ゲート 日本帝国軍 彼の異世界にて、活躍せり   作:ハムスター大好き
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第三話 陸軍中尉

 

相馬 耀介(そうま ようすけ)』中尉(二十七歳)は帝国陸軍の軍人だった。予備兵を養成する教官をしていたが、現在は特地に派遣された将兵の一人だった。

彼は言う。

「俺は、この国が大好きだからこの国を守る軍人になったんですよ。だから仕事と社交のひと時とどっちを選ぶ?と尋ねられたら、仕事を選びますよ」

そんな彼は、運命のごとく帝国陸軍の軍人になっていたのである。

そもそも彼のこれまでは、軍人生活に注ぎ込んでいたといっても過言ではない。

成績はよく、トントン拍子で士官学校を卒業したのであった。卒業後は、さらなる昇進を目指して昇進するための試験を受けては、合格の繰り返しだった。

こんなこともあってか、彼の国防意欲や愛国心に感心した彼の上司が、「お前ちょっと教官をやって来い」と彼を教官にさせたのであった。案の定、彼の評判は良かったようだ。

そんな彼が特地に派遣されたきっかけは、あのとんでもない出来事だった。

 

 

後に、『銀座事変』と呼ばれるアレである。

突然東大寺で見つかった謎の予言書。そこから溢れ出た、異形の怪異を含めた軍勢によって人々が虐殺されるという内容が書かれた予言だった。しかもそれは日時や場所まで記されており、皇帝と内閣府の意向により陸軍の派遣が行われることとなった。

軍勢が現れる二日前には、軍による大規模な人々の避難が実施され、東京都外へと避難していった。また、どうしても東京に残らなければならない市民達は、憲兵や警察官による誘導のもと、軍勢が現れる日の真夜中から早朝にかけて、皇居へと避難していった。

もしもの時を考えて、防衛ラインが突破された時には、人々を半蔵門から西へ避難させるという計画まで存在したのであった。

皇居の防衛を任された近衛第一から第三の師団と第一師団所属の歩兵隊や砲兵隊が、皇居を囲むようにして、展開した。後に、自主的に出動してきた輜重兵連隊によって死守の構えになった。

そこには、相馬の姿もあった。

相馬は、急遽編成された歩兵小隊の小隊長を務めており、皇居の内部にて待機していた。

「しかし、大規模な避難計画だな。俺たちの出番は無く、並木通りとか15号線に展開している部隊が何とかしてくれそうだが、油断はできんな……」

相馬は、軍勢が現れるとされている銀座四丁目交差点付近に配置される部隊が書かれた書類を見つめながら、そう呟く。

すると、彼の小隊に一人の兵卒が息を切らしながら駆け込んできた。

「15号線に展開する部隊から、相馬中尉宛に援護要請が来ていますっ!至急向かってください!」

兵卒から告げられたのは、自身の小隊による援護要請が来たことだった。相馬は、これを快く承諾する。しかし、問題があった。それは、移動用の車輌が避難をしている市民を護送するために駆り出され、圧倒的に数が不足していたからだ。かといって輜重兵連隊に無理を言って運んでもらうのもどうかと思った。だが、それはすぐに解決した。たまたま、15号線へ向かっている戦車隊が15号線まで乗せて行ってやると名乗り出たのだった。

こうして、約二十人で構成されている相馬小隊は、15号線に展開する部隊を援護すべく向かって行ったのだった。

無事に到着した相馬の小隊は、先に到着した部隊の間を縫うようにして、配置についていった。相馬も急いで配置につき、小銃に銃剣を装着して、攻撃態勢を整える。

そして、午前十一時五十分。突然、交差点の真ん中にパルテノン神殿のような『異世界への門(ゲート)』が出現した。これに、周りの将兵達は騒めく。続けるようにして、ローマ帝国時代を彷彿とさせるような歩兵、騎兵、弓兵。さらに、その背後にいるファンタジーなオーク、トロル、ゴブリン、オーガといった怪異によって構成された異世界の軍勢が現れたのだった。

