!!
読者はドSを求めているのか!(違う)
感想、評価、とても嬉しいですね。
では、どうぞ。
レミリアに拉致されて紅魔館?というところに連れてこられたが、俺は内心穏やかではない。
自分より強大な存在に「お前は俺のおもちゃだ」というようなことを言われれば誰だってそうであると思う。
と、いうことで抜け出すことにした。
上品な調度が派手すぎず、かつ映えるように付けられた扉を開けると、そこは薄暗い廊下が広がっていた。
「…気味が悪いな。」
暗闇っていうのは仕事柄慣れているつもりであったが、紅魔館の闇は恐怖を煽られてならない。
今もその闇の中からすっとレミリアが現れそうで自分の胸がばくばくと騒がしくなっている。
扉から顔を出して廊下を詳しく観察する。
廊下も、やはり部屋と同じく明かりが少なく薄暗い。
しかし、部屋と違い装飾があまりなく、質素なそれでいて気品あふれる感じを受ける。
埃も少なく、よく掃除されているようだ。
「…よし、行くしかない。」
逃亡を企てたが、内心はレミリアへの恐怖でいっぱいだ。
逃げたら何をされるか。
まず企てた時点で。
これは相手は分かっているのに泳がせてるだけではないか等。
恐怖が尽きない。
しかし、ここにとどまったままでも何をされるか分からないし、とりあえず《レミリア》という明確な恐怖から逃げたかったという臆病な勇気に駆られて部屋から一歩を踏み出す。
「何をしているのでしょうか?」
「うぇ!?はっ、ふっ!」
後ろから声をかけられ、驚き、飛びのく。
廊下の壁にもたれて座り込みながら、素早く部屋の中を見ると銀髪の女性がいた。
かなり警戒していたはず。
それ以前に自分の後ろには誰もいなかったはず。
誰だ?
分からない。
レミリアの従者だろうか。
それよりも、見られてしまった。
逃げるところを。
何をされるか分からない。
恐怖が心を埋め尽くして行く。
周りの闇がこちらへ迫るように揺らめく。
自分の荒い息の音が蝿のようなうっとおしさとともに耳をかすめる。
しかし、その銀髪の髪、西洋の服を着た女性はこちらへ冷徹な視線を向けながらうやうやしく言葉を放つ。
「驚かないでください。お嬢様がお呼びです。案内しますのでついて来てください。それと、大丈夫でしょうか?」
「あ、ありがとうございます…」
その人は手を差し伸べ、俺が立ち上がるのを助けてくれた。
言葉に甘え、手を取ると、その女性らしい温かみにちょっとドキッとしてしまった。
やはりレミリアの従者であったようだ。
それにレミリアが呼んでいるとのこと。
何をされるか分からないという込み上がるような恐怖を抑えつつ女性について歩く。
この館は広いらしく、道が続く。
と、その従者に声をかけられた。
「初めまして、幸太様。私はお嬢様のメイドである“十六夜咲夜”と申します。」
「は、初めまして…」
人間…なのか?
人間が、あんな大妖怪に仕えていることに驚きを隠せない。
しかし、さっきまで不明瞭なめいど?の正体がわかったようで心なしか自分の中の恐怖も薄らいだ気がする。
咲夜さんの後について長い廊下を歩いていたら一際大きな扉があった。
咲夜さんはその扉を2度、軽く叩いた後にレミリアの声が中から聞こえた。
「入って良い」という声の後に咲夜さんが入っていったので俺も入ると、そこは廊下よりも暗い大部屋であった。
夜目が利く自分でも遠くに…座っている…のか?
