機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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リオンが何を直前に思っていたのか。

何が彼を捨て身へと決断させたのか。その末路と今後はどうなのか。

そして、嘘予告になるか、本当の予告になるか分からない話が追加されています。

数年後になると思うので、気長に待ってくださればと思います。


従者の独白 そして—————

夢を見ていた。

 

 

かつての記憶を思い出し、青年は虹の世界で目を覚ました。

 

「————————」

 

 

完全に時間が制止した世界。世界から切り離された空間で、男はぼんやりとしていた。

 

 

しかし、何かをしようという気力は存在せず、再び目を閉じた。

 

 

すでに未来は世界に託され、自分の夢は彼女に託した。今後世界がどうなっているかは分からない。もはや自分には、世界に干渉する術はないのだから。

 

だが、男は満足していた。

 

この世界に流れ着く前、声を聴いた。

 

 

たくさんの声を聴いた。人々の生きたいと願う叫び、

 

死した者たちの、生きる者への様々な声。それは何も祝福だけではない。

 

憎しみ、妬み、悲しみ。負の感情も存在していた。しかし、生きる者はその影を背負って前に進むだけの力がある。きっと、彼女たちが導いてくれる。

 

 

平和の歌を、訣別の声を叫んだ、彼女ならば、きっと世界の歪みをただすと。

 

「——————頑張ったよな?」

 

 

自分の道のりが、間違っていなかったのだと気づけた。彼らの声は、予知することはできなかった。あの瞬間に、あんなことが起きるとは考えていなかった。

 

――――――彼女らの存在が、自分に悔いを失わせる。自分は、走り抜けたのだと

 

 

最後まで、駆け抜けたのだと。

 

「——————本当に、これでよかったのか?」

 

 

————はい。後悔は、ありません

 

彼の起源である男は、青年に問うた。全ては筋書きの上だった。彼が世界から消失する未来を、彼は避けなかった。

 

「残されたものはどうなる? お前を愛した者はどうなる? 平和な世界を、曇った目で見続けることになるのだぞ?」

 

亡霊の言葉は真実だった。彼女らには悪いことをしたと思う。最後の最後、約束を守ることが出来なかった。

 

 

—————約束を守るよりも、俺はみんなの未来を選んだんです。

 

生き恥をさらした結末は、世界滅亡。あの時、確かにその未来が見えた。数多の命が失われる世界。そして、創世の時を迎えた星は、長きにわたり生命の誕生を待ち続けることになる。

 

それを見ながら死ぬ。守り切れなかったことを悔いるような人生で終わる。それは、認めるわけにはいかなかった。

 

 

あの時、アークエンジェルを無理にでも宇宙へ飛ばせば、ジェネシスを止めることは出来た。しかし、今度はアークエンジェルの皆があの機体に殺されていただろう。

 

結局、あの局面では何かを捨てる覚悟が必要だった。何を捨てるべきなのか、何を投げ打つべきだったのか。

 

 

世界の未来は、絶対に守る。

 

であるならば、アークエンジェルの乗組員の命と、リオンの命ではどうなのか。

 

答えは、言うまでもない。

 

 

————みんなのために————みんなのために、俺の未来を使った。

 

 

「私の力を使え。今ならまだ間に合う。虹の彼方を出られる。早くッ!」

 

亡霊は既に死人。彼の力を使えば、ここを出られる希望はあるかもしれない。しかし、そんなことをすれば彼は今度こそ消えてしまうだろう。

 

 

—————貴方の無念を、俺は誰よりも知っている

 

このまま、彼には消えてほしくない。アルテイシアとは、もっと違った運命があったはずなのだ。

 

少しだけ、彼は頑張り過ぎたのだ。意地になり過ぎたのだ。それは自分と同じで、世界の理不尽さを、自分よりも知っていただけだったのだ。

 

————だから、なんだろうな

 

青年は亡霊の前に立ち、微笑んだ。愛おしさを覚えてしまう、親近感がわいてしまう。生まれた時から一緒だった彼に、最後の恩返しをしたい。

 

 

————貴方には、今度こそ幸せになってほしいと、傲慢にも思ってしまうんです

 

 

両手で突き飛ばしたのだ、亡霊を、虹の出口へと。不意を衝かれた亡霊は、目を大きく見開き、慌てて手を伸ばす。

 

 

「早まるな、リオン!! 何をしている、やめろっ!!」

 

焦燥感にかられる亡霊の声。リオンが今何をしたのかを理解してしまった。彼の微笑みがすべてを説明してしまっている。

 

