機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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これで完結ですが、あと少し。


最後に一話残っています。連続投稿は48話からとなっております。




最終話 この素晴らしい世界に祝福を

単独行動でIOBの推進力をフルに活用し、目的地へと急ぐリオン。

 

すでに大気圏を突破し、衛星軌道すら置き去りにする速度で急いでいるのだ。艦船クラスすら超越する超高速加速空間にいる彼には、どれだけのGがかかっているのか。

 

それすら耐えてしまう強靭な肉体を持つ、それだけではない。

 

「——————なんだ。お節介にも程があるだろうに」

笑うリオン。ストライクグリントは現在、緑色の光に覆われており、ほぼすべての物理法則の枠外にいた。

 

—————あんまりにも無茶をするのでな。たまらず手を出してしまった。

 

背後霊の如く彼をサポートするのは亡霊。名乗ることすら恥ずかしいと感じていた彼だが、最後の最後で意地を見せ、死後に得た力で彼を支えているのだ。

 

 

ゆえに、このストライクグリントの戦闘データは使い物にはならない。正真正銘人類の限界をはるかに突破した性能の中で、彼らは動いているのだ。

 

 

IOBを破棄し、戦闘態勢に入るリオン。もうすでにジェネシスがここにあるということは、その元凶が近くにいるはずだ。

 

 

「ノア、ジェネシスは確か、あの円錐状のミラーブロックを破壊出来れば、射線は固定されないはずだったな?」

 

リオンの手持ちの装備では、ジェネシスを破壊することは困難だ。方法はミラーブロックを破壊させるか、内部から直接攻撃をするしか方法がない。

 

『ええ。フェイズシフトの影響により、本体は強化されたストライクグリントであっても、破壊は困難でしょう。そもそも発射宙域に先に辿り着けるかも不明です。急いでください』

 

 

そして程なくして巨大な建造物を視認するリオン達。呆れるほど巨大な発射装置は迷わず地球を狙っていたのだ。

 

 

「あれがジェネシス。あれほどの建造物を戦争中に作るか—————」

 

恐れ入るプラントの意地と技術力。もし最初から本気だった場合、戦争に勝てていたのではと思わせるほどだ。

 

『フェイズシフトを確認。外壁の破壊はほぼ不可能。巨大ミラーを狙うしかありません』

 

そして厄介なのは、フェイズシフト装甲に覆われた常識を覆す防御能力だ。あれは陽電子砲すら理論上完全防御できる性能を誇っている。生半可な攻撃では耐えられそうにない。

 

 

その時だった。漆黒の闇に映える灰色の何かが蠢くのを感じたリオン。レーダーよりも先に認識したリオンの行動は早かった。

 

————周囲に警戒だ、誘導兵器が来る

 

 

————分かっているさ、ご先祖様ッ!

 

 

ほぼ直感で、攻撃される瞬間に回避運動を取るリオン。死角からの攻撃と、退避場所を限定する牽制。全周囲から襲い掛かる緑色の死の光が襲い掛かる。

 

 

それを小刻みなブーストで器用に避けていくストライクグリント。初見では認識することすら困難な誘導兵器を難なく回避して見せた。

 

しかし、砲門数は増える一方だ。

 

「—————ッ 複数の角度から!! っ!?」

 

慌てて横っ面を盾で防いだリオン。完全回避すら難しいと思えるほどの出鱈目な攻撃回数。

 

 

リオンの脳裏に警戒の色が宿る。

 

 

「ふざけた技量だな、赤い彗星。その攻撃すら防ぎきるのか」

 

 

聞こえた先にいるのは見たこともないガンダム。角のようなものを背中に装備し、灰色を基調としたボディの機体。

 

 

誘導兵器ドラグーンを装備するザフトの最新鋭の機体、ZGMF-X13A プロヴィデンス。

 

多対一を極める際に、究極の機体を製作する目的で作り上げられた、ザフトの史上最高傑作。

 

当然のごとく装備された核分裂エンジンと、Nジャマーキャンセラーにより、無限に等しいエネルギーを有しており、11基もの大小含めた誘導兵器を内蔵。

 

その砲門数は、驚異の43門。それらすべてを同時に運用できる空間認識能力が必要だが、パイロットはいろいろな意味でそれらを完全に有している。

 

しかし、その搭乗者と同等、それ以上の能力者にとって、それらは見え透いた弾頭と化す。

 

 

「貴様に構う余裕はない。そこをどいてもらう」

 

リオンとしては、この小物を倒すことよりも、ジェネシス発射を阻止する目的が重要だった。ゆえに、隙を見せるかもしれないが、何とかジェネシス内部へと侵入する手段を考えていた。

 

 

「つれないものだ。世界の崩壊を特等席で見る余裕はないのかね?」

 

 

そう言いつつも、即死させる気満々の包囲攻撃でストライクグリントを猛追するクルーゼ。クルーゼにとって計算外な彼をここで殺す。

 

 

彼という希望を壊したうえで、世界を絶望させ、世界を絶望の中で滅亡させる。それがクルーゼの復讐だった。

 

 

「言い続けるがいい。私は、お前の望みを破壊する」

 

たまらずライフルで反撃開始のリオン。

 

————落ち着け、私が半分を受け持つ。貴様は照準を合わせろ!

