機動戦士ガンダムSEED 理想の従者   作:傍観者改め、介入者

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リオン君、止まるんじゃねぇぞ・・・・


第3話 リオンは駆ける

CE.60年代後半。

 

理事国はプラントから齎される利益を独占し、非理事国を締め出す一方で、プラントへの重いノルマを課していた。

 

それに対する反対勢力や反対思想は生まれるものの、63年のプラントの爆破テロによるエネルギープラント破壊で、サポタージュ騒動ほどの混乱は見られなかった。

 

CE.65年。水面下でプラントは、プラント内での自治権、貿易自主権の獲得運動を目指す、「黄道同盟を自由条約黄道同盟:ZAFT」に変更した。

 

その時を虎視眈々と狙い、その日まで力を磨き続けていたのだ。

 

 

CE.68年。ついにことは起き始める。

 

ZAFT所属議員が評議会の多数派を占め、自治獲得、貿易自主権獲得を最優先とする決議が行われたのだ。これは、今までにないプラント内での、明らかな理事国への挑戦と世界は見た。

 

 

さらに翌月の理事会とのプラント運営会議でもその意思を世界に示した。もうプラントは止まる気はないし、連合相手に対等な関係を望もうとしていた。

 

 

当然プラント側の突然の表明に対し、理事国は大反発。武力による示威行動に出るが、プラント側もこの日のために備えた軍備拡張でこれに応じ、にらみ合いになる。

 

両勢力の緊張が固まる中、ザフトは南アメリカと大洋州連合に接近。程なくして食料輸入及び、工業製品輸出が取り決められる。非理事国であった二国はプラントの動きを歓迎し、理事国への対決姿勢を明確にした。

 

 

勢いに乗るプラント側を止めたい理事国側は、クライン議長の解任と議会の解体、プラントの自治権完全放棄を要求するも、無論プラントがそれに応じることはない。

 

 

苦肉の策として、理事国側はプラントへの食料輸出の制限を行う。しかし、すでに食糧ルートを確保しつつあるプラントにはそれほど痛くないものであった。

 

戦争一歩手前ともいわれた両勢力を揺るがす事件がさらに起きる。

 

同年8月。南アメリカから食料輸入を行おうとしたプラント籍の貨物船団が、理事国側に撃沈されたのだ。これにより、プラント市民の不満は頂点に達するかに見えた。

 

明らかな民間船舶への攻撃。これにプラントは強い抗議を示し、政治結社だった「ZAFT」は、黄道同盟の主要人物のひとりであったパトリック・ザラの指導のもと、解体・再編成される。

 

さらに、プラント内の警察的保安組織と合併、モビルスーツを装備した軍事的組織である「ZAFT」が組織される。

 

 

世界情勢がうねりを見せる中、その混乱に翻弄され、別れを迎えることになる二人の少年がいた。

 

 

「本当に、キラはヘリオポリスに行くのか?」

 

月面都市コペルニクス。二人は互いの出生を明かし、親友となった。地球ではもちろん、この月面でもコーディネイターへの差別は及んでいた。彼の親友でもあるアスラン・ザラは、こうした情勢悪化に伴いプラントへと戻ることになったのだが、キラはオーブの衛星都市ヘリオポリスに向かうことになった。

 

オーブも融和政策の中で課題を残しつつも、世界でも比較的ましな思想である。アスランもキラの家族が選択した決断に強くは言えなかった。

 

「うん。オーブはオーブの法を守る人間を迎え入れてくれる。ナチュラルもコーディネイターも関係ない。僕の親への風当たりだって強い。だったら、両者を迎えてくれる国を選ぶしかないんだ」

キラと呼ばれた少年は、両親がナチュラルだった。反コーディネイター思想に取りつかれた地球のほとんどの国家群ではなく、コーディネイター至上主義が蔓延しつつあるプラントも選べない。

 

オーブしかなかったのだ。

 

「そうだな。オーブという国は俺にとってもいい国だと思うよ。この難しい課題に挑む姿は、共感できる部分がある。きっとキラも安心できると思う。」

 

そういってアスランは笑う。きっと一時の時期なのだ。こんな緊張状態はすぐに終わる。

 

「うん。オーブなら平和だと思う。アスランも来ればよかったのに」

 

 

