機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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挿入ミス申し訳ない


第2話 リオンの決意

CE.65年。プラントの自治権と貿易自由権を求める「黄道同盟」は活動を活発化し、シンパを拡大すると共に、名称を「自由条約黄道同盟:ZAFT」に変更。

 

CE.67年にはモビルスーツ実用第一号機が完成。滞りなくロールアウトされた。しかしその頃からコーディネイターへの風当たりはつらいものとなっていた。

 

 

特に理事国ではコーディネイターへの迫害運動が根強く、CE以前に存在した旧宗教の原理主義者も取り込み、武装団体として発展した組織、ブルーコスモスによる主導が大きかった。

 

彼らは「青き清浄なる世界のために」という言葉をスローガンに、反コーディネイター運動を続ける過激な組織だ。無論、彼らにも言い分はあるだろうが、彼らの行動がプラントの指針を強硬なものとしているのは何とも言えないものだ。

 

非理事国はこうした理事国とプラントの対立を利用し、何とか利益を生めないものかと動き、プラントは非理事国と接近する構図が出来上がりつつある中、

 

オーブは独自の外交を作る。

 

 

オーブは、オーブ連合首長国の法を守る者を手厚く、基本的にコーディネイターの問題に対して強硬な政策をとらないことで、隠れコーディネイターとして、彼らに生きる場所を与えたのだ。

 

出生の秘密は固く閉ざされ、互いに互いの秘密を語れない彼らではあったが、それでもこの情勢から逃れるオアシスでもあったオーブに、穏健なコーディネイターたちは集まるようになった。

 

 

そんな世界情勢の中、キュアンは宇宙を飛んでいた。

 

 

「キュアン、コロニーの重力制御装置だけど、ここまで大規模なものとなるとそれ相応の材質、耐用年数が必要になるわ。アメノミハシラとは規模が違うのよ」

 

「材質は発砲金属と新素材のEカーボンなどなどでいいだろう。Eカーボンは新素材なだけあって高価だが、一度作ればなんとやらだ。その後の利益を考えるならば、おつりはたっぷり出てくるはずだ。現計画で問題はないし、問題も起きていないだろう」

 

「それにしては少し、ケチなところもあるけど?」

 

「――――まず、表面部分をアルミ合金やジュラルミンで使用する。理由は明白だ。破損に対する迅速な修繕にはもってこいだからね。それに、壁はこれだけではない。ここで内壁にEカーボンをふんだんに使う。何しろ居住区もスペシャルなコロニーだからな――――本当に割に合わないからな、今は。ここまで資金を引っ張り出すだけでも苦労ものだよ」

 

 

「―――――ごめんなさい。出資者でもあったわね。あなた」

素で忘れていたエリカ。きちんと宇宙服を身にまとい、作業者と一緒にヘリオポリス建設に汗を流すキュアン。作業者にねぎらいの言葉や、広く浅くがモットーな彼と軽い雑談を交え、フラガ家主催の新型の宇宙用機材の宣伝を行っていた。

 

相変わらず抜け目のないやつ、と目を細めるエリカ。

 

「その通りだよ。だから何としてもこのプロジェクトは成功させたい。その心意気を汲んで、オフにお茶でもどうかな? 楽しい話ができると思う」

 

そして熱烈なラブコール。彼女は思う。お客様にアプローチするのはどうかと思う、と。

 

「ごめんなさい。休みがないのよ」

 

「―――――すまない。私も実は休みがない」

 

そして打ち合わせ通りともいえる無慈悲な回答。現実は時に残酷だ。

 

 

 

一方、リオンは自分がもつ記憶を頼りに、重機のバランサー調整に従事していた。

 

「多軸化されているアームユニットのプログラムは、先にバグを出すからね。パワードスーツではなく、今回は巨大ロボット重機に乗るから関節がへし折れるなんてことはないけど、建設中のコロニーに穴をあけたら目も当てられない。あとでバグが出たプログラムはシステム開発部に渡して。回路全部直すから。」

 

「わかりました」

 

 

66年半ばからフラガ家出資の宇宙用重機の開発・設計を手掛ける会社の技術部に所属するリオンは、持ち前の技術力と反則じみた経験、知識を有し、立派な技術者となっていた。

 

これでコーディネイターでないのだから驚きだと周囲は言う。

 

「あと、工場内の一定環境は変えないでね。非接触型のレーザーで形を正確に測ることが出来る今だけど、それはあくまで整備された環境下。5Sを徹底して。時間が多少かかってもいいから。一つの埃がNGの元だよ」

 

今日も働くリオン。カガリはどうしているだろうか、と少しだけ想いをはせる。

 

 

そんなところに、ある女性が彼のもとを訪れる。

 