「そんなこと、私が望んだというのか!? それはお前のエゴだ!! お前は生きているんだ、生きているんだぞ!! 既に終わった私よりも、明日を掴む権利がある!!」

 

「————————」

微笑んだまま、悲しそうに、そして儚げな眼で、新たな未来を歩む亡霊の旅路を祝福する青年。

 

 

————今まで、俺を導いてくれて、ありがとう

 

 

青年は感謝の言葉を亡霊に送った。

 

「やめろ、やめてくれ!! これ以上重荷を背負わせるな!! 私は、お前を乗っ取ろうとしたのだぞ!! 私は!!」

 

 

悲鳴のような声をあげながら、亡霊は青年に訴える。こんなものは受け取れないと。青年こそが、そのチャンスを受け取るべきなのだと。

 

 

「キャスバルおじ様。次の人生では、女の子を泣かせてはだめですよ?」

 

 

 

「待て!! 待てッ、リオン!! やめろぉぉぉぉ!!!!!!」

 

それが、青年が聞いたキャスバルの最後の声だった。彼は程なくして新たな輪廻に入り込んだだろう。

 

全てが静止し、全てが見えて、全てが見えないこの世界で、

 

 

全能の存在と化した青年は、万能の力を手にしていた。しかしそれだけだ。彼は彼が存在した世界がどれなのかを認知できなくなってしまっていた。

 

もはや、彼には帰る世界が存在しない。その世界への道標を、完全に失ってしまったのだ。

 

 

「さよなら。ご先祖様。どうか次は、よい人生を」

 

 

 

今度こそ虹の彼方で、たった一人存在することになった青年。しかし、リオン・フラガの人格が残っている前に、最後に善行を行うことが出来た。

 

崩壊が始まる。キャスバルという亡霊の加護を失った青年は、虹の彼方で己を守るすべを持たない。

 

奔流する光の中で、やがて彼の全てを照らし、塗り替えていくだろう。

 

彼の一となるモノ、彼の理想の全てが光に呑まれ、消えていく。

 

 

「—————はぁ、怒るだろうな—————えっと、カガリ————」

困ったような声色で、ため息をついたリオン。きっと彼女は約束を守った自分の墓を蹴飛ばしているのではないだろうか。

 

そしてあの少女は、悲しんでしまっているのだろう。その姿が見えるが、自分のいた世界がどれなのかが分からない。ゆえに、本当の彼女の反応を知らない。

 

 

万華鏡が割れていく。彼の認知する世界が見えなくなる。

 

 

ノイズが走るように、彼女の顔が見えない。彼の記録がゆっくりと、違和感なく塗り替えられていく。

 

————そうか、これが代償か

 

覚えていたはずの記憶が、記録が呑まれていく。ここは人が気軽に立ち寄っていい場所ではない。それを証明するかのように、青年の記憶は食い潰されていく。

 

 

全てを虹の彼方で洗い流し、こうして生命は輪廻を駆け巡るのだろうか。今まさに自分は輪廻に取り込まれようとしているのだろうか。

 

業火の炎ではなく、あの世とは虹の光の彼方にあるというのだろうか。

 

 

————誰かに、誰に? 俺は、誰に何かを託した

 

薄れゆく意識と記憶。全てが無に帰る瞬間まで、青年は考えることを止めない。

 

————そうだ。ものだ。もっと大きなものに、それを託した。

 

人の命ではない。それすら超える何かを、自分は多くの何かに託した。

 

 

————何のために? 何のために自分はここに辿り着いた?

 

光が青年の記録のほとんどを塗りつぶした。あるのは、真っ新な空白のみ。そこには何もない。ゆえに、何の変化もない。

 

ここを出るという選択肢が存在しない。そもそも、自分はどこにいたのかすら分からない。

 

 

————なぜ、考えるのか。何を考えようとしていたのか

 

青年は全てを塗りつぶされた。もはやそこには空白となった器のみ。聖女たちが守り抜いた彼の心は、光の奔流の中に消えた。

 

 

—————俺は—————私は———————誰だ?