 

 

「そこっ!!」

 

脚部バーニアを片方吹かせ、斜め方向に逃げながら背部スラスターで方向転換。その振り向き様に死角にいた誘導兵器の一部を視認したリオン。

 

 

一瞬あれば、彼らには十分だった。

 

 

「なっ!?」

 

鮮やかな早打ちで、大型誘導兵器を難なく破壊するリオン。クルーゼは眼前で繰り広げられるリオンの世界に愛されたかのような力量に歯噛みする。

 

 

なぜ、彼は世界に祝福されている?

 

 

リオン・フラガという名前をようやく知り得たクルーゼ。そしてその彼は、ザフト最強をかりにも与えられた自分をどうして圧倒できるのだと憤る。

 

血の滲むような努力すら、否定してしまうリオンの力量。リオンは最初から高みに存在し、底辺を這いつくばる凡人とは完全に一線を画している。

 

 

「これで、3基目!!」

 

世界を愛し、世界に愛された勇者が、最後の最後で自分の壁となっている。

 

 

まるで導かれるかのように、攻撃を潜り抜け、背面撃ちで斜め後ろ方向に回り込もうとした誘導兵器の動きを予測し、

 

 

赤い彗星の代名詞、まるで目標が吸い込まれるように攻撃に当たりに行くという奇妙な現象を引き起こした。

 

 

「貴様のその才能!!! いったいどれだけの屍を積み上げてきたぁ!!!」

 

 

ゆえにそのはずだ。屍を作り続け、最後に生み出された傑作は、その事実を知っているのかと、クルーゼは心理面で彼を追い込もうとした。

 

「熟知しているからこそ、俺の命を使う。当たり前のことを尋ねるな」

 

冷ややかな瞳と言葉で、それを返すリオン。個人の憎しみを前にして、狼狽える理由が存在しない。

 

たかが人生が短いというだけで、駄々をこねる俗物に、負ける要素が存在しない。

 

「知れば、誰もが君のようにありたいと願うだろう!! 君も、そして彼女も!! 人は皆、強者になり得ない!!」

 

強すぎる。強すぎて、クルーゼの常識が通らない存在。弱者のように、愚者のように迷い苦しむものではない。

 

彼には筋道があり、彼には信条がある。その筋は歪まない。歪んでも必ず辿り着く。

 

 

「だからなんだ? 強い弱いはあくまで他者の評価だ。甘えんな、阿呆が」

 

だから、リオンも理解できない。底辺から這い上がってきたクルーゼを理解できない。そして、彼が抱いた憎しみと絶望を理解できない。

 

 

「貴様は、このまま大円満で終わらせる気か!? この歪んだ世界が、すぐに醜悪な姿に成り果てると、わかっていながら!!!」

 

人は喉元過ぎれば熱さを忘れる。戦争の痛みを理解しない世代に移った瞬間、過ちは繰り返される。

 

正しさを追求する限り、正しさは対立し、人を歪ませる。人類の善意が悪意に成り代わり、人は自ら生み出した闇に呑まれて滅ぶ。

 

それは、人類が生み出された瞬間から抱えている因子だ。クルーゼは世界を罰せられる立場にあると自認し、その成り手になろうとしていた。

 

 

「はっ! お前に世界を滅ぼす権利が、あるというのか? 自惚れは大概にしろ」

鼻で笑いながら、ついにプロヴィデンスの胴体を捉える一撃を放ったリオン。わずかにその弾頭は致命傷を外したが、大型ビームライフルに直撃し、その直撃により片側のスラスターに不調をきたす結果となった。

 

「ぬぅぅ!! 高い場所から見下ろすか、この私を————ッ!!」

 

 

尚も食い下がるクルーゼに引導を渡すべく、リオンはサーベルを抜く。そして背後からは機体ともども追尾してくる誘導兵器。

 

 

「お前、その兵装の経験浅いだろ?」

 

 

————その通りだ。まるで赤子。ハマーンに比べれば、温すぎる

一言余計なご先祖様。

 

————今なら、彼女に張り手一発で許してもらえるんじゃないですか?

 

そんな軽口に対し、戦闘中なのに余裕なリオン。

 

————止してくれ。今更どう会えばいいのだ

 

苦い顔をするご先祖様。しかし事実ではある。彼女の血の滲むような努力に比べれば、彼はまだまだ誘導兵器の何たるかが分かっていない。

 

 

彼は確かに手足のように誘導兵器を扱う。しかし、彼はいやらしい場所に置くだけで、理論的な、超常的な直感があると言われれば疑問符だ。

 

 

いずれ彼は至ることも出来ただろう。しかし、数多の戦闘経験と、ご先祖様の無駄に多い敗北の記録さえあれば、対応は可能である。

 

 

「だから置き場所が分かる。発砲のタイミングさえわかれば、後は合わせるだけだ」

 

 

ファンネルのような基地外染みた動きはしないだけ、温い。

 

