機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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第39話 青年達の変革

アークエンジェル内では、ニコルの引き渡しが決まるなど、何か不穏な空気が立ち込めている。しかし、さらなる衝撃が彼らを襲うことになる。

 

 

「え!? 自分、ですか?」

 

 

サイ・アーガイルが、アルスター事務次官の計らいにより、転属。ここからニューヨークにいる二人の下へと向かうことになったのだ。

 

―――――アルベルトとキラが死んで、俺はこのまま―――――

 

サイはここで転属を受ければ逃げた形になったと考えていた。確かにフレイにまた会えるのは嬉しい。しかしこんな状況で前線から退くことは、心の整理がつかない。

 

「まあ、辞令が出たからな。末端の兵士はそれを聞かなくちゃいけない。後はお前がどう折り合いをつけるかだ。事務次官でしっかり勉強しろよ、若者」

エリクは、そんなサイ少年に自分の考えを伝える。

 

「アークエンジェルはもう、機動部隊が―――――」

 

 

「そんなことをお前が考える必要はねぇよ。補充要員もくるし、そこんところを分からないほど上層部もバカじゃねぇ」

アークエンジェルのことを考えてくれている、あんなに辛いことがあったのに、まだ気にかけてくれることが嬉しかった。

 

「提督が言った言葉だけどさ。平和な時代になるまでお前も生きろよ。絶対に無茶はするなよ」

少年に、これ以上あの世代に無理はさせられない。

 

―――俺たち大人も、意地を見せねぇとな

 

 

結局、転属はサイ・アーガイルだけだった。軍政部はアークエンジェルのクルーを必要としていなかった。

 

捕虜の件で口答えをしたナタルはもちろん、コーディネイターのエリクは論外。

 

マリューはそもそもナタルを叱責しなかったことで、その色眼鏡から外れた。

 

 

――――上等だよ、くそったれ

 

エリクは軍政部を完全に見限っていた。私情に囚われ、大局を見ていないのは果たして誰なのか。それすら判断が出来ない軍政部にもはや希望など見いだせない。

 

 

――――そんな体たらくなら、すぐにアラスカは落ちるな

 

 

 

 

そして、その日に合わせてニコルの引き渡しも行われる。

 

 

 

その引き渡しの最終終着点では―――――

 

 

 

「もっと強化できるでしょう。命令を聞けるだけの頭さえ残っていればいいんです。」

 

 

ポッドの中に入れられたもの言わぬ人形と化した素体たちは、彼らの言葉を聞くことはできない。

 

自分がそもそも何者だったのか。何を為したかったかすら忘れ、ただ生きている状態。

 

 

同じようにポッドに入れられている者が複数いるのがわかる程度で、今外がどうなっているかすらわからない。

 

――――なぜ?

 

自分は今、なぜ外がどうなっているのかを気になったのだろうか。もはや記憶は消され、自分を証明するものもないというのに。

 

 

銀色の髪の少年は、同じく黒髪の青年と、茶髪の男性の姿に目をやった。

 

――――あれ、誰だったっけ?

 

頭の片隅で彼らを覚えている、そんな気がしたが、何も思い出せない。

 

うつろな瞳で、青年はこちらを見てきたが、特に何も感情が沸いて出ない。

 

 

密閉されたポッドの中では、何も聞こえない、何も感じ取れない

 

 

「しかし、この強化人間というのはどういうことだ?」

 

 

「焼失したフラガ家の資料の中にあった新人類の思想。今の分家が知り得る情報ではないが、宇宙に上がった人類の一つの形、だとか」

 

研究員たちは、本家に残されていた悍ましい負の遺産の大半を手にしていた。分家が自ら捨てたモノすら利用する連合に余裕はなく、全てはこの戦争に勝つための必要悪として割り切っていた。

 

 

その為の強化人間。その為のスペシャリスト。

 

 

相手の思考すら読んでしまいかねない強化人間。それは戦闘において何よりも重要なものだ。

 

 

「しかし、男の方は適合率が思わしくない。なぜかフラガの女性らのほうが強化は順調だが」

 

「感情が爆発するような質だと、親和性がいいんですかね? まあ、見てくれも悪くはなさそうだが」

 