 

 

薄れゆく青年は、世界の狭間より聞こえる声を聴く。

 

 

————助けて————

 

 

「!?」

その一言だけで、青年は全てを取り戻した。なぜ忘れていたのか、なぜ腑抜けていたかは問題ない。

 

膨大な奔流の中で彼に降り注ぐ光が、彼の前にひれ伏したのだ。無防備になっていた彼に迫る存在が、彼らのやってきたゲートから聞こえてきた声が、リオンを覚醒させた。

 

—————残念だったな、ここは俺の世界だ。もはやお前たちのものではない。

 

凶悪な笑みを浮かべ、彼の前方にいた結晶の生命体を睨みつける。そこには自分とは別のものが入り込もうとしていた。この虹の世界を取り込もうとする強欲な存在が存在した。

 

リオンの一睨みで彼らはこの世界から蒸発し、今後手出しは出来ないのだが、あの存在が救いを求める声に対し、苛烈な行動をとっていることが読み取れた。

 

—————人類に仇為す存在は、とりあえず理解したうえで対処するべきだろう。だが、覚悟しろ、異星起源主よ。俺は、彼らの信奉する神ほど、慈悲はないぞ

 

 

重要なのは、リオンがすべてを思い出し、誰かの助けを求める声を聴いたということだ。

 

「—————危うく、腑抜けになるところだった」

 

何かを成し遂げて、やりつくした感があった。実際、託したと満足してしまっていた自分がいた。

 

「まだ体が動く。ここに魂がある。ならば、俺のやるべきことは一つだ」

 

 

そして、虹の彼方に入り込んだ相棒が姿を現す。煌く機体は彼の魂の象徴。彼が奮い立つ瞬間を待ち望んでいたかのように、巨人は乗り手に道を示す。

 

 

「出番だ、相棒。どうやら、まだまだやり残したことがあるらしい」

 

 

彼は顕現する。救いを求める声がある限り、彼は必ず立ち上がる。それがどんな世界であろうと、彼は見捨てることが出来ない。

 

なぜなら彼は、根っからのお人好しなのだから。

 

 

英雄の道は果てず、虹の彼方より救いの手を差し伸べるだろう。煌く勇者の英雄譚は、彼が尽きぬ限り、果てることを知らない。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――創世の奇跡より18年後

 

 

第八艦隊所属、外宇宙航行艦オリオン。太陽系より10光年離れた場所へのワープ航行の末、発見された4つ目の地球型惑星の調査任務をしていた。

 

オリオンは巨大な要塞であると同時に、前線基地としての役目も備えている、コロニーと一体化している宇宙船である。

 

ゆえに、第八艦隊の総戦力をそのまま格納できるだけのスペースを有する。

 

今では世界最強の精鋭と言われる第八艦隊。先代提督デュエイン・ハルバートンから任を引き継いだのは、ナタル・バジルール中将。将官の中では紅一点であり、連邦きっての名将。

 

 

 

統合が進んだ地球は、地球連邦と名を改め、各国の軍隊は統合され、経済的なつながりを強化していっていた。

 

そして、次なるフロンティアを目指すというエドワード・ハレルソン大統領の意向により、フロンティア移住計画が始動。任期中に4つ目の地球型惑星を発見。

 

うち、2つは既に移住が進んでおり、世界は今外宇宙開拓時代だった。

 

 

「観測班。どうなっている? あれは、地球型惑星ではないのか?」

第八艦隊の提督であるナタル・バジルール中将は、尚も第一線を退かず、故郷にノイマンと家族を残して宇宙を旅していた。

 

 

そして、問題となっているのは、今まで未開の航路だった4つ目に発見された地球型惑星。その移住が可能かどうかを確認するために、調査を行ったが今までにない反応が見つかったのだ。

 

「は、はい。そうなのですが、ニュータイプの観測班が気分を害しまして――――」

 

 

「というと、ジグルド君か? 彼は何と言っていた?」

ジグルド・F・アスハ。今回強い本人の要望により、今回の任務に乗り込んだ問題児であり、優等生である。

 

模擬戦ではナンバーワン。若きリオン・フラガの再来と謳われた神童だが、カガリ・ユラ・アスハとの仲は複雑なモノとなっている。

 

性格はやんちゃが抜けたものの、機械オタクをこじらせ、人と関わるのが面倒な性格になっていた。

 

奇しくも、リオンと同じ成長を続けているのである。違うのは、呪いが存在しない事か。

 

 

「あの星には確かに人類が存在します。こちらのデコイが撮影した人工物を見る限り、人類と類似する生命体がいるのは確かです。しかし、異形というべき存在が闊歩する、悍ましい現実がそこにあります。」

 

 

「否応なく感じてしまうので、ビジョンが光ります。口にすることさえ悍ましい現実ですね、あれは」

 

 

ジグルドは、険しい顔でナタルにそう説明した。

 

「—————何が見えた? ここでは言いにくいことか?」

 

