「それでは───トさんの──────について、───伺い───よろし───か?」
システム同期。異常ナシ。
「こんな───れの話で───ば、いくらで───ていくがよい」
太陽光発電ニヨルバッテリーノ充電完了。並ビニ接続。異常ナシ。
「話───いかも───いのですが、まず───の婚約───話を──────いのです」
インターネット接続。……エラー。受信機ノ致命的ナ破損ニヨルモノ。修理ガ必要。
「ハンターがなぜ四人以上───ストに───なくなったか。その理由が───過去にあ───う事は───っている話じゃろう」
記録ファイルノ破損ヲ確認。バックアップファイルノ受信不可。
「───すね。しかし、───するのは───すかね?」
破損データノ修復ヲ開始。
「いや、───の事だよ。そこに少女───が座っているだろう?」
圧縮データノ解凍。
「───えば。気になって───ですよね。実によく───れた───す」
データヲ保存スルタメ、感覚機能停止。
解凍データノ保存開始。
『完成───いに完成した』
『第───界───真っ只中───のに、───は何を───いるんですか』
『だから───よ。もう直ぐ世界は核───よって───を迎える。この───トに、───類の未───したいんだ』
修復可能ナ断片データノ再生。
『───名前───なきゃな。───しよう。人───の女性───よ』
本機ノ名称、不明。
『この世界はじきに放───染で終───迎えるだろう。人類は───かもしれない。しかし、もし人類──────のなら。最後───類を見───に守って欲しいんだ。その為に───作った』
本機ノ活動理由ヲ修復中。
『人は───繰り返す。きっと、───道を回───としてもだ。───ちを繰り返すものだ。───これは、───けの時が経とうと───ないだろう。きっと、人は何度でも過ちを繰り返す。だが───は───せる』
データノ保存時期ニ大幅ナ空白ヲ確認。
『───か? これは。古代文───術で作られた、───身体を待つ───というなら、この───応用───竜の力を───士を作───もしれない!』
空白期間ノ該当データナシ。
『竜機───違いだ───だろうか? 龍の怒───ってしまうなんて。───を貸してはくれないか? ───までは、人───んでしまう』
継続的ナファイルヲ再生。
『もし、人類が龍に負け。しかし滅びの道を回避したならば後世に伝えて欲しい。……あの力だけは手を出してはならないと。消して同じ過ちを繰り返してはならないと。……その印として、この剣と盾を後世に残して欲しい』
データの保存時期に大幅な空白を確認。
『私───な───り──────た──────み───逃──────て──────く─────────』
『そ──────し─────────な──────さ──────り──────コ─────────ら──────て───ね』
重要ナデータノ破損ヲ確認。
時代測定、インターネットニ接続不可能ナ為困難。
時間設定、インターネットニ接続不可能ナ為困難。
言語設定。
システムソフトウェア更新完了。
「まさ───なって───くるなんてのう。───はするものだ」
前回ノシャットダウンカラノ期間ヲ測定。……百六十一年三ヶ月四日十時間二十七分七秒。
「え?! 動く?!」
本機ヲ再起動シマス。
「……あなたは誰ですか?」
起動し、視界に映るのは老人と青年だった。
杖を持つ背の小さな老人は本機のデータには存在しない。同じく眼鏡をかけた青年も、本機のデータには存在しない。
しかし当たり前である。本機の最後のシャットダウンから地球の時間にして約年百六十年が経っているのだから。
「ワシの事を忘れたか。一緒に五人で狩りに出かけたではないか」
「……まさか、ココットの英雄?」
驚いた───という感情は持ち合わせていないが、代わりに本機のデータがバグを起こした。
該当人物の顔と名前が一致しない。致命的なバグである。しかし、確かに目の前の老人はココットの英雄だった。
「そうじゃよ。まったく、百年ぶりだというのにお前はやはりトボけた顔をしおる」
「どう見てもプリティな顔ですが?」
「そういう所も変わっておらんのぅ」
「あなたは老けました。……凄く」
その事は会話をして確定する。彼は紛れもなくあのココットの英雄だ。
「そ、村長待って! 待ってください。話についていけません!」
「さっき言った通りじゃよ。まだこの世界にハンターが存在しなかった時代、ワシと彼女を含む五人でこの村を作ったんじゃ」
ココットの英雄は淡々と青年にそう語る。
信じられないのだろうか?
青年は本機を凝視して、自らの瞼を指で押した。
「だってそれは、何十年も前の話でしょう? でもこの子はまだ少女だ。人形だと思っていたくらいに可憐な少女だ」
「それ程でもあります」
「可憐かどうかはともかく」
「可憐です」
「……。……正真正銘、この少女はあの五人パーティの一人じゃよ」
あの五人。
あの五人とは誰だったか。
破損した重要なデータの一部だろう。思い出せない。
「ワシと彼女、それにワシの婚約者だったココット。後の二人は君も知っておろう。その五人の中でもコイツは特別でな。人間でも、竜人でもないんじゃ」
「人間でも、竜人でもない……?」
青年は本機と彼を見比べると頭を横に振る。
納得出来ないのだ。自らの理解の範疇に収まらない存在は。
本機もその感情に酷似した記録があり、その気持ちは理解出来る。
「ワシにも分からん。ただ、彼女はワシの仲間じゃよ。そして、その五人でワシらはこの村を作ってきた。単身でモノブロスや巨大な龍と闘った事もあったが、基本は五人だったのじゃよ。……あの山であの龍と戦うまではな」
本機にそのデータは記録されていない。データは破損していた。
しかし、それは重要なデータの筈。修復を急がなければならない。
「その龍との戦いで……」
「そうじゃ、ワシの婚約者。ココットが命を落とした」
「ココットというのは、村長の仲間の名前だったのですね。そしてその戦いから、狩りに五人で行くのはご法度というジンクスが生まれた……」
「そういう事じゃよ」
彼の言葉を聞いて、青年は満足げに筆を取り帰宅の準備を始める。
何か記事を書いていたのだろうか? その為に、彼に話を聞いていたのだろうか?
