機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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第40話 未来を知る亡霊

ザフト軍カーペンタリア基地。これは地球降下作戦で親プラント国家群の大洋州連合のカーペンタリア湾に軌道上から短期間で建設したものが発展した軍事要塞である。

 

連合の赤い彗星、白い悪魔を討った英雄として、フィオナとアスランは凱旋を果たしていた。

 

しかし両雄に笑顔はなく、生き残った申し訳なさと、これからの戦場でより一層尽力するしかないと考えていたため、ネビュラ勲章を授与される嬉しさなど欠片もなかった。

 

 

個室にて、アスランとフィオナはクルーゼ隊長と再会していた。

 

「クルーゼ隊長。私は、何もしていません。赤い彗星を討ったのはニコルで、ストライクを討ったのも運が良かっただけです。俺の力が至りませんでした」

 

「私も、みんながストライクを消耗させてくれたから、勝てたと考えています。もし同じ条件なら、殺されていたのは私たちでした」

 

しかし大概に自分の実力を疑問視し、あくまでザラ隊全員で勝ち取った勝利だという姿勢を崩さない。

 

「二人とも謙虚だな。時にはその謙虚さはよくないかもしれないが――――まあよい。君たちにそれほどまでの謙虚さを強いる敵だった、ということなのだろう」

 

「―――――はい」

 

 

「しかし、私はこうも考えている。あのアークエンジェルに対し、何度も交戦し続けることが出来たのは、ザラ隊以外に例を見ない。他の部隊は初見で全滅させられているのだからな。さらに低軌道戦線でも、私の顔にこれ以上ないほど泥を塗った相手だ。君たちの実力を疑問視する者はいないよ」

 

あのラウ・ル・クルーゼですら、仕留めきることが出来ず、大きな損害を被る相手だったのだ。

 

 

――――だが、妙だな。ブリッツのミラージュコロイドは、確かに脅威だが、赤い彗星には通用しないはずだ

 

 

そしてクルーゼもまた、赤い彗星のパイロットが本当に死んだと思っていない。アレは恐らく別のパイロットだったと半ば確信している。

 

しかし、情報は何も出てこない。どこかで止められている。

 

 

「――――フィオナ、アスランは先にも申した通り、特務隊への転属となる。最新鋭MSを受領し、より一層活躍してもらわねば困るからな」

 

「はっ! クルーゼ隊長!」

 

これはもう癖なのだろう。無意識のうちに敬礼をするアスラン。しかしクルーゼはその姿に苦笑いし、

 

「もう私は君の隊長ではない。その勲章と、ザフトの未来を守る為に、君自身の手で、頑張りたまえ」

 

 

「―――――分かり、ました」

 

深々と頭を下げるアスラン。これまでお世話になった恩を返すような行動に、クルーゼの表情に笑みがこぼれる。

 

「そして君もだ、フィオナ。あのストライクを相手に勝利したことは十分誇れることだ。今度の最新鋭機は、兄妹機ともいうべきコンセプトらしい。アスランとともに、ザフトの未来を守り抜いてほしい」

 

「アスランと、一緒に、ですか? でも、私は――――」

 

 

「白銀のブリュンヒルデ」

 

 

「―――――え?」

 

 

「訓練学校史上最高傑作と謳われた君に付けられた異名だ。ザフトの赤の騎士と呼ばれるアスランとともに、これからのザフトを引っ張ってもらいたい」

 

誰がそう謳い始めたかはわからないのだがな、と笑うクルーゼ。

 

 

「とにかくだ。君たちにはすぐに本国へと帰還し、機体受領をすぐにしてもらうことになっている。部下たちがこうやって巣立つというのは、悪くないな」

 

 

二人を見送った後、クルーゼはフィオナのことを考えていた。

 

「―――――世界で最も有名な戦乙女の名を光栄に思っているかもしれないが」

 

評議会は、その実績を評価しているのと同時に、彼女の存在を危惧している面もあった。

 

――――アスラン・ザラとラクス・クラインこそが、定められた運命である、か

 

