幻想郷貧乏生活録   作:塩で美味しくいただかれそうなサンマ

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遅れて申し訳ございません!
これは前々感想でいただいたリクエストに応えたものです。
注意!妖夢キャラ崩壊してます!
胸糞鬱展開です!
かなりヘビーです。
グロ注意です!
読む方は覚悟してください!


特別話 23話if もしも妖夢が狂人だったなら

黒雪に覆われた森の中。

饒舌な宵闇に煽られながら二つの影が歪に対峙する。

片方は長刀と刀を持ち、余裕ありげに。

かくしてもう一方は鉈を構えて必死そうに。

 

 

 

 

「決意を見せておいて逃げ腰な戦法…滑稽ですね。男児として気概を見せたならば行動にしてこそではないですか?有限不実行とは情けないですね。」

「はっ、強者が弱者をなぞの言いがかりで嬲りつけているこの光景も滑稽じゃあないか?崇高な精神の持ち主ならば自己の行動を省みて欲しいけどな。」

「あなたは口が達者ですね。巧言令色少なし仁とはよく言ったものです。あなたのような除け者にはぴったりですね。」

「孔子を信じているわけではなかろうに。都合のいい時だけその教えを持ち出すのはいささか狡猾で薄情だな。主人のためにとか言っていたがあなたみたいな輩を部下に持つと主人も大変だろうなぁ。」

「機転が利いて臨機応変に対応できる優秀な部下を主人は好くのですよ?あぁ、人との繋がりの薄いあなたが分かることではありませんでしたね。ごめんなさい、気が利かなくて。」

「いえいえ、こちらこそ。思考をころころ変えるような変に賢い輩には道理が分からなくて当然でした。すいません、俺口下手なもので。」

「「だったら口を閉じろ」」

 

相手と俺の声が重なる。

妖怪と真正面に対峙しながら行われるのは挑発の応酬。

互いに相手を警戒しているからこそ安易に攻撃をせずに相手を誘う。

しかしどちらも警戒しているので挑発に乗ることはない。

結局二人とも黙りこくって冷たい目線で見つめ合うだけとなった。

妖怪は切りかかってくる様子を見せない。

相手方の余裕の現れというべきだろうか。

なんとも厄介なことだ。

相手は常に冷静さを保っている。

とてもやりにくい相手だ。

どうやってこの絶望的な状況を切り抜けるか考えていると妖怪の気配が変わる。

ゆらりとした黒煙が妖怪の背後に見えるような、そんな悪寒を受ける。

 

「はぁ…茶番は終わりです。“妖喰らい”と呼ばれているならばどれ程強いのか。そんな期待もあって仕掛けませんでしたがここまで予想外れとは。最初の一撃を避けたことは賞賛に値しますが。まぁ、一瞬で殺すのも何か物足りないですし、遊びましょうかね。ほら、今から斬りおろしますから、しっかり避けてくださいね〜。」

 

そう言い終わると、妖怪は長刀を上段に構えてこちらにゆっくりと歩いてくる。

明らかに舐めている、油断している動きのはずなのに付け入る隙が全く見受けられない。

いや、それよりも驚くべきはその威圧感。

その場から動けない、いや身体が動かない。

それほどまでの原始的恐怖が俺の体を走っていた。

俺の数歩目の前まで妖怪は歩いてくると言った通りにその刀を斬りおろしてきた。

右に避けようとする。

しかし…!!速い!

いや…俺が遅いのか?

無我夢中で無理やり体を動かしたが避け切ることはできなかった。

左腕が丸ごと持ってかれた。

肩口からバッサリ全てである。

切断面から血が流れ、力が抜けていく。

そして妖怪は無表情で近づいて淡々と言い放つ。

 

「うっ!くそ…」

「ふむ、回避が間に合いませんでしたか。じゃあ次は右上から斜めに斬りおろしますよ。今度こそ避けてくださいね。」

「待っまて!あっ!」

 

容赦なく銀閃が走る。

また回避はできなかった。

今度は左足を切り取られた。

左膝から下が無くなった。

激痛が走る。

右足と右手だけになって地面でじたばたともがいている自分の元に妖怪がまた近づいてくる。

その顔はいかにも面倒くさそうな顔であった。

その顔を見て絶望が走る。

 

