幻想郷貧乏生活録   作:塩で美味しくいただかれそうなサンマ

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第十二話 紅魔館探検隊(1人)

 

レミリアに自分の危険性を教えられてから、レミリアと少し打ち解けた。

あの日から2日が経ったが、未だに紅魔館に居候させてもらっているし、ここにいても恐怖を感じなくなった。

咲夜さんの冷たい感じはまだまだ抜けないが、しっかりと対応してくれるし、レミリアと話すのは存外楽しい。

レミリアには西洋の文化を色々と教えてもらえた。

たまにちょっと油断すると、レミリアの牙が俺のうなじのあたりに迫ってきていたりする。

レミリアはかなり自制しているようだが、そこまで俺の体というのは妖怪にとっては食欲をそそるらしい。

レミリア曰く「ほんのちょっと、しかも一回しか飲んでないのに、依存してしまいそうなほど」らしい。

レミリアが寸前でなんとか正気を取り戻すのでまだ血を吸われたことがないがこの調子だといつか吸われてしまいそうだなと思う。

 

「今日はどうしようか…」

 

レミリアが「やることがあるから邪魔しないでね」と言ってあの大部屋にこもりきりになってしまった。

咲夜さんもレミリアについているらしく、話し相手になってくれない。

紅魔館にはレミリアと咲夜さん以外に自分と仲良く話してくれる人がいないので暇になってしまった。

 

「…そうだ、少し探検してみようかな。」

 

いま、俺は紅魔館での自由な行動が許されているが、思えばこの広い館の一部しか知らない。

もっと知ってみたいなという子供らしい欲を発動させたのだ。

ほんのちょっとの興味だった。

善は急げとばかりに、寝巻きのまま部屋を出る。

レミリアに与えられた西洋の寝巻きは少し歩きにくいが、まぁ大丈夫だろうとゆっくり歩いて散策することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、広い。」

 

そう、かなり広い。

もう一刻はたちそうなものだが、多分探検は半分も終わってない。

なぜ分かるかと言うと、《地下室》という地面の下に作った部屋があると話を聞いていたのだが、それが自分にはなんとも目新しかったので下から探索を始めた。

が、紅魔館の地下は広すぎてまだ探検し終えない。

二階や三階、あとは図書館にも行ったことがないから行きたかったのだが、これはもう帰るしかないかな。

そう思いながら来た道を引き返して自室に戻ろうとする。

幸い物覚えはいい方なので道は覚えている。

と、そこで引き返そうと思ったらある音が聞こえた。

うっすらではあるが、何かを強く叩く音。

 

「どこからだ?」

 

気になったので探してみることにした。

少し探してみると、さらに地下への階段があった。

これはレミリアから聞いていなかった。

自分が今いる場所が最下層だと、そう聞いていたのだが。

好奇心が止められず、自分はその階段を降りていくことにした。

 

 

 

思えばここで少し考えるべきだったのだ。

レミリアが俺に伝えなかった理由を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…明るいな。」

 

そう、かなり明るい。

紅魔館の中でたぶん一番明るいんじゃないかと、そう思えるほどこの階段は明るかった。

レミリアが吸血鬼は光を嫌う、だから暗いと、そう言っていたのだが、不自然なほどにこの階段は明るかった。

小さな空間にコツコツと階段を降りる音が共鳴する。

いつのまにかドンドンと何かを叩く音は消えてしまっていた。

と、長い長い階段を降りきると、そこには金属の扉があった。

鍵はされていないようで、中に入れそうだ。

しかしよくみるとその扉はかなりボロボロだ。

 

「…入るか。」

 

ちょっと不安になったが、好奇心が勝って入ることを優先してしまった。

ギギギ…

と、扉が嫌な音を上げながらゆっくりと開く。

かなり重い扉だ。

全身で力を込めて押しながらやっと動かせる程度。

少しだけ開けて、入ったその中の景色は…

 

「なんだ…これ…」

 

まさに地獄。

ろうそくでこれでもかと明るくされた部屋。

そこに映える赤、赤、赤。

濃い血の匂いとともに目に飛び込んで来たのは返り血まみれの部屋。

真ん中にあるベッドは血が付いてないが、それ以外の場所は全て赤かった。

本来ならば可愛らしい人形たちも手足がバラバラになっていたり血で汚れていて恐ろしいものになっている。

棚なども破壊されている。

 

「…うっ!うぇ…」

 

惨状を見切れなかったので視線を落とすと、そこには人の死骸があった。

それもつい数日前に殺されたもの。

ぐちゃぐちゃにされたまま腐ってしまっていて、その肉塊は赤と黒と肌色の混ざった生々しいものだ。

仕事柄慣れているとはいえ、思わず気持ち悪くなる。

 

「そこにいるのは…だれ…?」

 

と、そんなことを考えているとベッドの方から声が聞こえた。

あまりの惨状に驚いて気づいていなかったようだ。

出て来たのは金髪の、赤い服を着たレミリアによく似た子。

姉妹だろうか?

 

「こんばんは、俺は幸太です。貴方は?」

「私?わたしはね…フランドール・スカーレット。」

 

やはり姉妹であるようだ。

でも…なぜ?

なぜ?閉じ込められているんだ?

そんなことを思っていると、フランドールの口角がにいっと上がった。

おぞましい笑みだった。

思わず思い出す。

数日前の恐怖を。

 

「お兄さん、わたしに食べられて?もうお腹が空いてたまらないの。イイヨネ?」

 

そう、狂った笑みで言われる。

しくじったと、理解する。

ここへ来たことを後悔する。

にじり寄ってくるフランドールを見ながら、どう逃げるかを考え始める。

直感する。

この子は…レミリアよりも恐ろしい!




はい、みんな大好きフランちゃんです。
次はフラン会ですね。

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