向き合い方が注目されていて、それを大半の人間が喜ばしく考えているのだ。

 

まだまだ猶予があるうちは、我々大人が努力するしかないのだ。

 

 

CE71年1月。アジア共和国のカオシュン宇宙港が陥落した。

 

 

そのカオシュン攻撃以前に、世界の変化を感じ取ったものがいた。

 

 

「―――――そんな、なぜ――――なぜですか、お父様! なぜそんな綱渡りを―――」

カガリ・ユラ・アスハは、モルゲンレーテ経由でGAT計画のことを知る。

 

いくつかの誤情報によって巧妙に隠されているが、本命の場所は、彼がいる場所。

 

 

「なぜ……なんでッ!! よりによって、なんでヘリオポリスなんだ!!」

彼女は吠えた。そこには誰もいない。彼女は自室にてその極秘情報を取り寄せた。

 

リオンが作った携帯型万能人工知能、通称ノアがすべてのことをやってのけた。

 

『間違いないみたいだな、カガリ。オーブは武装に関しては後進国、連合は今すぐにでもMSの技術が欲しい。前者は防衛力強化、連合は戦局打開のカギ。WIN-WINでもある』

 

「でもだからって! オーブに力が必要なことは知っている。けどっ、こんな―――」

 

『これからどうする? 私はお前の命令に従うようプログラムされている。』

 

「―――――ヘリオポリスに今すぐ飛ぶ。アサギを呼んできてくれ。すぐに支度をするぞ」

 

『仰せのままに、わが主』

 

 

獅子の娘は、うねりの元へと自ら飛び込んでいく。場所は違えど、同じ理想を持っていた友人の危機を救うため。そして、オーブの在り方について覚悟を決めるために。

 

この行動は、後に彼女のオーブの在り方について、大きな影響を与えることになる。

 

 

 




aiのノアは、彼女をサポートする存在です。リオン不在時に情報を持ってきて、あくまで彼女の自主性を重んじます。

なお、今回は罠の模様。


次回、ついに原作の時系列に飛びます。
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