機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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連続投稿です、44話を閲覧してから読んでください。

ほのぼの話が欠片もない今話。

ある意味プラントのターニングポイントです。




第45話 パナマ要塞攻防戦 前編

連合内で分裂が続く中、プラントは結局、穏健派が目立った動きをすることが叶わず。

 

シーゲル・クラインらの必死の和平交渉の直訴もむなしく、勝手な和平交渉は反逆罪という指令まで下され、穏健派は動くことすらできなかった。

 

さらに連合軍を刺激しかねない作戦、パナマ攻略作戦を議決。地球軍の保有するマスドライバーを一気に叩くつもりなのだ。

 

 

「くっ、何としてもパナマへのグングニール降下は阻止しろ!!」

 

第八艦隊がその動きをキャッチし、コンプトン基地より出撃。しかし、ザフト軍の迅速な対応に何とか低軌道宙域で間に合うのが精いっぱいであり、月基地からの出撃では地の利を得られずにいた。

 

指揮するのは、ジョセフ・コープマン少将。ハルバートンの腹心の一人である。今回の作戦では、GAT計画の成果の結晶ともいうべきモビルスーツ部隊を借り受け、ザフト軍との初の戦闘を行うことになる。

 

そうだなのだ。ついこの前、コープマンは昇進し、ついに艦隊を指揮する指揮官になったのだ。

 

「——————ついに、我が軍もモビルスーツ部隊を――――しかもその初陣を指揮するのは私か――――」

 

どうにも落ち着きがないコープマン少将。

 

アガメムノン級旗艦プロメテウスの艦長として、恥じぬ指揮を執りたいとは考えているが、リオン達のような活躍を、初陣部隊が出せるか不安なのだ。

 

「提督。この105ダガーは廉価版ではありません。ストライクダガーのような、ストライクの最大の利点を捨ててはいません。アグニによる一斉照射の後、エース部隊で敵軍を遊撃。止めはソード部隊で艦隊を各個撃破。大将閣下が考案した作戦がついに現実になるのです」

 

チャン・バークライト艦長。階級は、大佐。先遣隊以前から戦場を転戦しているモントゴメリの艦長として、今回コープマンの補佐に当たっていた。

 

「有無……」

 

 

「それにこの度は、連合内に所属する数多くのコーディネイターの志願兵を集めることが出来ました。特に、ジャン・キャリー少佐は必ずやご期待に沿う活躍を見せてくれるでしょう」

 

ジャン・キャリー。煌く巨星と謳われた連合きってのエース。エリク・ブロードウェイと双璧を誇るコーディネイターたちの希望の象徴。

 

 

 

だが、本当に間に合うのか。これだけの戦力を有しても、パナマへの降下作戦は防ぐことはできるのか。

 

しかし、ここで緊急暗号通信が入る。

 

「なんだと? アフリカ和平が実現? マスドライバー確保だと?」

 

この緊急通信を入手した第八艦隊は、ギリギリまでザフト軍を欺くために進路そのままに、地球の衛星軌道の外側で転進するのだった。

 

 

 

一方、ザフト軍も地球連合軍最強を誇る第八艦隊が動いたことに危機感を覚えていた。

 

何せ、完全にナチュラル専用のOSを搭載したモビルスーツ部隊を率い、総機体数は、単純計算で約17倍の差をつけられている。

 

この状況を重く見たザフト軍はセカンドシリーズの戦線投入を決断。

 

ZGMF-X10Aフリーダム、ZGMF-X09Aジャスティスのパイロットに選ばれたのは、フィオナ・マーベリック、アスラン・ザラだ。

 

連合軍の機体データをもとに、最新技術を結集したワンオフ機。

 

フリーダムには、ハイマットモードと、フルバーストモードと呼ばれる二つの可変システムが搭載されており、高機動・高火力を実現しており、現行モビルスーツをも圧倒する。

 

ジャスティスは、フリーダムに比べて火力はないが、支援ユニットファトゥム00が独立稼働し、本機をサポートする。しかしジャスティスの最大の特徴は、近接戦闘における高い運動性能だ。

 

この二機は、互いの弱点を補うように設計されている。つまり、これらの機体に登場するパイロットは、高いレベルでの意識共有が必須なのだ。

 