後方より追撃した誘導兵器群が背面撃ちの早打ちという、もはや神業に等しい絶技で葬り去られていく。しかも、

 

 

「バレルロールしながら回避して、高速物体を視認、予測、演算————貴様ァァァ!!!」

 

 

嫉妬でどうにかなりそうだ。クルーゼは血が沸騰するのを我慢しつつ、誘導兵器を破壊しつくしたリオンの隙をついて近接攻撃を仕掛ける。

 

 

 

攻防一体型となった盾とサーベルが一体化した近接兵器で、リオンの最後の詰めの甘さを狙う。

 

————馬鹿者、最後に来たぞ

 

————予測範囲内

 

 

リーチの長さはプロヴィデンスに分がある。仮に反応してもストライクグリントのサーベルは届かない。

 

 

しかし、ストライクグリントの足ならばどうだ。

 

リオンはとっさに横薙ぎで襲い掛かるクルーゼの一撃を足場にしたのだ。一歩間違えれば、機体を両断されかねないリスキーな動きだが、彼には許容範囲内。

 

「な、ぁぁぁ!?」

 

足場にされ、攻撃を完全に防がれたクルーゼ。その眼前には———————

 

 

「—————これで詰みだ、反逆者」

 

ストライクグリントの銃口が寸分たがわずプロヴィデンスのコックピットに突きつけられていた。

 

「フ、フハハハハ……」

 

しかし、クルーゼは突然余裕を取り戻していた。

 

「—————!!」

 

リオンはすぐに気づくがもう遅い。彼も血気盛ん、いや、単独での任務、相手がクルーゼというタフな局面だった。

 

 

クルーゼを相手に集中し過ぎてしまっていた。彼がリオンの格下であっても、彼はリオンを足止めさえできればよかったのだ。

 

 

「貴様は間違いなく最強だ。だが——————」

 

 

勝ち誇ったように、クルーゼは続ける。

 

 

「——————最強では、世界は救えない——————」

 

 

リオンとクルーゼの眼前には、ジェネシスの射角が完全に固定され、ジェネシスが起動していた。

 

 

 

 

一方、第八艦隊は月からの出動となり、迅速な行動の結果ジェネシス宙域に何とか近づきつつあった。

 

 

「な、何という大きさだ」

 

ハルバートンは、ジェネシスを間近で見た瞬間、肝が冷えた。あれほどの巨大兵器をザフトは建造していたのかと、背筋が凍る。

 

————講和に動いていてよかった。もしその動きがなければ—————

 

 

「提督!! ジェネシスより高エネルギー反応!! 射角はこちらではなく———」

ブリッジ一人が、ジェネシスの高エネルギー反応を掴み取り、報告をするがもう遅い。

 

 

「いかん!! いそげぇぇぇぇ!!!」

 

 

それは、モントゴメリのチャン・バークライトも一緒だった。

 

「ジェネシスが撃たれる!? このままでは、地球が—————」

 

 

ここまで来て、ここまで和平の道が出来たのに、こんな最後が待っているというのか。自分たちが守りたいものが砕け散っていく光景を見せられることが、今まで行動できなかった自分たちへの罰なのかと。

 

 

「ええい。ぶつけてでも止めろぉぉぉ!!」

 

ジョセフ・コープマン艦長も戦艦ごと体当たりするつもりで機関最大で航行するも、とても間に合わない。

 

 

そして目には見えないマイクロ波が、周囲の塵や芥を蒸発させながら、破壊の光をまき散らしながら地球へと突き進む。

 

それで、地球の命運は終わる。自分たちは大切なものを、未来を守り切れずに終わった。

 

 

かに見えた———————

 

 

 

「な、なんだ。あの現象は——————っ!?」

 

 

その時、確かにハルバートンは見た。否、第八艦隊の面々はその奇跡を目撃した。

 

 

 

「何が、何が起きている!? ジェネシスが、何かに止められている!?」

 

ブリッジも全員が総立ちになっていた。あの現象を見ようと、観測する者の手すら止まってしまっていた。

 

皆が奇跡の瞬間に戸惑いと混乱を抱いているのだ。

 

 

その光景は、地球、そしてプラントにも第八艦隊の映像を通して広がっていた。

 

「緑色の————いや、虹の光—————!」

 

 

しかし、地上にいる者たちは映像を見ずともわかるだろう。

 

 

なぜなら、虹は空に広がっているのだから。

 

 

 

虹が広がる上空を見上げるカガリは、彼が地球の未来を救っていることを認知した。そして、自分の及ばない方法で、それを成し遂げようとしているのが分かる。

 

 

 

しかし、あの光は未来を与えるだけで、カガリの欲しいものを奪う気がしてならない。

 

 

フラガ家に流れ着いた男の手記をオーブ防衛後に一部読み漁ったカガリ。避難の際に偶然見つけたもので、本意ではなかった。

 

男が故郷を永遠に離れるきっかけとなった奇跡の光。人々の絶望を打ち破り、地球を救う可能性の神髄。

 

「——————そうか」

 