「あら? こんなところで寂しそうにするのはよくないわよ」

彼の先生でもあったエリカ・シモンズに慰められるリオン。

 

 

「悲しくなんてないです。ただ、遠いところまで来たなぁと。」

遠くを眺めるのは半ば癖になっていたリオン。手の届かない場所へ手を伸ばす。人の身に余る行為だというのに、止められない。

 

どこまで行けるのか、どこまで飛べるのか。それを知り続けたいと感じているから。

 

 

 

「貴方ぐらいの年だと、私はまだ公園で遊んでいたわね~。月日が流れるのはあっという間。そして、リミットが近づくのもあっという間」

 

 

「先生。その発言は重いです。ちょっと節操がないと思える発言はその、控えてください。」

じりじりとゆっくりと後退するリオン。

 

「私だって、私だって出会いが欲しいのよ~~!! もう~~慰めて~~~」

大の大人の女性が15歳に満たない少年の胸に飛び込むシュールすぎる絵。リオンは自分が立派になったのはこの人のおかげであり、何となくきれいな人だなぁと考えていたので、むしろ悪い気はしなかった。

 

――――はぁ、もう少し俺が早く大人になれたならなぁ

 

 

「先生にはきっと素晴らしい人が来てくれます。それに、先生の選んだ人なら、きっと大丈夫です。はい、俺が保証しますよ」

しかし、現実はそうではない。せめて先生には幸せになってほしいと考えていたリオン。

 

「ほんとぉ?」

涙目に上目遣いのエリカ。ちょっとこれは来るな、と思ったリオン。理性を抑えてさらに肯定する。

 

「だって先生は、本当に素敵な女性ですから。だから世の中の男は放っておきませんよ」

 

 

「――――そうね、そうよね。もう私もあきらめなくていいのよね」

 

低い声だった。なんだか少し怖い。

 

――――ここはあまり詮索するべきではないな

 

 

しかし、リオンは自分の一言で、のちに大きな衝撃を受けることを知らない。

 

 

 

エリカを慰めた後、今度こそ過去のことを思い出すリオン。

 

 

 

それは去年ぐらいのこと。半ば研修に近いリオンの修業が終わり、本格的に会社へ勤めることになるのだが、カガリに泣きつかれてしまったのだ。

 

「おまえっ! もう大人になる気かよ!」

まだ遊ぶべきだとカガリは憤る。もう少し子供を楽しむべきだと。

 

「いやぁ、バグを見つけ出して直すのがちょっとね。ここで負荷がかかったり、抵抗が弱いせいで要求通りに動かなかったり、ノイズが出たり、原因を見つけるのが楽しいというか」

 

専門的な用語を羅列するリオン。カガリにわかりやすく説明する。だが、首を横に振りよくわからないと答えた。

 

「何か違う遊びを覚えているだろ! おかしいだろ!」

 

 

「いやさ、おれにも目標が出来たというか。最近のオーブの動きを見て、ね」

リオンが白状するように答える。

 

 

「コーディネイターもナチュラルも関係ない。手を取り合って作業に従事する環境はいいことだから。現場の俺たちが結果を出せば、少しはこの淀んだ空気も変わるかもしれない」

 

今の人類は、もっと単純なことに気づこうともしない。相手も人間だということ。理解しあうことの大切が重要だということを。

 

 

「俺は、いろいろと清濁飲み込んだとはいえ、カガリのお父さんの政策に賛成しているから。政治は畑違いだからよくわからないけど、カガリならできるよ」

 

 

「わ、私にはお父様のような立派な方には到底――――」

尊敬する父のような政治家になれる、そういわれたカガリは今の自分を見て届かないと考えていた。なにしろ、何をやっているかすらわからないのだから。

 

国を背負う重みというものを漠然と理解してはいても、彼女には背負う覚悟も力もない。

 

 

「けど、それをわかるカガリなら、きっといい政治家になれる。逆に自信満々なら心配になったから。だから安心」

マスドライバーに待機しているシャトルへと乗り込むリオン。もう後は振り返らない。

 

 

「――――少しずつ、少しずつ私も頑張る。お父様、じゃない。私なりに、オーブをよくできる政治家に、なってみせる!!」

 

背中から彼女の決意が聞こえた。進む道は別でも、思いは一緒。リオンもカガリも、オーブという国をよくしたい。

 

しかし、リオンがオーブという国に賭ける想いは、それだけではない。

 

――――オーブの在り方を、誰もが安心して暮らせる理想郷とは言わない。

 

その理想を目指す国は世界でも少ない。逆に風当たりが強いのが実情だ。

 

 

――――それでも、それを目指すこの国を、失うわけにはいかない。

 