アスランの片腕として、申し分のない働きをしている彼女は、彼にとって大きな存在となっている。今は亡きニコルの役目と、本来ラクスが担うべきだった椅子にすら座っているときがある。

 

「君は気づかないか、フィオナ・マーベリック。これは同時に戒めなのだよ」

 

 

赤い騎士と呼ばれる英雄に寄り添う、戦乙女。ラクスという存在を利用したい者にとって、フィオナはむしろ邪魔なのだ。

 

 

ラクスとアスランが結ばれることで、国の内側にアピールする。クライン派を取り込むための一手でもあり、それを望む強硬派にとって、フィオナは有能だが厄介な存在だった。

 

「ブリュンヒルデの恋は悲恋に終わったという。ならば貴様の恋慕の結末も、すでに定められているというわけだ」

 

これがプラントのシステムだ。想い人と必ず結ばれるわけではない。互いに惹かれ始めても、それを許さない息苦しい仕組み。

 

そして、フィオナはそれまでのバランスを崩すイレギュラーなのではないかと考えられているのだ。

 

 

「これを新人類の在り方と聞くと、まるで道化のようだ」

 

 

 

 

 

一方、本国に先に戻っていたラクスはリディア・フローライトとの邂逅を果たしていた。

 

「まさかまたラクス様に会えるなんて、なんだか光栄です」

 

リディアは、歌姫としてプラントのアイドルである彼女に会えて感激していた。

 

「え、ええ。リディアさんにそう言われて少し気恥しいですわ。それと、フィオナさんとはご学友だったとか」

ジリジリと距離を詰められることに、ラクスは若干戸惑いを感じていた。もっと正確に言うなら、

 

――――最近ファンの方が過激になっているような気がします……

 

特に、あの奇跡の帰還以来、ラクスを信奉する人間が増えたと感じていた。それこそ、狂信的なほどに。

 

目の前のリディアは有名人に遭ったテンションだというのは間違いないが、それでも強硬に自分に会おうとするファンを思い出し、若干トラウマでもあった。

 

「そうなんです! フィオナは凄いんですよ! 成績歴代トップで、実は私も次席だったりします! 歴代4位。フィオナの後を追っていると、自然とそうなっちゃったんです」

 

 

 

「歴代4位、ですか? フィオナさんやジュール家の御子息、そしてアスランに次ぐ成績、ということですか? リディアさんの努力の賜物ですね。フィオナさんの成績には今も驚いていますけど、まさかそこまでの大事とは知りませんでした」

 

親友と切磋琢磨することで、自分を高めることが出来たリディア。しかし、そんなリディアにも闇があった。

 

 

「―――――でも、いいことばかりではないです。アークエンジェルとの戦いでニーナたちの上官が―――――」

 

暗い顔になるリディア。ラクスは知らないが、ニーナはオーブ近海での戦闘でまたしてもつらい経験をしている。大して自分はそんな経験をせずにここまで来ている。

 

なんだかそれが、複雑なのだ。

 

「―――――痛ましいことです。その、何と言えばよろしいのか。お悔やみ申し上げます」

 

ラクスも、自分が知らないうちに、フィオナの友人が辛い思いをしていることに心を痛める。もう本当にどうにもならないのか、とこんな話を聞くと気が滅入りそうになる。

 

「――――戦争なんです、殺し殺される覚悟はしていないと……今生きている私にできることを、するしかありませんから……」

 

 

しかし、リディアは気丈にこう答える。彼女の上官らの戦死から幾分も経っているとはいえ、まだ整理も出来ていないはずだ。なのに、彼女は前を向いている。

 

 

 

――――リオン様に託された、平和の歌

 

 

リオンはこんな絶望が蔓延る世界で、何とかしようと動いている。そして、そんな彼の熱意を知った者として、ここで立ち止まるわけにはいかない。

 

「でも、信じられないんですよね。リオンさんがあんな簡単にやられるとは思えないんです」

 

相対したからこそわかる、リオンの実力。ブリッツがステルスで近づき、一撃を加えたというが、別のパイロットである可能性が非常に高い。

 