「いや、それは厳しいだろう。俺は父上の息子だ。立場上プラントを離れるわけにはいかないさ」

ほんの少しオーブに遊びに行きたかったアスラン。オーブという国をこの目で見てみたい。地球の国家の中では異色の路線を歩んでいる国の空気を知りたいと感じていた。

 

 

「名残惜しいが、またな、キラ。さよならは言わないぞ」

 

「うん。元気でね。落ち着いたらまた会おう」

 

 

 

 

そして翌年のプラント。CE69年。ザフト最高評議会議長シーゲル・クラインはプラント内での食料生産を開始し、ユニウス市の7~10区が穀物生産プラントに改装。本格的な自給自足の国体構築に力を注ぐことになる。

 

プラントの食料生産開始に伴い、当然理事国側は黙っていない。

 

 

実力を行使してもこれを排除すると勧告。威嚇行動が周辺で頻繁に見られた。が、プラントもそれに応じることはなかった。

 

 

 

生産プラントへと移住することになったある家族は、先行きが見えない世界情勢に不安を抱えつつも、軍事施設ではないユニウス市に希望を見出そうしていた。

 

「大丈夫、なのかな」

銀色の髪をした少女は、地球での差別で悩まされた挙句、家族総出でプラントへの移住を決意したものの、言いようのない不安を感じていた。

 

「大丈夫だよ、フィオナ。さすがに理事国だって非武装地帯への攻撃はしないさ。それに、ここへの移住は推奨されているし、新しく事業を開くことだって容易だ。なんだかんだ言ってもここは安全だよ」

父親の言葉を聞いても、浮かない顔をするフィオナと呼ばれた少女。

 

その途中、ある人物と出会うことになる。

 

「あら。新しくプラントへ渡ってこられた移住者かしら」

黒髪にショートカットの美女。優しそうな風貌をした大人の女性を感じさせる人に出会ったフィオナの父親は、瞬く間に顔を赤くしてしまう。

 

「え、えぇ! そうなんですよ。ユニウス市での開拓には多大な興味もありますし、もともとこういうのは慣れていますから!」

 

「あなた? 地球でもここでも本当に変わらないのね」

ニコニコしながら彼女の父親が横の襟をつかむ。

 

「ち、違うんだよ! これはその、はい、すいませんでした!!」

 

 

フィオナは思った。

 

「お父さん不潔」

 

「ぐはっ」

 

「あらあら。可愛らしいのにいうことははっきり言うのね。こういう素直な子はこのユニウス市には大歓迎よ」

 

このユニウス市、というフレーズに父親を含めたフィオナの家族は首をかしげる。

 

「農作物のスペシャリストと言われたマーベリック博士の噂はかねがね。ぜひともそのお力を皆さんのために役立ててほしいのです。幸いなことに、資金はたっぷりありますから」

いたずらっぽくウィンクし、親指と人差し指で輪を作る女性。

 

「あ、あなたはザラ議員の――――」

母親は驚いていた。まさかそんな議員の関係者がこんなところにきているとは考えていなかったのだ。

 

フィオナは、そんなザラ夫人、もといレノア・ザラを見て、憧れに近い感情を抱いた。

 

――――どうすれば、ああいう素敵な人になれるのかな。

 

子供の、女の子のありふれた憧れを彼女に抱いたフィオナ。

 

「あ、あの!!」

だからたまらず彼女はレノアに尋ねる。

 

「どうしたの、お嬢ちゃん?」

 

「どうしたら、そんな風に魅力的になれるんですか?」

 

「えぇえ!?」

父親は驚き、

 

「あらあら。」

母親はそんな娘の成長の刺激になったレノアと娘の様子に微笑んだ。

 

「えっと、私が気を付けること、ではあるのだけれど――――」

困ったような笑みを浮かべつつも、フィオナの願いに真剣に向き直るレノア。暖かな空間が、この新しいフロンティアで生まれていた。

 

 

しかし、翌年に悲劇がやってくることを、彼女らは知る由もなかった。

 

 

一方、ヘリオポリスに移住したキラ・ヤマトは、リオンとカガリと遊んだこともあったトール少年のグループに温かく迎え入れられた。

 

「祝! ようこそ、ヘリオポリスへ!!」

大きく手を広げ、工科カレッジの学生となったキラを迎えるトール・ケーニヒ。持ち前のコミュ力を発揮し、ボッチになる寸前だった彼を救う。

 

