機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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第8話 2度目の邂逅

ミゲル・アイマンは僚機2機とともにアスランとラスティ、ドリスの合流を待っていた。すでにイザーク達は帰投しており、あとは三人を待つだけだった。

 

 

Gシリーズが運び出されていたトレーラーはほぼ原形をとどめておらず、辺りは爆風に吹き荒れ、メインカメラでもどうなっているかを確認するのは困難だった。

 

―――――ちっ、何を手間取ってやがる

 

アスランは優秀な男だ。そんな彼が遅れている。その理由があの爆風の中にあることが、ミゲルの警戒心を高めていた。

 

 

「おっ! ようやく来たか、あいつら」

 

その時だ。可変型のMSとともにやや遅れて武装らしい武装が見当たらない機体が慣れない体勢で爆風から逃れるように出てきたのだ。

 

「すまないっ、ラスティは失敗した! ドリスも負傷している。」

アスランから聞かされた事実は彼らを揺るがす要因となった。

 

 

「なんだと!? ラスティとドリスが!? アスランは早く戻れ!」

 

「この、ナチュラルのくせに生意気な!!」

 

「ラスティの仇だ!! 死んで償え!!」

ミゲルはアスランに後退指示を送る。負傷しているドリスをこれ以上ここで消耗させるわけにはいかない。

 

しかし、激昂した僚機2機は怒りのままにまだまだ動きがおぼつかない敵が乗る機体へと襲い掛かる。

 

 

「まえっ!!」

キラがモニターから見える三機のジンを見て声を発する。

 

「!!」

 

イージスを守るように立っているジンと突撃銃を撃ちながら突進するジン、実体剣で斬りかかるジンがすぐ目の前まで迫っていた。

 

――――くっ!

 

マリューは迷わずGAT-X105ストライクのフェイズシフト装甲を展開する。

 

「!? 待て、色が―――」

 

 

その瞬間に、ミゲルは目の前の敵機の様子がおかしいことに気づく。今までは灰色の装甲だったはずなのに、いきなり、瞬く間に色が変わり―――――

 

 

「なっ!?」

 

「ばかなっ!?」

 

僚機も驚くその性能。ストライクはジンの攻撃をすべて無効化していたのだ。実弾が効力を為さないことに、彼らは唇をかむ。

 

「そいつはフェイズシフト装甲を持っている。実体剣や突撃銃では突破できない」

アスランが冷静に解説する。そして、自分の搭乗機体であるイージスの装甲もフェイズシフトを起動させ、紅蓮を連想させる姿へと変化させていく。

 

 

「――――貴重な情報ありがとうな! アスランは早く離脱しろ! こいつは必ず鹵獲するぞ!」

 

血気盛んなザフト兵士がじりじりと距離を狭めていく。3方向を防がれ、万事休すと言ってもいいストライク。

 

「――――このままじゃ――――っ」

ストライクに乗り合わせているキラも、マリューに任せたままでは自分も死ぬと明確に悟り始めていた。

 

そして、彼はそれに気づいてしまった。

 

「!?」

 

モニターから見える、トール、サイ、ミリアリア、アルベルト、カズイの姿。まだまだ逃げ遅れていた友人たちの姿を見てしまった。

 

――――こんなところで、

 

キラはこの理不尽な状況にキレていた。いきなりザフトに攻め込まれ、自分たちの日常が破壊された。自分たちが何をしたというのだ。

 

自分を受け入れてくれた、温かく迎えてくれた友人を殺そうとしている。

 

 

血の気が溜まり始めていたキラは、怒りで冷静な判断を下せなくなっていた。元々リオンによってある程度冷静さを取り戻していた彼だったが、逆にその冷静な状態だからこそ、友人の危機に強く反応していたのだ。

 

 

赤いモビルスーツはすでに去っていったとはいえ、3対1。劣勢であることに変わりない。

 

――――だめだ、3機の攻撃を掻い潜りながらOS調整なんて―――

 

 

その時、ストライクの後方で起き上がった機体がいたのだ。

 

「「「!!!」」」

ミゲルたちは目を見開いた。もうザフト兵士はここには自分たちを含めていない。だが、生き残りがいるかもしれない。

 

「味方、なのか」

一人がつぶやく。現在目の前にいるストライクと同型機に見えるそれは、こちらを見たまま動かない。

 

 

「――――どっちだ?」

 

「おい、誰が乗っている!?」

 

何とか通信手段を取ろうとするミゲルだったが、それは目の前の不明機に対してはあまりにも致命的な行為だった。

 

