機動戦士ガンダムSEED 理想の従者 作:傍観者改め、介入者
今回、アスランは前作よりも堅物で、前作よりも主人公気質だと思います。
CE.70年。プラントは、理事国の要求に対する回答の為、月へ向かう事になる。
しかし、理事会へ向かう評議委員へのテロが発生。議員一名が死亡したのだ。
その際に、「ブルー・コスモス」による犯行声明が出るが、背後に理事国の存在が明らかになり、プラントは物資の輸出を停止。生産のほとんどをプラントに頼っていた理事国家群は窮乏した。
これにより、経済におけるパワーバランスがついに崩れた。プラントは非理事国との協調路線を構築したために、食料に困ることはない。対する理事国はその恩恵を失い、一気に経済における地位を落としていた。
ゆえに、理事国も後戻りする気はなかった。ブルー・コスモス、理事国の政府の宣伝活動により、地球の人々の中に反プラント、反コーディネイター意識が強烈に植え込まれていく。戦争が避けられない状況への仕上げがされていた。
しかし、尚も戦争を回避しようという試みも行われた。月面都市コペルニクスで両勢力の緊張緩和の準備を為すために、政府要人がまたしてもそれぞれ月へ飛んだ。
進み始めた時の流れには抗えない。
コペルニクスでまた爆弾テロが発生。犯行動機、背後関係もわからないこの不明瞭なテロにより、政府要人が死亡、プラント側の代表のクライン氏は難を逃れる結果となった。
理事国はこれを、プラントの自作自演だと主張し、ついには理事国、それに与する国家群を集め、国際連合に代わる「地球連合」を設立。
対決姿勢をさらに強めていく。世にいうアラスカ宣言である。
そんな中、オーブはいち早く中立宣言を発す。オーブはウズミ氏の宣言により、親プラント国と、連合から距離を置いた独自外交を継続。地球連合諸国はプラントに目を傾けており、プラントもオーブに構う余裕はなく、特に混乱もなく世界に認められた。
CE.70年。地球連合はプラントに宣戦布告。月面基地プトレマイオス基地より進撃を開始。プラントもそれに対応し、ザフト軍を派遣。ついに両勢力の戦乱の火ぶたが切って落とされたのだ。
なお、この際ブルー・コスモスに所属する将校により、MA空母「ルーズベルト」に、極秘裏に一発の核ミサイルが搬入されていた。しかし、それは事が起こるまで知らされていなかった。
その様子を見守り、ヘリオポリスの学生に扮していたリオンは、
「――――やはり始まったか」
彼の予想の範囲内だった。今の彼には、なんの力もない。
予測できても、無力のまま。
「――――リオン、オーブは中立を志したけど、どうなるんだろう。」
横には報道を彼と一緒に見ているカガリ。
「物量では圧倒的に連合軍が有利。技術力では若干プラントだろう。しかし、この戦力差は簡単に覆せるものではない。」
――――俺の記録にある、ミノフスキー粒子と呼ばれる物質。それに類するものがあれば、
この戦局は、一気に変わるだろう。
一方、ユニウス市でレノア・ザラとともに食料プラント建設に力を入れていたマーベリック博士の娘、フィオナ・マーベリックは首都、アプリリウスを訪れていた。
「えっと、初めまして。フィオナ・マーベリックです」
まさか議長の息子と出会う機会があるとは考えていなかったフィオナ。
「初めまして。母上とはよく話をされていたと聞いていたので、いつか会いたいと思っていました。今日はよろしく、フィオナ」
やや口調が固いが、それほどとげのある感じ方ではない。むしろ、真面目そうな雰囲気、真面目そのものだ。
「レノアさんはよく言っていたわ。私と同じぐらいの年の子供がいて、年相応に笑わないけれど、とてもやさしい心の持ち主なのだと。今日貴方に出会って、それを理解しました。こちらこそ、あえてうれしいです、アスラン」
にっこりと笑い、フィオナはアスランにこの出会いの喜びを伝える。
「い、いや。こちらこそ、よろしく――――フィオナ」
照れているのか、アスランはフィオナの笑顔を見て目を逸らしてしまう。
――――母さんめ、この子にあれこれ教えたみたいだ
母さんのコーディネイト力は伊達ではない。知り合いのニコル・アマルフィーも母さんによって可愛くさせられたサンプルだ。
初見で出会ったときでさえ、美少女然とした姿を見せつけられ、その物腰もまさに絵になるといっていい。
「今日はアスランのお話をたくさん聞きたいです。いいですよね?」