結局、隣に立てたのは、一瞬だった。彼とともに未来を掴み取れると信じていた。最後の最後、やはり彼は誰もたどり着けない場所へと至ってしまうのだ。

 

 

「——————あ~あ、本当に、お前は困ったやつだなぁ」

 

空を見上げるカガリは、虹の光に苦笑する。そこまでしなくてもいいのに。許されるべき感情ではないが、自分が死んでも、彼が生きていればいいと思える感情だってあった。

 

 

「こんな奇跡が起こせるなら、私の前に会いに来てくれてもいいだろう?」

 

これほどのことが出来るのだ。ジェネシスという防御も不可能な攻撃を、彼は防いでいる。物理法則を超えた先にある新たな理で、彼は地球を滅亡の運命から救っている。

 

 

「—————なぁ、一度でいいから—————」

 

そこまで言って、カガリは言葉を止めた。彼に言われたではないか。

 

悲しいと思う気持ちを持つなとは言わない。しかし、それを背負って前に進む強さが自分には必要なのだと。

 

これはいわば、最後の試練だ。カガリが一人前の政治家になる為の、最後の試練。

 

「——————っ」

 

歯を食いしばり、涙を我慢したカガリ。泣きたいぐらい悔しくて、悲しいが、絶対に表情には出さないと意地を張る。

 

そして—————

 

 

「———————バーカ。ホント、バカなんだから————」

 

 

これで終わり。これで、カガリの試練は終わった。これから先のカガリは彼無しで前に進む必要がある。道標はもはや存在しない。

 

「————女を泣かせたんだ。地獄で待っとけ、色男」

 

 

そして笑った。彼は自分の願いを叶えなかったが、最善を尽くしたのだ。自分と同じ、世界を変えようと走り続けたのだ。

 

最後に彼は、走り抜けた。彼の宿願は達成された。

 

 

宇宙では、その虹色の閃光の後、リオンのストライクグリントどころか、ジェネシスすら消失している事実に困惑するだけだった。

 

 

「—————もっとよく探せ。あの宙域にまだ—————」

 

「くそっ、第八艦隊の映像ではどうにも————」

 

「観測班は!? 何がどうなっている!?」

 

「ジェネシスが消えた!? 破片や残骸がないんだぞ!? どうなっている!?」

 

そして、プラントではラクスは涙をこらえながら、その様子を誰にも悟らせず、地球の滅亡が回避された瞬間に宣言するのだった。

 

 

「——————世界は、滅びませんでした。彼の最後の贈り物。私たちは大事にしなければなりません」

 

毅然とした表情は、感情の一切をなくしており、ラクスから完全に笑顔を奪っていた。

 

 

「ラクス————あれは一体」

 

 

「お父様。あれは赤い彗星です。私の大好きだった人。私の、命の恩人です」

 

その瞬間、膝から崩れ落ちたラクス。両手で顔を覆い身動きしない。いや、したくなかったのだ。

 

理解はしている。彼が成し遂げたことを考えれば、素晴らしい功績だ。なのに、涙が止まらない。

 

周囲は歌姫の豹変に困惑した。あの毅然としていた彼女が、たった一人の為に泣いている。今まで見せたことがない弱さを見せている。

 

赤い彗星のことを、本気で愛していたのだとわかる。

 

そしてラクスも、こんな姿は見せまいと努力しようとしていた。しかし、

 

必死にせき止めようとしている感情が、止まらない。

 

—————貴方が、最後の犠牲になる、それで、よかったのですか?

 

彼は、アフリカに行くと約束したではないか。もう一度自分に会いたがっていた人たちに会うと、約束したではないか。

 

世界をゆっくり回ると、自分の歌を聞きたいと言ってくれたではないか。

 

—————酷い……酷いよ—————なんて、酷い……

 

こんな感情を残して逝ってしまうなんて、酷い男だと、ラクスは涙した。

 

 

「———————赤い彗星が、その身を犠牲にしたのか—————」

パトリック・ザラは、かつての宿敵だった存在に、世界ごと救われたことに複雑な気分だった。そして、ラクス・クラインの心をここまで奪えるほどの人物だったのだと、驚いていた。

 

————とうとう私は、貴様に会わなかった。だが、

 

一度でいいから、会って話がしたかったと、思えるほど興味を抱いていた。

 

「—————すぐに終戦交渉を。こんな後味の悪い、青年一人が最後の犠牲になる、惨い終わりではあるが、我々はすぐに行動しなければならない」

シーゲル・クラインは、パトリック達に諭すように伝えていく。

 

 

人類の滅亡が回避され、今こそ世界に平和を作り上げる必要があるのだと、一人一人が行動しなければならない。

 

 

そして、カーペンタリア基地では、

 

「そんな、赤い彗星が—————あの人が—————」

 

口元を手で覆い、アスランはショックを隠し切れなかった。あの最強と言えど、最後の最後で犠牲になるのが戦争なのだと、アスランは痛感した。

 

「—————本当に、酷い男よ—————」

 

アスランにここまで辛い表情をさせることが気に食わなかったフィオナ。ここまでアスランの感情を握っていた彼に嫉妬もしていた。

 

