機動戦士ガンダムSEED 理想の従者 作:傍観者改め、介入者
主人公と愉快な暗躍者たちがその根を奪い去ったのです。
第44話 平和の息吹
アラスカ壊滅と、ザフト軍主力部隊の消滅。それは混迷を極める世界に、さらなる混乱を招く風となる。
連合軍は、度重なる兵士を酷使する作戦を強行する最中、ついに穏健派が蜂起。国連事務総長ら、穏健派の政治家、資産家も加わり、アラスカの被害を目の当たりにした市民らを煽ることで、アラスカ、カナダの大部分を掌握。アメリカ北部と南米大陸を完全に掌握した。
さらに月面基地、コンプトン要塞、ローレンツ基地はほとんどの抵抗もなく第八艦隊が占領。まさに電光石火の勢いで、月面における半数以上の施設を掌握したのだ。
無論、急進派も黙ってはいない。プトレマイオス基地、ダイダロス基地を中心に、満載される主力は温存され、支持勢力圏の北米の南側、東アジア共和国は健在。現在南北境界線にて小規模な小競り合いを起こしている。
しかしその一方で、アフリカの掌握には手古摺っており、南米を抑えられた動揺は大きかった。
穏健派への鞍替えを目論む隠れ穏健派閥が次々と離脱。やはり、味方ごとザフトを殲滅するという急進派のやり方は、支持を失うものだと身をもって知ることになった。
首都ブエノスアイレス———————
「そうか。宇宙ではもはやプトレマイオス基地だけか」
壮年の男性がモニターに映るデュエイン・ハルバートン大将に語り掛ける。
「ああ。やはりアラスカの一件が大きかったな。やはり、南米とカナダを押えたのは大きい。君のおかげでもある、ビラード中将」
ネビル・ビラード中将。開戦当初からザフト軍と戦い続ける歴戦の将軍。穏健派のハルバートンとは旧知の仲で、過剰な戦線拡大に反対していた一人でもあった。
「今はまだ、パナマ基地が健在であるからこそ、月の補給路は持っているが、ザフト軍もここを襲撃しないとも限らない」
ハルバートンの懸念はパナマである。ザフト軍がアラスカでの報復行為をする可能性は十分に予想され、穏健派は南米に合流する形で離脱。
穏健派は現在、スカンジナビア王国、オーブとのコンタクトをとるかどうか判断を窮している。
インパクトとして大きいのは、アフリカ共同体と、南アフリカ機構の停戦。このプランが現在有力である。親プラント国家であったアフリカ共同体は、バルドフェルド隊の敗北により、後ろ盾を失っていたのだ。現在南アフリカ機構の反撃に遭い、苦しい立場に立たされていた共同体にとって、穏健派からの終戦協定はまさに渡りに船だった。
「うむ。アフリカ共同体との電話会談でも感触は悪くないと、アルスター副代表も手ごたえを感じていたようだ」
アフリカには独特の空気と慣習があった。アフリカの大地に住まう者は一族として少なからずつながっていることが大きい。何よりも彼らは同胞、同郷の者を大切にする傾向がある。
思いがけず、アフリカは真っ二つに割れていたが、本当はアフリカを自分たちで取り戻したい思いは強かったのだ。穏健派としては、マスドライバー「ハビリス」の使用を許可してくれるなら、自治も約束すると発言。
オーブ政府と、資産家たちの経済支援も取り付け、アフリカ戦線は一応の収束に向かう予定だ。
この動きを提案、立案し、大きな名声を得たジョージ・アルスターとジョゼフ・コープマン上院議員。
「だが、ここからが正念場だ。ザフト軍は鞍替えしたアフリカを許しはしないだろう。部隊を展開し、これに備える必要がある」
無論宇宙からも防衛網を強化するが、撃ち漏らしも存在する。ハルバートンのもう一つの懸念は、アフリカへのザフトの再度侵攻だ。
「無論だ。南米から部隊を派遣する。今我々に必要なのは、我々を支持する勢力だ」
宇宙と地球で、2大将軍が奮闘する。
プラントの間でも、オペレーション・スピットブレイクの失敗は大きな波紋を呼んだ。穏健派は、この激戦を気に地球圏での厭戦感情を利用し、テーブルに着く最後のチャンスと主張。
作戦失敗により、求心力が低下しているパトリック・ザラ議長はその提案を一蹴。パナマ基地を陥落させれば、月面基地への補給ルートを断つことが出来ると主張。地球への封じ込め作戦として、再度大規模な作戦を敢行するべきと提案。
奇跡の生還を遂げたラクス・クラインも、父シーゲルとともに戦争終結を願う文書を発表。クライン派閥、穏健派だけではなく、市民の間でも戦争終結を願う声が上がり始めていた。