「うわっ……やばそうな化け物までいやがる……」

相馬の横に居た新兵の『田中(たなか) 治郎(じろう)』二等兵がそう言いながら怪異達を見て、少しばかり震えだす。相馬は、「心配することはないさ。俺や君は鍛え上げられた帝国軍人なんだから、奴らに俺らの大和魂を見せてやろうぜ」と田中を励ます。

すると、先頭に立っていた歩兵がホラを吹き始めた。ホラの音にあわせて、歩兵が隊列を揃え、弓兵達が弓を構えた。

「日本の土を踏んだことを後悔させてやれっ!総員攻撃開始っ!!撃てぇっ!!」

指揮官の一人が無線でそう怒鳴りつけたと同時に、一斉射撃が始まり、敵の歩兵、弓兵、騎兵、怪異達がなぎ倒されてゆく。

続けるようにして門からワイバーンに跨る竜騎兵が姿を現し、空高く飛び上がる。竜騎兵は、槍を構えて相馬の小隊に向かって突撃をはじめた。だが、それも虚しく。対空機関砲や小銃、機関銃によって撃ち墜とされてゆく。その次には、身長が三メートルから五メートルほどあるオーガの集団が現れた。オーガは棍棒を振りかざしながら土嚢に向かっていくが、土嚢の前にある有刺鉄線に足をとられて転倒して、それから集中砲火にあったり、戦車によって撃ち抜かれたりということが続いた。

「田中二等兵。そして、他のみんなやるじゃないか!その調子で敵さんを撃ってくれよ!」

「小隊長殿っ!感謝の極みでありますっ!!」

相馬が田中や他の兵士達を褒めると、田中や兵士達から元気の良い返事が聞こえた。相馬は、迫り来る騎兵達を確実に仕留める。田中も相馬に便乗するように、どんどん敵を撃ち倒していった。

しばらくして、攻撃中止の指示が出て分かった光景は、門を囲うようにして敵の屍の山が出来ていた。その傍らには、呆然と立ち尽くす敵や、地面に伏せて怯えている敵兵士や怪異がいた。無論これらは、すぐに拘束された。交差点付近は、敵の赤黒い血をもって舗装されていた。

「あらら……ちょっとやりすぎたかなぁ?」と、相馬が呟いた。

「いいや、やりすぎでは無いだろう。奴らは我が帝国の領土を侵そうとし、善良な民衆を殺戮しようとした賊徒だ。これぐらいやっても構わんだろ」

相馬の後ろからやってきた『森野(もりの) 直人(なおと)』少佐がそう言いながらタバコを吹かす。

こうして、交差点付近に展開していた帝国陸軍の将兵達の活躍により、『銀座事変』は、終息へと向かいつつあった。

 

 

 

しばらくして、帝国軍や連合諸王国軍との戦いの後片付けを終えた日本側は、いよいよ異世界の調査を始めようとしていた。前進して一定の地域を確保するにしても、『門』周辺だけを確保し続けるにしても、さらに進んで敵と交渉するにしても、今後の方針を定めるには情報が不足していたのである。幸いにして戦闘の終了から二日後に空軍の九八式偵察機と海軍の四式偵察機・景雲が撮って来た航空写真から周辺の地図を書き起こせた。

したがって、人や文化、産業、政治形態そして宗教がどのようになっているか、約六個の深部偵察隊による調査が開始されようとしていた。

 

「はっ!是非やらせていただきますっ!」

「うむ。では、君に第三偵察隊の隊長を任せよう」

森野少佐は、相馬中尉の快い返事を聞くと、詳細を話し始めた。話の内容としては、偵察隊に関することだった。偵察隊の車輌に関しては、九三式機動乗用車と一式半装軌装甲兵車・ホハ改と約二台の九二式小型貨物自動車の編成と銃火器に関しては、九六式半自動小銃と九九式軽機関銃や、十四年式拳銃、ホハ改に搭載するM2J重機関銃、九九式七糎噴進砲などだった。偵察隊にも、これらの装備が配備されるのであった。

「それじゃあ、頼んだぞ」

「了解っ!」

相馬は、森野と敬礼を交えると退室していった。こうして、相馬は第三偵察隊の隊長となったのである。

 








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