何処に違いがあったのだろうか
ご注意を
何が違う
「ひっ、うぁ、ああ!とける!おれの!おれのカラダぁ!」
「いやだいやだいやだいやだ!」
「いやだ!いやだ!」
「うあああああああああああああああああアアアア
aaaaaaaAaaAaaAAAAAA!!」
何が違った
「ひぃっ、嫌だ!嫌だ嫌だ!どうしてだ!なんでだ!なんで!なんで俺だけが!こんな目に遭わなくちゃあならない!」
「俺は王の子なんだぞ!正統なる王の息子だったんだ!」
「俺が!俺だけが!誰もが満ち足りた理想郷を!親愛なる友が心から暮らせる平穏な国を!俺が!作る筈だったんだ!」
「あんな約束破りの王に相応しくない爺なんかでは成し遂げられない!あんな塵のような王についていった民では見られない!完璧な理想郷を!」
あのマスターと俺と、何処が違う?
「メディ.........ア?」
「おい、何言ってる、何を言ってる!」
「貴方は結局、『願いは英雄であれど、心根が捻じ曲がって』いるのです」
「その矛盾は余りにも大きなヒビ....そのヒビが、貴方の王の器に付いてしまっている」
「何を......やめろ.....やめろ.....!」
「イアソン様....貴方は王にはなれない、だから、貴方だけが唯一で居れる様に世界を壊しましょう」
「いっ、嫌だ!そんな世界!ただの、ただの独りぼっちじゃあないか!」
「俺が作りたかったのは、皆に慕われて、皆が笑顔で、皆が幸せで.....!」
「俺がそんな罰を受けなきゃならない理由が何処にあるんだ!俺は!俺は悪くない!お前を捨てたのだってお前が恐ろしいからだ!お前が裏切るからだ!お前は黙って俺の言うことに従っていればよかったんだ!」
「今度こそとお前を信じてやったんだぞ!裏切り者のお前の言う事を!なのに!なのに!何故なんだ!」
「......可哀想に.....でも、私だけは、貴方をお慕いしていますよ」
あのマスターの敵になったのが悪かったとでも?
それとも敗者だったからか?
いや、いや、そんな事はない筈だ
絶対に、絶対に
結局、あいつの側に居ても分からなかった
それどころか間違いなくあの神殿で少しも俺に目をくれることなくあいつは走っていった
あそこに俺が居ても、何の意味もなかったんだ
「ええいクソ....何でこんな戦場に来たんだ、私は!」
「グチグチ言ってる暇があるなら指示をなさい!口だけは達者なのが貴方でしょう!」
「煩い!口だけじゃあないんだぞ私は!」
つい、そう言った
本心からだった、間違いなく、自分には何もかもが有ると
いつだって自負して来た
だが、本当にそうだったか?
「っち!船長さん!数が多すぎるぜこりゃ!」
本当に何もかもがあるなら
本当に王になれる器があるなら
本当に、本当に自分が英雄たる人物なら
「イアソン様!?船の動きが止まってます!危険です!」
『こう』は、ならないんじゃないのか?
「っ!何ボケっと!.....キャッ!?」
足元がぐらついて、目の前にグロテスクで気味の悪い触手が迫ってくる
嗚呼、結局の所
私は英雄になんか─────
「◼️◼️◼️◼️ーーッ!」
「やぁ....私の名はイアソン、クラスはライダーだ」
「ん?オケアノス?いいや、全く覚えていない」
あの時から少し流れ、気がつけばあいつの元に召喚されていた
まぁいい、あいつの秘密を良く知れる
と、思ったが
どう見ても、あいつはただの普通のやつにしか見えなかった
何処にでもいる平凡な奴
オケアノスの時に見た奴とも、あの神殿で小さく見えていた奴とも違う
「あ、イアソン、クッキー作ったんだ、みんなに配ってるんだけど食べる?」
「ふん、仕方ないな、この私に食してもらうのを喜ぶと良い」
ますます分からない、あいつには確かに多くの英霊と絆を深め、それでいて誰とも深い何かを交わさないカリスマ性がある
だが、逆に言えばそれだけの筈なんだ
なら、俺の様に潰れる筈なんだ、責任感と、周りからの期待の重圧で
なのにあいつは潰れもしない、反発もしない
ただ受け入れて、進む糧にしている
「え?なんでまだマスターやってるかって.....うぅん、自分でも良くわかんないや、わかんないけど......なんかさ、前に進んでないと.....変な感じで、あはは!ますますわけわかんないよね!俺も分からないや!」
俺には分からない
────だから、確かめてみる事にした
わざとあいつをレイシフトに誘って、化け物どもの巣窟に放り込む
そして俺はあいつの行動を眺めて、今度こそあいつと俺の違いを理解するんだ
そうすれば、俺の願いはきっと叶う筈だ
目論見通り奴はまんまと騙された
どうせ普段の様子なら気高いフリをして命乞いをせずに死ぬのかもしれない、それとも逆に命乞いをするか?
