幻想郷貧乏生活録   作:塩で美味しくいただかれそうなサンマ

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前話にほんと少しですが訂正が入ってます。
首飾りの春についてですね。
これからはこういったミスはなくしていこうと思います。
ではどうぞ



閑話 生きる亡霊と生きていない人間

幸太の部屋を出て宴会場へ向かう。

最後の言葉に対する反応はとても滑稽で笑わせてくれた。

新しい玩具を見つけたような気分で廊下を歩いていると後ろから急いで追いかけてきた妖夢が尋ねてきた。

 

「幽々子様。質問があるのですが…」

「ん?なぁに?」

「最後、幸太さんになんとおっしゃったのですか?」

「んー、“死にたいなら殺す”って言ったわ。」

「え!?なぜそんなことを!?」

 

妖夢が驚きのあまり肩を掴んで聞いてくる。

あまり痛くないがそこそこな強さだ。

振り返ったところにある妖夢の顔は信じられないといった驚愕と困惑に満ちていた。

そんな妖夢の顔が面白くてまた笑ってしまう。

どうせならからかってやろうと悪意の芽が心に出てくる。

 

「もう、妖夢。がっつかないでちょうだい。肩が痛いわ。そんなに幸太のことが好きなの?」

「いっ、いえ!そんなことではないです!断じて!」

 

そう言ってからかうと妖夢の顔はお日様みたいに真っ赤になって面白い。

半霊の方もほの赤くなり体を揺らしている。

好きなことはないのにそう勘違いされたことが恥ずかしいのだろう。

やはり妖夢は純真で面白い。

 

「冗談よ。妖夢。そんな慌てなくてもいいじゃないの。そんなに拒否されるなんて幸太が可哀想だわ。」

「いや幸太さんが嫌いなわけではなく…って!そんなことはいいんです!なんで幸太さんを殺すなんて言ったんですか!?」

「そんなの殺したいからに決まってるでしょう?」

「な!?幽々子様は幸太さんを殺したいんですか!?」

「いいえ、私ではないわ。」

「じゃあ誰が!?幽々子様じゃないんですか!?訳がわからないですぅ…」

 

妖夢は頭がこんがらがってきたのか思考が短絡的になっている。

こういったすぐ冷静さを失うところは直して欲しいところだ。

だけど面白いし教えなくてもいいかな。

もうそろそろ教えないと可哀想だし教えようかと思い、先ほどのことを思い出す。

幸太のこちらをみるあの目。

飛びのいた後の私を睨め付けるあの目。

あの澄んだ羨望と濁る絶望を共存させたあの目を思い出して一人可笑しくなり、笑い出してしまった。

くつくつと腹を抱えて笑う私を見て妖夢はさらに困惑の顔を深める。

心の中でおかしさを転がしながら妖夢に説明する。

 

「幸太はね、“この世に生きてないし死んでもない”。そんな男なのよ。」

「…え?幸太さんは生きてますよ?何をいってるんですか?」

「はぁ、妖夢は純真ね。まったく可愛いったらないわ。はいぎゅー。」

「わわっ、幽々子様、いきなりどうしたんですか!」

 

私が抱きついたら妖夢は顔を真っ赤にしてまた慌て出す。

愛らしすぎて狂いそうだ。

本当に純真な少女の妖夢には少し難しかっただろうか。

でもまあ知りたがっているし可愛い妖夢のためだし教えてあげる面倒もやぶさかではない。

 

「いい?妖夢。幸太は“ただそこに在るだけ”なの。」

「えっ!?まるで生きてないような言い方ですが生きてないんですか!?」

「もちろん生きているわ。でもその生はなんの意味をも成していない。彼にとって生とは無なの。生きていることになんの喜びも持っていない。かといって死ぬことも憚られる。生きることに辛さしか感じてこれなかった幼少期が彼には在るのでしょうね。そういった人間はよくそういう死生観を持つのよ。」

「でもそれがなぜ物のような生き方に繋がるのですか?生きるのが辛いとしても死ぬのが嫌ならば生に意味を見出していると思うのですけれども…」

 

妖夢が首を傾げながら質問する。

良い質問である。

この問題が幸太の空虚さを語る上で一番肝心な所。

生の意味を見出していたとしても、それが彼の感情ではないということが。

 

「そうね…もしかしたら彼は生に意味を見出しているかもしれないわね。でも大事なのはそこではないわ。彼の精神性よ。」

「え?見出しているのですか?それに心?すいませんよく分かりません…詳しく聞いてもよろしいですか?」

 

結構ぼやかしてみたがまだ妖夢には難しかったであろうか。

いや、いつまでも難しいままであってほしいものである。

こんな人間の闇なんて分からない方が良い。

それほど純真で過ごせることが幸せである。

まぁ説明してくれと言われたならば仕方ない。

 

「ええ。詳しく説明するわね。彼には誰にも打ち明けてない心理の底が在る。それこそ自分でも知り得ていない部分がね。それを偽りの精神性で覆っているの。そして重要なのがここからよ。その偽りの精神性は“彼が生み出したものではない”ということ。つまり彼は誰かから与えられた歪な信条で生きる意味をもって今を生きている。その信条が持つ理念にしたがって薄っぺらい心の外殻を形成して他人と関わっているの。私が殺そうかと問いを投げかけたとき、彼は羨望の表情を浮かべたわ。本人は気づいてなさそうだったからかなり深層の心理のようね。これからも分かるように彼が生きているのは自分のためじゃない。誰かが悲しむから、迷惑がかかるから、申し訳ないから。そんな理由で生きて自分は死にたいと願い、中途半端に死にたいが故に他人と深い付き合いをせず感情を埋め込む。ほら、これほど空虚なことはないでしょう?彼は生きているわ。でも彼が生きている理由は彼自身ではないの。彼は自分の感情や生きる意味を幼少期に早々に閉ざして見失ってしまったのでしょうね。自分に目を向けない生なんて生きていないのと一緒だわ。ね?だから彼は生きてもいないし死んでもいない。」

「…わたしにはよくわかんないです。」

「そうね、分からなくていいわ。むしろ分からなくて当然。こんな歪な心には深い悲しみを幼少期に味わったものにしかできない。まぁ、そんな人物が多くいる人間というのはかなり罪深い生物なのかもしれないわね。」

 

今を楽しく生きる亡霊からすれば。

今を楽しく生きようと見せかける人間が滑稽なのは当然。

ましてや隠しきれずに死亡願望が見え隠れするならばなおさら。

それに追い打ちをかけたのは。

幸太が作り出した仮初めの心を自分の本当の感情と勘違いしている点だった。

あの男嫌いのレミリアが気にいるのも理解できる。

あんな空虚な男は今そうそういないし、作り出された仮の心はかなり紳士的なものだったから男だったが信用に値したのだろう。

 

 

「妖夢、あの男は信用してもいいけど深入りしてはだめよ?深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを見ているのだから。」

 

なによりも滑稽なのは幸太の奥底に感じ取れた真っ赤な破壊願望であった。

 




はい、主人公の衝撃の事実暴露会です。
かなり歪んでますね。
なんだか説明が下手くそで申し訳ないでふ。
問題点とかあったら言ってくれると嬉しいです。
次の閑話は絶望いふルートにします
これからもよろしくお願いします
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