機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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第18話 翔け抜ける星の色は…

セイラ・グレンベルへの取り調べというよりも、簡易な身元確認を行い、それが終了した後、居住区の中の一室を用意された。無論ヘリオポリスの住民を刺激しないよう、彼女の存在は秘密とされた。

 

――――さて、しばらく出会っていないが、起きているか、ノア

 

『存在を忘れられていたのかと考えていました』

 

―――室内の盗聴の類は見られるか?

 

すべて文書でのやり取りである。安全、プライバシーが確認できない限り、うかつなことはできない。

 

『3つほど検知。処理をすれば怪しまれるでしょう』

 

――――分かった。

 

 

ラクスに、あるメモを渡すリオン。

 

―――この部屋は盗聴されています。今は、セイラ・グレンベルとして行動してください。

 

こくん、と縦にうなずいたラクス。

 

―――そして、私の叔父キュアン・フラガを通し、リオン・フラガはウズミ氏と関係があります。これも連合には秘密です

 

こくん、とこれにもうなずく彼女。

 

―――なので、貴女を害する恐れは今のところないでしょう。ここからは経路についてのお話をします。ここから準備をしてください。

 

話しながら、文書で話をするという難しいことを求めたリオン。ラクスはそんなリオンを見て驚くが、彼の好意を感じ、満面の笑みで頷いた。

 

―――タフな少女だ。

 

これはリオンの心の中だけのものだ。

 

「――――落ち着いた?」

 

 

「―――――はい」

 

そして始まる二通りの会話。

 

「本当に、本当に災難だったね、セイラさん。(ラクス・クライン、第八艦隊合流後に民間シャトルが用意されています。こちらのアサギとともにオーブへ向かってください)」

話しながら、本当の会話をする器用なことをしているリオン。

 

「ええ。ですが、連合の方々とは、不幸な見解の相違があったのでしょう。わたくしたちの方にも、何か不備があったのかもしれません(ありがとうございます、リオン様。このご恩は忘れません)」

ラクスもラクスでそれを実践できる頭を持っている。こういう機転の利く娘は嫌いではない、リオンは心の中でそう思った。

 

「そこまで責任を感じなくてもいいんだけどね。貴女は、一介の民間人ですし。(あとはウズミ氏がプラントにコンタクトをとるでしょう。そうなれば、しばらくオーブで滞在してもらうことになりますが、よろしいでしょうか?)」

 

「ええ。実際問題、わたくしに出来ることはあまりありませんでした。それでも、今もなお心が痛むのです。何かできたのではないかと(何から何までありがとうございます……)すみません、少し涙が―――」

しかし、割り切れないところもあった。言葉と文書でコミュニケーションをとっているラクスだが、今回の言葉は彼女のウソ偽りのない言葉だったのだろう。感極まったのか、涙がぼろぼろとこぼれてしまう。

 

恐らく、聞いている側はこの音を聞いて驚くかもしれない。

 

「――――シャトルの件、何と言えばいいのか、私にはわかりません。」

リオンはより盗聴器をだますために一芝居を打って出た。泣き出しそうなラクスを抱きしめ、わざと布と布がこすれる音を出したのだ。

 

「ですが、クライン嬢とセイラさんのご無事を最後まで信じておられた、そうに違いない」

 

「――――はいっ」

もう限界なのだろう。彼女の顔は涙で濡れていた。だが、誰かを想う涙は美しいものだ。

 

その後、当たり障りのない話をした二人。

 

 

「また、あなたとお話がしたいですわ、リオン様」

リオンに向ける笑顔は、あのポッドから出た時の笑顔とは別のベクトルのモノだと認識できた。ラクスは純粋に感謝の念をリオンに届けたいと純粋に思っていた。

 

 

―――だが、悲しいことに無意味だ

 

リオンはそんな笑顔を向けられてもあまり興味がない。精々彼女をいかに利用できるかを考えていた。ただ、若干の憐憫の感情はあるが、そこまで心を揺り動かすほどでもない。

 

 

「ええ。プラントでのお話は興味深いところがありますから。ですが、それもこの事態が落ち着いてから。オーブでゆっくりと聞きたいものです。“セイラ”さんの視点から見たプラントという国にも興味がありますから」

