ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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久しぶり主人公視点ですw


第105話 踊らされた罪

 拘束されていた場所から逃げおおせたシリウェルとアスラン。その姿は国防本部ではなく、港に停泊していたカーリアンスにあった。これまでの事情を説明したレンブラントは眉を顰め、厳しい顔つきをしている。

 

「隊長」

「お前の言いたいことはわかるが、それでもこうするしかない」

 

 この先どう動くか。そのすり合わせをカーリアンスにあるシリウェルの部屋で行っていた。シリウェルが姿を消しているということは、おそらくウルスレイには気づかれているだろう。一時とはいえシリウェルの動きを拘束し、表舞台から切り離すことに意味があったということだ。ずっと拘束させているのであれば、拘束していた場所に多くの軍人を配置させていたはず。アスランの助けがあったとはいえ、ここまで来ることに大して苦労はしなかった。つまりあの一時的な失踪に意味があったと言うことに他ならない。それが意味するところは何か。

 ヘブンズベース陥落からジブリールの脱走。それを成功させたかったのか。それとも別の何かを企んでいるのか。いずれにしても、このまま見ているだけではいられないことだけは確かだ。行動を起こす必要がある。

 

「アスランはこのままカーリアンスに乗艦。俺は本部、いやギルバートのところにいく」

「それは……」

「隊長、一体何をしにいくのですか? ここまでの横暴、議会にでも報告すれば議長は――」

「あの時にいた最高評議会のメンバーはおそらく拘束されたままだろう。人質として扱われる可能性もある。それに……先ほど状況確認をしてみたところでは、現時点においてアプリリウスにウルスレイの姿はない」

 

 シリウェルのPC自体が何かしら操作されている可能性も考えたが、それはないと判断できた。国防本部委員長であるシリウェルに知らされていないことの存在を、議長という立場の人間が持ち得るかと問われれば、軍事力関係ではありえないはずなのだ。それをまず調べなければならない。そしてギルバートがどういうつもりでいるのかを、直接確かめに行きたい。ウルスレイとどれだけ結託しているのか。どこまでの協力関係にあるのかを。そのためにはシリウェル自身が動かなくてはならない。

 

「アスラン」

「はっ」

「任せていいな」

 

 カーリアンスを。そしてこの先に起こるだろう戦場を。その場の判断で行動する。己の母艦にいるMS部隊の生存を任せると。よほどのことがない限り、シリウェルが戦場に出ることはない。レイフェザーもヤキンに残したままだ。出ようと思えばそちらから出向く。カーリアンスに乗ることはない。

 

「わかりました。全力を尽くします」

「頼もしいな、よろしく頼む。レンブラントもだ」

「……無茶はなさらないでください。貴方は我が隊の隊長です」

「わかっている。俺とてこの命が簡単に散らしていいものだとは思っていないさ」

「そういう意味では――」

「だからわかっている」

 

 シリウェルの立場だけでなく、ただ案じてくれているというのもちゃんと理解している。そう伝えると、レンブラントは呆れたように溜息を吐いた。

 

「それじゃあ、後は頼む。ラクスとカガリ、そしてキラにも、無理はするなと伝えておいてくれ」

「はい、必ず」

「レンブラント……任せたぞ」

「はっ! ご武運を、隊長」

「あぁ」

 

 ここから先は単独行動となる。どれだけ地位が上がっても結局やることは変わらない。そんな自分の行動に苦笑しつつ、シリウェルはカーリアンスを出た。

 向かう先はギルバートのところ。彼がどこにいるのか。おおよその見当はついていた。国防本部ではなく最高評議会だ。彼が罪人であることは最高評議会の面々も知っていること。わざわざその犯罪者を連れ出して表に出したところで、懐疑的な心象を与えるだけ。ならば表に出していることはない。

 ウルスレイが匿える場所というのはそれほど多くない。何故ならば……。

 

「まさか、本当にこれを使うことになるとはな……」

 

 最高評議会にもあるシリウェルも私室。二年前に無理やり押し付けられた部屋だが、普段は出入りしない分、鍵はシリウェルの右手の指紋にしていた。カードキーも取り付けてあるのだが、それはカモフラージュだ。そもそもここにあるのは端末くらいなので、入ったところで多くの人間にその価値はないだろう。万が一、身動きが取れなくなった時のためにと端末やモニターを用意していたが、二年ほどで使うことになるとは思ってもいなかった。

 端末を起動し、モニターへと映し出す。ここはプラント全域、ザフト軍内部のカメラにもアクセスできる。最高評議会の端末も当然のぞき見することができた。とはいっても、ここにウルスレイはいない。探し出すのはギルバートだ。拘束されていた部屋から出た時間を確認し、その後で足跡を辿る。

 

「灯台下暗しか。それとも遠く離れた場所にはおけなかった。もしくはその両方だろうな。下手に動かれぬように近くに……それは当人に聞いてみた方が早そうだ」

 

 場所はわかった。最高評議会の議長室。ウルスレイ個人の執務室だ。まさかその場所に置くとは、シリウェルも想像していなかった。

 部屋を出て回廊を歩いていると、警備の軍人がそこかしこに配備されているのがわかる。シリウェルの方が上官ではあるが、彼らがウルスレイの指示を受けていないとは限らない。できるだけ見つからずに向かう方がいい。

 

「こういう時は遠回りをするに限るか」

 

 幼い頃から何度も出入りしている最高評議会の区画。国防本部以上に、シリウェルにとっては馴染みの深い場所でもあった。父の目を盗んで何度も侵入したことがある。どこがどうつながっているのか。人気のない場所、滅多に立ち入らない場所を選びつつ議長室を目指す。当然扉からは入れないので、入るとすれば……。

 

「ここくらいしかないよな」

 

 奥まった回廊の先、天井にある排気口。大人であっても小柄で細身であるシリウェルならばギリギリ入れる大きさだ。周囲に人がいないことを確認してから、シリウェルは排気口の蓋を外すと、飛び上がって排気口へと手を伸ばし、身体を押し込んだ。

 

 曲がりくねった道を進みながら、目的の場所へとたどり着く。排気口の中から部屋を見れば、ギルバート以外にいるのは監視役が三人いることがわかった。面倒だが騒がれる前に口を塞いだ方がいいだろう。掛けられる時間は一瞬。そう判断したシリウェルは排気口を音を立てないように外すと、懐から銃を取り出した。

 

「悪いな」

 

 銃口を向け、兵の腕を掠れるようにして引き金を引く。

 

「っ! 何者だ⁉」

 

 その刹那の時間に室内へと降り立ち、すかさず背後から首元めがけて手刀で昏倒させた。一人、また一人と。

 

「な⁉ シリウェルさ――」

「寝ててくれ」

 

 何かを操作させる前に三人目も昏倒させることに成功する。それ以外の気配はギルバートのみ。

 

「来るとは思っていたが、まさかあんなところから君が下りてくるとは予想外だったよ、ファンヴァルト」

「騒ぎにしたくなかったんでな」

「そうまでして私に会いに来てくれたことを、私は喜ぶべきかな」

 

 シリウェルは振り返ってギルバートと正面から相対した。拘束されているわけもなく、ただ椅子に座らされている。端末操作もしていない。

 

「ギルバート」

「……賭けは私の勝ちのようだ。彼女も見込みが甘いと言わざるを得ないな」

「賭け?」

「君がここに来ると私は踏んだ。ただ彼女は違う。自分の下へ来ると言っていた。その時、すべてが終わり始まるとね」

 

 

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