「隣の家だからな、これからよろしく!」

その横では眼鏡をかけた少年、サイ・アーガイル。

 

「ひゅーひゅー」

アルこと、アルベルト・ロペスが無気力な口笛を鳴らす。いや、単に無感情に言葉に出しているだけだった。

 

「――――――」

カズイ・バスカークは恥ずかしいのか、黙ったままだった。

 

「ねぇ、久しぶりにフットサルやろうよ。あの時もそうだったでしょ」

トールの彼女であるミリアリア・ハウは、キラを入れてあの時のようにまたフットサルをしようと提案する。

 

「そうだっ! あいつらを今すぐ呼ぼう! フットサル好きに悪いやつはいないし、キラのことだって理解してくれるさ!」

 

そんな熱烈ムードで迎えてくれた彼らを見たキラは、

 

――――アスラン。オーブって本当にいいところだよ。

 

この国でなら、自分はうまくやっていけるだろうと、期待感を感じていた。

 

「うん。これからもよろしく。フットサルは初めてなんだ」

 

 

「いつか見た展開、嫌な予感しかない?」

 

 

「ええ……まさか、そんな言葉が返ってくるとは思わなかったよ」

アルの思わぬ言葉にキラは苦笑いが精いっぱいだった。過去に彼らは何かあったのだろうかと、キラは少し彼らを気遣う気持ちが出来た。

 

 

 

 

 

時代は少しさかのぼり、67年初頭

 

66年からヘリオポリスと時々オーブ本国へと行き来しているリオン・フラガはキュアンからの思わぬ報告を受けて、衝撃を隠せないでいた。

 

「え!? なんでそんなことになっているんですか、叔父さん。」

 

 

「いやぁ。長きにわたる攻略戦の末、彼女を口説き落としたのだよ」

屋敷にて、キュアンがうれしそうに語る。

 

「だからって、66年の年末にエリカさんと結婚していたなんて、ひどいですよ。俺全然知らないんですけど」

ジト目でキュアンをにらむリオン。人がコツコツ働いていたのに、ラブロマンスなんてやる暇があったのかと。

 

「ははは。同じ時間帯に働いていると、こう、心が通じ合うところがあってね」

 

「意味が分かりません。叔父さんのナンパ癖は困ったものです」

 

 

「けど、おれは女性には誠実であろうと考えている。婚約を機に、ナンパは卒業さ」

まじめな顔で語るキュアン。それほどエリカを愛しているのだろう。

 

リオンにはわからないが。

 

「まさか、先生のことを母さんと呼ぶ日が来るなんて考えていませんでした。ところで、苗字はどうするんですか? やっぱりフラガになるんですか?」

 

このご時世。苗字が違う夫婦もいないことはない。旧文明が崩壊し、新文明はある意味自由な風が吹いていた。だからこそ、リオンは素朴な疑問を問うたのだ。

 

「そうだな。これからはエリカ・フラガということになるね。しっかりと使用人もついているし、子供が出来ても問題なし」

 

「やる気満々じゃないですか。エリカさんに逃げられますよ」

おれにはそんなガツガツした行動は、恥に感じてできませんと答えるリオン。

 

「わかってないなぁ。リオンはまだお子ちゃまだからな」

 

「意味が分かりません。先生はそんな――――その、そんなではありませんよ」

 

よくキュアンの悪口を笑顔で言うような人だ。そのくせ、キュアンのことになると熱くなる。恋仲であるといえば必死になって否定していた。

 

――――あ、これはダメな流れだ。

 

リオンは日ごろのエリカを見て、悟った。ああ、あの頃からすでにこの男の毒牙にかかっていたのかと諦念を覚えた。

 

「まあ、先生を泣かせないようにするなら、文句はありません。」

 

「先生じゃないぞ、もうお前のお母さんだ。それに、もうすぐお前は兄になるんだからな」

 

 

「本当にやる気満々ですね。叔父さんはいやらしいです」

頭の悪い会話をしたくないリオンは、適当に叔父をあしらい、作業へと戻っていった。

 

 

 

「――――――――――――――」

リオンが去っていったのを遠目で見て、ちらりと横目で周囲に合図をするキュアン。

 

「――――――あそこまで慕われていたとはね。さすがはリオンに先生と言わしめた才女、そして俺の最愛の人」

 