「この度の戦闘で、どれだけの被害を被ったか、我々は今こそ、和平について考えなければならない」
シーゲルが力強く発言する。この作戦の失敗で、ザフトは地球圏における軍事行動が困難になったのだ。アラスカ本部が消滅し、ザフトも痛手を被った。ここがタイミングだと。
「連合側にも動きがある。これを逃せば、和平の道が完全に途絶えるぞ」
「我々が見捨てた、アフリカ共同体は南アフリカ機構との和平すら実現しようとしている。平和の花を絶やしてはならない」
カナーバらもクラインに同調し、戦争継続に反対する。昨今話題となっているアフリカの和平交渉。これが実現すれば、この戦争における大いなる一歩になることは間違いない。
しかし―――――――
「この国難時に、何を言っている!! 和平交渉? そんな甘い言葉に乗せられて、オルバーニが出してきた条件は何だったというのだ!」
「騙されるな! これは我々をだます罠だ! この戦争は勝利せねばならない! 勝利せねば、独立はないのだ!!」
議会は紛糾。オルバーニ出した条件はプラントにとって容認できるものではなかった。その不明様な実績がある限り、急進派は穏健派の提案を信じることはない。
「パトリック! 地球では和平の波が来ている! これを逃せば、我々は滅びるまで戦うことになるぞ!」
連合軍のように、内乱が起きるほどではないが、プラントもまた、揺れていた。
会議終了後、アスラン・ザラは父パトリックのもとを訪れていた。
「父上―――――」
労いの言葉を、温かい言葉こそ必要だと考えたアスランは、敢えてその言葉を口にした。
「――――なんだ、それは」
しかし、公私混同を嫌う彼は、その言葉に嫌な顔をする。その瞬間に慌てて啓礼し、
「すみません。議長閣下――――」
ただ悲しそうにアスランは謝罪するのだった。
「―――――クラインめ。こんな時に和平など、愚かな選択だとなぜわからん? 奴らは決して我々を認めない。ならば、戦って勝ち取るしか道はないというのに」
「―――――議長―――――」
何も言えない。アスランは胸に秘める戦争の悲惨さを吐露したかった。しかし、それは甘えだと何も言えない。
「クラインとの婚約も考えねばならんな。奴らは戦争継続にとって、大きな障害になり得る」
衝撃の一言だった。盟友だったクラインに対しての物言いは、常軌を逸している。
「お待ちください、議長! 確かに意見は対立していますが、プラントを思う心は変わりないはず! お考え下さい! クラインを切り捨てることだけは、おやめください!!」
「貴様、一介の軍人が政治に口を出すか! クラインの甘い言葉に乗せられ、貴様も腑抜けたのか?」
それこそ心外だった。アスランは父のほうこそおかしくなり始めているのではないかと不審に思えた。
「―――――っ、申し訳、ございません――――――」
しかし、父の言うことも一理ある。軍人が政治に口を出すのはよくないことだ。
「まあよい。貴様の婚約者はフィオナでいい。少なからず好き合っているわけだからな」
期せずして、フィオナとの婚約を言われたアスラン。それは嬉しいのだが、こんな形では望んでいなかった。
「―――――っ」
「どうした? フィオナはだめなのか?」
アスランの心を理解できないパトリック。アスランは知らず知らずのうちに溝が出来てしまっていることに絶望した。
――――誰が、父上を―――――
「―――――いえ。そういうわけでは、ありません」
―――――誰が父上をそそのかした?
確かに頭の固いところはあった。だが、ここまでではなかったはずだ。
――――彼は、彼が作り出した流れは、地球に芽吹いた
ザフト軍の仕業とみられていたアラスカ基地消滅は、期せずして真の映像が流出。命令書と思われる極秘文書も流出。
ユーラシアは失墜し、大西洋連邦は二つに分かれた。穏健派を指揮するのは、かつて敵対した第八艦隊の司令官。
あの赤い彗星が全力戦闘を行った低軌道戦線。
そして、呼応するかのようにプラントでもラクスを中心とした和平運動。彼一人だけでは実現できないことだ。しかし、その流れを生んだのは彼の決断だ。
議長の部屋から退出したアスランは、いよいよプラントのために決断しなくてはならないと考えていた。
―――――俺に出来ることは、いったいなんだ?