快活そうだった少女らを見て、そんな軽口を言う研究員の一人。

 

「おいおい、検体に欲情するのかよ? こいつらはあくまでコーディネイターと正真正銘の化け物だ。見てくれすら設計された人形どもだぜ。俺は気味が悪いね」

 

「全く、こうして新しい人類のステージの一端を見られる俺たちは、幸せ以外の何物でもない。アズラエル様のおかげだ」

 

そして彼らの口から出てくるアズラエルという名前。

 

「アズラエル様も本当に広範囲に手が伸びるっすねぇ。強化人間に、新しい機体設計の思想。技術部は今嬉しい悲鳴でいっぱいだそうですよ」

 

「ストライクダガーは生産ラインが固まっているから手が出せないが、奪還に成功した機体を改修するそうだ」

 

「これでザフトの奴らも一網打尽だな。」

 

 

強化された機体と、改修された機体。連合はザフト軍と同等以上のMSを開発できるようになった。

 

新規設計されたストライクダガーはスペック上ジンの敏捷性を圧倒し、単独での撃破が理論上可能だ。さらに、少数だが指揮官用としてデュエルダガーも同時生産されている。

 

デュエルダガーの早期生産は、低軌道戦線でのデュエル奪還が大きく働いている。戦闘データも収集され、もはや試験機の扱いではない。

 

後にバスターの奪還にも成功し、この2機はストライクと同様に連合の柱になっていくと思われる。

 

その量産機としてバスターダガー、デュエルダガー、ストライクダガーという3つの柱が生まれる。

 

 

そして、そして、制式採用されたレイダー、水中戦闘に特化した試作段階のフォビドゥンブルー。フォビドゥンの水中仕様はまだトライアルの段階だが、いずれは地球の海を奪還してくれると期待されている。

 

 

連合は膨大な物量と、MSというスタンダードを手に入れた。

 

もはやザフトなど、恐れるに足らず。

 

 

そしてそのためには、アラスカが必要になる。

 

 

「アラスカには旧式しかないらしいぜ」

 

「ということは、旧式といらない人材のお払いというわけか」

 

さらっととんでもないことを言う研究者たち。

 

「サイクロプスも仕掛けられているとも知らず、ザフトの馬鹿どもめ。そして、この犠牲によって、蒼き清浄なる世界への第一歩になるだろう」

 

 

「ははは! 違いない!!」

 

 

 

連合の悪魔のような研究は留まることを知らない。コーディネイターという化け物を倒すために、外法に手を染める。

 

 

しかし、それが彼らの正義だ。コーディネイターが確かに世界に変革という名の混乱を招いたのは否定できない事実でもある。

 

それは人間の在り方を変えたと言っていい。人は生まれながらにして運命を決められる。その才能の数値を決められてしまう。

 

科学の進歩がそれを成し遂げてしまった。そして、ジョージ・グレンの本当の真意を誰も理解することなく、ここまで時間の針が進んでしまったこと。

 

 

もはや、特定の誰かに責任を押し付けることが出来る時期は過ぎ去っていた。

 

 

 

 

 

その混迷する世界の中であり方を失わないように奮闘するオーブ。オーブ近海の諸島に存在する別荘にて、ある男が目を覚ます。

 

 

「―――――――ッ、なんで僕は生きているんだ?」

 

イージスに撃墜されたはずのキラは、浅くない傷を負いながらも生き延びていた。ただ、あまり動かすことが出来ない怪我の具合だった為、この諸島での治療が行われていたのだ。

 

そして、本格的な治療を施すために、本国へと移送される。行き先はオーブ本島。

 

 

そこで彼はキュアン・フラガに初めて出会うことになる。

 

「―――――リオンから話は聞いている。自分の力だけで、道を切り開いたそうじゃないか」

高そうな背広に身を包むキュアンが移送された病室を訪れていた。

 

「――――フラガの皆さんに比べたら、僕なんか。ヘリオポリス事業に、色々な開発事業。実業家として右に出る奴はいません」

 

 

実際、オーブの一人勝ちと言っていい状況だ。アメノミハシラ、そして新たに建造予定の宇宙コロニーのルウム、開発コロニーのアナハイムと、オーブは独自のルートでの宇宙進出を果たしている。

