たまには、真面目系のお話。一期八話の、ライブシーン前辺りです。

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生徒会長との距離感

面倒な奴が入ってきたと思った。

あれだけスクールアイドルに反対してたのに、実はやりたかったんですとか何を今さらって感じよ。

そりゃ、あのバレエの映像は凄かったし言うだけの実力があるってのは分かってる。

でもだからって、長らく敵対(ってほどでもないか)してた人といきなり同じグループで頑張りましょうなんて無理がある。μ'sには能天気なメンバーが多すぎる。特にあの穂乃果。

とにかく、私はまだ生徒会長を認めない。本気でμ'sとして、スクールアイドルとしてやっていく覚悟を見せてもらおうじゃない。このにこにー一人笑顔にできないようじゃ、足引っ張るだけよ。

 

 

 

 

「あら、にこじゃない」

「げっ……」

練習帰り。空腹に耐えかねてコンビニで肉まんを買い外に出た所で、生徒会長と出くわした。

まさか、家はこっちの方なのかしら……。それは予想外だったわ。

「…………」

お堅い生徒会長の事だから、買い食いするなとか小言言うんでしょうね。早く帰ってこころ達のご飯作らなきゃいけないのに……。

「……にこ」

ほーら始まった。

「……何よ」

「その手に持ってるのは、何かしら?」

あーこの回りくどい感じ、私苦手なんだけどなぁ……。

「何って、肉まんだけど?」

なるべく早く終わるようにしようっと。

「……肉まん?」

「そうよ、肉まんよ」

様子が変ね……。何で肉まんをそんなに凝視してるのよ……。

「肉まんって……何かしら」

「………はあ?」

本気で言ってるのか、この生徒会長は。アキバ住む……いや、アキバじゃなくても、高校生にもなって肉まんを知らない人なんて初めて聞いたわ。

「肉まんって、どういう食べ物なの? 見た感じ、ペリメニに似てる気もするわね……」

「ちょ、近いわよ」

よくよく見れば、まあ美人な顔だこと。にこにーとは違う路線だけど、これは人気出ても不思議じゃないわね。

「肉まんが何かって訊かれてもね……どう答えればいいのよ」

無駄にワクワクな顔しちゃって。適当な事言えないじゃない。

「……食べてみれば分かるわよ」

「くれるの?」

「そんなに見られたら食べづらいでしょ。ほら、早くしなさいよ。冷めちゃうでしょ」

「ありがとう」

調子狂うわね……。本当にあの生徒会長なの?

「……ハラショー」

「そんなに?」

一口食べた生徒会長は、大げさに感動した声を漏らした。

「こんな食べ物があったのね……」

あまりにも世間知らずすぎて、演技を疑うレベルね。この生徒会長に限って、それはないでしょうけど。真面目だし。

「これって、誰でも買えるものなの?」

「どこのコンビニでも普通に売ってるわよ」

「そうなのね、知らなかったわ……。ありがとうにこ。にこは物知りね」

アンタが無知すぎるだけだわ。

「……さ、じゃあ私は帰るわよ」

一足先に食べ終わった私は、鞄を持って立ち上がる。

「あ、にこ」

呼び止められたので振り向くと、

「教えてくれてありがとう。また明日、一緒に練習頑張りましょう?」

「……あーはいはい。そうね」

いい笑顔するじゃない。あんな風に笑うのね。

 

 

 

 