「—————緊張するか、フィオナ?」

赤いパイロットスーツを身に纏い、アスランはフィオナに語り掛ける。

 

「いえ。私は、貴方とともに生き残る。それ以外に興味はありません」

吹っ切れたかのように、フィオナはアスランに微笑む。殺し文句といえるほどのセリフにもアスランは動じない。

 

「————俺たちに出来る事、それを今は実践しよう。リディアとハーネンフースの部隊は先行している。俺たちの任務は、パナマへの降下作戦を阻止すべく動いている第八艦隊の撃退にある」

 

第八艦隊。二人にとっては惨敗の記憶がよみがえる相手。しかし、今回は状況が何もかも違う。

 

そうこうしているうちに、発進準備が整う。

 

「ハッチ開放。我らの自由と正義に、星の加護を」

急進派らしい、気運を高めるような言葉。それがアスランにはとても耳障りで、フィオナには複雑な心境にさせるものだった。

 

 

「アスラン・ザラ、ジャスティス、出るっ!!」

 

「フィオナ・マーベリック、フリーダム、行きますっ!」

 

しかし顔には出さず、切り札を任された二人は、再び漆黒の闇を駆け抜ける。本当に守りたいものを守る為に。

 

 

そしてオーブ。アークエンジェルとレゲートの乗組員はオーブへと寄港していた。寄る辺を失い、軍人としての誇りを失った彼らに、驚くべき情報が飛び込んできた。

 

 

「オーブ保有の衛星より入電? ザフト軍がパナマへの侵攻作戦と思われる動きあり?」

パル曹長は、アラスカに続き、パナマをも陥落させようと画策するザフト軍の本気に一瞬狼狽えた。

 

「ああ。これはザフトも本腰を入れ始めたな。連合が分裂したすきに乗じて、一気にマスドライバーを破壊する気だ」

チャンドラも曹長も、ザフト軍の本気を肌で感じていた。

 

「しかし、パナマには最新鋭のモビルスーツ部隊もある。簡単には――――」

アップトン中尉は、パナマにはストライクダガーが配備されていると一同に説明するが、

 

 

「ああ。それに、気味の悪い少年兵たちがとんでもない動きしていたぜ。ありゃあ、化け物だ。俺はシミュレーションで圧倒されちまった」

ホリソン少尉も、パナマには自分たちとは次元の違う怪物エースがいたと証言する。

 

「少年、兵?」

その少年兵というところに、ニコルは反応した。連合は、志願兵も特例がない限り自分たちよりも年齢を経てから入隊する。だというのに、連合らしからぬ少年兵。

 

「—————ああ。白く輝く銀色の髪、だったな。後は―――――!?」

なんでもなさそうに、何とか思い出そうとするホリソンだったが、ニコルが目を大きく見開き呆然としていたので言葉が続かなかった。

 

 

「嘘、そんな――――」

 

そんな特徴、間違えるはずがない。嘘だと思いたかった。しかし、彼に嘘をつく理由は存在しない。

 

 

「嬢ちゃん? どうしたんだ?」

エリクが、肩を震わせるニコルに尋ねる。尋常ではない雰囲気、何か良くないことが起きていることだけはわかる。

 

「なぜ、私の知り合いが―――――どうして?」

 

イザークは生きている。しかし、自分と同じように連合の中にいた。彼がそう簡単に連合に下るはずがない。なのに、

 

「ホリソンさんッ。その方々の様子は、どう、だったのですか?」

恐る恐る聞くニコルに対し、ホリソンはバツの悪そうな、言わなければよかったと後悔していた。

 

「——————目は虚ろで、正気を疑うような言動。正直、会った時は狂人の類だと思っていた―――――あれは――――」

 

 

「ああ。エクステンデットだろう。アラスカに向かう前に、上官が教えてくれた存在だ」

アップトン中尉がその名称の正体を口にする。聞きなれない言葉、そして悪い予感しかしない意味。無論、アップトンの表情は心苦しいものだった。

 

「—————でも、なんなんですか? それは―――――ニコルさんの知り合いが、なんでっ」

テネフ少尉は、疑問を口にした。そのエクステンデットになるだけで、彼らが大人しくなるのかと。

 