とりあえずレミリアの影がうっすらと見える程度であった。
「来たか、幸太」
レミリアは威厳のある口調に戻っているようだ。
気づいたら咲夜さんは自分のそばを離れ、レミリアのそばに控えているようである。
とても早い。
咲夜さんが視界から消えたのは部屋の中に入った一瞬だからその時にそこまで行ったということになる。
紅魔館のそこの知れなさに身震いして、寒気がする。
「はい、お呼びになられたのはなんの御用でしょうか…」
「そんなかしこまらなくても良い。それとも私がそんなに恐ろしいか?」
楽しそうな声が聴こえる。
絶対に、俺が恐怖で堪らないのを知りながら言っているのだろう。
暗闇に目が慣れてきて、レミリアの姿がはっきりと見えてきた。
「何の用かという話だが…《血》を飲ませてもらおうと思ったからだ。…咲夜。」
「かしこまりました。」
「…え?ぐあっ、あぅっ…」
レミリアが咲夜さんを一声呼ぶ。
すると咲夜さんの声が聞こえたと思うと、咲夜さんの影が一瞬にして消えた。
と、思った時にはすでに咲夜さんは自分の目の前におり、俺の腕を刃物で薄く切り裂いた。
小さくも鋭い痛みが走る。
そして困惑する。
何故?
これが罰なのだろうか、ならば自分が何をされるのか。
自分の腕から流れ出る真紅の鮮血が、自分の淀んだ思考とは反対にさらさらと流れて行く。
血が出るとともに自分の思考も流れて行くようで頭がぼんやりとして来た。
咲夜さんはそれを透明の器に入れて行く。
あれは…知っている。
たしか霖之助が「わいんぐらす」と呼んでいたものだ。
そんなことをうっすら考えていると、器が血で赤く染まった瞬間、咲夜さんがまた目の前から消えた。
もう驚きもしないが、自分の腕も止血されていた。
咲夜さんはレミリアにその器を渡した。
レミリアは器を揺らしながら匂いを嗅いでいる。
「ふむ、匂いは…うん、極上。…味は…つっ!!」
と、レミリアが俺の血を一口飲んだ瞬間、器を投げ捨てた。
自分のすぐそばに落ちたそれは小気味良い音とともに紅い水たまりを床に作る。
咲夜がレミリアに駆け寄り、何か話している。
レミリアはうつむき、荒い息をしながらこちらを赤く光る瞳で睨んでくる。
自分はその目を見て、またも蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。
薄気味悪い暗闇と緊迫した空気の中、獲物を狙う妖怪の荒い息と恐怖しきった人間の切羽詰まった息切れが部屋にこだまし続けた。
少しの間そうしていると、レミリアは落ち着いたようだった。
「咲夜、心配かけたわね、もう大丈夫よ。」
「お嬢様、まだお辛そうです。そんなにあの者の血が気に入りませんでしたでしょうか?」
「いえ…むしろ逆よ。あの血は《魔薬》だわ。正直匂いだけでも理性が吹き飛びそうだった…」
何を話しているかは俺にはさっぱりだ。
しかし、レミリアは吸血鬼、と前に言っていたので多分人の血を吸うんだろう。
それで俺の血を吸って体調不良…ということだろうか?