アスラン・ザラとして、自分に出来ることは何なのだろうかと。
部屋に帰ったアスランを待ち構えていたのは、フィオナだった。
「アスラン、お疲れ様です。お父様とはどうでしたか?」
心配そうに様子をうかがうフィオナ。浮かない顔をしている彼を見て何かを察したのだろう。
「―――――このまま、父上が政権を取り続けていること――――これでよかったのだろうか?」
頭を抱え、悩むアスラン。
「————アスラン?」
穏健派に流れかけているような言葉。それが彼女には理解できなかった。
「お父様を見捨てるんですか? そんな、家族なんですよ?」
非難めいた口調でアスランを諫めるフィオナ。
「————分かっているさ。だが、俺はそのチャンスにかけてみたい。穏健派の気持ちがよく理解できるんだ。これを逃せば、穏健派も流れる――――」
これを一過性のものにしてはならない。
「――――――でもそれでは―――――」
フィオナは悩んだ。ここでアスランに同調すれば、パトリックは完全に孤立してしまう。それはかつての自分と同じで、そんな自分を引き取ってくれた彼に対する裏切りだ。
「——————父上には悪いと思う。だが、俺はこのままラクスが、シーゲル様が荒波に呑まれることだけは、嫌なんだ」
アスランは世界を見据えている。それは出会ったときからそうだった。アスランは憎しみや悲しみを乗り越えて、世界を良くしたいと考えている。
しかし、それはあの不敵な笑みを浮かべる金髪の青年と同じだ。
「—————なら、私は一緒には行けない」
フィオナは、アスランのように大局的に世界を見ることを良しとしない。明らかな拒絶の言葉を彼に投げたのだ。
「—————フィオ、ナ!?」
眼を見開くアスラン。反対されるのはわかっていた。しかし、彼女の拒絶にショックを受けていた。
「私には、世界とか、未来の為とか、そんなものは分からない。けれど、私にとってまたつながった絆を、結んでくれた人を見捨てるなんて、できない」
フィオナは狭い世界しか見ない。それはパトリックであり、アスランであり、友人たちのことだ。
ゆえに、敵対するなら問答無用で殺すあの男を好意的にみる一面だけは、賛同できないのだ。アスランから尊敬されるあの男が気に食わない。
「アスランこそ考え直して。お父さんを裏切るなんてダメ。アスランとお父さんと、私がいるだけじゃ、ダメなの?」
もはや我慢の限界だった。アスランはこれまで自分を律し続けてきた。他人の為、理想の為、未来の為と、彼はその浅い考え方をフル活用し、自分なりに最適格を選んできたつもりだった。
フィオナがいたから、フィオナが傍にいたからこそ、できたのだ。
「—————俺は————俺はただ……ッ」
踏ん切りをつけねばならない。本当の、本当の彼の想いを伝えなければ、彼女はどこかへ消えてしまう。
そのまま彼女はあの男ともう一度敵対するだろう。そして今度は容赦などない。そんな未来を前に、アスランは彼を憎むことが出来ない。
なぜなら正しいと思ってしまうからだ。フィオナが殺される未来が予感したとき、相手が赤い彗星ならば、正しいと思えてしまうのだ。
彼はアスランにとっての憧れの一つだからだ。
「————俺は、フィオナがもう……悲しまなくていい世界が……ッ、欲しかったんだ……ッ」
だから伝えよう。アスランは、迷いを捨てた。
「フィオナが、世界が無事なら――――もう俺は何もいらないんだ――――っ」
今にも泣きそうな顔で、アスランは助けを求めていた。
「—————アス、ラン………」
フィオナは、涙を流しながら独白する彼の様子を見て、狼狽えた。そして、彼ほどの想いが自分にあったかどうかを自問した。
「もう嫌なんだよッ!! 誰かが傷つくのも、勝つためだとか、憎しみの声を聴くのは!! 必要な犠牲だとか!!」
発狂したかのように、アスランは叫ぶ。
「俺たちはいつまで戦えばいい!!?? あと何人殺せばいい!? どうすれば戦争は終わる!? いつまで!! いつまで!! 誰かの大切なものを奪い続けなければならないんだ!!」
それは悲鳴だった。フィオナが初めて見る、アスランの心の叫び。頭を抱え、悩み苦しむ彼の姿を見て、自分がそこまで彼を追い詰めてしまったのだと自覚する。