「――――ええ。リオン様はオーブで船を降りられましたわ」

 

ラクスも、リディアになら内情を話してもいいだろうとリオンがオーブで降りたことを話す。

 

 

「そうなんですか――――オーブに戻ったということは、動くかもしれないですね」

 

リオンは動く。暗躍を再び始めるだろう。リディアには、この現状で彼が座して待つようなタイプではないと判断していた。

 

「ええ。プラントに戻ったばかりで、先ほどスピットブレイクというワードを知りましたが、大掛かりな作戦だそうで」

 

ラクスも、その作戦で連合の最重要拠点を攻撃するという内容を既に知っていた。これが成功すれば戦局は一気に傾くだろう。

 

「―――――大規模降下作戦いによる、アラスカ基地攻略。フィオナやアスランさんはプラントに戻るみたいですし、クルーゼ隊長が指揮を執るのかもしれないです」

 

クルーゼという名前を知ったラクスは、目を細めながら彼がこの作戦に参加するのは当然だと考えていた。

 

何しろ、大戦初期からの勲章持ちの将校だ。ザフト最高のエースにして指揮官の一人。彼が出ない理由などない。

 

「――――ザラ議長の懐刀が動くということは、この作戦がプラントにとっての正念場であることは明白ですね」

 

そして対するは連合の圧倒的な物量。しかし、絶対的なエースがいない連合軍は厳しい戦いを強いられるだろう。

 

「失敗すれば、地球での軍事行動が困難になる博打。失敗は許されないというのがよくわかります」

 

リディアは、そこまでの犠牲を払う必要があるのかと、考えていた。もうすぐオーブは何かしらのアクションを起こすだろうし、彼らが何かを起こすのよりも、連合がオーブに圧力を加えるのは明白だ。

 

国力の成長著しいオーブを取り込みたい連合軍は、その強大な軍事力で彼らを手に入れたいと考えているだろう。

 

上手くいけば、ザフトとオーブの共闘すらありうるかもしれない。可能性は低いとわかっていても、うまく転がらないかと思わずにはいられない。

 

 

「この作戦で、戦争の早期終結を願う、ということなのでしょうね」

 

 

ラクスは、今の自分には何もできないことを悟っていた。しかし、このままではプラントは後戻りがさらにできなくなる。

 

独立を果たし、自治権を得るための戦争が、殲滅戦争と化した。

 

――――本当に、この選択がわたくしたちの未来を掴み取る一手になるのでしょうか

 

言いようのない不安が、彼女を襲っていた。

 

 

 

 

 

一方、オーブではリオンがアラスカに飛び立つ準備を進めていた。

 

 

「――――――長距離航続距離を実現するストライカーパックの追加装備。試作ネームはキュアンが名付けたIOB。モビルスーツのOSといい、大人は頭文字が好きなのか」

 

 

「イグニッション・オーバー・ブースター。目標地点に超高速で接近。単独強襲にもってこいの片道切符。余程の命知らずでなければ、使いたがらない装備なんだがなぁ」

 

キュアンがリオンの横でそう漏らす。

 

「とはいえ、計算外なのは通常のMSでは耐えられないとはな。まさかシミュレーションでダガーが空中分解するとは考えていなかった」

 

 

今回の任務で使用するはずだったフェイク用のオーブ製ダガーはこの追加装備に機体が耐えきることが出来なかったのだ。

 

 

オーバーブースターでアラスカまでたどり着いたとしても、その後の戦闘で機体は短時間で自壊してしまっている。というより、機体が受けるダメージよりも、この超スピードに機体が消耗するというおかしい現象が発生しているのだ。

 

「――――――となると、やはりこいつを出すしかないということか」

 

 

ダガーの隣に鎮座しているのは、これまでのストライクやデュエルの戦闘データと、リオンのアイディアを取り込んだオーブの新型MS。

 

 

MBF-RX-00 ストライクグリント。煌くという意味と、強欲という一面を込めた名として、リオン・フラガが受領する予定の機体だ。

 