 

なお、キュアンの強い意向により、大破したヘリオポリス再生計画も進んでおり、オーブはまさに金の成る木だった。

 

これでは世界を牛耳るロゴスと言われた大富豪たちも手を出せない。むしろ、彼らはブルーコスモスを商売道具としかみなしておらず、それよりも利益を出してくれるのであれば、乗り換えてしまうほどの尻軽だ。

 

ロゴスの間でもオーブの甘い汁を吸いたい勢力と、コーディネイター脅威論に分かれており、時間経過とともに離間策は浸食していくというものだ。

 

―――――戦争をしなくても、儲けることが出来るなら、それに越したことはない

 

資産家の本音はそれだ。

 

 

キュアンの存在は、オーブを力づくで従わせる意見を抑制していたのだ。

 

 

「なに。私は喧嘩があまり得意ではないからね。こうして綱渡りをしないといけないのさ」

朗らかに笑うキュアン。自分だけを儲けさせず、他も儲けさせて敵を減らしていく。

 

誰からも必要とされる存在になる。誰からもあまり攻めるメリットがない存在になる。

 

「そうなのです! キュアン様は凄い人なんですよ!」

だが、このキュアンの後ろにいる少女と少年は誰なのだろう、とキラは思う。

 

「えっと、君は?」

 

 

「は、はい!! 僕はヴィクトル・サハクです! 一応次期当主候補って言われています!」

 

実直な少年に見えたヴィクトル。リオンよりも年少だが、利発そうに見える。

 

「私はラス、ラス・ウィンスレットです! リオン様の戦友だった方、ですよね!? キラ様!」

 

少女の口からまたしても弟と言っていい存在の名が出てくる。そうか、彼は幼い少年や年下の少女に好かれるらしい。

 

「リオンさんは凄いね、オーブとプラントの姫様だけじゃなくて、こんな子供にまで慕われて。でも、なんだか複雑」

どういうわけか、年下にはかなり優しいリオン。キラは、ここまでリオンの名を楽しそうに言い放つ少女を見て複雑な気分になった。

 

「でも、リオン様はとっても優しい方ですよ! 私の理想論を笑いもせず、応援してくれるって言ってくださったんです! それに、それに――――!」

 

具体的な記憶を思い出したのか、今度はアワアワし始めるウィンスレット嬢。顔を真っ赤にする要素がリオンにあったのだろうか、と神妙な顔になるキラ。

 

「―――――えっと、何が————?」

 

 

「―――――モビルスーツの戦闘以外の本格的な導入だ。戦争に染まり切っていない稀有な存在だと、リオンは言っていたな」

キュアンはその時のことを思い出し、やや表情を曇らせるが、キラはそれに気づかなかった。

 

「それに、今度はダンスを一緒に踊ってくれるって言ってくださいましたの!」

 

 

「ぼ、僕も、今度は勉強を見てもらえるんだ! ラスちゃんだけじゃないよ!」

そして、それまで会話の切り口を見つけられていないヴィクトルが、ついに参戦する。

 

「あら、勉強ならすでに私は課題を貰っているわ、ヴィル♪ まだまだね」

 

 

「ま、負けない。僕はサハクの当主候補なんだ。最初にリオンさんを尊敬していたのは僕なんだ!」

 

 

子供の言い合いに発展するヴィクトルとラス。どちらがリオンに見てもらえているかを競う不毛な言い争い。

 

それを傍目で見ていたキラとキュアンは遠い目をしていた。

 

「―――――収集つかないですよ、これ」

 

「リオン早く来ないかなぁ……」

 

「おい人任せ!!」

思わず口調が崩れるキラ。目上ではあるが、あんまりえらくなさそうなオーラを出している彼に対して咄嗟に出てしまったのだ。なお、キュアンはあまり気にしていないようだ。

 

「呼ばれた気がした。時間より早く着いたが、これはどういうことだ?」

そして、何となくこちらに呼ばれたのでやってきたリオン。ラクスを見送ってから数日が経ち、アラスカへの準備も発進以外は完了している。

 

キュアンがキラ・ヤマトを拾ったので会ってみるか、という提案を受け、平たく言えばスカウトに近い形でオーブ軍への勧誘を画策していた。

 