しかし、会って一つや二つくらい文句を言いたかった。例えば、二股はやめろとか、鈍感を演じているのでは、とかいろいろ聞きたかった。

 

「—————これで戦争は終わる。だが、俺たちが伝えていく必要があるんだ————そうでなければ、今まで死んでいった者たちに、顔向けができない」

 

アスランは、クルーゼが反逆し、リディアが交戦して殺されたことも知っている。結局最後まで自分は大して役に立たなかった。

 

————口先だけだ。俺の手に残ったのは—————

 

僅かな命のみ。それでも—————

 

—————それでも、俺は誇ろう。情けない結果だが、二人だけでも守れたんだ

 

肯定することが辛い。情けない自分を認められない。戦争が終わって嬉しいはずなのに、なぜこれほどまでに虚しさを感じる。

 

 

 

「あ、アスランさん!! 急いできてください!!」

 

ニーナが目を真っ赤に腫らして、アスランのところにやってきたのだ。先ほど、リディアの戦死を伝えられ、ショックを受けていた彼女だったが、何かに突き動かされるようにここまで走りこんできていた。

 

そして、彼女の言葉を一瞬理解できなかった。

 

「——————え?」

 

 

「ニコルさん、オーブにいるんです!! 生きてるんです!!」

 

 

アークエンジェルに、ニコルがいる。彼女が生きていてくれていた。嬉しいはずなのに、

 

「—————おかしいな。嬉しいはずなのに、頭がぐちゃくちゃだ。本当に、俺は弱いなぁ」

 

悲しい気持ちと嬉しい気持ちが混同し、アスランは泣き笑いのような顔になっていた。

 

「—————でも、これで—————ようやく終わる—————終わったよ、みんな」

 

 

その瞬間、声をあげて嗚咽するアスラン。子供のように泣き喚く彼は、いつもの大人びた雰囲気とはかけ離れ、子供の様だった。

 

そんな泣き虫な上官にそっと寄り添い、フィオナとニーナは彼を介抱するのだった。

 

 

 

 

そして、リオンと合流することなく、任務を果たすことが出来なかったアークエンジェル。

 

 

「———————本当に、遠いところに行ったんだね。貴方は」

 

キラのガンカメラは物理法則の全てを見通せる。だから、リオンがこの世界にいないことを実感していた。

 

「—————けど、貴方がいたから、僕はまだ冷静に、いられるんだ————」

悔しさしかない。しかし、残されたものとして、世界を背負う責任がある。

 

「僕は貴方に勝った。僕はあなたの知らない未来を生きる。あの世で、逃げないでよ、リオンさん」

 

————違う、本当は、そんなことを言いたいんじゃない。

 

取り繕う余力を見せなければ、笑われてしまう。彼に心配されてしまう。だというのに、

 

「—————本当に、酷い人ですよ—————ッ、貴方に教えてほしいこと、貴方の夢を、僕は聞けなかった」

 

苦悩しながら、彼の代わりに世界最強を担う男は、未来に生きる覚悟を決めたのだった。

 

 

エリクはとても疲れた表情で、リオンのいた宙域で残骸を探すも、結局破片一つ見つけることが出来なかった。

 

「—————あの糞ヤロウが!! くそっ、俺は、俺はデカいことを口にしただけじゃないか!! 何の役にも立ってねぇ!!」

 

悔しさに震えるエリク。自責の念を感じ、リオンをみすみす一人で行かせることになった司令部を一瞬恨んだりもした。

 

————誰にも想像できるわけねェだろ。あんな状況、あいつじゃなきゃ、わかるはずがねぇ

 

「満足かよ!? お前は満足かよ!? あの獅子の娘を抱かなきゃいけなかっただろうが!! 歌姫ちゃんを幸せにするのはてめぇの責任だっただろうが!!」

 

壁に当たり散らすエリク。自分に惚れた女を残して死ぬような奴、色男でもなんでもない。ただの屑野郎だと、エリクは泣きながら叫んだ。

 

「なんで、なんでだよぉぉ!!! なんでお前は、お前はぁ!!」

 

 

「大バカ野郎ぉぉぉぉ!! くそがぁぁぁぁ!!!」

 

「—————っ」

 

そんな憤るエリクをやさしく抱きしめるのはニコル。無論彼女も涙を流していた。エリクがここまで感情を出してしまい、自分にとっては命の恩人。無感情でいることは困難だった。

 

 

—————私たちが間に合わないことも、織り込み済みだった、そうなの、リオンさん?

 

 

あれは、アラスカ基地脱出戦の時だった。

 

—————そういえば、ニーナ、という少女から言伝を預かっている

 

思い出したように、リオンはニコルにある人物からの言伝を伝えるために彼女の下へとやってきた。

 

—————なん、ですか?