本機には、PS装甲の内骨格を採用し、機体運動性能で一線を画すものを備えている。他のGATシリーズの機体でも恐らく耐えられるだろうが、今回は単独での任務、長時間戦闘を想定しており、核分裂エンジンを採用したストライクグリントの出番ということになる。

 

また、サイコフレームを機体各所も内蔵しており、理論値を超える性能を発揮すると言われている。リオンにとっては相性のいい機体と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

「リオン・フラガ。少しいいだろうか」

 

アラスカへの特殊任務へ赴く準備をするリオンの前に、ロンド・ミナ・サハクが現れる。

 

「―――――珍しいですね、軍港に貴女が寄られることがあろうとは―――激励ですか?」

 

 

「――――そうだな、そんな所だ」

最近リオンの近くを訪れる機会が多いミナ。彼女の色眼鏡に合うのは光栄だが、ハードルが意図しない高さまで上がっていることに苦笑いするリオン。

 

「――――――貴方の期待は重い。まだ青二才ですから」

肩を竦めミナの物言いに別の意味を感じないでもない。故に減らず口をのたまうのは仕方ない。

 

―――――お姫様に絡まれる事が多いな。

 

しかし次の瞬間、まったく見たことがなかった映像が流れ込んできた。

 

 

――――地球はいいところよ。空は青くて山や森があって

 

優しい声色の、女性がそこにいた。

 

――――でも地球の森にはいろんな動物がいるの

 

それは恐らく、彼が彼になる前の、軽蔑すべき俗物に成り下がる前の男の記憶。

 

「――――」

意識が遠のくリオン。体の力が抜け落ちるというよりは、何か内部を作り変えられるかのような感覚。

 

 

――――ずっと今のままなんてだめ。○○○○○○は大きくなるんでしょ?大きくなって立派な人になってたくさんの人に幸せをあげなくっちゃ

 

「――――――――――――」

 

 

「リオン様!?」

ついに部下の一人がリオンに大声で叫ぶ。うつろな瞳になっていたリオンは、その声で正気を取り戻した。

 

 

「リオン君? 大丈夫なの? ここのところ働き詰めよ? ならもう少し休んでも――――!?」

アサギは、リオンの顔を見た瞬間に驚いた。リオンはなぜ彼女が驚いたのかその時までわからなかった。

 

頬に濡れたものが流れていた。それは物心着く前に失っていたはずの感覚。そんな機会すら彼には許されていなかった。

 

「――――――なんでもない。いや、一応医者に診てもらうことにする」

リオンはそれだけ言うと、頬を伝った涙を拭き取り、その場を後にするのだった。

 

 

「―――――リオン――――――」

ミナは、その場を後にする彼の姿を見て、何が彼に涙を流させたのかを薄々感じ取っていた。

 

 

―――――リオンが、幼い頃に記憶を転写されたことは知っておる。

 

それが、リオンの力となり、リオンの精神構造を変化させた元凶。恐らく変容という現象がなくとも、傑出した存在にはなれていただろう。

 

今のリオンは、限界ギリギリまで鍛え上げたスペックなのだ。壊れない程度に、限界まで登り続けた存在なのだ。

 

その元凶たる記憶が、リオンの精神を蝕んでいる。恐らく手遅れになるほどに。

 

 

いずれ、リオンという存在はその膨大な記憶に押しつぶされる。彼がその力を制御しなければ、いずれ彼は精神を――――

 

 

その前兆が、まさに今の光景だった。力による第六感が無意識に働き、彼が知るすべのない何かに辿り着いた。しかし、記憶に引っ張られた感情が暴走し、表面化した。

 

そんな所だろう、とミナは推察した。

 

 

いずれリオンの意識そのものが支配されていく、それが彼の待つ運命。

 

しかし、リオンはただ黙って浸食されることを座して待つはずがないと、彼女は信じていた。

 

――――借り物であろうと、使命を背負い、走り続けた其方の生き様

 

彼と同じ状況で、ここまで浸食から逃れることが出来る人物が、他にいようか。

 

そんなことは分からない。分からないというならば、誰にも推し量ることなどできない。

 