ラクスは、そんなリオンの内情など知らず、ここまで自分のために危険を冒してくれたリオンのことを完全に信用していた。

 

「ええ、期待して待っていてくださいね。私もオーブに降り立つ瞬間が楽しみです。オーブはコーディネイターとナチュラルが共に手を取り合い、平和に暮らす国だと聞いております。そのような理想を追う国の在り方は、この世界の中でも、とても尊いものだと思いますわ」

 

 

最後に彼女に挨拶をして、部屋を出るリオン。

 

リオンの後姿を見た後、ラクスは心が温かくなるような気分だった。

 

―――彼は、嘘を言っているようには見えませんでした。

 

ラクスはその次の日が楽しみで仕方がなかった。軟禁に近い状態で一室に閉じ込められ、退屈な日々が続くと思っていた。しかし、リオンがこちらの話し相手になるどころか、オーブ経由で自分を逃がしてくれる。

 

キュアン・フラガといえば、10月会談でマルキオ導師とともに、戦争の膠着状態の打破と、飢餓状態の改善、戦争の落としどころについての会議をセッティングした実績がある。

 

地球連合事務総長オルバーニとクライン議長の秘密会談が行われたのだ。これは父からも聞いていることで、リオンもキュアンから10月会談のことは知り得ていた。

 

―――お父様。わたくしは、辛くなんてありませんわ

 

頼りになる人がいる。こんなに心が温まるような感覚が初めてだった。求められた自分から解放されて、素直な自分に戻れる時間は貴重だった。

 

 

しかし、自分に嘘をつくことはできなかった。

 

 

「………ごめんなさい……っ、ごめん、なさいっ……!」

 

何もできなかった自分が許せなかった。相手も戦争をしている。それを知っているからこそ、彼女は恨むことが出来なかった。

 

そうやって塗り固まってできたものが、今の人類を苦しめていると知っているから。

 

ラクスには見えていた。不自然なほどキレイにまとまったナチュラルとコーディネイターという戦争の図式の根本。

 

この戦争の背後には、何かがいる。

 

しかし、今の彼女には予測でしかその存在を知り得ることが出来ず、確証もない。

 

――――ごめんなさい、お父様。わたくしは―――無力です―――っ

 

 

本音を、自分を助けてくれた人に本当の苦しみを伝えきれない。ラクスの不器用な一面を見た保安局の者は、彼女の慟哭が響いてから程なくして盗聴を止めた。

 

「――――やり切れんよな。」

 

「ああ。あんな年端もいかない少女に背負わせるものじゃない」

 

 

 

 

 

そして、部屋から出たリオンはというと。

 

 

――――よし、穏健派と言われるクラインとのパイプはさらに太くなったな

 

リオンは本音と建て前を冷静に仕分けしていた。

 

――――彼女のことは確かに哀れだと思う。彼女は傑出した人物であることもわかった。

 

しかし一方で、彼女を好意的な目で見ているのも事実だった。突然の接触回線で簡単な取り決めをして、こちらのペースに合わせて話しかけ、なんとかぼろを出さずにここまで来た。

 

―――彼女とは今後も仲良くしたいものだ。カガリとはいい友人になれそうだ

 

そしてリオンの行動指針にはカガリがいたりする。格好つけてはいるが、リオンの理由もひどく単純だ。

 

――――ま、この戦争を生き残れたらの話だが

 

ラクスがこの先どうなるかはわからない。自分は世界を弄る側だが、神ではない。そこまで万能ではなく、彼女を何としてでも守ろうと誓うほど感情を動かされているわけでもない。

 

 

 

そして、リオンは次の手を考える。

 

―――ラミアス艦長を含め、それなりの信頼は得た。

 

彼らは中道派と言われるハルバートン提督のグループに位置する。階級も少将とそれなりに高い。そしてG計画というオーブも巻き込んだプロジェクトを提唱する力もあり、政治家とのパイプも期待できる人物だ。

 

―――触りとしては、まずはザフトの強襲の恐れから話せば、食いついてくるだろう

 

もっとも安心した場面にこそ、敵は狙ってくる。智将とうたわれた彼がそれを考えないわけがない。

 