「あれは、薬物などを用いた人体実験で生まれた強化人間だ。あれに人格は必要ない。プログラムされた通りに、敵を撃破する生体CPUであればいい。処置を行われた人間は、もうまともに生きることは―――――すまない」

 

 

「——————ごめん、なさい。苦しいことを、言わせてしまって。私は、大丈夫です――――ッ。ごめんなさい―――ッ」

 

手で顔を覆い、その場を後にするニコル。

 

「お、おい! 待ってくれ!」

そしてその後をすぐに追うエリク。

 

残されたアラスカ組の面々は、重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

「—————そうだったのか。被検体は、どうやって選抜されるんだ?」

ホリソンがアップトンに尋ねる。

 

「身寄りのない孤児、からだろう。後は、異分子、特にコーディネイターも含まれるだろう」

 

そしてテネフ少尉に向き直ったアップトン中尉。

 

「ハーフコーディネイターということが早期に露見されていたら、危なかったな。奴らはもう正気じゃない。空の化け物を殺すためなら、悪魔にも魂を売る」

 

 

「—————私は、」

そこから先の言葉が続かないテネフ。こういう時、何といえばいいのか分からない。

 

そんな時だった。

 

「アマルフィが、走り去っていたが、いったい何があった?」

 

「パル、チャンドラ? パナマが攻撃目標らしいぞ。どうした?」

 

ナタルとノイマンが食堂にやってきたのだ。

 

どうやら、二人は走り去るニコルとエリクを見かけ、ここにやってきたらしい。

 

 

 

そしてオーブ本邸では、マリューはキラとアルベルトが再会していたが、今はそんな場合ではなかった。

 

「キラ君、それにアルベルト君も。生きていてくれてありがとう。だけど、この状況が過ぎ去ってからね、貴方たちの帰還祝いは」

 

今は、何について考える必要があるのか。それをマリューは第一に決めていた。

 

「はい。俺も、長らく冷静な目で世界を見ていたから。だからまあ、色々見えてきたものがある」

車いすに乗るアルベルトは、マリューの言葉を理解する。今は本当にそれどころではないということを。

 

「僕も、軽症だったのですぐに出れますよ。これのおかげで、ですけど」

ガンカメラを見せるキラ。もはや超人の類に到達した彼は、さらなる力を発揮するだろう。

 

 

三人は、揃ってウズミ・ナラ・アスハと面会し、今後の立ち位置について尋ねられていた。オーブ側としては彼ら経験豊富な軍人を取り込みたい狙いもあり、アークエンジェル側も受け皿になってくれるオーブを頼る利害の一致があった。

 

そして懸念すべきことは―――――

 

「第八艦隊が、ザフト宇宙軍と激突するかもしれない、ですか」

キラはハルバートンたちがどうなるのかが心配だった。有能で、生きていてほしいと思えるような温和な指揮官だった。

 

「ご存知の通り、穏健派はオーブの中立を保証している。ザフトも先のラクス・クライン返還で国交も大分ましになっておる」

 

 

「同時に、急進派も部隊を派遣し、低軌道宙域での戦闘が予想される。こちらはダイダロス基地からの連合主力艦隊だ」

 

つまり、穏健派の主力と、急進派の主力が鉢合わせになる可能性もある。

 

そして、これまで黙っていたカガリが、三人にあることを言い放つ。

 

「——————現在、オーブ軍としては戦艦クサナギをマスドライバーで宇宙に上げ、穏健派のサポートを考えていた」

 

 

「—————しかし、アークエンジェルがオーブ入港して間もなく、アフリカ和平が実現したのだ。これにより、穏健派はマスドライバーを確保した。第八艦隊の大義名分は失われ、地球衛星軌道の外側で転進したらしい」

 

 

「—————よって、作戦を変更。オーブ軍は中立である前に、世界の安定と平和のため、アフリカ防衛戦に参加する、のだが。表立って動くことはできない」

 

カガリは、オーブの中立であるというカードをまだ切るタイミングではないと説明する。

 

「ですが、オーブは穏健派と?」

マリューは、矛盾を孕むカガリの言葉に戸惑いを隠せない。

 