 

「―――――はぁ、私がここにいることを知れば、彼は怒りますよ」

やや肩をすくめた様子で壁の裏側から現れたエリカ・フラガは、リオンの様子を見て苦笑いをする。

 

「大丈夫さ。リオンも混乱しているんだ。思春期特有のあれさ。尊敬する女性が、いきなり母親になるんだからな。あいつも追々慣れていくさ」

 

 

「彼に遠回しにいろいろと聞かれるのも、なんだか気恥ずかしいですね」

 

 

「はっはっはっ。そこは気張ってくれ。ちなみに俺は堂々とするつもりだから。私は君を妻にしたことに、何一つ恥じるところはないからね。」

 

「もう――――」

 

 

 

「ふふふ。では、行こうか」

 

 

「まだ日が昇っていますよ」

 

 

「むしろ、お天道さまへ挑戦状をたたきつけたいところなんだ。あきらめてくれ」

 

 

 

 

キュアンとエリカが結婚するという知らせを聞き、訳が分からなくなったリオンはオノゴロ島から見える海岸の景色を眺めていた。

 

「何黄昏ているんだよ」

そこへ、リオンが帰国したのを知って駆け付けたカガリがやってきた。

 

「――――なんでもない」

 

「聞いたぞ。叔父さんのこと。まさかあいつに手を出していたなんてなぁ」

あの色ボケ男め、と苦笑いするカガリ。子供には紳士的な男だったが、女性に対しては、スイッチが入るとオオカミに変身する厄介なやつ。

 

しかし、その愛情にウソ偽りがないので何とも言えない。きっと自分たちが知らない事柄があったのだろう。

 

「―――――いや、先生が叔父さんとそういう関係だったことに驚いただけで、その、嫌ってわけではないんだ。」

 

 

そんなことはない。リオンは間違いなくキュアンに嫉妬していた。

 

年上の魅力的な女性に対し、漠然とした憧れを抱いていたリオン。その女性を射抜いたのが自分を引き取った叔父。複雑な感情であることは仕方ないと。

 

「まあ、その、気にするな! 今後は身近にいろんなことを学べるだろうしさ!」

慰めるような形で、リオンに言葉を投げかけるカガリ。

 

「夜うるさくなるなぁ」

はぁ、と何となくあの叔父なら夜もテンションアゲアゲだろうと考えたリオンがぽろっととんでもないことを口にする。

 

「な!? なっ、生々しいことをいきなり言うな! こっちも恥ずかしくなる!!」

ガサツな性格とはいえ、カガリも女の子だ。それも意識している男子の生々しい言葉に反応しないわけがなく、赤面しながらリオンを叱責する。

 

「いやぁ、うちの叔父は、性格がまぁ、あれだし。そうなるんだろうなと思っただけで」

 

 

「バカっ! 変態!! リオンのあんぽんたん!!」

 

 

「え!? 俺じゃない! 俺は変態じゃない!!」

いきなりの罵倒の嵐にうろたえるリオン。いったい自分が何をしたというのだ。

 

 

「だってあいつのそういうことを想像したんだろ!? そうなんだろう!?」

 

 

「お、おいっ!! 女の子がそんなことをいうもんじゃない!!」

 

 

「うるさい、リオンが悪いんだ!! バーカバーカ!!」

 

 

「ちがうっ!! 俺は変態なんかじゃない!! 違うんだぁぁぁぁ!!」

 

 

そんなこんなでキュアンとエリカの結婚騒動は、カガリが疲れて寝て、リオンがおぶって家まで届けて夜でピークを迎えることになる。

 

一緒に寝てしまったと勘違いしたカガリの痛烈な右ストレートがリオンの頬にヒットし、キュアンが夜どころではないと中断するところまでを見たリオン。

 

「なんて日だ、ちくしょう……泣ける、泣けるよ……」

 

「リオンのあんぽんたん! 変態!! 責任取れ!!」

着衣の乱れたカガリをなだめるまで、朝から昼前までかかったリオン。久しぶりの休暇をちゃんと休むことが出来なかったなぁと嘆いたのだった。

 

 

運命の瞬間まで、あと3年。

 




ここでフィオナちゃん(幼)登場。前回よりも早くのスポットライト。

申し訳程度のラッキースケベ。たぶん最後かも
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