幻想郷貧乏生活録   作:塩で美味しくいただかれそうなサンマ

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秋刀魚です。ちょこちょこやって行きます。駄文です。
あ、一刻は2時間と捉えてください。一文はだいたい32円です。


プロローグ

明け方前の暗い森の中、霧の中に湖のほとりで釣りをする人影がうっすらと見える。くたびれた服を着た男のようだ。ここ、幻想郷ではかなり危険な行為だ。明け方近くとはいえ未だ妖怪の蔓延る時間である。そんな時間に一人で釣りなど。

 

そのように自分の状況を客観的に見てそう悲観する。仕方のないことであるのは分かっているが、ため息をつかずにはいられない。

 

「はぁ…釣れんなぁ」

 

一刻近く前から粘っているのに今日はどうも食いつきが悪いのか、いつもならばツボに7匹ぐらい釣った魚が入っていてもおかしくない時間だが、未だに3匹であった。

 

釣り針を垂らしている水面は動くことはない。そのことが一層虚無感を与え、男は力が抜けたようにへなへなと座り込んだ

 

しかしもうそろそろ魚を魚屋に売りに行かなければならない。じゃないと朝飯のために魚を買いに来る人たちに間に合わないからな。

 

芳しくない成果に少しがっかりしつつ奮起して腰を上げて壺を持ち、里を目指す。ここからならだいたい四半刻ぐらいでつくだろう。

 

未だ暗い森の中を歩く。危険だ。いつどこから妖怪に襲われるか分からない。鉈を左手に持ち、警戒しつつ歩く。しかしまぁ、慣れたものでもある。

 

結局、今回“は”何事もなく人里まで辿り着いた。今夜明けを迎えたくらいだな。人里は少し活気が出てきたくらいであろうか。安堵の息と共に魚屋を目指す。この仕事は危険だが儲かるのだ。まぁ、それも昔の話だが。

 

「おはよう、魚屋さん。今日はこんなもんだが…いくらで買ってくれるか?」

「そうだな…せいぜい1匹3文ってとこかね。それ以上じゃ買わないよ。」

 

安すぎる。今までで1番足元を見られているのは明らかだ。

 

「おいおい、安すぎやしないか?せめてもう2、3文は…」

「ダメだね。それ以上じゃうちは買えない。売る気がないなら帰ってくれ。“妖喰らい”がいると客が逃げる。」

 

語気を強めて魚屋の親父は言う。顔はまるで仁王のようにしかめている。怒りがこみ上げるが、背に腹は変えられず、結局俺は魚3匹を売り、9文というどうしようもないお金を持ってトボトボと家路を歩くことになった。

 

自分の名前は幸太(こうた)。歳は24。職業は漁師、そして猟師。体格が他の人より少し良く、身長も大体5尺9寸くらいである。

人里では“妖喰らい”と呼ばれる。人里のはずれに住む里1の貧乏人だ。

 

貧乏な理由はいくつかあるが…その一つはこれ。魚の価格が大暴落したこと。正確に言うと川魚の価格だけどな。

 

ここ、幻想郷では魚は重要な食べ物だ。日々の食卓に欠かせなく、かつ健康にも大事なものであり、需要が高い反面、“釣り”という行為が幻想郷内だと、妖怪に襲われる危険が高くしにくいため、供給が少ない。現に今幻想郷内で漁師は俺だけだし、昔は川魚の価格もかなり高かった。

 

じゃあ何故暴落したかというと…6年前ほどに幻想郷に来た外来人の影響らしい。その外来人は能力で外から「海の魚」を取って来て売っているそうだ。それがまた美味いらしく、しかも川魚より安いと人里で評判になり、ここ数年は人里の人々はほぼほぼ海の魚しか食わない。そのせいで、俺の売る川魚が安くなってしまった。

 

「はぁ〜ほんと、やってらんないよ。」

 

自分の手の上の9文を見てそう愚痴る。9文っていったら、切り詰めればどうにか1日暮らせる。しかし、自分の場合はそれでは足りない。昔は、袋一つ握りしめてほくほくで帰っていたのに。

 

「諸行無常、春の夜の夢のごとし、か…」

 

そう呟き、愚痴っていてもしょうがないと、諦めて切り替えることにした。ちょうど家にもついたことだし。漁が振るわないなら狩をするしかない。と、意気込んだはいいが、その準備にも金がかかることを思い出し、気落ちした。俺は棚の中から貯めていたお金の一部を出した。まえはもっと貯金があったんだが…少なくなっているなぁ…。暗雲が垂れ込めたような気分のまま博麗神社へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!きっつ!はぁ、はぁ…」