「—————なるほどね。アークエンジェルは良いカモフラージュになるわけだ」

 

アルベルトの的確な指摘に、カガリは表情を変えず、首を縦に振る。

 

「そうだ。オーブ軍であることを悟られぬよう、貴官らには表向き連合軍として動いてもらう。これは、ハルバートン大将との秘密会談で了承済みだ」

 

「提督の!?」

 

また肩を並べて戦うことになる。それがマリューには驚きだった。

 

「————人員もなるべく便宜を図ろう。キラ・ヤマト君は国防の要、動かすことはできないが、リオン・フラガ特尉をそちらに合流させよう」

 

「リオン君を?」

 

キラ君が国防の要ということを不思議に思うものの、リオンが来ることに心強さを覚えるマリュー。

 

「最新鋭の機体、ストライクグリントも彼とともに搬入させる。後は、修繕したストライク一号機、二号機もそちらに返還しよう」

 

つまり、アークエンジェルのベストメンバーをそのまま返還することに他ならない。

 

「カモフラージュの為、アストレイを出すことはできないが、キュアンとウィンスレットのコネで組み上げたザフト軍のモビルスーツ、しかもナチュラル仕様の機体も用意する」

 

何が何でも、アストレイは出さない決意を見せるカガリ。オーブがかかわっていること自体アウトなのだ。綱渡りだが、こういう時こそコネを使う時だ。

 

幸いなことに、ラス・ウィンスレットはリオンにゾッコンだ。父親も彼女の願いは叶えるし、もちろん報酬もある。断る理由は存在しない。

 

 

大気圏専用のモビルスーツのディンの飛行ユニットを、そのままジン・ハイマニューバに取り付けたのだ。無論、元来のウイングはオミットされ、大気圏専用機として新生したジン・オルタネイト。

 

ディンを上回る防御能力と、攻撃力を誇るジン・オルタネイトは、バックパックを変えることで元来の宇宙戦闘にも対応できる。なお、アストレイのバックパックも装着可能だ。

 

そして見ての通り、本機はストライクの受け売りだ。ゆえに、オルタネイトの名を冠することに。

 

 

そして、オーブ近海で見つかったザフト軍の最新鋭のモビルスーツ、ゲイツの残骸を回収。

 

バックパックと、脚部バーニアを増設し、再生。デュエル二号機同様に、ホバー機動が可能に。

 

名付けられた機体名称は、ブレイブ・ゲイツ。傷つき倒れた機体ではあるが、その限界を超えて戦う本機に祈りを込めて、名付けられた勇者の意味を付け加えた。スペシャルな施しを受けたゲイツとして、アークエンジェルに搬入される。

 

 

つまり、アークエンジェルに収容される機体は―――――

 

・ストライクグリント 

・デュエル二号機     

・ストライク二号機    

・ストライク一号機 

といったアークエンジェルの主力だった機体とリオンの機体。

 

そして改修されたザフト軍機を魔改造したモビルスーツ。これらの機体は、アストレイよりも高性能だ。

 

・ジン・オルタネイト×3

・ブレイブ・ゲイツ×3

 

総勢10機のモビルスーツによる、遊撃戦。

 

パイロットも、リオンを筆頭に、エリクという二大エース揃い踏み。ニコルも何を決意したのか、志願することに。

 

残り7名についてだが、

 

「なぜ、私に出撃許可が下りないのですか?」

 

「—————やっぱ、俺らにはまだ早い、ってことか」

ホリソン少尉と、テネフ少尉はオーブ守備軍に編入される。アサギ率いる第二中隊への異動により、一時的に前線を離れることに。

 

「まあ、そんな気落ちすんなよ。俺もひよっこだし、仲よくしようぜ」

そんな気落ちする二人の前に現れたのは、第二中隊の副隊長を務めるトール・ケーニヒ二尉。メキメキと腕を上げ、モビルアーマー慣れしていないことが功を奏し、準エース扱いとリオンに認定されるほどだ。つまり、雑魚狩りなら何でもないというレベル。

 

 

ここで大型新人の二人は、アークエンジェルから離脱。修練の期間に入るのだ。

 

 