 

目の前の機体がフェイズシフトを展開し、両腰に装備されていたミニガンを取り出し、緑色の光線を放ってきたのだ。

 

装甲の大部分が赤色に染まったストライク。キラの乗るストライクとは違い、白色の装甲部分は漆黒の黒に変色していく。

 

どこまでも対照的なカラーリングだった。

 

「あっ!?」

 

「武器がっ」

 

あっさりと、突撃銃を破壊された2機のジン。ある程度警戒していたミゲルはその攻撃を何と回避したものの、判断が遅れた自分を呪う。

 

「この野郎、武装だけを破壊しやがって!!」

明らかになめられている。あの状況なら3機ともに撃墜できるチャンスはあったはずだ。目の前の敵はなぜそれをしなかったのか。

 

 

ミゲルたちの敵――――そのモビルスーツ、ストライク二号機に乗っているリオンは、すでに彼ら三機を脅威と考えていなかった。

 

「―――――未熟なOSで多少手間取ったが、馴染みのあるやり方ならしっくりくる」

 

キラとは違い、ゆっくりとOS調整を行う時間があったリオン。尚も青い光がペンダントから発せられており、言動が変化しているリオン。

 

 

 

それは人を魅了する光だ。如何にリオンであっても抗うことはできない。

 

 

否、そもそも彼は、その光が何であれ、目的の為ならば躊躇いは無いのだろう。

 

 

最適化が進んでいく。殺気を読み、刹那的な未来を観測できる力。

 

 

本来ならば、分かり合うために必要だった可能性を―――――

 

 

ただ殺戮の手段として使い続ける。

 

 

 

 

「さて、こちらは選択肢を限られている。ジンを手土産に連合と交渉でもするとしよう」

 

 

リオンはあくまで機体だけ無事ならそれでいいと考えていた。武装はこれからいくらでも取るチャンスはある。目の前に立っている獲物を根こそぎ奪えるチャンスだ。

 

 

スラスターを吹かせたリオンは、ミゲルの突撃銃を躱しながら、彼の僚機の陰に隠れ、ミゲルの射線を乱したのだ。

 

 

「このっ!! 俺たちの同胞を盾にするとは何て卑怯な奴だ!!」

突撃銃で攻撃しようにも、あまりに鮮やかな機動で反応が遅れた僚機がその場から逃げようとするも、

 

 

「遅い――――」

 

僚機のコックピット部分に大きな衝撃が襲う。リオンは迷うことなくジンのコックピットを殴ったのだ。それも一度だけではない。

 

右ストレートからの左アッパー。

 

初撃で大きくよろめき体勢を立て直そうとしたジンに容赦のない追撃を食らわせた彼は、続く二撃目でアッパーを繰り出し、ジンをノックアウトさせたのだ。

 

「こいつっ!!」

やられているのを見ていることなどできない。もう一機の僚機が実体剣を抜いて斬りかかるも、脚部バーニアを素早く吹かせ、横から迫ってきたジンの上段切りを鮮やかに避けたのだ。

 

「なにっ!?」

寸前で躱された彼は驚愕をあらわにする。しかし、その表情は続かない。カウンターに近い形で右ストレートを食らった彼は、機体ごと吹き飛ばされてしまう。

 

 

地面にたたきつけられ、もがくジンを見て、リオンはジンのコックピットを執拗なまでに攻める。

 

足蹴にし、まるでパイロットだけを殺そうとしているような動き。

 

「て、てんめぇぇ――――っ!!」

 

明らかに初心者などではない。アレは別格だ。ミゲルの背筋が凍る。だが、それ以上に人間としてあの敵はおかしすぎる。

 

こちらのジンを、まるで敵として認識していないかのような雰囲気。

 

 

――――ふざけるな、搾取するのは俺たちで、間違ってもお前たちが――――ッ

 

 

「ふざけるなぁぁぁ!!!!」

 

激昂したミゲルが僚機を救おうと突撃を仕掛ける。あの機体はこちらのジンを欲しがっている節があるのは見えている。多少の衝撃は覚悟し、カウンターを仕掛ける。

 

 

ミゲルはそのことを考えていた。

 

 

だがメインカメラに見えたのは、ストライクのもう片方のマニピュレーターから取り出されたミニガンが、まっすぐこちらに向けられている光景。

 

「!!!」

 

僚機をいたぶっている片手間で、機体の側面からミゲルの位置を正確に、器用に肘を動かし、正確な照準を合わせていたのだ―――――

 