「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト!」

翌日の練習で、ステップの練習。

「にこ先輩、今のステップを忘れないようにして下さい!」

まあ、スーパーアイドルのにこにーにかかればこの程度朝飯前よ。さて、問題の生徒会長は……ぐぬ、結構いい動きするじゃない。

「はい、一旦休憩にします!」

今日は調子いいわね。順調に行けば、この曲のマスターも早そうね。

「……ねえにこ」

「ん?」

振り返ると、生徒会長。

「何か用?」

「さっきのステップ、ちょっと見てくれないかしら」

「いや、充分できてたじゃないのよ」

「でも、にこの方が上手に見えたわ。それに、自分じゃ気付かない事もあるでしょう?」

……結構意識高いじゃない。スクールアイドルがお遊びとか言ってた割には、ちゃんと真摯に取り組んでるのね。

「分かったわ。見てあげる」

「ありがとう! にこ!」

そういう顔するんじゃないわよ……。実は別人なのかしら。

早速苦手だと言うステップを見せてもらう。けど、特に気になる所は無い。無い……のに、どこか違和感があるのよね……。

「ん〜…………」

「ど、どうかしら、にこ」

「あ、分かったわ。アンタ、真面目過ぎるのよ。完璧にこなしすぎ」

「ど、どういう事……? 少しは間違えた方がいいって事? でも、それだと全体の調和が取れなくなっちゃうわよね……?」

「にこの言い方が悪かったわ。テンプレなのよ。型にはまった動きしかしないから、アンタ自身の魅力が伝わってこないの」

「私自身の魅力……」

ブツブツと考え込んでしまった。だから、そういう所が真面目過ぎるって言ってんのよね……。

「ちょっと分かった気がするわ。ありがとう、にこ」

「そりゃ良かったわ。どういたしまして」

そもそも、何で私に訊いてきたのかしらね。気心知れた希にでも訊けばいいのに。

 

 

 

 

「にこ、数学苦手なんでしょう? 分からない所があったら、遠慮なく訊いてね」

 

 

「にこのお弁当、可愛らしいわね。もしかして手作り?」

 

 

「にこ、お気に入りのチョコレートがあるの。良かったら食べない?」

 

 

「にこ、最近のスクールアイドルってどんなグループが有名なの?」

 

 

「さあにこ、練習に行きましょう!」

 

 

 

 

「っだぁー! 何なのよ一体!」

ようやく一人になれた屋上で、叫ぶ。

あれからというもの、事あるごとに生徒会長は私に絡んでくる。鬱陶しいとかを通り越して、もはや少し怖い。“あの”生徒会長がスクールアイドルを始めた事でも学校中のニュースなのに、クラスでも腫れ物扱いのにこにベタベタ絡んでくるのだ。噂にならない方がおかしい。

「……誰が腫れ物よ。にこの理想についてこられなかっただけじゃない」

ため息を一つ。……別に、彼女が嫌いな訳ではない。意外と面白い性格だとは思う。

「私が、無駄に距離を取ってるだけなのかしらね」

このにこにーを、こうも惑わせるなんてね……。

「あ、にこ、ここにいたのね」

噂をすれば何とやらだ。

「……何か用?」

「用が無かったら、話しかけちゃいけないの?」

ムカつくドヤ顔ね……。

「最近にこにつきまとって……ヒマなの?」

「暇……じゃないけど……」

「じゃあにこに構ってる場合じゃないでしょ。もっと時間を有意義に使いなさい」

屋上から出ようとしたにこは、軽く手を振って横を通り抜ける。

「そんな事ないわ」

その手を掴まれた。

「ちょっと、強引だったかもしれないわ。それは、ごめんなさい」

自覚はあったのね。じゃあ、やっぱり何か意図があったのか。

「私、にこと仲良くなりたかったの」

「……はい?」

「にこ達アイドル研究部には、ずっと辛く当たってきて迷惑もかけたと思ってる。だから、ごめんなさい」

ちょっと……いきなり頭を下げないでよね……。これじゃ、まるでにこが悪者みたいじゃない。

「でも、そんな私もμ'sに入れてくれた。あの時を忘れてくれとは言わないわ。でもせめて、今は仲良くしたいの。本当にやりたかった事ができて、ワクワクしてるのよ」

「…………」

「でも私、人付き合いって苦手で……。もしかしたら疎まれてるのかもって思って、それなら強引にでも距離を縮めるしかないかなって思って……」

「…………。はぁ……」

真面目で成績優秀なのに、変な所不器用ね。……にこも、人の事は言えないか。

「まったく……そういう事はちゃんと言いなさいよね。変に警戒して損したわ」

「にこ……?」

このお堅い生徒会長も、結局はにこ達と変わらないのだ。スクールアイドルが好きな、女の子なのだ。

「……行くわよ」

「行くって……どこに?」

私は手を引いて、階段を下りる。

「決まってんでしょ。コンビニよ」

「コンビニ……?」

「……一緒に、肉まん食べるのよ。美味しかったんでしょ?」

「! にこ……!」

仕方ないから、認めてあげるわよ。案外、可愛い所あるみたいだしね。アイドルとしての素質は、充分だわ。勿論、このにこにーには勝てないけど。

「さあ行くわよ、絵里!」


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