「心配するな。二人の分まで俺が働いておくさ」

そして5人目の乗り手はパリス・アップトン中尉。ジン・オルタネイトとの相性がよく、すぐに採用となったのだ。

 

 

残り6名。リオンがなかなか人選を制限しているためか、相応しいパイロットを選ぶのに手間取っている。

 

「——————ふむ、中々難しいな。パイロットの人選は」

リオンは、パイロットの資料を読み漁りながら、唸っていた。

 

リオンは、意識的に新兵たちを人選から外している。いかに優れた才能を持っていようと、彼は精神的に未熟なものを連れて行く気はない。

 

それはトールであり、三人娘であり、アラスカ合流組のカップルである。彼らにはまだ早すぎる。

 

なお、アラスカ組のほうが年上だということは突っ込まないことにする。

 

そして目下の悩みは――――――

 

「どうしてこう、下級氏族は手柄を欲しがるのか」

 

下級氏族からの志願者もいるということだ。下級とはいえ氏族だ。こんな任務にどうして付き合うのか。

 

ワイド・ラビ・ナダカ。年齢22歳。ナダカ家の長男坊。何となくだが、カガリを狙っているような気がする。リオンの目線だが、あまり彼女にいい影響を与えるとも思えない。

 

ホースキン・ジラ・サカト。年齢21歳。サカト家の次男坊。正直まともそうなので、余ほどスタンドプレイはしなさそうだ。

 

しかし、妙に自分のことを尊敬している、という情報を知っているため、空回りしそうだと心配なのだ。

 

 

ガルド・デル・ホクハ。ホクハ家の当主。32歳。自分にもしものことがあった場合、弟に当主の座を託す約束事までして、志願したという。オーブの中でも軍人としてのキャリアは長く、正直アタリだとリオンは感じている。

 

ヴィクトル・サハクの名がどこかにあった気がするが、恐らく焼却処分したのだろうと納得する。彼を連れて行くなど有り得ない。それではラスに申し訳が立たない。

 

「—————仕方がない。この3人は候補にしよう。残り3名。さて、どうするか」

 

そして見つけた。

 

タキト・ハヤ・オシダリ一尉である。新人の中でも、とびぬけた才覚を発揮。トールと二分するほどの成績をたたき出している。

 

カイ・ヤマダ二尉、リョウタ・ワダ三尉、サブロー・スズキ二尉、マサオ・タナカ三尉も、なぜか知らないがオシダリについてきた。

 

「———————困った」

 

実は、コトー・サハクより人選は慎重にとのお達しが来ている。なるべく将来有望なパイロットは避けるようにとのこと。

 

 

人選が決まった。氏族を招集することに決めたリオンだが、やはり不安なので面談を行うことに。

 

 

「君が、ナダカ家の人間か。今回の任務への志願、感謝する」

 

「————はっ」

 

軟派そうに見えたワイドだが、猫を被っているのか酷くまじめな受け答えだ。

 

「————君のことは調べがついている。無理をする必要はない。砕けた言葉でも構わないのだが」

 

「————? では、お言葉に甘えて。俺も楽しみだよ、今回の任務と、モビルスーツでの実践に参加できるっつうんだからよ。人選は間違っちゃいねぇな。目の付け所がいい。俺を選んで後悔なんてさせねぇからよ」

 

とても自信家の様だ。リオンは若干目を細めたが、いいように利用できると考え、ある意味扱いやすいと判断した。

 

「————今回の任務もいろいろしがらみがあるからな。人材育成をしなくてはならないし、かといって力あるものを遊ばせる余裕もない」

 

「了解。俺らが生き残れば万事解決だろ?」

 

 

「ふん、その自信、生きて証明してみせるがいい」

 

 

野心を隠そうともしない姿勢はある意味信用できる。かなり上昇志向があるようだ。

 

 

続いて、ホースキン・ジラ・サカトについて。

 

「初めまして、サカト二尉です。今回の特務によんで頂いたこと、光栄の限りでございます」

 

 

「召集に応じてくれて、感謝する。さっそくだが目的地とその主目的はわかるな?」

 

「はっ、アフリカのマスドライバーの防衛、ですね」

要点だけはしっかりと心得ているホースキン。やはり真面目な兵士は貴重だ。

 