 

一瞬の閃光とともに、ミゲル機のジンはその胸に大きな穴をあけ、程なくして爆散した。

 

黄昏の魔弾と称された男の、あまりにもあっけない最後だった。

 

「察しの早いパイロットならそうすると考えていた。だが、その察しの早さが命取りだったな」

特に感動もなく、リオンは目の前で転がっているジンに執拗な衝撃を与え続ける。

 

 

そして、程なくしてフレームが剥がれ、中に血塗れの塊が見えた瞬間、リオンは攻撃を止めた。

 

 

 

 

生身のパイロットだけを一人殺したリオン。

 

しかし、その近くでよろよろと立ち上がったジンが実体剣を持ちながら尚も抵抗の意志を見せていた。

 

「―――――寝ているだけなら、苦しまずに逝けたものを」

 

塊が所々破裂しているのを確認したリオンは、鬱陶しく思いながら彼に向き直る。

 

「――――この、バカにしやがってっ!! 俺たちコーディネイターに逆らうな、ナチュラルがぁぁぁぁ!!!!」

 

バーニアを吹かせ、袈裟斬りに斬りかかってくるジン。もはや疲労と打撲でまともな思考はないのだろう。獣のような動きでリオンのストライクに迫る。

 

 

「――――甘いな。」

リオンは溜息を吐きながら、ストライクのバーニアを吹かせ、迫りくるジンに高速接近する。

 

 

そして―――――

 

 

 

「ぐっがは――――」

ジンのコックピットにめり込んだストライクの膝が、パイロットごと押しつぶしたのだ。かろうじて息があるパイロットだが、致命傷なのは間違いないし、そもそもリオンは見逃すつもりもなかった。

 

「――――もろ過ぎる。だが、少しへこんだぐらいなら修理できるか」

パイロットを倒したことではなく、機体を損傷させてしまったことを残念に思ったリオン。

 

 

生き残った味方は恐怖した。キラは無論、ラミアスも。

 

 

その戦闘――――いや、戦闘というにはあまりにも凄惨な光景に息をのむキラとマリュー。

 

「――――そんな。なんて動き―――――それにあの攻撃性――――」

 

 

まるでバーサーカーだ。正気を疑うような攻撃手段、鮮やかな操縦技術、洗練された動き。

 

最小限の動きと、素早い即応で瞬く間にジンを三機沈黙させたのだ。長らくMSに苦しめられてきた連合の立場であったマリューの目からは、喜びよりも先に圧倒されたという気持ちが勝っていた。

 

「――――本当に、あの人が――――」

 

キラはあの動きを見て、彼の変化について考えていた。

 

――――あのペンダントが光ってから、彼の様子がおかしくなった。

 

アレは、何かの増幅器なのだろうか。考えても推察できることも少ないキラは、いったんその思考を中断し、ストライクのOSを書き直し始めたのだ。

 

「あっ、サイたちは!?」

 

「無事、みたいね。あの子は巧妙に彼らから離れた場所に敵を誘導していたみたい」

 

モニターに映るキラの友人を視認したマリューが、その時にようやく気付いた。あの狂ったような動きはあちらの視線を一点に釘付けにするためのものだったのかもしれない。

 

 

 

 

一方、ヴェサリウスに帰投したアスランは、信じられない報告を受けていた。

 

 

ヘリオポリス内部に突入したジン三機がロスト。ミゲル機は撃墜され、残る二機はシグナルがかろうじて残っていたが、パイロットからの応答がない。

 

 

つまり、ミゲルは戦死し、残る二人も連合軍によって打倒されたということになる。

 

「――――なっ、バカな――――」

アスランにとっては到底信じられるものではなかった。連合にまともなMSはなかったはずだ。動きのおぼつかないストライクが一機。後は無人のMSが二機。

 

「――――少なくとも、敵の中にジン三機を圧倒できる実力者がいることは間違いないみたいです」

厳しい目でその報告を聞いていたニコル。ミゲルの実力は知っている彼女も、敵の脅威を正確認識していた。

 

「だからです。先ほどシグナルロストの後、クルーゼ隊長がコロニー内部へ突入しました」

 

「隊長自ら!? 俺も――――」

 

ニコルの報告に、冷静さを失い再度出撃を申請しようとするアスラン。

 

「だめです。私たちはGATシリーズの最終調整をしないといけません。それに、隊長の実力はみんなが知っています。大丈夫です」

 

「――――そ、そうだな。隊長のシグーだ。」

 

 