リオンは悟っていた。これは大火災で自分の命を守った予知という能力を使うまでもない事実。

 

CE.66年現在でも変わらない答え。リオンはそれが早いか遅いかの差だと考えている。

 

 

プラントと理事国の間で戦争は起きる。その荒波の中でも、オーブは中立を保てるだけの力が必要になる。

 

――――けど、おれにはそれを止める手立てはない。

 

リオンの心はシャトルの席に乗り込んだ時は沈んでいた。どうにもならないとどこかあきらめていた。

 

今のリオンには、いずれ来る荒波に備えることもできなかった。

 

 

 

 

オーブ、オノゴロ島に居を構えるフラガ邸。リオンの引き取り手としてオーブに移り住んだキュアンは、晴れやかな天気だというのに気持ちは沈んでいた。

 

 

「――――リオンが聞けば、なんていうだろうな」

キュアンは、憂鬱な気持ちだった。

 

オーブは、中立という立場を守るためにはどんな手段も厭わない。さすがはオーブの獅子。

 

すでにその後のシナリオも描き終えている。無論、これは彼女にも言えないようなことだ。

 

「軽蔑されても仕方がない。だが、オーブには守る盾はあっても、外敵を退ける矛がない」

 

 

中立とは聞こえはいいが、他の国の国民、世界情勢に関心を見せないと宣言しているものだ。悪く言えば面倒ごとは丸投げしているといえる。当然、こんな態度をとる国を、当事者たちはよく思わないだろう。

 

――――今の技術は水準をクリアしている。けど、兵器関連のノウハウが弱い

 

サハク家を中心に、モルゲンレーテが連合との技術交換を画策しているらしいことは、すでに暗部の者から聞いている。

 

確かに大艦巨砲主義の理事国の火力分野においては、著しい勢いを感じられる。光学兵器の最先端を走るのは間違いなく彼らだろう。

 

逆にオーブは彼らが予期していない巨大機動兵器の可能性について知らない。まだ、オーブ側から接触するべきではないということ、それだけは賛成だったリオン。

 

今動けばきっと理事国に技術を安く買いたたかれる。それが後々火種になる。

 

 

「急に呼び出されたと思えば、こんな事態になっているとはね。サハクさん。」

 

目の前のオーブ氏族の一人、コトー・サハクに急遽呼び出されたキュアンは、経緯をすべて理解したうえで苦笑する。

 

「――――すまないとは思っている。だが、今は最悪を想定したかじ取りが必要になる。無論オーブもただでは済まない。ウズミ氏と私の引退により、最もタイミングのいい時期に事を起こすつもりだ。」

 

泥をかぶることなど些末事。オーブに必要なのは、何度も言うが中立を維持できる力だ。

 

「一介の商人風情にすぎない私に漏らす機密ですか?」

 

「大西洋連合から丸々抜き取った暗部を持つ立場でよく言う」

 

 

軽い世間話やジョークはここでは必要ない。そう感じた両者は、軽いジャブを終了させ、本題に入る。

 

「――――開戦直後に動くのが最善でしょう。シナリオとしてはプラントが理事国に対して何らかの理由で優位に立った時」

 

プラントが開発しているモビルスーツなる兵器。フラガの遺産と酷似した兵器を主力兵器として扱う彼らが万が一でも理事国に大勝したときこそが、絶妙なタイミングである。

 

政治を齧る者ならば、オーブが行動に出た理由を簡単に看破できるだろう。ゆえに、手を出させない。

 

「プラント、今ではザフトですが、余計に敵を増やすわけにはいかないでしょうね。オーブが参戦したわけではない。局地戦には勝利しても、物量差は歴然だ。」

 

しかし、すべては連合が普通に勝利すれば全くの徒労。しなくてもいい方法である。

 

「願わくば、理事国が勝利することを願わずにはいられませんよ。無駄な労力をかけずに済む」

 

「もっともですな。しかし、コーディネイターはバカではない。既存の機動兵器にとっては的にしか思えない巨人もどきが戦場の主役になる展開。奴らならば何かを起こしてしまう気がしてならないのだ。そうだ、私はコーディネイターを評価しているが、同時に恐れてもいる」

 

コトー氏の言うことはわかる。プラントでは空前の技術革新が起きている。緊張状態にある中でもそれは続いている。

 

理事国には強力な遠距離攻撃と、弾道ミサイルという大量破壊兵器を所有している。プラントが勝利するには、この2つを攻略する必要がある。

 

「しかし、本当に行えますかね。核と誘導弾を攻略する手立てが。迎撃能力特化しか思い浮かばないですよ」

 

不穏さを増す世界情勢。オーブは選択を迫られつつあった。

 

 




カガリの成長がこの小説のオアシス(涙)
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