「————————」

 

沈黙したまま、首を縦に振ったジグルド。余程の者が見えたのだろう。ナタルは目配せをして残りの隊員を退出させた。

 

 

「——————人が、食われていました。それも生きたまま」

 

「なんだと!? まさか、人類がそこに―――――」

 

 

今までの地球には人類の痕跡はなかった。豊かな自然と発展途上な世界。中には超大陸が広がっている世界もあった。

 

しかし、人類がすでに存在しており、その人類が食われるという悍ましい状態はいまだ聞いたことがない。

 

「我々とは違う別系統に進化したモビルスーツがいながら、それでもまだ届かない。彼らの恨み、無念、絶望、断末魔。あの星は生命を許さない死の星になりつつあります。第八艦隊だけの戦力では—————自分は厳しいと判断します」

 

 

第八艦隊のことを考えて、ジグルドは行くべきではないと提案する。これではナタルもどうにもできない。

 

評議会で判断を仰ぐしかない。

 

「これは、評議会行きだな。分かった、ワープゲートを開いて通信を飛ばす。各員調査をいったん中断。予定していた月への調査団も派遣を中止とする」

 

 

「——————しかし、どうなるんですか? この場合――――」

 

ジグルドは、ナタルに尋ねる。あの地球は居住不可能という烙印を押されるのか、と。

 

「——————まずは現地の人類とコミュニケーションが取れればだが―――――言語も何もかもが不透明だ。難しいだろうな」

 

部屋を退出したジグルドとナタルは、今後の展望について相談していた。

 

「その人類への攻撃を行う存在が及んでいない場所、となると、アメリカ大陸と、極東、オセアニア、アフリカになるだろう。宇宙から見た映像では、驚くほど酷似した大陸と島だったが―――――」

 

ナタルとしては、手当たり次第というのは現状避けたいところだった。戦力の分散は一艦隊しかない自分たちにとっては致命的だ。

 

「————————絞るべきだろう。しかし、現状北米大陸は避けたほうがいいかもしれん」

 

 

「—————なぜですか!? あそこは広大な大陸がありますし、もしアメリカがあるというなら、あそこが一番―――――」

ジグルドとしては、北米大陸を選ぶものだと考えていた。あの驚くほど酷似した大陸が旧時代の中心だった。ならこの世界も――――――

 

「カナダの半分が放射能汚染で甚大な被害を被っている。もしアメリカが存在するなら、迂闊すぎる。状況的に、あの大陸は苦しい立場にあるやもしれん」

 

ナタルの言ったことは事実だった。目と鼻の先にあるカナダが汚染によって被害を受けており、核攻撃が為された可能性もある。もしくは敵の攻撃に放射能汚染と類似するものがある場合。

 

現段階では、判断できる材料が少なすぎる。

 

「よって、汚染のない極東、オセアニアへの調査団の派遣を評議会に提出する」

ナタルの意見はほぼ正解だった。しかし、ジグルドは尚も反論する

 

彼が一番見てしまったのは欧州の地獄と、アジア方面の地獄。

 

「しかし、極東は――――――」

 

もうすぐそこまで脅威が迫っている。人類に仇為す敵が、喉元まで。調査する余裕があるのか、そして、この星の人類が何を考えているかも不明だ。

 

「—————失礼ながら、具申します。オセアニア大陸への調査のみで十分ではないでしょうか?」

危ない橋を渡る必要はない。ジグルドは、味方の被害状況のみを考えていた。

 

「—————確かに、安全策を考えれば、オセアニアのみが正しいだろう。しかし、旧時代のように国家が複数存在する場合、それぞれの思想までは分からない。これは調査だ、アスハ中尉。オセアニアの視点だけでは、交流に支障が出る可能性もある」

 

一つの国に肩入れするのは避けるべきだ。そして、他の国々に行けない理由もすでにある。戦力の分散も避けて、検討したのがこの二つの大陸と島になる。

 

ナタルは、被害予想もしつつ、交流への準備も忘れていなかったのだ。

 

「——————了解、しました。ならば、私が極東方面へ向かいます。新兵の兵士はオセアニアへ。俺たちの中隊がまず向かいます」

危ない場所には真っ先に向かうと主張するジグルド。これまでも中隊長として率先した危険な任務をこなしてきたのだ。責任感の強い彼は、他の新兵やルーキーを気にしていた。

 

 

「—————私は、貴様の母君にいろいろ託されている。だが、その実力は折り紙付き。交流の際に粗相を起こすなよ?」

 