―――あとは、今後の戦争の行方について。賢い人間は、先のことを考えずにはいられない

 

 

この戦争をよく理解しているからこそ、戦局の打開のためのMS開発に心血を注いのだのだから。その人物が落とし所について自分なりの考えを持っているはずだ。特に少将クラスの士官になれば、中短期の目標を立てることには事欠かない。

 

 

―――お前は、まだ知らなくていい。だがこの戦争で知ってほしい。

 

リオンの瞼の奥に映る、自分の隣に立とうと一生懸命走る金髪の少女。

 

―――政治は簡単ではない。先の先、相手を知ることから始まることを。

 

 

 

 

 

ちょうどそのころ、キュアンの自宅では、

 

 

「うーん、嫌な予感がするな」

 

「どうかされましたか、主」

 

「リオンがとんでもない案件を持ってきそうな気がする」

 

「―――疲れているのです、主は。ヘリオポリス半壊で」

 

「いうなァァァ!! いうんじゃない!! うわぁぁぁぁ!! 戻ってくる黒字が下回ったあぁぁっぁ!!!」

ヘリオポリスという言葉で発狂したように叫ぶキュアン。計算がァァァ、と床の上でのたうちまわる。

 

「あらあら。フラガ家当主ともあろう方が、そんなでは皆が心配しますわよ、あなた」

 

「うわぁぁぁ、もうエリカだけがいやしだよぉぉぉ!!」

 

かなりお腹が膨らんだエリカの姿を見て、優しくその彼女の胸に飛び込んでいくキュアン。

 

「こらこら、お腹の子がびっくりしちゃいますよ」

 

 

「――――これがバブみというやつですか、主よ……」

 

フラガ家は今日も大騒ぎだった。

 

 

 

部屋を出たリオンは、アークエンジェルのクルーがなぜか喜んでいるかが気になっていた。

 

「何かあったのですか?」

パル伍長に尋ねるリオン。

 

「第八艦隊の先遣隊とコンタクトが取れたんだよ! これで一安心だ!」

辺りはようやく肩の荷が下りたといった感じのクルー。リオンはそれでも力を抜くことはなかった。

 

―――第八艦隊。奴らの部隊は削り取ることは出来た。一人にはよく知らんがトラウマも植え付けられた。上々の戦果だ。

 

 

だからこそ、他の部隊が功を急いで挑んでくる可能性があることを。

 

 

 

 

デブリベルトを抜ける際、アークエンジェルはザフトの追撃を恐れていたが、プラントはそれどころではなかった。デュエルは改装中、バスター、イージス、ブリッツで挑んでも、赤い彗星にエンデュミオンの鷹コンビ、2機のストライクがいるのだ。

 

クルーゼも迂闊に仕掛けることはできないでいた。

 

その為に、第八艦隊先遣隊との合流はスムーズに行われることになる。危険な船など一隻もない状態なので、先遣隊は敵に遭遇する心配が全くと言っていいほどなかった。

 

「本艦隊のランデブーポイントへの到達時間は予定通り。合流後、アークエンジェルは本艦隊指揮下に入り、本体への合流地点へ向かう。後わずかだ。無事の到達を祈る! 」

ジョゼフ・コープマン大佐がモニターから白い歯を見せてアークエンジェルのクルーにエールを送る。何とも陽気な男のようだ。

 

「大西洋連邦事務次官、ジョージ・アルスターだ。まずは民間人の救助に尽力を尽くしてくれたことに礼を言いたい。」

そして、ジョージ・アルスター事務次官が現れる。彼はフレイの父親で、ブルーコスモスともかかわりの深い人物だ。しかし、表では穏健派で名が通っている。

 

「あーそれとそのー…救助した民間人名簿の中に我が娘、フレイ・アルスターの名があったことに驚き、喜んでいる。」

そして、親ばかでもある。

 

「え!?」

突然の民間人の名前の件について、しかも自分の娘に言及したことで、驚きを隠せないマリュー。

 

―――リオン君たちのおかげで敵の心配はあまりないとはいえ、一応、警戒は怠るわけにはいかないのだけれど

「出来れば顔を見せてもらえるとありがたいのだが… 」

不安そうな表情を浮かべる事務次官。完全に職権乱用だ。他にも無事を確かめたい人もいるのだ。

 