 

味方になったとはいえ、やはり赤い彗星。警戒心が完全に消えたわけではなかった。

 

 

—————貴方が無事でよかった、と。どうやら、君の姿を見て酷く安心していた。あんまりにも幸せそうだったから、サイクロプスの情報をくれてやった。

 

なんでもなさそうに軽い笑みを浮かべるリオン。そして、わざわざ敵だったものの言葉を伝えに来てくれた彼の心遣いに感謝した。

 

この人も、血の通った人間なのだと。エリクと仲が良いのが納得できた。オーブでの彼の動きも彼への認識を改める理由になった。

 

尊敬できる人間だった。幸せにならなきゃいけない人だった。

 

—————酷い人、ラクスさんを、カガリさんを泣かせる、酷い人です、貴方は

 

嗚咽声を出しながら、泣き続ける彼を介抱しつつ、彼女も声を出さずに涙を流したまま、その場にとどまり続ける。

 

 

その後も捜索活動は続けられたが、ついに彼の行方へは分からない。

 

 

あるのは、反逆者のプロヴィデンスの残骸のみ。

 

「——————結局、最後まで彼がしりぬぐいをする、だけとなったな」

 

 

「—————どうすることもできませんよ、艦長。不合理な現実も、今は必ず認めなければなりません。でなければ、彼の犠牲が無意味になります」

 

ナタルは、目頭を押さえ、運命を呪った。しかしそんな彼女を慰めるのは、ノイマン操舵士。彼の犠牲を乗り超えることで、平和が待っている。いつまでもウジウジしていれば、また戦争に逆戻りしかねない。

 

アークエンジェルでは、彼と交流のあった学生や仲間たちが涙を流していた。オーブに流れ着いた時の演説や、これまで幾度も窮地を救ってきた彼への恩義を感じ、彼の死を悼む声が多いのだ。

 

整備班たちは、リオンの生存が絶望的なものとなった瞬間、誰かが言いだし始めたわけでもなく、ハンガーの大広場に整列し、彼が最後に存在した場所へと敬礼するのだった。

 

彼の覚悟と、最後の最後で散った無念を感じながら。

 

 

 

そして、キュアンと初めてであったフラガの血縁の少女たちは——————

 

 

「——————結局、会えなかったなぁ—————」

残念そうにつぶやくのは、リオンの妹に当たるはずだった少女、ミュイ。彼女はオーブ防衛戦後にリオンとの面会を希望していたが、結果はこの通りである。

 

だから、彼女の妹に当たるステラとともに、結局最後までリオンと出会うことなく死別することになった。

 

「—————あの、おじ様」

ステラは、言葉少なめにキュアンに尋ねる。キュアンの中に渦巻く悲しみの感情を察知し、遠慮しがちに尋ねてきた。

 

「————どうしたんだい、ステラ」

しかし、表情には出さず、笑顔でステラに問いかけるキュアン。ステラにはすべてわかってしまう。自分を気遣って感情を出さないことを、自分がまた迷惑をかけていることを。

 

それでも知りたいのだ。自分の兄になるはずだったリオンのことをいっぱい聞きたい。

 

「お兄ちゃんは—————どんな人だったの?」

 

 

「—————うーん、難しい質問だな。けど、強いて言うなら—————」

 

温かい目で、ステラとミュイを見つめるキュアン。そこに負の感情はない。キュアンは、すでに二人を家族として認識している。

 

 

「—————二人みたいに、純粋で、でも二人とは違って、捻くれた奴だったよ」

 

 

誇らしげに、キュアンは二人に対し、リオンの人物像を語るのだった。

 

 

 

一人の行動が小さな波紋となり、やがて大きなうねりを生み出した。彼の投じた一石は世界を滅びから救い、人々に平和の意味を取り戻した。

 

彼が世界を救ったのではない。世界の意思が、世界中の人々の想いが、世界を守ったのだ。

 

だからきっと、彼は自分のことを英雄だとは認識しないだろう。自分は世界の中の一人で、人一倍捻くれて、意地の悪い奴だったと。

 

きっと彼は、そう語るに違いない。

 

 

 

コーディネイターの定義と、ナチュラルの不満から端を発し、大国間の利害関係の崩壊が生んだ、稀大の悲惨な戦争は終結した。

 

コーディネイターの定義は再定義され、人類の今と未来を繋ぐ存在、すなわち宇宙という新たなステージで活躍できる人間をさすようになった。

 

夢と希望を持ち、行動できる人間こそが、調整者であり、世界を発展に導くのだと。

 

迫害される運命にあったプラントと、地球にいる同胞は、人類に戻ることになり、遺伝子操作の技術は人への転用は完全に禁止されるようになった。

 

そんな混乱の中、ラクス・クラインはアイデンティティーを失った人々をまとめ上げ、人類への回帰を支援し、コーディネイターを目指すものとして、世界に平和の花を植え続けた。

 

そして名実ともに世界の盟主となったオーブは各国共同により宇宙開発を推奨。お抱えのフラガ家、ウィンスレット家を使い、コロニー開発へのモビルスーツの転用、そして宇宙ビジネスを開始。外宇宙コロニー建設の黎明期を築くことになる。

 

そして、リオン・フラガが所持したとされるT型の貴金属と、アフリカである男性が残したとされるルビーから新技術が発見される。

 

 