「はは......楽しみだ」
カルデアの霊衣の力があるとはいえ、サーヴァントでさえ多少手こずる大量の悪霊にはあいつも為すすべがなかった。
「Urrerrrraaaaa.......」
「faoroerrrrrrrr......」
「くそっ.....みんなも呼べない、戦闘服も、使えなくなって来た....」
ああそうだ、もうお前に救いはない
だから諦めて死ね、お前はもう役目を終えてるんだ、何処とも知れぬ場所で死んでも良いだろう
「......死ねない.......死んで.....たまるもんか......!」
「俺が、此処で止まったら、俺に託してくれたみんなが、手の届かなかったあの人が、きっと報われないから.....!」
「っ......」
何故、まだそう言えるのか理解できなかった
「諦めてたまるもんか!絶対!絶対に!あの人達の分まで生きるって決めたんだ!」
もう精神的にも肉体的にもズタボロで、立てないはずなのに
何故立ち続ける?何故立ち向かう?
何故「託した」などと良いように扱われただけなのに、そうも奮い立てられる?
.......大分時間がかかったが、ようやく分かった
やはり俺は捻じ曲がっていて、あいつもまた捻じ曲がっているんだ
俺は英雄であろうとするが故に曲がって、あいつはただ前に進もうとするが故に普通とは捻れてしまった
そうだというなら、俺が結局英雄にはなれないと分かったのなら
私は船長であった時と同じく、私の目的の為に進もう
例え英雄になれずとも、例え願いを叶えられないとしても
少しぐらい英雄の真似をしても悪くはないだろう
そう思って慣れないことをする準備を終わらせた。
子供の頃憧れた大英雄の様に、憧れになれる日は来るだろうか
そんな小さな考え事も捨てて、ただ船に乗って、前を見据える。
「───さぁ、帆を広げろ!風を受けろ!海原は広く理想郷は遠い!ならばアルゴナウタイのリーダー!イアソンの名において宣言しよう!」
そう彼が叫びながら船に乗りこちらに向かって、俺を回収してくれた
「イっ、イアソン?」
「全ての船員よ!俺の理想郷に住むだろう民よ!」
「俺の国に不平不満はない!あるのは幸福と平穏なり!俺の船に乗り俺の旅に付き合う英雄よ!ならばその報酬に我が国の民となる事を許そう!」
「そして!その栄光ある旅路に邪魔な奴が居る!今からそいつを叩き潰せ!」
イアソンが長い長い宣言を終えると、魔力が船を通して流れ、それは形となって現れていく
「俺の宝具を見せてやろうマスター!よく目に焼き付けておけ!」
「
現れた英雄達は、一斉に多数の悪霊に飛びかかり、一網打尽にしていく
それは輝かしい英雄談の如き輝きで、誰もが一騎当千の力を持っているように見えた
そしてこの宝具は多分、イアソンが船員に向けた信頼と憧れの証でもあるように思えた。
結局、カルデアに帰ってからイアソンはこっ酷く叱られていた。
自分としては、まだイアソンが故意でやったようには思えないのだが、多分甘すぎるだけなんだろうなぁとも思う
「あ、イアソン....」
「..........なぁ、マスター、よく覚えておけ」
「えっ、あ、う、うん」
「辛い時には誰にだって頼って良いんだからな、一人で抱え込むのは馬鹿のやる事だ、よく肝に命じておけ」
それが過去からの教訓なのか、それともカッコつけたいだけだったのかは分からないけど
やっぱり彼も立派な英霊の一人なんだろうと、思えた。