機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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アスランが主人公ではないだろうか。


第7話 狂気の片鱗

その頃、宇宙では激闘を繰り広げていた。

 

「くっそ、どんだけ戦力集中してきた!? 諜報部は仕事をしていたのか!?」

 

愚痴を吐きながら、銀色のパーソナルカラーで光る、メビウス・ゼロを駆るエリク・ブロードウェイ中尉は目の前のジンを撃墜しつつ、周囲からやってくる敵増援を見ていやな気持になる。

 

 

「弱音を吐くな、エリク! これ以上ジンを侵入させるといよいよ進退窮まるぞ! ここが正念場だ!」

 

そして彼の上司、ムウ・ラ・フラガ大尉はオレンジ色のメビウス・ゼロとともにジンを1機撃墜した。

 

 

「なっ!? どうして、オレンジ野郎が!! ぐわっ!」

 

 

「こんな場所に奴がいるってことは――――」

 

メビウス・ゼロの全てと言っていい特徴。有線式ガンバレルの多角的なオールレンジ攻撃が火を噴く。常に死角からの攻撃を狙える兵装でもあるガンバレル。

 

主砲であるレールガンで相手を牽制しつつ、4つのガンバレルが火を噴き、敵の命を刈り取る。

 

ジンとのキルレシオは有利だが、機体特性上扱えるパイロットは限られてくる。

 

 

「――――よし、3機落とした!? 次はコロニーに侵入した敵機を―――っ!?」

 

その瞬間、ムウの頭に光がフラッシュバックする。この感覚はあの男が来た、そうとしか思えない。

 

 

「私がお前を感じるように、お前も私を感じるのか?」

 

 

その声色がはっきりと聞こえる。奴の存在が近づいてくる。

 

「不幸な宿縁だな。ムウ・ラ・フラガ。」

 

 

「エリク!! お前はコロニー内部の応援に行ってくれ!! 奴は俺が引き受ける!!」

ムウは叫ぶように命令を飛ばす。このまま外で足止めと食らえば、中が全滅する。

 

「っ! 了解!! 後で追いついてきてくださいよ!!」

 

銀色のメビウス・ゼロを見送ったムウは、目の前にやってきたなんて気を前に笑みを浮かべる。

 

「そういうことだ、おれの我儘を通させてもらうぜ、クルーゼェ!!」

 

 

「ふん、ジンをここまで仕留められる力量は認めてやるが、その程度の実力で私を足止めできると思うなよ?」

 

 

宿命の対決が始まる。

 

 

 

 

その頃、キラはようやく怪しい3人組に追いつくことが出来た。

 

「? 君は――――っ!?」

金髪の少年、リオンは民間人がのこのこここまでやってきたことに驚いていた。ふつうは避難をしているはずなのだから。

 

「何してるんだよ! そっち行ったって…」

 

 

「何で付いてくる?そっちこそ早く逃げろ!」

金髪の少女、カガリはキラの言うことなど知らないといわんばかりに反論する。

 

 

「カガリ様。どうしますか? まだだいぶ距離がありますよ」

 

『ふむ、近くで銃撃戦の音が聞こえます。近づくのは得策ではありません』

アクセサリーから声が発せられる。キラは訳が分からなかった。

 

その時、爆風が一同を襲う。

 

「くっ!」

 

慌てて頭を押さえる一同。しゃがみ込み、爆風がやむのを待った。もうここも危ない。しかし、うかつに下がるのも危険だ。ここはもう戦闘地帯だ

 

一同は無言でカガリの後を追う。彼女はそこに何があるのかを知っているのだろう。

 

キャットウォークにたどり着いた一同。そこは大型の工廠になった場所で、騒乱の中心でもあった。

 

「――――お父様、やはり――――」

悲しそうな顔をするカガリ。その下に広がる光景を見て力なく座り込んでしまった。

 

 

手すりの下から見える銃撃の嵐。何かを守ろうとするもの、何かを奪おうとするもの。

 

そのそれぞれが入り乱れていた。

 

「モビル、スーツ」

リオンはそれを見た瞬間に胸を抑えた。アレを見たとたんに動悸が激しくなる。あのフォルムを見るだけで落ち着きがなくなる。

 

 

あの顔を見るたびに、体が火照るのはなぜなのだと。

 

――――似すぎだ、悪趣味にもほどがある。いったい誰が考えた?