「「リオンさん!!」」

リオンを見た瞬間に、華が咲いたような笑顔をするラスとヴィクトル。

 

「ヴィクトルも、ウィンスレット嬢も、あまり病院で大声を出すものではありませんよ」

そして、キラの目の前で「え、この人誰? なんなの?」のような行動をとるリオン。

 

「でも、ラスが――――」

ヴィクトルが悔し気に訴えるが、

 

 

「女の子の名前を呼び捨てるのは、本人の許可を得てからだよ、ヴィル。ウィンスレット嬢をあまり焚きつけないで欲しいな。君のほうが年長だろう?」

 

 

「は、はい」

リオンに言われて、しょぼんとするヴィクトル。

 

「ウィンスレット嬢も改めて気を付けてほしいな。あまり自慢げに話すのは避けたほうがいい。時にこういうことが起こりかねないからね」

 

「は、はい。ごめんなさい、リオン様……」

ラスも、リオンに軽くとがめられ、シュンとしてしまう。しかし、キラはそれどころではなかった。

 

「ねぇ、リオンだよね!? どうしたの!?」

 

 

「俺は年下には優しくしようと決めているだけだよ、少年」

にこやかな笑みで、丁寧な言葉を言い放つリオン。あからさまにアークエンジェルにいたころとは違う。

 

「—————(ロリコンでショタコンなのかな、リオンって)。う、うん。それで僕に何の用があるの?」

リオンとの付き合い方を考えてしまうキラだったが、リオンの来た理由について尋ねる。

 

「話が速くて助かる。オーブ軍には、貴方を軍籍に置く準備がある。つまりヘッドハンティングですよ。思い入れももうないでしょ?」

 

 

「―――――連合に思い入れはないけど、あの船にはあるよ。まだイエスとは言えない。一応、僕もあの船には夢を乗せていたんだ」

キラは悔しそうに、しかしさっぱりした様子で白状する。あの死闘で彼は傷を負ったが、彼をさらなる高みへと成長させたことがうかがえる。

 

現時点では、キラはオーブに靡かない。彼にとってのメリットがまだ存在しない。そのメリットはアークエンジェルの生存についてだ。

 

しかし、幸運なことに、アークエンジェルはアラスカで使い潰される予定だ。どのみち彼らは連合内でチェックメイト。なら助け出し、有効活用することは、この男の登用にもつながる。

 

「まあ、傷が癒えるまではここにいてもらう。世界の情勢は、簡単に変わるものだからね」

意味深な笑みを浮かべ、キラの病室を去るリオン。

 

「待ってくださいよ、リオンさん!!」

 

「一緒に私とダンスの練習~~!!」

 

 

そして、子供二人もリオンの後を追って病室を出ていく。残されたキュアンとキラは。

 

 

「—————本当に、本当にあのリオンさん、なのですか?」

 

 

「アークエンジェルでどんな姿を見せていたかは知らんが、リオンは本来優しい性格だ。ただ、カガリとアサギちゃんを守る為に、心を鬼にしていた、俺はそう信じているし、家族だからすぐにわかるんだけどな」

 

キュアンは、リオンのことを理解しているようだった。確かに、厳しい言葉の裏に仲間をフォローしたり、汚れ役を買って出たりと、リオンは奔走していた。

 

「そう、なんだ」

 

 

「けど、ここ最近特に優しくなったなぁ。プラントの少女に出会ってから、あいつの表情が柔らかくなったような気がするんだ」

キュアンとしては、いい傾向だ、と喜んでいたりするラクスとの邂逅。

 

「まさか、あの歌姫の?」

プラントの少女のことは、もちろんアークエンジェルにいたころから知っているキラ。まさか、あの少女がリオンにそこまでの影響を与えていることに、驚きを隠せなかった。

 

「―――――あいつはいつも何でもできてしまうからな。もっとあいつに遊びを覚えさせたほうがよかった。回り道でもいいから、もっと余裕を持ってほしかった」

 

キュアンの後悔が漏れた。リオンは万能で、何事も出来てしまう器用な少年だった。だから、手を掛けずとも成長したと思っていた。

 

 