「事務次官殿、合流すればすぐに会えますよ。もうしばらくの辛抱です」

笑って事務次官を諫めるコープマンだが、目が笑っていなかった。

 

 

その後、フレイは念願の父親との対面を果たし、これがある大きな流れの変化を生むことになる。

 

今言えるのは、この男はブルーコスモスでもなんでもなく、ただの親ばかだったということだ。

 

 

しかし、マリューたちは油断をしていた。確かにクルーゼ隊はこの戦力相手に戦おうとはしないだろう。だが、他の知らない部隊が接敵すればどうなるのか。

 

 

アークエンジェルのブリッジでは、先遣隊が襲われているということで、動揺が見られていた。

 

「早くストライクを出してください。ラミアス艦長」

 

「えぇ!?」

リオンがストライク二号機に乗っていたのだ。いつものデュエルではない。

 

赤と黒を基調とする、まがまがしい色を放つストライクだ。

 

「装備はエールを選択。今は時間が惜しい」

リオンは急いで出撃させてくれと頼みこむ。

 

 

「期待していいのだな、リオン・フラガ!!」

ナタルが怒鳴るようにリオンに尋ねる。彼一人が先行したところで変わるのかと。

 

「別に、すべて倒してしまって構わないのでしょう?」

 

「お願いね、リオン君! 後でキラ君たちも出撃させるわ!」

 

 

「APU起動、エールを選択。カタパルト接続、完了。ストライク、スタンバイ。進路クリア―。発進を許可する」

 

「リオン・フラガ、ストライク、出る」

 

 

ストライクが先行。その後遅れてキラが戦線に到着することになる。

 

 

 

一方、その頃先遣隊はザフトの攻撃を受けていた。クルーゼ隊ではないので、新型のMSはいない。だが、シグーやジンハイマニューバなどの高機動型MSが配備されている中堅以上の部隊だ。

 

数は総勢10機。艦船2隻。対して連合はモントゴメリ、バーナード、ローの3隻からなる先遣隊。勝負は見えていた。

 

 

「ええい!! なぜこんなところにザフト軍が!!」

ここで死ぬつもりなどなかった事務次官。何とかMAで対抗しようとするが、やはりMSには勝てない。次々とMAが撃墜されていく。

 

「弾幕を張れ!! このままでは押し負けるぞ!!」

 

高速船ナスカ級の足回りの良さは連合艦船を圧倒している。回り込まれたローが今まさにその運命のろうそくを消されかけた時、

 

ローのブリッジに突撃銃を構えるジンの右腕が破壊されたのだ。

 

「!?」

慌ててその場から距離を取るジンだが、それがリオンの狙い。距離を取ったジンを待っていましたと言わんばかりに一撃で胸に大きな穴を開けて撃墜したのだ。

 

 

「な、なんだ!?」

事務次官は驚きの声を上げる。応援は絶望的だったが、助けが来たのだ。友軍がたった今危機を脱し、腰が抜けている状態である。

 

コープマンは目を大きく見開いた。その宇宙に怪しく光る赤い機体。アレは間違いない、新型MSの一機。

 

 

「X105A ストライク二号機!!」

 

 

コープマンの叫び声とともに、シグーの集団による攻撃がストライクを襲うも、それを操るリオンはそんな攻撃に当たることを良しとはしない。

 

急加速による、モニターからの消失。赤い色というのは、暗闇に消えやすいという特性を持っている。ゆえに、通常よりも早く動いているように見える。

 

 

「目標捕捉、撃墜する」

 

直上まで上昇、回り込み、その機動性をもって頭を取ったリオン。直上から正確無比な一撃が次々と降り注ぎ、頭部から下までを貫き、次々と爆散していくザフト軍MS。

 

そして直上にいることに気づいた生き残りが上に向けて発砲をする。しかし、その背部スラスターによる高機動性と、脚部バーニアによる急旋回を駆使し、直上からさらに死角へと入り込み、その動きを止めないリオン。

 

 

「なっ!?」

 

「早すぎるっ!!」

 

ここで一気に2機のジンを撃破したリオン。これで先ほどの奇襲も含めて6機の敵MSを撃墜したことになる。全兵力の過半数を超える被害。

 

しかし、撤退を具申することはできなかった。

 

 

――――ナチュラルども相手に宇宙で逃げ帰ることなど許されないっ!!