「穏健派とわが国にはつながりがあるが、それを表立って行動に移すと都合が悪い。穏健派にはビクトリアのマスドライバーを使ってもらう必要がある」

 

「—————停戦に向けた動きは? プラントにもつい先日、ラクス・クライン様がお戻りになられたとか。プラントの穏健派にも動きがあっていいのでは?」

時事ネタに目敏いらしく、ホースキンはプラント側の動きについて尋ねてきた。

 

「残念だが、パトリック・ザラの影響力がまだ強い。彼の支持率を低下させるには、連合軍が反撃する必要がある」

 

「そうですか……」

その報告を聞き、ほんの少し残念そうにしているホースキン。だが、

 

「しかし、我々のやるべきことは変わりません。まずはアフリカですね。先のことは首脳陣に任せ、我々にできることをするだけです」

 

 

「心強い言葉、信じていいのだな?」

 

「私に出来る範囲であれば、保証いたします」

あくまで冷静な物言い。リオンは彼のありようを少し理解した。

 

 

そして最後、ガルド・デル・ホクハとの面談に向かうリオン。

 

「お初にお目にかかる。ガルド・デル・ホクハ一尉です。微力ながら、今回の任務の力になれるよう、尽くさせていただきます」

 

「助かる。他のパイロットが色物ばかりだからな。貴方のフォローが、今後重要になりそうだ」

 

「私のフォローではどうすることもできませんよ。しかし、貴方に頼られるというのは、存外悪い気分ではないですね」

 

朗らかに笑うガルド。リオンは問題なさそうだと最後に安心するのだった。

 

「しかしリオン様。なにとぞお伝えするべきことがございますがよろしいでしょうか」

 

「? どうした、ガルド殿」

 

 

 

一方、アラスカで停滞被害を受けたザフト軍は、パナマ近海に展開していた。

 

「—————アスランやフィオナの部隊は、さすがに間に合わない、よね」

その突入部隊を率いることになったニーナは、穏健派とのにらみ合いで進軍が遅れている二人のことを気にしていた。

 

―――――ダメよ。こんな時二人を当てにするなんて。

 

自分は一部隊を任されているのだ。そんな弱気ではいけない。

 

—————エルトランド。今回の任務は少し歯ごたえがありそうだ。

 

作戦開始直前、クルーゼの言葉を思い出すニーナ。

 

 

―――――連合軍は量産型モビルスーツで迎え撃つらしい

 

彼の忠告ともいえるアドバイス。今回の戦闘は一筋縄ではいかない。暗にそう言っているのだ。

 

 

「連合軍に動きあり!! 敵主力艦隊が移動を開始!! まっすぐこちらに進路を取っています!!」

 

どうやら、にらみ合いに終止符を打つべく先手を取ったのは連合軍。余程モビルスーツに自信があるらしい。

 

「味方空母を守るのよ! 準備水中型モビルスーツを出撃させて。敵母艦を撃破すれば、制海権は取れるわ」

 

 

グーン部隊を出撃させるよう指示を飛ばすニーナ。アラスカで多くの軍人を失ったザフトは、年端もいかない彼女をも重責に捧げなければならない。

 

―――――今が苦しい時、だったら私が無理を押し通す

 

 

グングニールによるEMP攻撃で、全て終わり。パナマを落とせば月基地は干上がる。

 

 

ニーナはそんな未来を予感しながら、敵母艦を海と空から掃討していく。

 

 

しかしパナマ軍港の海域は、すでに砲弾が飛び交う戦場と化している。圧倒的な物量を絶えず送り込んでくる地球連合軍。

 

「ぐっ!?」

 

 

 

「弾幕がッ!? うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

回避する空間すら許さぬ弾幕空間に取り込まれた僚機が、爆散していく。上空は既に爆炎によって薄汚れ、有視界戦闘には難しいものとなっていた。

 

 

―――――数で圧倒される!? これが、地球連合軍の一番のストロングポイント!

