機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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連続投稿。gw期間中に少しでも話を作らないと・・・・


第16話 爆炎の中で

隠密作戦の第一段階。アルテミスに取りつくことに成功したニコル。

 

――――ここまでもってくれた

 

機体に感謝するニコル。まずはサーベルで対空兵器を無力化することが先決だ。その後にアルテミスの傘を発生させる装置が出てくる。

 

 

一方、アルテミスは突然の敵襲に恐慌状態に陥る。レーダーに映らない敵に攻撃されているのだ。

 

その混乱の最中、ジェラード少将は我先にとシャトルに乗り込もうとしていた。

 

「急げ! 敵襲に備えるのだ!!」

 

しかし、部下も右往左往。具体的な指示が出来ておらず、その動きは鈍い。

 

 

 

リオンはその惨状を見て冷めた目で基地内を見ていた。

 

――――この要塞も終わりか。

 

ブリッツの単騎による強襲。それだけならわかる。その理由は何か。アークエンジェルは補給のためにこの基地にやってきたが、到着後間もない時間帯での襲撃。そして単騎での突入。

 

――――味な真似を。奴らはただの遊撃、もしくはこちらの消耗を狙った強襲か

 

補給を断たれた軍は、いかに精強であっても力尽きる。補給ルートを次々と失えば、アークエンジェルはジリ貧だ。追撃側は補給を好きなタイミングで行えるし、人員の転換だってできる。

 

―――そこまでしてこちらを倒したいか

 

 

我先にとアークエンジェルから脱出していく。だが、奴らはまるで理解していない。ここにいたほうがまだ安全だということを。

 

 

――――狙いはアークエンジェルではなく、このアルテミス。

 

正確には、アルテミスでの補給を阻止することにある。

 

 

「ラミアス艦長?」

 

すると、アークエンジェルのブリッジに程なくしてマリューたちが帰ってきたのだ。

 

「ええ。状況は!?」

 

「ブリッツがアルテミスの傘を破壊。彼らの目的は、本艦の補給経路の破壊。アルテミスの完全破壊だと思われます」

 

「つまり、本艦を狙っているわけではないと?」

アークエンジェルが狙われていないと知り、驚きを隠せないマリュー。

 

「正確には、チャンスを待っているんでしょう。戦力が整い、こちらが消耗する時期を」

 

 

 

 

「デュエル二号機で出ます。それと、アルテミスからの離脱を具申します。遅れれば、この基地もろとも星屑と化します」

 

 

すぐさま先行してリオンがデュエルで出ることになる。キラはまだダウンしたままだ。

 

「カタパルト接続、完了。デュエル、スタンバイ。進路クリアー。発進を許可する」

 

「リオン・フラガ、デュエル。出る」

 

 

アークエンジェルが離脱する中、ブリッツは港内部で暴れまわっていた。

 

「ここで完全に破壊しないと。地球軍の宇宙要塞は少しでも数を減らす必要があるからね!」

 

赤いMSがやってくる前に、手早く済ませないといけない。もうアルテミスの傘は完全に破壊した。後は爆炎とともにこの要塞も沈むだろう。

 

 

そして見つけた。小さなシャトルが逃げようとしているのが見えた。ここで攻撃し、撃墜するのは簡単だ。だが、彼女の理性はそうではなかった。

 

 

「――――行ってよ、それくらいは見逃してあげる」

シャトルから目を離した。

 

 

しかし、彼女にとっても、彼らにとっても、現実は厳しいものだった。

 

 

 

ニコルの目の前でシャトルは、爆炎の中に消えたのだ。突如として航行不能となった船は、内壁にぶつかり爆沈したのだ。

 

「………っ!?」

軽く悲鳴を上げてしまうニコル。自分ではない。他の誰もここに出撃しているわけではない。味方は自分の撤退を助けるために外にいるはずだ。

 

――――ウ……ウソ、でしょ………っ!?

 

思わず口を覆うニコル。だとするならこれは――――

 

赤い彗星。ザフト、連合のどちらの勢力でも噂をされ始めている、連合の新たなエース。経歴不明の謎のパイロット。アスランやクルーゼと互角以上に渡り合う実力者。

 

「―――――貴方、なの?」

赤いモビルスーツは航行不能になった脱出艇を見ているだけだった。救おうというそぶりを見せなかった。

 

だからこそ、赤い彗星があのシャトルを意図的に撃破したのではないかと。

 

 

当のリオンは、

 

「爆発の衝撃で、ノズルをやられたか――――運が悪いことだ。せめてブリッツの特性だけでも指南するべきだったか」

 

と、シャトルに対してあまり感情をあらわにすることなく、目の前のブリッツについて。

 

―――どう対処するかだな

 

と、冷静だった。しかし、ブリッツの中から感じられるのは怒りの感情。どうやら勘違いをされているようだ。

 

 

―――貴方は、いったい誰のために戦っているの!?