「行かないでくれ、フィオナ――――ッ。行けばお前は―――――」
最後の言葉を言うことが出来ない。しかしフィオナはその先の言葉を理解した。赤い彗星はこの波に間違いなく乗る。和平の邪魔をするものを、根こそぎ殺し尽くすだろう。
片手間で翻弄された自分では、彼には勝てない。容赦のない彼は、遊び心もなく、自分を殺すだろう。
そういえば、フィオナは思い出した。かつて自分は同じことをアスランに言ったような気がする。
戦場に行くなと彼に伝え、彼が拒絶する光景。その時、自分はどんな気持ちだったのか。
置き去りにされた絶望は、今も覚えている。彼が死ぬかもしれない、もう会えないのではと思うと、胸が苦しくなった。
―――――ほんと、酷い男です。
だからもう、諦めてしまった。選択するということは、何かを捨てるということ。それを今ほど痛感した時はなかった。
「——————もう離さない、って。誓って、くれますか?」
ズルい女だと、彼女は自己嫌悪に陥る。だが、アスランがここまで本音をさらけ出したのだ。自分もフェアなことをしなければならないと言い聞かせる。
ゆっくりと、彼の座っている場所に歩み寄るフィオナ。
「もう私を置いて、どこにも行かないって、約束、できますか?」
「—————フィオナ? 君は――――っ」
涙に濡れて尚、彼の顔は綺麗だった。その涙は自分のために流したもの。だから、その涙も随分と眩しく見えた。
「—————そう、でしたよね。アスランはずっと、私よりも長く、ずっと一緒、だったから――――」
自分よりも深い葛藤に苛まれたはずだ。父親とは違う選択をする決断が、どれだけ重いのか。
「私にできることは、一つだけだった。」
彼を支えると、誓ったはずだった。危うくその誓いを破るところだった。
「アスランが悩むのなら、私も苦しみます。アスランが喜べば、私も嬉しい」
これは奉仕に近いかもしれない。一目惚れした相手に惚れて、彼の内面を知って惚れ直した。
そんな彼に、尽くしたい、彼の在り方が愛おしくて仕方なかった。
傷つき、膝を屈しても、立ち上がる強さと、それを支える彼の弱さを、守りたい。
「アスランの願いが、私の幸せだった――――――」
ここまで言われて、アスランは再び涙し、彼女を抱きしめる。
「ごめん、な。俺は君に、また家族を失わせてしまう―――――」
血のつながった家族を失い、今度はアスランの手で家族の在り方を終わらせかねない。
「もう、いいんです。私は、アスランさえ無事なら、もう何もいらない―――――」
壊れかけた関係が、今度は堅牢なものにかわった。なんてことはない。彼らが本音を語り合い、分かり合ったからだ。もうこれで、死が二人を分かつまで、その絆は絶えることはないだろう。
だが、これを少し近くで見ていたものはどうだろう。
――――フィオナ、ここまでなんて。凄いわ。
――――これで、いいのです。吹っ切れたようで、わたくしも嬉しいですわ
ドアの前に待っていたリディアとラクスは、そんな出来立ての番いを見て、微笑んでいた。
そして、そんな世界情勢の中、オーブではアークエンジェルが再びこちらにやってくることで、受け入れ準備を開始していた。
何せ敵前逃亡の部隊だ。優秀な兵士が多く集まってはいるが、情報統制は必要になる。しかし、現在推し進めているモビルスーツ部隊の人員に、実戦経験豊富なエースと実戦経験済みの新兵、さらには元ザフト兵士までやってくるのだ。
オーブとしては笑いが止まらない状態だ。
「—————ほら、そんなにムスッとしない。あいつはあいつの役目を全うし、いつもみたいに帰ってくるだけだ」
カガリにあやされているのは、ヴィクトル・サハク。リオンのアラスカへの単騎出撃に反対していた少年だ。
「でも、酷いですよ。あんな戦場に単騎掛けなんて、おかしいですよぉ」
常識的に考えれば、両軍入り乱れての乱戦に突入するなどおかしいことだ。しかしできてしまうリオンがおかしいだけなのだ。
「それに、我が国家としてはずいぶんリスクに見合った手土産を用意しておる。さすがはリオンだ」
そして弟とは違い、ロンド・ミナ・サハクはリオンのリターンに、微笑んでいた。彼ならばこれぐらいできると信じているからだ。