 

それはガンダムだった。7機のガンダムがそこに眠っていた。

 

「カガリ様、確認するだけでその後は――――」

アサギが気遣いつつ彼女に話しかける。だが、状況は待ってくれない。

 

「カガリ様!!」

 

一つの銃口がカガリを狙っていた。それに気づいたアサギが急いでカガリを引っ張り、銃の届かない場所へと退いたのだ。あと少し遅れていれば、カガリはハチの巣だっただろう。

 

 

「くそっ、場所がばれたッ!! 応戦するっ!!」

リオンが拳銃を懐から取り出し、戦闘に不本意だが参加することになる。

 

 

――――人が死ぬ場面は、何度も見てきた。

 

 

引き金を引いたことはある。あの大火災の時、自分が知らない男がいた。

 

 

奴だ。奴が家に火を放ったのだ。結局撃ち合いの末に弾切れで両者家から脱出した。人を殺さずに済んだ。

 

 

だが今回は違う。やらなければこちらが死ぬ。

 

 

ここでカガリたちを守らなければならない。

 

――――こんな場所で、カガリを死なせてたまるか

 

T型のペンダントが、青白い光を放つ。

 

 

彼の激情に呼応するように、怪しい光が淡く光っていた。

 

 

「ああ、このような場所が、カガリの終わりであっていいはずなどない。貴様らはここで死ね」

迷いのない殺意。先ほどは葛藤が少しだけあったはずなのに、微塵も感じさせない雰囲気に、

 

「――――え?」

そこにいたキラは驚きに言葉をなくす。

 

「アサギさん、もしキャットウォークから離れる必要があるなら、MSの場所まで走れ。後はノアの指示に委ね、カガリの命を守り、必ず生き残ってください」

 

「は、はいっ!」

 

「待てリオン!」

 

迷いをなくしたリオンは、先ほど銃撃してきた兵士を抹殺するために、迷わずキャットウォークから飛び降りた。

 

 

「――――いいから退け、邪魔だ」

 

 

先ほどの兵士の動き、隠れ方をすべて看破するかのように先回りしたリオンが、回り込もうとした兵士よりも先に、待ち伏せしていた。

 

 

「!?」

その刹那、回り込んで始末しようと考えていた兵士の顔が驚愕に染まる。だがリオンはその時間すら許さない。

 

乾いた音ともに、兵士の額に赤い穴が開く。容赦なく、微塵の迷いなく頭部を正確に射抜き、次の兵士を殺しに行くリオン。

 

「次だ」

 

 

 

リオンの眼前では銃撃戦が繰り広げられていた。

 

 

赤いパイロットスーツ、緑色のパイロットスーツが無数。数える必要性をあまり感じないリオン。

 

 

――――どうせ全部動かなくなる。

 

 

リオンの気配に気づいていないザフト兵たち。そこへ、リオンが忍び寄る。サイレンサーを取り付け、音もなく彼らの背後に回る。

 

もう弾丸が打ち出される音も聞こえない。最初の犠牲者であるザフト兵士にとっては、

 

「!?」

気づいたら撃たれ、致命傷を食らっていた。感覚よりも先に死が訪れていた。

 

 

「あっ――」

 

「お前―――」

 

背後からの銃撃に気づいたザフト兵たちがリオンの気配に気づいたが、振り向いた瞬間に死を迎えていた。

 

力なく、糸が切れたように倒れこみ、そのまま動かなくなるザフト兵。まだリオンの存在に気づいていない。

 

 

連合軍兵士、技術士官でもあったマリュー・ラミアスは、突然ある方向からの銃撃がやんだことに不気味なものを感じていた。

 

―――どういうこと? 先ほどまでは激しい銃撃があったはず。

 

少しだけ勇気を振り絞り、回り込んでその場所を確認する彼女だったが、鮮やかに、そして一発の銃弾で息絶えているザフト兵士の亡骸を目の当たりにする。

 

 

「!?」

息をのんだマリュー。鮮やか過ぎる手口だ。どうやって音もなく彼らに近づき、一発の銃弾、しかもすべて額に打ち込んだのか。

 

「――――貴様は敵か、味方か」

その瞬間、後ろに感情のない言葉が聞こえた。

 

「!!」

マリューは振り向くことはできなかった。恐怖のあまり、それが出来なかったのだ。

 

「――――ああ、連合がこんな所でこんなことをするから食いついてきた。お前らを差し出せば、オーブはこれ以上被害を受けずに済むかな」

 

まだ振り向けない。予想以上に年若い。オーブに、こんな人材がいたとは予想もつかない。

 

「だが、まずはあそこのザフト兵士を全て片付けてからかな」

 

振り向いた先にいたのは少年だった。見目麗しい美少年なのに、その瞳はぞっとするほど冷たく、凍り付いていた。

 

 

それは、彼をよく知る少女が知らない、彼の本質の一つ。

 

「早く排除しないとな、お姉さん」

 

 

 

一方、ザフトは着々とGATシリーズの奪取に成功していた。

 

 

「ほお、すごいもんじゃないか。どうだ?ディアッカ。」

 

イザークはすでに機体に乗り込み、初期設定を完了させ、機動の瞬間を待つだけだった。

 

「OK。アップデータ起動、ナーブリンク再構築、キャリブレート完了。動ける!」

 

ディアッカも程なくして初期設定終了。先ほど分かれた、ラスティ、ドリス、アスランは少し手間取っているようだ。

 

 

「ニコルっ! そっちはどうだ!」

無線にてすでに機体に乗り込んでいただろう少女に問いかけを飛ばすイザーク。

 

「もう少しです。今起動しました。私も行けます!」

 

これで3機。連合の新兵器を3機奪取することに成功した。

 

「ラスティたちは、迂回している分遅い。だが待ってやれるほどこちらも暇じゃない。すぐに機体をもって帰還するぞ」

 