そして決め手は、ジェネシスが消失した宙域で発見された未確認の物質。後に、外宇宙航行技術、いわゆるワープ航行に用いられるようになり、人類は戦争を乗り越えた先に外宇宙への探索へと本格的に動くことになった。

 

 

激動の戦後を迎えて4年後、各国政府は赤い彗星の情報開示を求めた。

 

きっかけは、世界中が注目するなぞの存在、リオン・フラガのことを知りたがっていたからだ。そしてついに、オーブ政府は一部の機密情報を、つまりリオンの情報を開示したのだ。

 

生前より、オーブの聖女、カガリ・ユラ・アスハを支え続け、戦争終結に尽力したことが、内容をぼかしつつではあるが、表に出るようになったのだ。

 

彼の生き様は、人の未来と今を繋ぎ、可能性を指し示す存在、人類史上最高のコーディネイターと謳われるようになる。

 

その傑物の、聖女に使える忠実なる従者としての側面は、後の世の臣下の手本となり、諫めることを恐れない忠臣が重宝されるのだという考えが広まる。

 

 

彼の者は、理想の従者————自己の利益を超えた先にある、人類の未来を掴み取る存在であると

 

 

 

10年後—————————————

 

 

「—————待ちなさい、ジグルド」

 

 

「げっ、クソバ——母上—————」

 

まるで、悪戯が見つかったと様なリアクションを取る少年。金髪の髪に、青色の瞳の彼は、目の前で冷えた笑みを浮かべる女性を前にして、怯えていた。

 

 

「—————なんで、格納庫に勝手に入るかなぁ? 何度も注意したよなぁ? 後、最初何言おうとした?」

 

 

「—————あああ、知らない、俺、知らない。たぶん勘違い———いったぁぁ!!」

 

拳骨を頭に食らい、おでこをおさえる少年。女性はお冠だった。

 

 

「危ないって言ったろ? お前は、まだまだ子供で、免許も仮免許。お父さんの様になんでもうまくいくわけがない」

 

 

「でも、父さんは俺の年齢で重機の扱いだって完璧だったんだろ? だったら———いったぁぁ!! またぶった!!」

 

 

「アサギ、この聞かん坊を摘み出しなさい」

女性は、隣にいた従者に命令を下し、冷めた目で少年を見下ろしていた。

 

「はいはい、カガリ様~~さぁて、私の追跡を掻い潜ったのは褒めてあげるわ。本当に気配を隠すのだけは上手いわねぇ」

 

 

「年増なんて余裕余裕————あっ」

 

失言が多い少年ジグルド。青ざめた顔で見上げると、

 

「カガリ様ぁ。この子、食べてもいいですかぁ?」

ニタァ、と笑い、女性は微笑んだ。その肉食動物を想わせる雰囲気に少年は完全に武装解除した。

 

「ひ、ひぇ」

 

 

「—————気持ちはわかるが、やめろ。捕まるから—————」

申し訳なさそうに暴れん坊息子を前にして、謝罪する女性。

 

その後、大人しくなった少年と従者はこの場を後にして、女性は一人残されることになった。

 

「——————お前とは違って、本当に生意気だよ、あいつは」

 

 

元気いっぱいで、何にでも興味を示す。しかし、スタンドプレーが目立つ。

 

そして共通するのは機械オタク。

 

だが生意気だ。素直だった彼とは似つかない。

 

「—————カガリ様? ジグルドを見ませんでしたか?」

 

「まったく、ジグルドは—————もう少しカガリ様の息子である自覚を持ってほしいです」

 

「そう言うな、グラニア。俺たちが大人しい反面、あいつがあれなのはちょうどいいと思う」

 

 

そこへ、ジグルドと同年代の少年少女たちと出会う。二人はピンク色の髪をした双子の兄妹で、もう一人はジグルドと同じ金髪。

 

「はぁ、ラクスのところの子供のように、うちの子もやんちゃは控えてほしいんだけどなぁ」

 

ラクスの子供である、ディルムッド・F・クラインと、グラニア・F・クライン。冷静沈着なディルムッドと、堅物でジグルドを兄と比べて誇らしげにするグラニア。

 

ジグルドのほうは、グラニアのことを「おてんば娘」と軽口を言うので、彼女には嫌われている。どうやら、あまり相性が良くないようだ。

 

 

「お兄様はあいつと違って、大人なのです。そういうところが頼りになりますので。さすがです、ディルムッド兄様」

 

 

「だが、その視線はやめてくれ。危ないから—————」

 

二人の世界に入ってしまっている兄妹を放置し、残った金髪の少年が女性に近寄る。

 

「—————僕では対処できません、助けてください、母様」

少年の名はロビン・フラガ。彼女の息子であり、ジグルドの双子の弟である。

 

「—————ファイト、男の子だろ?」

 

無慈悲な判決を言い渡す女性に、絶望する少年。その後、近親上等な兄妹が間違いを犯さないか監視する少年。リスク管理だけが目につく彼は、どうしてもリスクに目を逸らすことが出来ないのだ。

 

「そっか。ラクスが来ているのか—————お互い、色々あったなぁ」

 

 