「まあ、リオン君だしね」
タオルで汗を拭きながら、トレーニングルームから出てきたアサギが、リオンについてそのように評した。
「訓練は順調そうだな。やはり、実戦を知るものは判断がいい。この度中隊長に任命されたようだな」
ミナの言う通り、アサギは階級を二つ上げ、一尉としてモビルスーツ部隊の中隊長に就任する。
「そうですね。凄く距離を離されていますけど、私もこの国の盾となり、矛でありたいもの」
アサギは、リオンほどではないが少しずつ実力をつけ始めた自分がこの国の力になれることに喜びを感じていた。
「けれど、連合きってのエース、エリク・ブロードウェイ様かぁ。どんな人なんだろ」
しかし、いつの間にか屯する場所になったここをうろつくラス・ウィンスレットが彼女の禁句を言い放つ。無論彼女は知らない。
「くっ、確かにリオン君とコンビを組んだり、敵のエースを落としたりと、現状とんでもないエースだけど、私だってこの座は守り通すわよ!」
アサギはエリクに対して対抗心を燃やしているのだ。リオンとの息の合った戦闘映像を見て、彼女は彼に嫉妬しているのだ。
自分のほうが付き合い長いのに、と。
「でも、キラさんも凄いですよね。弾頭を複数、一度で射抜くなんてすごいです。飛翔物体をあそこまで認知するなんて、さすがです、キラさん」
そして、現在通称オーディンと呼ばれ始めているキラ・ヤマトは以前とは比べ物にならないほど情報処理速度が上がっている。あの莫大な情報量を処理する頭脳と、肉体を持つ彼は、瞬く間にオーブ最強の一角となっている。
「凄かったですよね。シミュレーションとはいえ、被弾なしで第一中隊を完封するなんて」
ラスも見ていた練習風景。アサギや他の娘たちも入れたオーブの精鋭たちと彼の模擬戦。
しかし結果は彼の圧勝。弾道を見切るのは、エースの証と言わんばかりに射撃兵装が役に立たず、近接戦闘で大分もったアサギ以外、瞬殺というおまけつき。
「うん。前は荒々しさもあったけど、今はもうとにかく速い。」
彼のモビルスーツ乗りとしての腕は、とんでもない伸び率を誇る。最初から最強だったリオンに、もしかすれば肉薄するほどの。
そして、その話題の彼は―――――――
トレーニングルームで体を鍛え、汗を流していた。強靭な能力とそれを制御する肉体。その二つが合わさり、かつての少年は、精悍な青年に変貌していた。
「——————アークエンジェル、か」
因縁深い戦艦との邂逅を前に、かつての白い悪魔は何を思う。
「辛気臭い顔をするなよ。見知った人たちだし、無事でよかったじゃん」
オッドアイの眼でそんなキラの呟きに反応するのは、アルベルト。キラの義眼は高精度過ぎるので休ませる必要があるが、アルの義眼は日常生活レベルの代物だ。常日頃から裸眼でも影響がないのだ。
しかし、灰色の色彩となった左目は、右目の碧眼と酷くアンバランスな色合いを生むことになり、不気味さを醸し出している。
「まあ、そうなんだけどね。アラスカであんなことがあったから」
キラはアラスカで戦争のシナリオをどう考えているのか知りたかった。どう戦争を終わらせるのかと。
しかし、その先にあったのは狂気のみ。まともな思考回路を持つ上層部がいないという現実。下手をすれば、自分もまきこまれていたかもしれないのだ。
————僕が思うほど、世界は簡単ではないんだね
オーブにいるという選択が、自分にとっての最善だと今更突き付けられた。背伸びをして、失敗した過去の自分に恥じる気持ちが残っていたのだ。
「ま、俺もキラと同じさ。連合どうにもなんねぇな」
「まったくだよ。僕らの決意と覚悟を返してほしいよね」
「そうだ、そうだ!!」
案外元気そうな二人だった。
アスランをめぐる恋の争奪戦決着?
初心を忘れていなかったアスランとフィオナさん大勝利。最初から決着がついていたのです。
なお、フラグは一つとは限らない・・・
提督がウキウキで暗躍。アフリカさんは流れに沿うことで戦後勝ち組決定。
朗報 アルベルト・ロペス氏 ボヤく元気があった模様。生存ルート確定
悲報 キラ・ヤマトさん このままでは同年代で唯一独身貴族ルートへ