 

 

そして一方、ドリス、アスラン、ラスティは思わぬ苦戦を強いられていた。

 

「くっ!? どうなっている!? ここは先ほどまでこちらが制圧していたはず!?」

アスランは無線でこのルートを確保したとの報告を受けている。だが、息を吹き返した連合軍が逆に奪い返していたので、これ以上の進行が難しい状態に陥っていた。

 

「泣き言はあとだぜ、アスラン。今は敵を全部ぶっ倒すことが先決だ。」

ラスティがアスランを奮い立たせるように元気づけ、銃を撃ち続ける。

 

「はぁ、受けるんじゃなかったなぁ。この命令」

壁に隠れて反撃の機会をうかがうドリス。やる気なさそうに見えるが、アスランよりも早くに卒業した兵士で、成績上位者でもあるドリス。目はそうではなかった。

 

 

 

連合も3機を奪われて、残りの4機は何としても阻止しようと必死だった。

 

 

「マークが消えている!? こちらアスラン、聞こえるかローグ!」

何とか味方はいないのかと、アスランが無線を呼ぶが、

 

 

 

返ってくるのは無線が乱れる音のみ。つまり、彼も既に息絶えているということだ。

 

 

―――落ち着け、こういう時こそ落ち着かないといけない。

 

アスランは考える。打開できる方法を。しかし、時間は待ってくれない。

 

 

「ぅ―――」

 

ドサッ。アスランの近くで、何かが倒れる音がした。振り向いた瞬間にまだ生きているアスランとドリスが素早く回避行動をとった。

 

わずかに聞こえる風切り音。それが仲間の命を刈り取った正体だ。

 

 

「ラスティっ!? くそっ!!」

 

ラスティの命を奪った男はまだ自分たちと同じくらいの年齢の少年だった。はっきり顔までは見えなかったが、黄色い髪の男だ。

 

「やべっ、肩やられた―――」

ドリスはアスランほど無事ではなかった。男の銃弾を受け、肩を貫通してしまったドリス。片腕が上がらない。

 

「ドリスっ!! くそっ!」

 

今生き残る方法はただ一つ。目の前には自分の想像もつかない敵がいる。ここで無理を承知で戦闘続行すれば、こちらが死んでしまう。そうなれば残り4機のうち、すべてが連合の手に渡る。

 

 

アスランは周囲に残されているモビルスーツを見た。どれが一番重要度の高い機体なのか。

 

―――イザークのオーソドックスな機体、ディアッカの砲撃タイプ

 

 

考えろ、すぐに考えろ。最善の機体はどれだ。

 

―――ニコルは隠密。そして残るは武装らしい武装の見当たらない機体3機と、可変型

 

 

アスランは直感で可変型へと向かう。あまり激しい動きが出来ないドリスに肩を貸し、その機体へとなんとか逃げ込むことが出来た。

 

 

「すまん、アスラン」

ドリスがアスランに礼を言う。彼にとってはまさに命の恩人だ。

 

「いや、あの状況では、おれがこうなっていた可能性もある。お互い助け合いだ」

 

アスランは自分が撃たれていた可能性もあったと言い放つ。それだけ彼も余裕がなかった。

 

 

一方、ラスティを撃ち殺したリオンは、

 

「多いな。結構な数に入り込まれていたのだな」

リオンはもう女性に用はないといわんばかりにその場を後にする。

 

「――――!? 待ちなさい、どこへ!?」

 

 

「ザフトが来る。備えるにはMS。悠長に事を構える余裕はない」

 

リオンはそう言い放ち、T型の人工物をもってあたりを探す。

 

「―――――まさかここまでとは――――ノア、あのメインカメラが青いMSまで二人を誘導しろ」

 

『了解しました』

 

 

「あの! 僕は――――」

そこへ、先ほどの取り残された少年、キラがマリューの横までやってきた。

 

「二人のところへ、は厳しいな、今からでは。貴様、MSを動かした経験は?」

リオンはちょうどいいといわんばかりにキラに尋ねる。

 

「ない、ですけど。パワードスーツのセットアップとかなら―――」

 

「ベースは同じだ。後は二人で何とかしろ」

 

そっけなく言い放ち、リオンは残りの反応する機体のコックピットに入ってしまった。

 

 

「――――――」

 

「―――――――」

取り残されたキラとマリューはどう反応すればいいかわからなかった。お互い悪い人物でもないし、敵ということでもない。

 

ただただ気まずい。

 

「――――プログラムやOSがまだなら、僕がセットアップ、します」

 

「え、ええと、一応これは――――」

 

しかし、マリューが言い終わる前に爆発音が辺りで起き始めた。

 

「――――ごめんなさい。手段を選んでいる暇はないわ。とにかく乗りなさい」

 

 

爆風の中、マリューはキラを見捨てることが出来なかった。なぜ彼がこんなところにいるのかはわからない。自分でも冷静な判断ではないと考えている。

 

しかし、何も知らない彼を見捨てることは、人として避けたいと考えてしまったのだ。

 

 

 

 

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