「—————分からない事ばかりです。相手の話を聞くことは忘れませんよ」

 

 

おおよその再開後の調査団の流れは決まった。後は細かく微調整をするだけなのだが、

 

 

 

「提督!! 月が!! 月に巨大なモニュメントを発見しました!!」

 

「何? 何が見つかったというのか? モニュメント? この地球の人類は月へ到達する技術を有しているのか?」

 

 

「違います!! あれは一体何なんですか!! あんな、あんな!!」

気が動転している隊員を見て、ナタルは両肩を掴んだ。

 

「お前が混乱してどうする。私も見る。お前は堂々としておけ」

 

「は、はい」

 

 

―――――嫌な予感がする。俺が見た景色と同じ、何かが―――――

 

 

ジグルドは言いようの無い不安を覚えていた。

 

 

―――――父さん、あんたなら、どうするんだ?

 

観測所に向かうジグルドは、今は亡き父に伝わるはずのない問答を投げかけていた。

 

 

 

 

 

 

後に、第5地球戦争と呼ばれる戦火が、始まりを告げようとしていた。

 

 

 

 

 

 

初めて降り立った戦場は地獄で、俺よりも年若い少年少女が戦っていた。

 

 

「——————生者が、死者の数を数えるようになったのはいつからだろう」

 

 

一夜にして友人を奪われた少女は、力の代価とともに壊れる寸前だった。

 

 

「あいつを、支えてあげて。一緒に戦えない、私の分まで――――」

 

 

俺が助けた少女は、涙を流しつつも、笑顔のまま、彼女を支えてほしいと懇願した。

 

どうしてそんな顔が出来る? どうして俺を恨まない? なぜ、と自問する日々が続いた。

 

 

「——————貴方は悪くないわ。貴方の判断は、正しいものよ。ただ、間が悪かったのよ」

 

青い機体を駆り、戦場を疾駆する女性と邂逅した。

 

故郷を想う、守りたいと願う、彼女の力になりたいと、思ったんだ。当たり前の、当たり前の想いを、なぜ踏みにじられなきゃいけないんだと、許せなかった。

 

 

 

「本当に奇妙な一団ね。それにとんでもないお人好しと来た。で、しがない科学者に何の用かしら?」

 

この星の運命を決めかねない、とんでもない科学者いた。

 

 

 

 

 

少女は異邦の世界を目の当たりにする。

 

星に願う夢は、いつも儚く消え去り、己の知る世界は消えていく。月の地獄から始まった暗黒の時代は晴れず、ついには故国にもその脅威が忍び寄ってくる。

 

その義務と責任を持つ立場として、彼女もまた刃を取るべき存在だった。

 

無力を呪い、撃ち滅ぼす敵を討つ。しかし彼女はまだ、無力な少女だった。

 

 

———————力があれば、彼のような力があればと—————

 

正気を取り戻し、少女は悔恨を胸に宿す。彼らは多くの仇敵を屠った。まるでこちらの努力が無駄だと思わせるほどに圧倒的な。

 

 

—————少しでも、一瞬でも愚かなことを考える自分が嫌だった。

 

彼らが早く来てくれれば、助かる命は変わっていたかもしれない。

 

 

 

来訪者の介入で、世界は新たな局面を迎えることになったが、それでもこの星は一致団結という言葉を知らず、聴かず、その果てに一つの悲劇を招いてしまう。

 

京都で少女らを励ました彼の行方は知れない。

 

 

漆黒の世界に取り込まれた彼と彼の愛機は、ついに見つからなかった。

 

 

新たな希望となるはずの若き英雄は、世界の闇に呑まれた。

 

 

緊張が走る世界。冷戦の行きつくところまで行きかねない世界情勢。

 

 

だが彼女は知らなかった。あの闇の中で尽きるはずだった彼の命がまだ続いていることを。

 

 

 

彼は、彼自身が気づくことが出来ずに、世界の運命に縛り付けられる存在だったのだ。

 

 

 




もう大体誰がどのキャラなのか、わかる人はわかると思います。ゲームをやっていた、もしくはアニメを見ていた方ならば、ああ、こいつかぁ!と思います。

数年後に書くと思う二部についてですが、

ジグルド・F・アスハが多くの人間と出会い、父親を超えていく物語となります。


名残惜しいですが、リアルロボットの二次創作はいったん筆をおき、

以前から画策していたサッカーの小説に挑戦するつもりです。年内には書き始めたいと思うので、よろしくお願いします。
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