アスランは不安を隠せないでいた。この辺境に等しい場所での任務で、ジンを打倒できる実力者がいる。ヘリオポリス内部でジンが3機、外では4機を撃破された。

 

 

いったい、外には何がいたのだと。

 

 

 

 

その頃、ムウはコロニー内部へと侵攻するクルーゼを追撃していた。

 

 

「くそっ! 片手間かよ!!」

 

追いすがるものの、振り切りそうなラウを見て、ムウは悔しげな表情を浮かべる。ガンバレルの射線を見切られ、同じ空間認識能力で上をいかれている感覚があった。

 

「貴様に構う余裕がなくなった、と言っておこう」

 

ラウとしても、そこまで余裕というわけではない。実力がないわけではないムウを相手にしながら、内部の応援に回ったもう一機のメビウス・ゼロ、ジン三機を撃破したであろう未知の戦力。

 

虎の穴に挑むようなものだ。

 

 

 

ムウとラウの攻防は、ムウの意志とは逆に、コロニー内部に移り変わっていく。

 

 

 

その頃、ムウの指示を受けて先行していたエリク・ブロードウェイ中尉は、ジン3機を圧倒したストライク二号機の姿に目を奪われていた。

 

「あれが、GATシリーズの実力―――!!」

 

ついに連合でもジンを圧倒できる存在が生まれた。それがうれしくてたまらない。コーディネイターが優良種であるという定説も壊れる。

 

――――ああ。コーディネイターなんて、生まれなければよかった

 

ナチュラルからは、憎しみよりも憐みの感情をぶつけられた。あのブルーコスモスの将校も、コーディネイターでありながら連合に嬉々として参加する自分を見て戸惑いの表情を隠せていなかった。エリクもあそこまで狂信的な思想ではないと自覚しているが、ベクトルは同じだ。ザフトが、プラントが憎いのだ。

 

 

 

ただ、今すぐ皆殺しにしたいと考えているわけではない。

 

 

――――俺は、普通の人間になりたかった。

 

 

普通に生まれて、普通に両親から愛されて、平凡な生涯を送りたかった。両親のエゴを押し付けられ、その理想を満たせなかっただけで捨てられ、生まれた理由すら捨てられた彼は、普遍的なものへのあこがれが強かった。

 

「――――お前は普通じゃないんだろう? ストライク二号機のパイロット」

 

あそこにいるのは普遍的な存在ではない。あの中にいるのは、この世界を変える存在だ。

 

コックピットをつぶされたジンを足蹴にしているストライク二号機。奴は、自分と同じ存在なのか、それとも――――

 

「お前にあうのが楽しみだよ」

狂気を孕んだ笑顔を浮かべ、エリクはゆっくりとその付近へと降下していく。

 

 

 

そんなエリクが勝手に憧れている存在、ストライク二号機の中にいたリオンは

 

 

――――――殺戮を楽しんでいたのか、俺は

 

手心を加えて蹂躙することに、何の感情も抱かない。赤の他人であるはずのザフトを殺し、

 

罪悪感すら覚えない。

 

冷めた目で、残骸となった機体を眺めていた。

 

 

――――なるほど、今この冷静な感覚も

 

 

きっと、そういうことなのだろう。あの憎らしい血のつながった男が言っていた通りだ。

 

 

そして思い浮かべるオレンジ色の光。自分が魅了されたガキ臭い想いを否定できなかった時を思い出す。

 

 

―――――あの光を穢すわけにはいかない。

 

だからこそ、自分の生き方は弁えているつもりだ。

 

 

 

そんな思いを秘めているからこそ、彼女の声を聞けるだけでいい。彼女の想いを、陰ながら支えるだけでいい。

 

 

「リオン!? 無事だよな!?」

 

葛藤するリオンの目の前のモニターに、デュエル二号機に乗り込んでいたカガリとアサギの姿が映し出された。

 

「リオン君、無事? けど、すごかったね。オーブではまだあそこまで動けないけど」

 

 

彼女が無事であるというだけで、冷たかった感情に火が灯る。

 

 

「――――ああ。何とかな―――――あれは?」

 

カガリとようやく落ち着いて話をできる状況になった矢先、銀色のMAが近くに降下してきたのだ。おそらく敵ではないと思われる。

 

 

「ストライク二号機のパイロット! 聞こえるか? 外に出て話がしたい。俺はエリク・ブロードウェイ。階級は中尉だ」

 

「――――ただのオーブ国民だよ」

 