レミリアといいルーミアといい俺の血には何があるんだろう。
そう思って腕をじっと見つめたが、そこには物言わぬ数を抑えて真っ赤になった布がこちらを蔑視してくるばかりであった。
ちょっと気になった俺は聞いてみることにした。
「あの…レミリア?どうしたんだ?」
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅー。…いいえ、少し興奮しただけよ。何もないわ。時に幸太、あなた自分がどんな体質か分かっている?」
「え…いや…ただの人間です。あ、でも体の中に妖力がたまっているとよく言われますね。」
「なるほど…道理で…」
レミリアに興奮していると言われて恐怖を覚えたせいでまた口調が硬くなったが、なんか体質について聞かれた。
俺の家系は昔から妖肉を食っていたことが原因で俺の体には妖力がたまっている。
と、そう霊夢に言われたことが前にある。
「ちょうど良い機会ね。幸太、あなたは自分の体の《危険性》を知っておくべきだわ。咲夜、水と砂糖をグラスに入れて持ってきてちょうだい。砂糖は溶けきれないほどに多くね。」
「かしこまりました。」
「ありがとう。咲夜。」
またしても咲夜さんは一瞬でその手にレミリアの頼んだものを持ってきたようだ。
先ほどのわいんぐらすの中に水がなみなみと注がれ、中には砂糖が沈んで入っている。
と、レミリアが目の前まで近づいてきた。
座っている俺に目線を合わせるようにしゃがんで話し出す。
「幸太、これは大事なことだからよく聞きなさい。このグラスがあなたの身体、砂糖、それが妖力。そして水があなたの霊力と思ってちょうだい。そして、この水は砂糖が溶けきれてなくて下に溜まっていると理解して。大丈夫かしら?」
「あ、あぁ、なんとか。」
「そう、やっぱり理解力は高いわね、貴方。」
「でもいきなりこんなこと…なんか申し訳ないんだが…」
「いいから聞きなさい。申し訳なくも思わなくていいわ。ただのお節介だもの。」
「……ありがとう、レミリア。」
…なんか優しいな。
さっきからずっと怖い怖いと言い続けていたが、勘違いであったかもしれない。
重く思い込んで判断してしまうのは自分の悪い癖だ。
レミリアに対する考えが少し和らいできた。
確かに…嗜虐的だが、なんだかんだ優しいんだなと、そう思った。
「どういたしまして。じゃあ続けるわよ。貴方の体は今、このワイングラスのようになっているわ。詳しく言うと霊力と妖力の混ざった上澄み液と、その中にとても濃密な妖力が霊力に溶けきれず体の内部に溜まっているという状態よ。かなり特異な状態ね。普通の人間ならこんな大量の妖力が体内にあると体が妖力に侵されて死んでしまう、もしくは人妖になるわ。」
「そうなのか。妖力が溜まりすぎて妖になりそうっていうのは知ってたがそんな感じなんだな。じゃあ妖怪にならないように気をつけてってことか?」
それならば結構周りから言われてることだし、定期的に霊夢とルーミアに対処してもらっているから問題はない。
「ええ。でもそれだけじゃないわ。むしろ貴方が妖怪になることよりも危険なことよ。少し質問だけれど、幸太。貴方は妖怪にとって最高の餌とはなにかわかる?」
「え?…それは人間だと思うんだが…」
「正解よ。付け加えると《力のある》人間よ。力のある人間を食べると力のない人間に比べて大量の霊力を摂取できるから妖怪は強くなりやすいの。では2番目に良いのは?」
「…分からない。」
「そうね。分からなくて当然だわ。人間は妖怪の事情など知らないものね。正解は《力を持った妖怪》。」
「っ!共食いじゃないか…」
「ええ、そうね。でもこれは理にかなっているのよ。変に力のない人間を大量に食うよりも、力のある妖怪を1匹食った方が全然妖怪は強くなれるの。なんでかって大量の妖力をいただけるからね。ここで少し話すと、妖怪にとっては霊力よりも、妖力の方が吸収しやすいの。強い人間を殺すと恐怖が大量に集まるから強い妖怪を食うよりも強くなれるけど、単純な霊力、妖力の吸収量で言えば強い人間より強い妖怪を食べた時の方が断然多いわ。」
「そうなのか…」
知らなかった。
しかしこれは大事なことなのか?