――――私は信じているぞ。其方が、膨大な過去に打ち勝つことを

 

 

 

リオンは医務室に立ち寄り、どこにも異常がないことを確認したものの、どこか余裕を感じさせる笑みを浮かべていた。

 

――――今まで見たことがなかったな、先ほどのあれは

 

赤い彗星と呼ばれるずっと前。彼が幼少の時の記憶。

 

――――たくさんの人に、幸せを届ける、か

 

一笑に伏してしまうほど、儚い夢だ。しかし、自分は既にそんな夢をいくつか抱えてしまっている。

 

――――今、俺にこれを見せたこと。それに意味があるのか?

 

ここまで同化が進んでいるのだ。いい加減返事が来てもいいだろう。

 

――――意味はある

 

記憶の中で聞き続けた声が、ようやく自分に向けられた。残留思念と化した、あの男の意志。

 

――――君に、取りこぼしてほしくはないのだ

 

豪く後ろ向きな発言だと、リオンは冷笑する。どのみち先のことはやってみなければ細かく分からない。

 

――――それは、何を取りこぼす、ということだ? 貴方のように、そこまで人を切り捨てた覚えはないが

 

自ら孤独になり、復讐者に成り果てた彼とは違う。

 

――――君は私と違い、愛する者がある。

 

その言葉を聞いた瞬間、リオンは眉間にしわを寄せる。

 

―――――余計なお世話だ。老いて涙脆くなったか?

 

そんな余計なことに気を使わなくてもいい、と、リオンは彼を茶化した。

 

――――私は、最初は君を乗っ取る気でいた

 

ここに来ての爆弾発言。彼は、リオンという体を乗っ取り、またこの世界に顕現しようとしていたと独白したのだ。しかしそれが過去形になっていることに気づき、リオンはしっかりと意識を傾けた。

 

――――何も為せず、才能に振り回されるのなら、私が、というつもりだった。

 

 

――――だが、君は自らを信じ、為すべきことを為そうとしていた。世界という課題だらけの場所で、真正面からその闇に立ち向かった。

 

リオンの生き様がまぶしく思えた。理想に燃え、乗り越えていく姿が、羨ましかった。そして、自分にもそんな可能性があったのではなかったと、自問自答するようになった。

 

リオンの生き様に、彼は感化されたのだ。

 

―――――私は、世界を好きになったことなど、ついになかったからな

 

しかし、彼の言葉に首を横に振り、リオンは否定の言葉を告げる。

 

――――生憎、俺も世界を好きになったことはないよ。課題だらけで嫌になる

 

一つ間違うな、という意味で、リオンは笑いながら世界を嫌っていると言い放つ。その言葉だけで、彼をひねくれものと評する人物はいるだろう。恐らくほとんどの人間がそう捉える。

 

――――ただ、そうだな。世界を好きになりたい気持ちが、ないわけじゃない

 

――――リオン・フラガ……君は……

 

―――もう行く。また今度話をします

 

リオンの意識が、彼から離れていく。どうやら、リオンはこの精神世界から一度現実に戻るつもりのようだ。

 

――――仕方ない。この力を、俺たちが生まれた感謝やら何やらで、俺もお節介なことをしますか。

 

とても面倒くさそうに言いながらも、彼はきっと真剣なのだろう。

 

――――俺を通して、今度こそ世界を好きになればいい。道順は一直線。遠回りも近道もない。それで成仏しろよ、ご先祖様

 

 

そう言って、精神世界から現実世界へと戻っていくリオンと、取り残された男。

 

 

 

――――ああ。どうか―――――

 

男は命という縛りから解放され、ニュータイプとしての力を開花させていた。だからこそ、時の流れも断片的に見える。

 

それは過去であり、現在であり、未来である。尤も、彼が見通せるのは、この現実に最も近いであろう未来のみ。

 

その未来に、リオン・フラガが存在しないことだけが、男を苦しめる要因だった。

 

 

―――――彼の願いを、叶えてくれ

 

 




あくまで、彼の能力で見えた高確率の未来です。
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