幻想郷貧乏生活録   作:塩で美味しくいただかれそうなサンマ

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駄文ですが…どうぞ


紅霧異変編
第一話 夜狩


 

まずい酒での気持ち悪い酩酊を覚ましていたらいつのまにか深夜であった。狩をするのにちょうどいい時間帯だ。狩といっても、自分たちの家系が代々行ってきたものは“夜狩”と呼ばれ、少々特殊なものではあるが。弓、鉈、護符などの道具を持って家を出る。

 

外は二十七日月に薄く照らされた良い夜だった。静寂と涼しさが辺りを包む夏の夜だ。森の方へ歩いていく。近づく毎に恐怖が沸き立つ。

 

「ふぅーっ、よし。」

 

恐怖をどうにか抑え、覚悟を決めて森へ入る。ここからは油断などできない。

 

“夜狩”というものは幻想郷でしかできないだろう。妖などが集まるこの地だからこその方法だ。幻想郷の中にある森の一部には“妖力”と呼ばれる妖が持つ力が充満しているものがある。そこに住む獣はだいたいその妖力にやられ妖獣になる。妖獣になって間もない獣は、常に飢え狂うようになり、血肉を求めて夜に徘徊するようになる。夜狩はそれを狙うのだ。

 

 

真っ暗の不気味な森の中を静かに進む。周りは静寂に囲まれ、淀んだ闇が自分を包む。どこから妖が襲ってくるか分からない。という恐怖が体を薄く撫で続ける。

 

夜目が効くとはいえ、真夜中の森の中はやはり見えにくい。数歩先までしか見えていない。音や匂い、全神経を集中させて歩く。一応護符があるとはいえ、襲われた時に迎撃できるように鉈も持っておく。できるだけあちらに気付かれずに弓で仕留める方が良いのだが、最悪襲ってきたところを鉈で殺せば良い。

 

そうしてしばらく足音や気配を殺して散策していると、1匹の獣を見つけた。鹿は草食であるはずだが、その鹿は殺した山犬の内臓を貪り食っていた。ぐちゃぐちゃと不快な音が辺りに響いている。食べるのに夢中でこちらには気づいていない模様。これは好都合だ。周りにはおこぼれを狙う他の妖獣たちもいる。

 

つまり、あの鹿をここで殺せばその鹿を食おうと他の妖獣たちもあそこに来る。そこを狙い撃ちして一網打尽にできるというおいしすぎる状況だ。

 

背中にかけていた弓と矢を取り力いっぱい引きしぼる。狙うは鹿の頭。一撃で仕留める。

 

しかしここで難しいのは妖獣というのは普通の獣に比べて極めて感覚が鋭いこと。音や匂い、気配はもちろん殺気も出してはならない。自分の心を無にし、存在を消しつつ、矢を放つ。

 

「ぎゅっ!ぎゅぃぃいい!!」

 

鹿の断末魔が森に響く。ヒョウッと空気を切って飛んでいった矢は寸前で鹿に気付かれたものの、寸分の狂いなく鹿の頭を貫いた。即死である。

 

血を垂らしながら倒れ伏した鹿のもとへ様子を見ていた他の妖獣たちが駆け寄る。「思わぬ収穫だ」と言わんばかりなのであろうが、狂った妖獣たちはその肉に釣られ考えることができない。そこには狩人がいることを。

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ、よー…4匹か、大成功だな。」

 

最終的に4匹を仕留めることができた。これが夜狩の利点。危険こそあるものの妖獣たちの習性を利用することで一度の狩で何頭もの獣を狩れる。まぁ、こっからが一番の危険な作業だが。いま、ここには妖獣たちにとってのご馳走が大量にある。しかも奴らは嗅覚が非常に良いため、このままここでぐずぐずしていると、大量の妖獣がここに集まってしまう。そうなれば死あるのみだ。

 

鉈を取り、最低限の血抜きをして4匹の成果を担ぎ上げる。ここにできた大量の血だまりの匂いにつられ、ここに妖獣たちは集まってくる。その後、俺のことを追いかけてくるだろう。今から妖獣たちとの鬼ごっこを、この重い荷物を持ちながらしなければならない。しかし、焦って物音を立てて走るものなら一瞬で位置がばれる。物音を立てないように、かつ早く、家まで走った。

 

 

 

 

 

 

 

荷物の重さと、後ろから迫る悪寒、吹き出す汗や悲鳴をあげる身体の痛みに耐えながら暗い森の中を走り続けると家に着いた。家の中に走り込み、荷物を投げ置く。そして床にどっと寝転んだ。

 

「はぁ、はぁ…生きてる…んぁぁぁ!怖かった!辛がったぁ!」

 

思わず叫ぶ。家の周りは妖除けの護符で安全とはいえ不用心だ。しかし、死の恐怖から逃れた達成感と喜び、安堵を感じている凡人の幸太にはそうする他なかった。毎度のこととはいえ、本当にこれには慣れない。何年も前からやってきていることなのになぁ。

 

仕事は残っている。生の余韻を早めに切り上げて幸太は次の仕事に移ることにした。まず解体。骨や皮も使い道が多いからしっかりと処理をしてとって置く。そして、売る用途の肉と自分の食糧の肉に分ける。

 

「妖力抜きのお札はっ、とぉ…あと3枚かぁ…また買わなきゃ。これ結構高いんだよなぁ…霊夢まけてくれないかなぁ。」

 

売る用途の肉にはこのお札を使わなければならない。俺が狩ったのは妖獣。その肉には妖力がたっぷり詰まっている。もちろん里の人々は食いたがらない。妖怪の肉を食うなんておぞましいと思っているからな。そこでこのお札の出番ってわけだ。売る用途の肉にはそれを使う。そうすれば普通の獣の肉と変わらないからな。しかし自分用には使わない。勿体無いからだ。

 

それらの処理を終えるともうすっかり夜明け前だった。肉を売りに行かないといけないが、腹も減ってきた。さっき取ってきたばかりの妖獣の《まだ妖力が詰まったまま》の肉を焼く。

 

そう、これが俺の異名の“妖喰らい”の由来だ。妖怪の肉をそのまま食らうからだな。なんともたいそうな名前だと思う。実際はお金をケチって妖獣の肉をそのまま食っている卑しい貧乏人のことだ。しかも妖獣といっても下級のものだ。人里の人は嫌うが、妖獣程度の妖力なら人間が食べてもさほど害はない。だから俺はそのまま食っている。

 

 

焼けた肉の香ばしい匂いが家の中を包む。今日は大量のお金をもらえてほくほくだろうな。と、数刻先の自分の姿を予想し、久しぶりの食事に歓喜し、幸せな心持ちで数日ぶりの食事である肉を貪った。

 

 

 

 




まだまだダークですが少しずつ救われていきますよーいくいく
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