 

 

しかし、尚も被害が膨れ上がる戦場。いつの間にか直掩の2機以外のMSが藻屑と化していた。

 

「隊長!! ここはもう撤退を!!」

 

「バカな!! たった3分で8機のジンとシグーが全滅だと!?」

 

「敵機接近、弾幕を張れ!!」

 

ナスカ級2隻が直掩の2機とともにリオンを狙い打つ。だが、小刻みに脚部バーニアを操るリオンは、その速度を落とさずに確実に敵戦艦に迫っていた。

 

「赤い彗星!? けど機体が違う!! うわぁぁ!!」

 

「狼狽えるな、アレは偽物、ぐわぁぁぁぁ!!!」

 

そして最後のMSを撃破され、丸裸同然の状態のナスカ級。しかし、とどめを刺すのはリオンではない。

 

 

「ちょうど射線上に二隻誘導した。外すなよ」

通信でその砲撃手に指示を飛ばすリオン。これで終わりだ。

 

 

 

ナスカ級の艦長もその残酷な運命をすぐに知ることになる。

 

「ロックオンされています!!」 

 

「MSの攻撃を数発食らっただけで、このナスカ級が―――あぁぁぁぁ!!!」

 

 

しかし、最後にはキラの乗るストライクのアグニによって、2隻ともども撃沈されることになったナスカ級。

 

「あれが、連合のMSの力」

モントゴメリの副艦長チャン・バークライト少佐は、たった一機でこちらを全滅させようとしていたザフト軍2隻からなる部隊を単独で沈めた赤いストライクに、畏怖と敬意を抱いていた。

 

「助かった、のか」

部下の一人がポツリとつぶやいた。もう辺りにはザフト軍は存在しない。あの一機が、ほとんどの敵を一掃したのだ。それも短時間であの部隊を全滅。

 

「ああ、助かったんだよ……」

 

「ああ。俺たち、助かったんだよ!」

この部下の一人が契機だった。

 

艦内で、先遣隊のどの船の中でも歓喜の声が飛び交う。

 

「おぉぉ!!! 助かった!! 助かったぞぉぉ!!」

 

「すごい、あれが新型の力なのか!!」

 

「これがあれば、戦争は終わるぞ!!」

 

「肩を並べる存在になれるぞ!!」

 

「今すぐモビルスーツが欲しいぞ! あんなものを見せつけられたら!!」

 

興奮冷めやらぬ艦内。中には涙を流して喜んでいるものさえいた。

 

 

「こ、こらっ! 戦闘中だぞ!!」

コープマン大佐ことモントゴメリの艦長はまだ戦闘中だぞ、と船員を諫めるが、彼の口元もゆるくなっていた。

 

「ですが、あれほどの戦果を間近で、2番目に早く見られたことは喜びでもありましょう、艦長」

バークライト副艦長がまあ、まあとコープマンをなだめる。

 

「確かに、それは言えているな」

 

「――――新型、か」

危機が去ったことで、落ち着きを取り戻しつつあったジョージ・アルスター事務次官。

 

 

その後、フレイ・アルスターはアークエンジェル艦内にて、ジョージ・アルスター氏と再会を果たす。

 

「ぱぱっ!! 会いたかった!!」

 

「あぁ、フレイっ、本当にフレイなんだね! ああ、神よっ」

オーバーリアクションな親子の感動の瞬間を、生暖かい目で見ていた軍人一同。

 

―――軍務の最中、なのですが

 

―――手遅れよ、ここで割って入れば無粋者呼ばわりされるわ

 

―――まあ、まあ。戦闘するよりはましさ

 

―――大尉、目が笑ってないっすよ

 

 

「よかったな、フレイ」

婚約者として、それを祝福しているサイと、その友人たち。

 

「―――僕、ここにいていいのかな?」

 