 

―――貴方みたいな人に、私たちはやられたというの!?

 

 

「――――いい女、なのだろう。貴様は」

ライフルでブリッツを狙うリオン。彼女の断片的な叫びがリオンに聞こえ、パイロットが女性であることが分かった。

 

敵であるはずの、ジェラード少将の人格も知らず、彼らを悼むその清廉な心。

 

「だが、だからこそ救われない。君はこれまでだ」

 

ブリッツからの射撃とともに、ロケットアンカーのグレイプニールがリオンに迫る。しかし彼は焦らない。

 

いつも通り人を舐めた最小限の回避でそれらを回避し、被弾するかと思われたグレイプニールの一撃を、よりにもよって掴んだのだ。

 

「!?」

高速で動く物体を、モビルスーツのマニピュレーターでつかむ離れ業。それほどの即応性を行えるパイロットであることを思い知るニコル。

 

 

「さぁ、これで終わりだ」

 

グレイプニールごと今度は逆に引っ張り上げられるブリッツ。脚部バーニアで強引に後退したリオンは、そのままアンバックで方向展開し、バランスを崩しデュエルに近づいてくるブリッツの背中に迫る。

 

「!!!」

このままではやられる。それを悟っていたニコルは何とかアンバックで体勢を立て直そうとするが、

 

「っ!!」

心の中で悲鳴を上げながら、右腕に装備されている攻盾トリケロスでデュエルの、明らかにコックピットを狙った一撃を防いだものの、ニコルはこれ以上のない恐怖で怯えていた。

 

―――こんな、こんな敵がいたなんて――――――

 

「存外しぶとい。だが、あの右腕だ。もう一撃を与えれば――――」

しかし、もう一息だ。後二撃であれを撃墜できる。

 

「リオン君。アークエンジェルがそろそろアルテミスを抜けるわ! 帰投して!」

その命令と報告を聞いた瞬間、リオンは舌打ちをする。

 

ここでブリッツを撃墜することがメインではない。これ以上留まれば、アルテミスの瓦礫と同じ運命を負うことになる。

 

 

「ちっ、後一歩というところを!! 運がいいな、女。次の戦場が、貴様の命日と知れ」

 

捨てセリフを言い残し、リオンはアルテミスから離脱する。この場に置いて行かれたニコルは自分の命がまだあることに安堵し、両手で肩を抱き寄せる。

 

「――――私、いきてる……っ! まだ、いきてる……怖い、怖いよぉ、アスラン……」

 

今まで見たどの敵よりも怖い。強いというのもある。だが、わからないのだ。未知の存在にそのまま殺される恐怖。衝動的にここにはいないはずのアスランに助けを求めてしまった。

 

 

「オイ、ニコル!? どうした!? 応答しろ!!」

 

いつまでたっても出てこないブリッツを心配する声が通信から聞こえてきた。

 

「ディア、ッカ……彼は、本当に……」

 

「ニコル!? おいどうした!?」

 

「彼が、恐ろしい………何を考えているかが、わかりません……」

 

彼女の言っていた言葉の意味を理解するのに、時間はかからなかった。

 

 

 

彼女がほんの敵に感じたのは、殺意ではなく、排除という二文字だったのだ。

 

 

 

 

そしてニコルを易々と退けたリオンは何事もなくアークエンジェルに戻ってきていた。

 

「デュエル、着艦!」

 

「いつもながらさすがね、リオン君は」

 

「ええ。傭兵という立場ではなく、わが軍の戦列に加わってほしいぐらいですよ」

 

 

「すみません。ブリッツを追い詰めましたが、落としきれませんでした」

平坦な声で、事後報告をするリオン。

 

「そう。それに、その混乱の中、ジェラード少将が戦死されたわ。やはり、私たちは来るべきではなかったのかもしれないわ」

意気消沈するマリュー。あまりうまくいってはいなかったとはいえ、友軍の死を悼まないほど冷血ではない。

 

「そうですね。少将の件は本当に残念に思っています。”誤解をされたまま”逝かれては、理解しあう時間もありませんでした」

リオンもほんの少し”無念そうな表情”を浮かべ、少将の死を悼んだ。

 

―――――こういう時に、自分の歪みを突きつけられる。が、悪くない

 

心の中で歪んだ笑みを浮かべるリオン。彼が死のうが生きようが、リオンにとってはどうでもいいのだ。

 

むしろ、連合の後々邪魔になりそうな存在が消えてよかったとさえ思える。

 

 