「あ、ああ。俺の話せることなら、なんでも」
断る理由などない。
――――キラ、おれもプラントに戻れてよかったかもしれない。
だが、戦争の在り方を決めてしまう日がやってきた。
CE70年2月14日。
ブルー・コスモスの将校が持ち込んだ一発の核ミサイルが、フィオナの両親と、レノアのいるユニウス市に直撃したのだ。
アプリリウスにいたフィオナは無事だったが、ユニウス市は多くのコーディネイターたちが開拓を推し進めていた。ゆえに、ユニウス市在住の民間人はそのほとんどが残っていた状態だったのだ。
核による爆風により、スペースコロニーの外壁はあっさりと破壊され、コロニー内に存在した空気が宇宙空間へとものすごい勢いで吐き出されていく。その爆風に近い竜巻に吸い込まれ、ユニウス市の人々はなすすべなく、次々と息絶えていく。
悲鳴を上げる間もなく、彼らは死に絶え、静寂のみが残った。
生存者はいない。ユニウス市は完全に崩壊したのだ。
これが、プラントを戦争に完全に傾けた元凶。
血のバレンタイン。血塗られた世紀であることを決定づけた、民間人を大量殺傷した事例として、後世に語り継がれていくことになる。
同日。その凶報を知ったフィオナは崩れ落ちた。
「――――うそ、よ―――――そん、なの――――だって、つい先日だって――――」
壊れたゼンマイのように、言葉が途切れ途切れになっていたフィオナ。放心状態のまま、アスランに連れられるままに療養する。
「――――――くっ」
アスランもレノアという実の母を失い、ショックを受けている。それは無論父親のパトリックも同様だ。胸に空いた穴が埋まらない。
何をどうすればいいのかがわからない。今、自分がやるべきことは何なのかがわからない。
「嫌――――嫌だ――――なんで……お母さんが何かしたの? お父さんが悪いことを、したの?」
なぜ、どうして、なぜこんなことを平気でできる。なぜおれたちを認めてくれないんだ。
アスランには政治のことはよくわからない。しかし、平然と民間コロニーに核を落とす神経が理解できなかった。
父からも聞いている。食料プラントがなければプラントはやっていけない。重いノルマを課せられ、奴隷のような生活がまた始まる。そんなことを防ぐために、対等になるために頑張ってきたのだ。
その結果がこれだった。
「フィオナ。俺はザフトに行く。」
――――許せないんだ。
熱い感情がアスランを支配する。
「やめて――――」
懇願に近いフィオナの願い。アスランが遠くに行こうとしている。それだけを止めたいと思う彼女の願い。
「――――母上の、ユニウス市の市民の命を奪ったこと、これはもちろん許せない。連合のやり方を黙ってみているなんて、出来ない。」
それは偽りのない事実だ。本来なら家族のことが一番なはずなのだ。どうして自分はここまで冷静なのだと、アスランは自問自答するがわからない。
――――そうじゃない。
悲劇に立ち会い、家族のすべてを失った彼女を見て、冷静になった自分がいた。
――――ああ。今理解したよ
自問自答が終わった。アスランは許せないのだ。
「君からすべてを奪った、連合が憎い。君の涙が止まらない理由を作る、あいつらが許せない。だから、もう君が悲しまなくていいように。」
家族のことを幸せそうに語る彼女の笑顔を、綺麗なものを壊した。アレは、壊されてはならなかった。
アレは、侵されるべきではなかった。アレは、今も存在していなければならなかった。
「私はッ!!」
大声を出して、フィオナはアスランの言葉を遮る。だめだ、これ以上彼に続けさせたらいけない。
「私はッ! アスランまで遠くに行ってほしくない! 嫌なの、もう失うのは嫌なのっ!」
アスランを逃がさないように、彼に抱き着いたフィオナ。嗚咽が混じり、悲しみに暮れる彼女の姿は、むしろ彼の決意をさらに強固にするものだった。
「俺は死なない。必ず生きて帰る。だから、俺を信じてくれ、フィオナ。」
「やめてっ!! 戦争なんてやめてよ!! アスランが傷つくことなんて、アスランが戦場に行く必要なんて、ないじゃない!!」
「ごめんっ、帰ってくるまで、許さなくていい。だから、またな、フィオナ」
踵を返し、フィオナの両手をそっとつかんだ彼の両手は優しかった。その両手は優しくフィオナの手を彼の体から離し、彼女から離れていく。
「やだっ……やだっ!! やだよっ!! やめてっ! いかないでっ…いかないでっ!! いかないでっ!! やだやだやだっ!!!!」