 

博麗神社にようやく辿り着いた。この神社はほんと参拝客に優しくないと思う。石段が急だし長いわでもう疲れた。日も出てきた時間だし、真夏にこれはきつい。

汗は滝のように出るし、犬みたいに息を荒げながらどうにか賽銭箱の前まで行き、1文投げ入れる。そのまま手を合わせて頭を下げて祈る。

 

「幸運が来ますように…」

 

割と切実な願いだ。名前の幸太は幸せが多くありますように、という意味だが、今のこの現状はとてもそんな風には思えないな。とか、思いながら礼拝を済ませたら声をかけられた。澄んだ綺麗な声だ。

 

「拝礼は《2拝2拍1拝》よ、作法がなってなければ神は願いを叶えてくれないわ。残念だったわね、こうた。ま、お金は頂いておくわね。1文だけだけどね。」

「なんてきついことをおっしゃる…」

 

この娘は博麗霊夢。黒髪で紅白の脇が出ている巫女服を着た美少女だ。自分とは腐れ縁で、まぁ、かれこれ7年くらいは知り合いなんじゃないだろうか。仲良くできているとは思う。俺にとっては妹みたいなもんだ。結構冷たいけどな。この娘は当代「博麗の巫女」で、まぁ、凄い人だ。正直俺にはよく分からん領域に住んでいると思う。

 

しかしながら、いつも思うが美人だよなぁ。汗をかいているがいっそう魅力的であるように思える。流れるような髪、整った目鼻立ち、体つき。と、霊夢が何かを差し出してきた。

 

「いつものでしょう?はい、どうぞ。お代は35文よ。」

「値段が上がってるじゃないか…厳しいよ…」

「なによ?格安よ?なんならもっと上げてもいいのだけれど。」

「買います!買いますぅ!」

「最初からそう言えばいいのよ。はい、いつものお札。」

 

そう、これが俺が貧乏な理由その2。いや、これは理由に含めていいのかちょっと迷うところではあるが。漁師、猟師っていうのは危険な仕事だからいつも霊夢から身を守る為の護符を買っている。しかしこれがまぁ…高くてなぁ…。高給取りだった前ならいいんだが、今はほんと厳しい。しかしだからといって他の仕事もできない…世知辛い!

 

「それと幸太、あんた、もう少し神社に寄ったら?たまになら一食ぐらい食わせてあげるわよ。痩せすぎて見てて心配になるわ。」

「霊夢…お前…ありがとう…」

「当然よ、幸太は私の唯一の金づるだもの。あんたが死んだら私もやばいのよ。」

 

あっ…そういうことですか…。一瞬すごい感動したのに。まぁ、でも彼女はほんとは優しいんだ。ウン、キットソウナンダ。素直じゃないダケダ。そう思って俺は帰ることにした。これは涙じゃない、きっと汗なんだ…そうなんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に着いた頃にはもう既に夕方であった。いつも狩は夜にするから問題ないが、この時間はあいつらが来る頃だ。家の中でくつろいでいると、外れかけの玄関の戸がドンドンと叩かれた。ぁぁ、憂鬱だ…。そう思いながらも玄関の戸を開ける。

 

「こんにちは…」

「よう、いつもどおり、《上納金》の徴収だ。ほら、さっさと出せ!」

「はい、わかりました。」

 

来ていたのは人里のお偉いさんの家来だ。そしてこれが俺が貧乏な理由その3。俺は実は里の中で一番低い身分にある。そして、その身分の決まりがある。1、上納金を納めること。2、職を変えないこと。この2つだ。そして、俺の仕事は漁師。まぁ、とどのつまり、「お前は危険な仕事して俺らに奉仕しろ」ってことだな。胸糞悪い。

 

その人には50文払って帰ってもらった。上納金の値段の基準が昔の魚が高かった頃のままだからかなり大きい負担だ。正直昔の、高給取りだった頃の貯金が無ければ今は生活できていないだろう。そして、その貯金ももう切れかけている。あぁ、苦しい。棚から安酒を取り出してちびちびと飲む。一気飲みしたい気分であるが、そんなもったいないことはできない。

 

 

夜が更けるまで、ボロ屋の真ん中で一人悲しく、陰鬱とした気持ちも晴らせず、ただただちびちびと酒を煽っていた。

 

 

 




なんやこの駄文…
批評とか全然オーケーです。
これからもよろしくお願いします。

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