 

 

「――――部外者の私がこれ以上言っても意味がない。通信を切ります」

 

 

リオンからの通信が切られた。残されたマリューたちは今後の方針について考えることになった。

 

「アルテミスでは、武装をあまり使わなかったとはいえ、補給を十分に受けられませんでした。ここからとなると、要塞との距離がどこも離れ過ぎています」

 

「――――デブリベルトの中を突っ切るとなると速度は――――」

ラミアス艦長とバジルール副艦長が航路を出して今後の指針を考えているがまだ安全とはいいがたい。

 

「だけど、相手もそう簡単に追ってこられないだろ。補給は―――ああ、まあ当てはあるな」

そしてムウはデブリベルトの中に活路ありと考えていた。そして、補給も当て自体はあると考えた。

 

「――――本気ですか!? その、大尉は平気なので?」

ナタルはここまで意地汚くはなりたくないと考えているが、それでも他に名案が浮かばないことで、そんな意見を言ってくれたムウに申し訳なさを感じていた。

 

どのみち、彼が言わなくても自分がこの意見を出していただろうと。

 

「平気なもんか。けど、やるしかないだろ。俺らは生きなきゃなんねぇ。士官が率先してやるのは前提になるけどさ」

 

 

ムウはその後、デブリベルトに進路をとることを決めた後、医務室にいるキラとエリクの見舞いに向かった。

 

「よう、元気しているか?」

 

「お陰様で。クソ少将のせいで傷が開きかけたんで本当に焦りましたよ」

やや不機嫌なエリク。

 

「坊主も落ち着いたか?」

 

「はい……すいませんでした。迷惑をかけて……」

キラも何もしていない自分に嫌になって、嫌でも立ち上がらざるを得ないことになったのだ。理由が不純とはいえ、気力が回復すればまた自分の足で立てる。

 

―――なんでもいいからきっかけが欲しいよな。

 

 

キラは数日後に退院し、鹵獲したジンをエリク専用に仕上げてくれるそうだ。どうせならもう一機のジンも自分専用に調整してほしかったと嘆くムウ。

 

 

そして、マリューとナタルはヘリオポリスの面々に物資の当てが見つかったという説明をすることになったのだ。

 

「補給を?」

 

「受けられるんですか?どこで! 」

トールとサイが真っ先に反応した。ここ最近マードック曹長の手伝いにも駆り出されている二人は、力仕事を請け負っている。水不足の最前線にいるため、その解決できる方法に飛びついた。

 

「受けられるというのかしら……勝手に補給すると言ったほうが近いわ…」

言葉に詰まっているマリュー。しかし、ここから説明をしなければ先には進まないので、腹をくくるしかない。

 

「私達は今、デブリベルトに向かっています。

意を決し、伝えた言葉は、学生たちに驚きをもたらす。

「…でぶりべると?って… ええ」

 

「ちょっと待って下さいよ!まさか… 」

アルベルトとサイは冗談ではないと、といった表情をしてマリューを見る。

 

「デブリベルトには、宇宙空間を漂う様々な物が集まっています。そこには無論、戦闘で破壊された戦艦等もあるわけで… 」

 

「まさか…そっから補給しようって… 」

トールは、声がだんだんと小さくなっていき、頭を抱える。トールはすぐに気づいた。もう人力の当ては見当たらないことを。

 

「あなた達にはその際、ポッドでの船外活動を手伝ってもらいたいの。」

そしてついに通達された学生たちへの要請。船外活動。戦闘行為よりも安全とはいえ、気が進まない作業であるには違いない。

 

 

「あまり嬉しくないのは同じだ。だが他に方法は無いのだ。我々が生き延びる為にはな… 」

そしてナタルも、ラミアスにばかり苦労を強いるわけにはいかず、一番の理由、根っこの説明をした。

 

もはや墓荒らしに似たようなことをしなければ、水が持たない。食料は満載され、武器も想定以上備蓄されているが、今後の襲撃を考えると心もとない。

 

 

「喪われたもの達をあさり回ろうと言うんじゃないわ。ただ…ほんの少し、今私達に必要な物を分けてもらおうというだけ。生きる為に。」

 

 

 

一方、アスランを追って訓練校に入ったフィオナ・マーベリックは卒業を間近に控えていた。

 

「――――――」

ギリシャ神話の彫刻すら霞むような整った容姿、さらさらと流れるような光に反射する銀色の髪が舞う。しかし、その表情は無表情そのものだった。

 

「フィオナ! またそんな風に不貞腐れちゃって!!」

同僚であり、今度の配属先が同じニーナ・エルトランドが入学当初から物静かな印象の彼女に話しかけてきた。紫髪の赤い瞳の少女。髪はセミショート。同年代でスタイルが抜群なフィオナに嫉妬したりもする女友達の一人だ。