「フィオナさんは少し錯乱している。少し落ち着かせてほしい。ゆっくり、ゆっくり彼女を癒してほしい」
看護師を呼び、暴れるフィオナを見ずに、アスランは病室を去った。
――――酷いやつだ、俺の自己満足だ。
自覚している。本当なら、彼女のそばにいるべきなのかもしれない。
―――だが、この手で無念を晴らすまでは、止まれない
暗い決意がアスランを突き動かす。
――――彼女が幸せに暮らせる世界にする。今は、そのことを――――
少年は行き、少女は止まった。
嘆きの声に耳を傾けず、少年はこの世界最大規模の大戦に、身を投じていくことになる。
その先に彼は彼女の幸せを守ることが出来るのか。それとも――――
軍服を身に纏い、父と謁見するアスラン。
「――――決意は変わらないのか」
「はい。俺は自分の意志でここにいます」
誓ったのだ。この戦争を終わらせるために、その力になるために。
「これからは、特別扱いはせんぞ。お前は一介の兵士。私は議員。それ以上でもそれ以下でもない」
パトリックは息子の前で気丈だった。最愛の妻、レノアを失い、悲嘆にくれる暇などない。彼にはプラントの議員としての責務がある。
「―――――ナチュラルどもは、我々を認めなかった。だというなら、こちらにも考えはある。我々は我々が敷いたレールを走り、新しい人類の在り方を提示しようではないか」
「―――――はっ」
アスランは怪訝に思いつつも返答する。それにしては思い切った発言だったように聞こえた。
「我々コーディネイターを恐れ、枷をはめようとしてきたが、そうはいかん。われらはわれらの自由と平和を守るために、武器をもって立ち上がる必要がある。そして、お前が生きてこの戦争を乗り越えてくれれば、最善の未来が待っているだろう」
パトリックが常日頃から言っていた、理事国による枷。それはプラントを調子づかせないためのブレーキ。だが、プラントの住民の人権を縛るものだと彼は言う。
「――――まだ私は、兵士未満です。己惚れるほどの自信も、実力もありません。ですが、その未来をつかむために、努力する所存です」
政治や思想についての知慮の浅いアスランは、実直な心境を述べるに留まる。余計なことを言うべきではない、そんな気がした。
「――――それと、アマルフィーの子女も戦列に参加するそうだ。お前は男なのだから彼女の面倒を見ろ。家族ぐるみの付き合いだ。それくらいの力量を示せ」
「――――いえ、先ほど特別扱いの話は―――」
「あのような娘まで戦争に参加するというのだぞ!! それを支えずして、何がザラ家の男だ!! しっかり面倒を見るのが、私と奴の義理というものだ。」
アスランのことは特別扱いせず、むしろ負担をかけまくるパトリック。ある意味特別扱いといえる。
端的に言えば、「お前は大丈夫そうだから、親友の娘を助けろ、それぐらいできるだろ? できなきゃ情けない」である。
「は、はっ! 全力を尽くします!」
意味が分からないアスランは、意味が分からないままイエスと答えてしまう。再構築戦争で蚊帳の外だった東アジアの国の国民性に似た反応。
アスランはノーとは言えなかった。
「それと、マーベリックの娘のことは、気の毒に思う。わしが責任をもって引き取る。安心して戦場で暴れてこい」
「はっ! 彼女のことを頼みます、ザラ議員」
そしてあえて特別扱いをここでしてくれたパトリックに対し、兵士見習いと議員という線引きをしたアスラン。
「まだ入学前だというのにな。だが、よい心がけだ」
CE.70年2月18日。血のバレンタインに際し、シーゲル・クライン氏は『黒衣(喪服)の独立宣言』を行う。
未曽有の大惨事で失われた犠牲者を弔う国葬の際、彼は独立宣言と「地球連合」への徹底抗戦を明言。
さらに、「地球連合」非参加国には優先的に物資を提供すると勧告する。非プラント理事国である大洋州連合、南アメリカ合衆国はこの勧告を受諾するものの、南アメリカは程なくして大西洋連邦に併合される。
そして、戦争の在り方を一新する、最初の激戦が始まる。
2月22日、世界樹攻防戦。旧世界の戦術が、破壊される。
このころのパパザラさんはまともです。
フィオナちゃんはアスランの妹分になります。なお、初恋が実る可能性は保証できない模様。
ニコル君が、ニコル君ちゃんになってしまいました。
何というか。原作通りなら――――ほら、やばいと思う?