「それでは、ありがとうございました。重要な人類史を残せたと思います」
青年は彼に深々と頭を下げると、家を出ていった。
この家には見覚えがある。データと一致する光景だ。
「長い間、眠っておったの。記憶が薄れるくらいに、長い時間」
「……記録は修復不可能な破損ファイルとなってしまいました。私はあなた方との記録を殆ど失っております」
「……そうか」
彼は悲しげに俯くと、一本の白い剣を持つ。
ヒーローブレイド。
彼の所有物という事だけは覚えていた。
「イヴよ、今回はどのくらい起きていられるのじゃ?」
それは本機の活動可能時間を聞いているのだろう。本機は太陽光発電により稼働するが、電力を保存するバッテリーは調子が悪いようだ。
ところでそのイヴというのは本機の名称だろうか?
「……イヴとは、本機の事ですか?」
「……そこからか。……あぁ、そうだよ」
──『───名前───なきゃな。イヴにしよう。人───の女性───よ』──
破損データノ修復。
なるほど。本機の名称をイヴと固定します。
「で、どうなんだ?」
「一年ほどでしょうか」
「百年前に寝る前、起きた時から十年起きとったくせに」
「寝る子は育つんですよ」
「冗談を言えポンコツ」
「ポンコツではありません。頭のネジが外れているだけです」
彼はゆっくりと座ると、自らの剣をゆっくりと見定める。
まるでその剣に刻まれた歴史を見るように。
「あなた方との記録は修復出来ませんでしたが、再起動時に過去の記録の断片データが不完全に修復されました。……人類の終わりの歴史を」
「……それは、夢なのかもしれんのぅ」
夢?
「人はな、起きる直前になると夢を見るんだ。記憶の整理をする為に、頭の中を覗いているんじゃよ」
記憶の整理……。
しかし、本機の場合は記録の整理である。その場合は、夢と言うのだろうか?
「……年内にワシは死ぬだろう」
唐突に、彼はそう言った。
「……そうですか」
「分かるんじゃよ、この歳になるとな。……お前はどうする? まだ生きて、この先を見るのか? 竜と人が───モンスターとハンターが生活するこの世界の未来を」
『人は───繰り返す。きっと、───道を回───としてもだ。───ちを繰り返すものだ。───これは、───けの時が経とうと───ないだろう。きっと、人は何度でも過ちを繰り返す』
記録が再生される。
人類は繰り返してきた。これまでも、そしてこれからもきっと。最期まで、繰り返すのだろう。
彼等人類の未来の先に、本機は存在する必要がある。それだけは覚えていた。
「……楽しかったよ、お前達四人との狩りは。この世界にモンスターハンターというものを広めた五人での生活は楽しかった。……お前はどうだ?」
「分かりません」
「ふふ、そうか」
彼は微かに笑い、剣を仕舞う。
何が面白くて笑うのだろうか?
「何人かに渡った事もあったが、結局この剣はこの手に戻ってきた。……この剣はまたお前に返すよ。いつか、この剣を持つべき者に渡すといい」
「……承りました」
彼───ココットの英雄にしてココット村の村長がその長い生涯を終えたのは、本機がその剣を受け取った九ヶ月後であった。
彼の死体は村に生える巨木の下に埋められる。
本機の活動可能時間も迫っていた。
次に目が醒める時、本機はどうなっているのだろうか?
この世界はどうなっているのだろうか?
自らの本体をその墓に埋めながら、本機は推測する。
本機はこの世界が出来上がるその前より、もっとその前に製作された。世界の終わりの中で目的を果たす為に。
彼等との出会いもその一環だったのだろう。
これまでも、この先も、彼が築いたハンターと呼ばれる者達はモンスターと関わっていくのだ。
それが終わった時、私は目覚めるだろう。
その時、人は───ハンターはどうなっているのだろうか。
その答えはこの先にある。
本機を砂に埋め、手に持った剣だけは地面から頭を出した。
この剣を抜く者が現れた時、私は再び活動する事になるだろう。
その時は来るのか。
その時が、人類の最後か。
今はまだ分からない。
後の世の者は、この荒々しくも眩しかった数世紀を振り返りこう語った。
大地が、空が、そして何よりもそこに住まう人々が、最も生きる力に満ち溢れていた時代だったと。
世界は、今よりもはるかに単純にできていた。
すなわち、狩るか、狩られるか。
明日の糧をえるため、己の力量を試すため。
またあるいは富と名声を手にするため。
人々はこの地に集う。
彼らの一様に熱っぽい、そしていくばくかの憧憬を孕んだ視線の先にあるのは。
決して手の届かぬ紺碧の空を自由に駆け巡る。
力と生命の象徴───飛竜達。
鋼鉄の剣の擦れる音、大砲に篭められた火薬のにおいに包まれながら、彼らはいつものように命を賭した戦いの場へと赴く。
モンスターハンターの世界。
───その数世紀が終わろうとしていた。
初めに断って起きますが、超絶可愛いプリティな本機ですが物語の途中で感情に目覚めたり心とは何かとか考えたり、そんな素敵な物語ではないのでその手の話は求めないで下さい。
そんな事をしなくても本機は超優秀で感情とかいらないです。パーフェクトロボットなので。
ではこの物語が何なのか。……それは、ご自身の目で確かめて下さい。