 

ニーナは、このまま砲撃戦で挑んでも消耗がひどくなるだけと考えた。

 

「戦艦の攻略の仕方はわかっている。私が突破口を開く!!」

 

 

今回用意された先行量産型ゲイツに乗るニーナは、敵母艦から放たれた弾幕をすり抜けるように急降下し、砲撃の死角へと回り込む。

 

 

確かに、圧倒的な物量にものを言わせる連合は脅威だ。しかし、旧態依然より変わらぬ戦艦の死角を突けば、この弾幕は鎮まるはずだ。

 

 

スラスターを全開に、機体とともに急降下したニーナは、その過度なGに表情を強張らせる。しかし――――――

 

 

―――――赤い彗星は、こんな動きだってできていた!!

 

彼は自分が苦痛に耐えながら実行する事も、涼しい顔でやり遂げるだろう。自分は世界最強をこの目で見ている。

 

なら、そんな存在に近づくためにも、この程度の軌道で根を上げる等許されない。

 

「うぉぉぉぉ!!!!!!!」

雄たけびを上げながら、海面スレスレの位置でトップスピードに入るニーナ。水しぶきを上げながら、まるでサーフィンをしているかのように戦艦の死角を一気に突き破っていく。

 

「ニーナちゃんに続くぞ! 急降下だ!!」

 

そして、先行して敵砲台を破壊するニーナに続けと言わんばかりに、ディンの部隊がそれに続く。

 

「突入部隊を支援しろ。奴らの眼を、少しでもこちらに惹きつけるのだ」

ボズゴロフ級にて指示を出すクルーゼは、突出するニーナがうるさい砲撃を止めようとしているのを瞬時に理解し、こちらの火力支援で敵艦隊の火力を足止めるする必要があると悟っている。

 

「——————本当に腕を上げたようだな。アスランはいい部下を持っていたな」

 

「そのようですな。さすがは名高きクルーゼ隊の―――――「今は、ザラ隊の戦士だ」失礼しました」

 

ニーナの奮戦により、物量で押されていたザフト軍の反撃が始まる。

 

 

「正面より接近! モビルスーツ多数!!」

 

「弾幕を張れ、面制圧で奴らを通すな!!」

 

連合艦隊も敵軍の狙いを見通している。如何に連携して穴をカバーするか、そんなことを考えていると―――――――

 

「ソナーに感あり! 魚雷音探知!」

 

「ええい、取り舵!! 回避しろ!!」

 

しかし、完全に回避しきれず、艦艇の底を一部破壊される。

 

「直撃しました!! 右舷ブロックに被弾!!」

 

「ダメージコントロール! 右舷隔壁閉鎖! これ以上の浸水を防ぐのだ!!」

 

しかし、水中より奇襲を受けた連合軍はあっさりと追い込まれてしまう。何しろ空と海からの同時強襲だ。

 

「艦長ッ!!」

 

部下の一人が叫んだ時には、目の前に一つ目の巨人がそびえたっていたのだ。

 

 

その数秒後、連合母艦は海の藻屑と消え、統制を失った連合軍は軍港へと敗走することになる。

 

 

「グーン部隊と艦隊の飽和攻撃を行え。まずは軍港を制圧するぞ」

 

クルーゼも、ボズゴロフ級の母艦から指示を出す。腹に何かを隠していても、彼は軍人だ。その命令に忠実に従う戦士なのだ。

 

 

こうして、ニーナとクルーゼの活躍により、パナマ軍港を制圧することに成功したザフト軍。

 

後は、降下地点を確保すればいいだけなのだが―――――

 

 

「パナマ基地より大型の熱源を確認! これは――――――」

 

その時だ。パナマ指令基地から大型の何かが飛び立ったという。しかもその大きさは尋常ではない。

 

「艦船クラスだと!? 一体どういうことだ!?」

 

副艦長もパナマの虎の子とも考えられる艦船の登場に表情が強張る。そしてそれは、クルーゼも知り得ない情報だった。

 

 

―――――パナマに大型艦船? 足つきがいるとは思えないが―――――

 

あれはアラスカで敵前逃亡し、どこかに消えた船だ。もはや構う必要もない存在。しかし、空を飛ぶ艦船といえば、足つきぐらいしか思い浮かばない。

 

 

だが、その時クルーゼの脳に電流が走る。連合の物量を考えれば、足つきタイプの艦船を複数製造しても不思議ではない。

 

あれは、アークエンジェルのデータを取り込んだ―――――――

 