しかし嫉妬以上に同性で美人、そして少しミステリアスな彼女にあこがれを抱いているらしい。

 

「――――別に不貞腐れていないわ」

 

「分かってる、わかってる! また変な男どもにちょっかいを出されたんでしょ?」

 

そのへんで伸びていた男子を見つけたわよ、とニーナが心配そうな顔をしていた。

 

 

――――私は、好きで生き残ったわけではないのに……

 

 

生き残った少女。その名で持て囃されるのは嫌いだった。プロパガンダにされるのはもっと嫌だった。ザラ議員も当初は擁護していたが、最近は仮面の男に諭されたのか、パーティに呼ばれる回数が増えた気がする。

 

そもそも、パーティに出るような身分ですらなかったのだ。彼女はその息苦しさが嫌で、自分の生き方を見つけ出すために、パトリック・ザラ議員の反対を押し切り、軍属に身を置いた。

 

「フィオナ―――――」

ニーナがフィオナの抱える最大のトラウマという理由を前に狼狽えていると、

 

「ニーナ、フィオナ、お待たせ!」

そこへ、二人の親友であり幸運なことに同じ部隊に配属となった金髪碧眼の女性、リディア・フローライトがやってきた。

 

今年の卒業試験では、主席のフィオナ、実技3位、学科7位のニーナ、実技4位、学科2位のリディアなど、女性兵士が一部目立った。

 

人見知りというより、誰とも関わろうとしなかったフィオナと半ば腐れ縁となった二人。他人を寄せ付けない強さと距離感を保っていた彼女にとって、土足で玄関を上がられるようなものだったが、今では普通に話すようにはなっている。

 

配属先の情報交換をした3人。すると、

 

「いいなぁ、ニーナは。私はいきなり砂漠よ、砂漠! バルドフェルド隊長の下で経験を積めるのはいいと思うけど、いきなり重力圏。砂漠嫌い~~!!」

リディアは上官には大満足だったが、配属先がアフリカということで、意気消沈していた。リディアはバルドフェルドのようなダンディーな男性がストライクらしい。

 

「ふふ………」

そんな二人のやり取りを見て、フィオナは微笑んだ。

 

「あ、フィオナが笑った!」

 

「うんうん。ようやく笑ったね!」

にんまりする二人。ミス・無表情という不名誉な名称をつけられているフィオナは、少し憤慨する。

 

「失礼ね、私はロボットではないわ」

 

こほん、とフィオナは今芽生えた思いを二人に伝える。

 

「私の周りに、人がいる。それが本当はいいことなのだと理解しているはずなのにね。」

もう天涯孤独になると思っていた。アスランが先に戦場に出向き、新型MSを奪取した。今はその機体に乗り込み、ラクス・クライン嬢の捜索任務を受けているだろう。父代わりのパトリックも今は踏ん張りどころだという。

 

もう離れて手が届かないところに行ってしまう。それだけは嫌だった。

 

「ごめんなさい、素直ではなくて。またあんな風に消えるかもしれない。それが怖い」

そして、自分に優しくしてくれる二人が離れてくれればよかったと考えていた。自分に優しい人間に死んでほしくない、傷ついてほしくない。

 

だから、誰よりも強くありたいと考えた。歴代記録を塗り替えた。まだ足りない。

 

――――赤い彗星。貴方を落とせば、プラントは守られる

 

戦場で話題になっている連合のエース。年齢不詳、性別も不明。謎に包まれた人物は、宇宙で暴れている。

 

「大丈夫だって。私たちはつらい訓練も乗り越えてきたじゃん! 一人で無理でも、2人なら大丈夫!」

 

「楽観視はできないわ。配属先はクルーゼ隊。噂の赤い彗星との交戦だってあるはずよ」

 

「うえぇ、赤い彗星はやばいかも。」

ニーナが嫌な顔をする。赤い彗星はアスラン・ザラ、ラウ・ル・クルーゼといったエースと引けを取らない。新人には荷が重すぎる相手だ。

 

「ええ。赤い彗星。映像だけでも見たけれど、とんでもない動きだよね~。あれで体が耐えられるんだからおかしいよ~~!!」

リディアも映像で見るデュエル二号機の動きはおかしいと考えていた。Gへの耐性が常人離れしているのは明白だった。

 

「なら、特訓あるのみよ。生きて終戦を迎えるために。」

 

「うん!!」

 

「これからもよろしくね、フィオナ!」

 

戦果は拡大する。アスランが守ると誓った人が戦場に。彼女の友人も過酷な戦場へと向かうことになる。

 

 

 

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