「事務次官の指名だ、難しいことでもないし、顔だけは見せるべきかもしれないな」

キラは、先ほどランチャーストライクの高インパルス砲でナスカ級に隻をぶち抜いたのだ。赤いモビルスーツのほかに出撃したのは誰かと事務次官が尋ね、それがキラの乗るストライクと知るや否や、彼にもお礼がしたいと言い出したのだ。

 

 

「君があの赤いモビルスーツのパイロットか、先ほど命拾いしたよ、ありがとう」

事務次官はリオンの前にまで移動し、頭を下げる。

 

「友軍の危機でしたので。それに、ここまで足を運んだ事務次官殿の努力を守ることが出来、大変喜ばしく思います」

 

「そうか、そうか! いやぁ、本当は最後まで迷ったんだよ! 私にできることは戦闘ではない。だが、娘の無事を一刻も早く確かめたい。官僚失格かもしれないが、終わりよければすべてよしだ。君のおかげだ、本当にありがとう!」

 

そして、と事務次官はリオンの横にいるキラの前に立つ。

 

「コーディネイターとはいえ、連合に協力してくれたのは君なんだね?」

 

「えっと、は、はい……」

コーディネイターという単語に反応し、びくりとするキラ。

 

「そして、我が娘の婚約者サイ君とも仲が良いと聞く。友人たちのために、立ち上がったのだね? それならば男として、本当に尊敬できる行いだよ」

興奮気味に話す事務次官。排斥を訴えている彼を知る連合一部士官は目を丸くしていた。

 

「え?」

 

「うむうむ。サイ君の周りになかなか万能な子がいるという話を聞いてね。オーブというのはそういう国なのかと。両者が手を取り合い、国を富ますために努力すれば効率はいい。我々理事国の中でも、穏健派の理想はまさしくあの国だったのだよ」

事務次官の中では意外と評価の高かったオーブ。その言葉にリオンの目が怪しく光った。

 

―――ブルーコスモスと聞いたが、話が出来るぐらいにはまともなのか

 

「急進派、過激派はあの砂時計をつぶせば終わりだというが、大きな争いが終結するだけで、今後のテロ行為はなくならないだろう。あの才能を見て、手を止める学者も存在しないだろう。根本的な問題解決をしなければ、この戦争は終わらん。」

 

 

「それに子供の夢は、親が介入していいものではないのだよ。子が多くを見て、判断し、成長するのが一番良い。だからこそ、オーブに留学させた甲斐があったというもの。少々世間知らずな面があるからな、うちの娘は」

 

 

「もう、パパっ!!」

恥ずかしくなって赤面するフレイ。尚も抱き着いたままというのはもっと恥ずかしい行動ではないのだろうか、と一同は感じたが黙っておくことにした。

 

―――親ばかもそうだけど、子も子ね

 

―――いいじゃないの、あんなに仲のいい親子は羨ましいぜ

 

―――もう何も言うまい

 

―――大尉、目が血走っています。

 

 

「だからこそ、今確信した。急進的な行いは世界をさらに歪めると。プラントがなければ世界の発展が大幅に遅れる。困難は大きいが、娘の為に立ち上がってくれたコーディネイターがいたのだ。私も早期戦争終結に努力をすることにする。君たち軍人の犠牲も、何とか食い止めないといけないからな」

 

「「「!!!」」」

ムウ、マリュー、ナタルは大きく目を見開いた。まさか紙面上の犠牲者しか知らなさそうな官僚の人間が、そんなことをいうとは考えていなかったのだ。

 

「諸君の長旅が報われることを祈っている。それでは、失礼するよ」

 

大きな騒ぎを起こしつつも、アークエンジェルを去っていく事務次官。フレイは彼とともにアークエンジェルを後にし、しばしのお別れとなる。

 

そしてアークエンジェルは無事に先遣隊と合流し、デュエイン・ハルバートン中将が待つ第八艦隊へと合流することになる。

 

先遣隊から流された、赤い彗星の戦いぶりは第八艦隊のハルバートン中将らの目頭を熱くさせ、彼らは自分たちの選択が間違っていなかったと考えた。

 

そして、CE71年2月13日。第八艦隊の努力を証明する決戦が繰り広げられることになる。

 

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