 

「強烈な熱源を感知!! 陽電子砲の波長と一致!!」

 

 

「「「!!!!」」」

陽電子砲。現存する艦船の中では恐らく最強の一撃ともいえる陽電子砲の発射体制を感知したザフト軍。不敵な笑みを浮かべていたクルーゼも、さすがに表情が若干歪む。

 

「回避運動を取れ!! 動けッ!!」

 

「何処に隠れたらいいんだ!!」

 

「早く回避運動だ!! 薙ぎ払われるぞ」

 

各艦船は水中に潜行、もしくは潜行が間に合わないと考えた艦船は回避運動を取るが、前方より見える赤白い閃光が迫っているのが見えた。

 

焦りを感じさせる命令が錯綜している。ザフト軍も陽電子砲の威力は宇宙でよく知っている。しかも、艦船クラスであれを備えるなど常識外にもほどがある。

 

 

―――――アズラエルめ。窮鼠猫を噛むとはこのことか

 

その刹那。潜行したクルーゼと一部の艦船を除いたザフト艦隊はその一撃に照らされたのだ。

 

「クルーゼ隊長!? 今の光は!?」

 

通信にノイズが走り、一時的電波が不安定になったことに気づいたニーナは、慌てて彼に通信を送る。が、被害状況が分からない。

 

「あれは、陽電子砲の光!? 足つきはここにいないはずよ!?」

 

しかし、何がザフト艦隊を攻撃したかはわかっていた。あの驚異的な威力を誇る特装砲ならば、これだけの被害を発生させるのは、不思議ではない。

 

「—————足つき!? いや、色が違うっ!?」

 

「足つきと同型艦!? ミサイルきます!!」

 

「散開して回避!! 各個多角的にあの船を――――――ッ」

 

その時だった。パナマ軍港から大型のビーム攻撃が僚機を薙ぎ払ったのだ。しかも連射という質の悪いものであり、その攻撃はニーナたちを混乱に陥れる。

 

「くっ、これだけの距離で―――――ッ 今度は違う方角から!?」

 

二方向から大火力の攻撃を浴びるエルトランド隊。すでに、別動隊がパナマ基地へと進軍しているが、状況を確認する余裕はない。

 

「敵影は見えないの!? 誰か視認できるものは?」

 

しかし、修羅場をくぐってきたニーナは違う。何とか敵影を掴む必要があると味方に指示を飛ばす。このままでは嬲り殺しだ。

 

だが、よりによってニーナ自身が、その機体を見てしまうことになったのは、何という皮肉だったのだろうか。

 

 

「————————え?」

 

 

そのメインカメラが映し出したのは、自分がよく知るはずの機体だった。低軌道戦線から行方が分からず、オーブ沖で消息を絶った機体。

 

 

バスターと、バスターを守るように立ち塞がるデュエルの姿だった。

 

「———————イザーク、さん? ディアッカ、さん?」

震えた声で、つぶやかないわけにはいかなかった。あれは、紛れもなく彼らの機体だった。

 

装備が所々違えど、あれは彼らの機体なのだ。

 

 

「——————ザフト軍機、多数確認。排除を開始する。周囲の敵機の排除を要求する」

 

「了解。ブルデュエルは、ヴェルデバスターの直掩につく。行動開始」

 

彼女がよく知るはずのイザークからは、無機質な声が響くのみ。その瞳に光はなく、感情の全てを喪失した、文字通り戦うためだけに必要な存在。

 

エクステンデットの成れの果てと化したかつての仲間を感じてしまうニーナ。彼女たちは、ここから味方殺しという難業を突きつけられることになる。

 

そして、連合の狂気は、留まることを知らない。

 

 

「可能な限り、奴らを生きたまま鹵獲しろ。検体としての成功事例は完全に証明されている」

 

「空の化け物にはふさわしい末路だ。精々共食いを楽しむがいい」

 

 

もはや手段を択ばない狂気は、プラントに何を齎すのか。

 

 

 




難易度インフェルノと化したパナマ基地。


特機6機と圧倒的物量を、限られた部隊で対応しなければならないザフト軍。

第八艦隊が無駄に騒いで合流が遅れてしまったフリーダムとジャスティス。
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