戦後、ラクスはカガリとほぼ同時期に妊娠が発覚したという。どうやら、リオンと関係を持っていたという。通常であればリオンに対して非難が集中するはずなのだが、当時は悲劇の英雄リオン・フラガというイメージが強く、直後のアスラン・ザラが救済された一夫多妻制の条約追加により、そこまでのダメージはなかった。

 

そう、リオンにはダメージがなかったのだ。

 

 

しかし、ラクスとカガリは英雄の血を継ぐ子供を授かったことで、過剰な報道の対象となってしまったのだ。オーブ政府の強権でラクスともども保護され騒ぎが沈静化された後に何とか事後処理を済ませたが、今もなおその時の騒動は傷跡を残している。

 

 

聖女様が性女様だった件についてとか、みんなの偶像は英雄の恋人でした、とか

 

非難するような言動はほとんどなく、逆に温かい目で見られたことが彼女らには辛いものがあったという。

 

 

「—————まあ、お前が消えたのが悪い。かな、言い訳は」

 

今は、この世界と、子供たちの成長を見守ろうと思う。そしていつかきっと、彼とも出会える。先の先になるだろうし、色々なことが起きるだろう。

 

その全てをお土産に、彼女はまた彼に会いに行くのだ。

 

 

—————リオン。私は何とか今をやれています。言葉遣いだって、人前では直しているんだぞ?

 

驚くだろうなぁ、とカガリは笑う。すっかり大人の女性となり、髪の長い女性が好きだという彼の言葉通り、セミロング以上に伸ばしている。

 

あの猪突猛進だった頃を知る者が見れば、今のカガリは大人の女性に変化し、淑女としてのオーラも醸し出しているのだから驚きだ。

 

興味のなかった化粧だってするようになった。時々見せる相手がいないと鬱になるときもあったが、化粧も悪くない。

 

————だから、化けて出る必要はないからな。だって私は——————

 

 

「私は今、何とか前に進んでいるから———————」

 

そこへ、戦後発覚した弟が現れる。

 

「姉さん。そろそろ戻るよ」

 

「分かった————お前もそろそろ身を固めろよ。いき遅れるぞ」

 

 

「姉さんは早すぎると思うけどね。エリクさんも、ノイマンさん、トールも相手がいたわけだけど、僕は作る努力をしなかったから」

のほほんと笑う弟。最近独身貴族筆頭とか言われて、いよいよ後がないというのに、この男は。

 

「—————威張ることなのか、それは————」

呆れた表情の彼女。弟のキラは相手を見つけることが出来るのか。それが最近のカガリの悩みだった。

 

 

「けど、アスランみたいに法改正で救われることはないと思うよ。たぶん。」

遠い目をしているキラ。あの戦争の後、やはりというか、二股に作ってしまったことが出来なかったアスランは、ジグルドではないが、食われてしまった。

 

なお、アスランはフィオナの好意しか気づいていなかったそうだ。おかげで、堅物キャラから苦労人キャラにジョブチェンジ。しかし幸せそうなので、嫉妬団に襲われている。

 

「—————あいつはまあ、ご愁傷さまだな。堅物で仕事のできる奴だったが————」

 

 

「まだ死んでないからね!! この前干からびていたように見えたけど、まだ生きているからね!!」

慌てるキラ。過去形になっているので慌てて訂正する。

 

「なぁ、アスランといい、ニコルといい—————あいつらはMなのか?」

しかしカガリは、アスランたちを見ていると、どうもそんな気がしてならないと考えていた。

 

「え? そんな話僕は聞いていないけど。え? ニコルさんぅ!?」

 

「エリクにされ放題のニコルに、襲われるアスラン――――この前エリクに公園で――――いや、なんでもない。なんでもないんだ―――――」

 

 

「おいぃぃ!? なんなのぉぉ!? なんなんですかぁ!!! エリクさん何やっているんですかぁ!! 危険なゾーン突入しちゃってるよぉぉぉ!」

絶叫するキラ。エリクの隠れた趣味に、驚愕を露にする。

 

「——————正直引いた。エリクには引いた、公園はないだろうと―――――あれは、私たちの及ばない次元にいるな、確実に―――――というか、言葉が崩壊しているぞ、キラ」

 

 

「し、仕方ないよ!! だって、エリクさんとニコルさんが新婚カップルさんのようにカフェでポッキーゲームしてたし!」

 

「——————あいつら捕まるんじゃないか―――――」

白い目で虚空を見上げるカガリ。このままでは風紀が乱れる。

 

「————うん。でも、僕にラスさんを押し付けないでね。最近怖いから」

 

「—————もうしないさ。私からはな」

 

 

こんな日常も悪くない。

 

手間のかかる弟とともに、カガリは格納庫を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

理想の従者の物語は終わり、理想は世界に託された。彼の願いがどこまで続くのか、彼の祈りがどこまで続くのか。

 

それは、残された人々にしか、分からない。

 

 

 




これで、一応ガンダムSEED世界での騒乱に決着がつきました。

なので、ガンダムSEED 理想の従者の物語はここで終わりです。

次回は彼の視点でのお話になります。虹の彼方に消えた彼は、何を思うのか。
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