「おいおい、その動きで一介の国民を名乗るのは無理があるぜ。事情が事情だし、悪いようにはしないさ。そっちのお嬢ちゃんたちにも手荒な真似はさせない。これでも紳士で通っているんでな」

 

 

「――――否応なく戦闘に巻き込まれました。なんてものを持ち込んでくれたんですか」

 

「そいつは悪いと思っている。だがおれも上の命令には、抜け穴を見つけるまで従う必要があるんでね。」

 

「あんた、本当に軍人なのか?」

抜け穴という言葉を臆面もなく使う軍人など初めて見た。というより、軍人とも会話をする機会はほとんどなかったのだが。

 

「よく言われる」

にっ、と笑うエリク。

 

 

エリクという連合軍兵士と出会い、ようやく戦闘が終結すると考えていた矢先、二人のレーダーが反応する。

 

「フラガ大尉!? それにあの野郎は!!」

血相を変えるエリク。上空ではオレンジ色の同型MAとザフト軍MSシグーが戦闘を繰り広げていた。

 

 

「―――――まだいたのか!?」

 

リオンは驚きとともに両腰部のミニガンを取り出し、そのシグーに照準を合わせようとする。

 

――――速いっ!? さっきのジンとは動きが違う

 

「エリクさんは牽制を! 前衛は俺が行きますっ!」

 

「おい! 相手は大尉をあしらう実力者だ!! って聞いてねぇ!!」

 

エリクが慌てて制止しようとするが、リオンは機体とともにすでに上空へと飛び上がっていた。

 

―――前に出てきたこと、後悔させてやるっ!

 

 

「当たれッ!!」

 

ミニガンでジグザグに動き回るシグーの背後を狙い打ったリオン。

 

 

「!? そこまで動けたか!」

 

クルーゼは鋭い勘を頼りにその攻撃を避けた。ひらりとバレルロールして躱すその姿は熟練者そのもの。回避と同時に突撃銃での反撃を仕掛けてきたのだ。

 

「!!!」

 

そしてこれをリオンも距離を取って回避する。迂闊に飛び込めば突撃銃で撃たれる。その直感を感じ取ったリオンは何とかシグーの死角へと回り込もうとするが、それを巧妙に邪魔される。

 

「くそっ! 動きが読みづらいっ!!」

 

照準をなかなか合わせることが出来ない。ロックオンできない。

 

 

「援軍が来たのに立つ瀬なさすぎだろ、俺は!!」

 

一方、リオンとともに謎の空気で共闘しているムウもクルーゼを落とせないことにやきもきしていた。

 

ガンバレル、ビームショーティー、そして遅れて参戦してきたエリクのメビウス・ゼロ。

 

連合が誇るMAのダブルエースに新型を乗りこなす友軍MSがいて奴を落とすことが出来ない。

 

「加勢しますぜ、大尉!!」

 

エリクのメビウス・ゼロも本格的に参戦し、いよいよクルーゼも余裕がなくなってきた。

 

「――――多勢に無勢。しかも二機はあの戦線の生き残り。その上新型をある程度乗りこなす実力者が一つ。言い訳には十分すぎるな」

 

 

さらに、爆炎とともに新型を乗せるであろう戦艦が姿を現したのだ。

 

「―――――潮時だろう。ログは取れた。ここで死ぬつもりなどない」

 

クルーゼは突撃銃で牽制しつつ距離を取り、3人の反撃を躱しながら後退していったのだった。

 

 

「――――くそっ、いつもあいつは厄介だなぁ。そう思うだろ、エリク」

 

「うっす。あのザフト軍のパイロットは別格でしょ! エンデュミオンでも同じ動きをしたMSがいたけど、妙な因果を感じちゃいますよ。ぜひご遠慮したい」

 

エリクとムウがクルーゼと追い払った後に雑談を軽くする。お互いに中と外で激戦を繰り広げていたのだ。ようやく一息ついたといったところだ。

 

「おっ、そっちの坊主が二号機のパイロットか。それに、ストライクは二機とも無事、デュエルの二号機も無事とは、不幸中の幸いかもな」

 

ムウは4機のGを奪われたとはいえ、3機だけでも死守できたこの状況に疲れ切った笑みを浮かべる。手放しでは喜べないが、こちらの戦力がごっそり消えたという状況は避けられそうだ。

 

「――――あんたは?」

 

「俺か? 俺はムウ・ラ・フラガ。階級は大尉。さっきは援護ありがとうな、坊主」

 

呪われた血を継ぐ少年と青年は、ここで邂逅した。

 

 

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