俺は弱い人間だからあまり狙われないと思うんだが…
うんうん唸って考えながらグラスを見る。
俺の困惑を写すかのようにグラスに映った俺の顔は丸く歪んでアホヅラを晒していた。
「でも、それって大事か?俺は弱いし、関係ない気が。」
「あるのよ。貴方はこの条件の、ほぼ全てを満たしているわ。」
「え?じゃあ俺は妖怪にかなり狙われやすいってことか?…説明してくれないか?まだよく理解できない。」
「分かったわ。まず理由その1、貴方の中には大量の妖力が眠っている。幸太の体の中には食べた妖怪の妖力がたまっているわ。貴方はいつも妖怪を食べているらしいけどそれは先祖からでしょう?でないとそこまで溜まるなんてありえないわ。それこそ霊力を持って中和しきれず貴方の体内に自然に溶け出すほどに。貴方の血を先ほど飲んだけれど飲んだ瞬間に大量の妖力が混ざってて思わず投げてしまったわ。あの血を正気を失わずに飲めるのは大食らいの妖怪だけでしょうね。」
なるほど、じゃあルーミアはかなりすごい存在だったんだな。
俺の血をあんなに飲んでしかも普通でいるなんて…
しかしそんなにも俺の体に妖力がたまっているものとは思いもしなかった。
「そして理由その2よ。貴方が人間に恐れられているから。貴方は人々に妖怪を食らうと勘違いされているわね。それで強大な力を持つと噂されている。そんな貴方を妖怪が殺したらどうなるか…予想できる?」
「…その妖怪は《俺を殺した》という評判を得て人里の人たちから恐れられるようになるだろうな。なるほど…大量の恐怖を得らことができるのか。しかも…これは憶測だが、理由その3は俺が弱いことだろう?強い人間や妖怪のように倒す手間がいらない。つまり、俺は弱くて手軽に倒せるのに強い人間よりも餌として極上なわけだ。」
「その3も正解。そういうことよ。貴方はやっぱり頭がいいわね。」
そんなことを言いながらレミリアが頭を撫でてくる。
ちょっと恥ずかしい。
と、そんなことを思いつつ頭の中は焦燥でいっぱいだった。
レミリアに手順を追って説明されているとよく理解できる。
自分が、妖怪にとってとても都合のいい餌なのだと。
周りの暗闇がまたも迫ってくるようだ。
そう思うと目の前にいるレミリアを疑いそうになってしまう。
俺に取り入ろうとしているんじゃないかと。
しかし、俺を撫でながら優しい顔をするレミリアを見て、考えを改めようとしたが、まだ拭いきれない。
自分の警戒心の強さに自己嫌悪に陥りつつ質問する。
「すまん、レミリア、失礼なのは分かっている。でも聞かないとダメだなんだ。絶対に、俺を食わないんだよな?」
「ふふっ、やっぱり臆病ね。安心していいわよ?私は気に入ったものは長く愛する主義だから。」
「そうか…ありがとう…誤解してたよ…」
頭を撫で続けるレミリアの手に、大きな安堵を感じた。
気を張り詰め続けていたここ二日で、ようやく安心できた時間だった。
「なぁ、なんでこんなこと教えてくれたんだ?レミリアは黙ってても良さそうなんだが…」
「なんでって、簡単よ?あなたを他の奴に壊されたりしたらつまらないもの。あくまで、あなたはわたしのおもちゃだしね。」
「ははっ、なんだよそれ…」
不思議と、あんまり恐怖はしなかった。
レミリアの持つ優しさを感じたからかもしれない。
あぁ彼女は魔性だ。
その冷たい嗜虐心を持っているのに、暖かいその優しさに魅力を感じずにはいられない。
たった数本の部屋の燭台の明かりが、2人を優しく包み込んでいた。
長スギィ!
書きたいこと多すぎて長くなりました。
それとレミリアさんヤンデレみたいになった…なんでや…
レミリアさんドSから打って変わっていきなり姉らしく包容力が…
しかし気に入ったというのがいじめるおもちゃとしてなので結局変わっていません。
レミリアさんのキャラがブレッブレで悲しいです…文才が欲しい…
主人公から東方キャラへの感情集
霊夢 妹みたい+友達
魔理沙 妹みたい+友達
チルノ 手のかかる娘みたい+友達
大妖精 良い子な娘みたい+友達
ルーミア 仲のいい友達
本居子鈴 仲のいい友達
上白沢慧音 感謝
稗田阿求 感謝
レミリア 少しの恐怖+友達
咲夜さんは後ほど…
追記 誤字報告ありがとうございます!
この話は長いし、いっぱいあるかもしれません…