しかし、実際は為すべきこと以外は出来ない青年になってしまった。質が悪いのは、受け身なのではなく、勝手に課題を探してくる気質だ。能動的に動くから、その歪みに気づきにくかった。

 

それが今、ようやく人らしいことが出来るようになった。ラスという少女も、久しぶりに尊いものを見た、とリオンに笑顔を取り戻させるきっかけにもなった。

 

「―――――手間がかからないようで、かかる人なんですね、リオンさん。僕には完璧超人にしか見えませんけど」

 

 

「ああ。とびきり面倒のかかる奴だ。だが、絶対に守らなきゃいけない存在でもあるんだ」

 

 

しかし、明るい話はここまでだ。アルベルトとキラがけがをしたことなどについて話題が変わる。

 

「――――――仕方ない、と言えばいいのか。万に一つリオンが敗北することはなかったと思うが、二人が戦線にいなければ被害はさらに広がっていたともいえる。だが、子供が傷つくのは本当に痛ましい」

 

 

ロペス夫妻、ヤマト夫妻は息子たちの重症の知らせを知り、愕然としたそうだ。何とか一命はとりとめたが、片眼を失うなど一生のハンデを背負わされることになった。

 

キラ・ヤマトは失った右目に代わり、最新鋭の義眼を移植することになる。アルベルトに対しては、日常レベルで問題ない程度の性能の義眼を移植することが決まっている。

 

 

オーブ政府としては、この件を重く受け止めており、連合を強く非難していた。民間人を非常時とはいえ、前線に立たせる行為を行った軍に対して、並びにザフト軍にも遺憾の意を表明し、民間人が下りるまでの猶予を与えなかったことに失望の意を覚える、とまで言い放ったのだ。

 

 

 

連合の場合は迅速だった。アラスカでアークエンジェルの責任問題が幾重にも積み重なっており、処分する大義名分が出来てしまった。勿論、連合としてはオーブが非公式での抗議を行ったことでこの件を大々的に取り上げるということはなく、うやむやにするつもりなのだ。

 

一方、ザフトはラクス・クラインの引き渡しの件もあり、さらには前線に無理やり立たされていた民間人を殺傷したという事実に厭戦感情が僅かに広がり、急進派がイライラする展開に。

 

ラクス・クラインを救出したと思われる連合の赤い彗星に関する情報をかき集めようとするが、なかなか集まらないという穏健派にとっても口惜しい状況は、プラントをざわつかせていた。

 

何しろ情報源のアークエンジェルが開示を躱しているのだ。これでは情報はやってこない。

 

 

それぞれの陣営は、この件を闇に葬るつもりなのだ。

 

「――――――そう、なんだ」

キラは、その責任の全てが結果としてあの船に背負わされることに申し訳なさを感じていた。

 

 

「あまり深く悩む必要はない。全ては間が悪かった。オーブ政府はそこまでアークエンジェルのことを批判しているわけではない。ただ、そうだな―――――」

 

オーブとしては赤い彗星を闇に葬ったことでもう連合に要求することはない。ロペス夫妻、ヤマト夫妻には賠償金を与えることぐらいしかできない。

 

「――――――道はいまだ見えずとも、道は可能性の中にあり。再び交わるかもしれんぞ、我々と彼らの運命が」

 

 

「――――――――」

キラもそれは理解していた。今更どうこうしても遅い。だが、彼らと自分の道がまた交わるのであれば、今度は失敗しないよう努力するだけだ。

 

————本当にやらなくちゃいけないことは、何なのか。僕はもう、間違えたくないんだ。

 

キラの苦闘は続く。

 

 

そんなキラの秘めたる思いを察したキュアンは、病室を後にして思案する。

 

――――とはいえ、これでリオンの予想通り、アークエンジェルのスカウトはスムーズにできそうだ。

 

 

キュアンは、アークエンジェルの戦力を取り込むつもりであるリオンの意見に対し、肯定的な意見だった。

 

連合もバカなことをするものだと呆れもした。しかし、こういう外交状況なら連合は貴重さを感じないあの船を見捨てるだろうと。

 

 

――――本当に、お前はどこまで見えているんだ、リオン。

 

キュアンは、その見通す力はどこからあふれ出ているのか、末恐ろしく感じていた。

 

 

 

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