「はぁ…あっけないですね。一回も避けれないとは。まぁいいや。じゃあ次は右足を貰いますね。でもすぐ切っても面白くないし…あ、そうだ!特別にこれで切ってあげましょう。これ、何か分かりますか?」

 

そう言って妖怪が地面から拾い上げたのはただ少し尖っただけの石だった。

もちろんそんなもので人体が切れるはずもない。

妖怪の問いかけなど忘れてしまうほどの恐怖が襲う。

意図が分かったのだ。

妖怪は…俺の右足を石で削りきるつもりなのである。

どれほどの痛みが走るかは想像に難くない。

 

「や、やめてくれ…」

「残念、“やめてくれ”というものじゃないです。これは石ですよ?罰として思いっきり痛くしてあげます。」

「違う!石だ!“石”だろう!?」

「ほれ、ごりごりごりっと。!

「あぐっ!ぐっ!ああぁぁぁ!あ”あ”あ”あ”あ”!」

 

妖怪は軽い言い草で俺の足を足で削り始める。

想像を絶するほどの激痛。

石の切れ味が悪いため肉は切られるのではなく、引きちぎられ擦られて抉られてぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。

そうして足が骨まで達すると今度は骨をゴリゴリと削られる感触が脳髄を走り、その音が体に不快感を与えながら透き通っていく。

痛みを倍増させるためにわざと関節ではないところをやっているようである。

傷口をつくり、それをさらにめちゃくちゃにするような手法はまさに拷問だった。

血飛沫が上がり、妖怪の頬を染める。

妖怪はどこまでも無表情だった。

痛みのあまり失神しそうになった瞬間、妖怪が持っていた短い方の刀が俺の肩口に刺された。

するとさっきまで意識が消えかけてたのが嘘かのように明瞭になり、痛みが激しく感じられるようになる。

 

「“白楼剣”という刀なんですよ。意識がはっきりしたでしょう?意識を手放そうかという“迷い”を切りました。あなたはもう失神できません。痛みをゆっくり楽しんでください。」

 

絶望が走る。

妖怪は手を止めない。

と、骨がついに切断された。

そこまでしてようやく妖怪は手を止めた。

痛みが走らないはずの右足からまだ削られているような痛みを感じる。

と、妖怪は大きめの石を拾ってきて切断されかけた、肉で繋がっただけの右足のつなぎ目をめがけて思い切りよく振り下ろした。

ぐちゅりと肉が潰れた音とともに血と骨の粉末が弾け飛ぶ。

その瞬間、痛みのあまりに俺は壊れてしまった。

痛みが快楽に思えるようになったのだ。

 

「ハハ!アハハ!キモチイイ!キモチイイ?」

「…狂ってしまいましたか。面白くない。でもまだ“迷い”がありますね。切ってさしあげましょう。」

 

そんなことを言いながら妖怪が刀をもう一度突き立てる。

今度は明瞭な意識が激痛で曇るようであった。

 

「ぐっ、ぐぁ。あぁぁぁぁ…。えゔ、あぅ…」

「正気を取り戻したようですね。心を壊すべきかどうかという“迷い”を切りました。あなたの中途半端な心の強さがあなたを苦しめてるんですよ?」

 

絶望は終わらない。

絶望が絶望を呼び、逃げようとしても逃げられない。

地獄の始まりを告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ…」

「なぜ生きているのが不思議ですね。わたしが補助しているとはいえ普通の人間ならばとっくに死んでもおかしくはないはず。妖喰らいなだけあって丈夫なのでしょうか?」

 

どれほどの時間が経ったろう。

狂うことも逃げることも一切の抵抗を許されず苦痛を与え続けられた。

死にそうになっても白楼剣とやらで蘇生させられた。

感情ではなく、肉体や魂が持っている死ぬ“迷い”を切ったといわれれば絶望するしかない。

今、俺の体では俺の意思に反して生きようとして蘇生が急速に行われている。

その苦痛は自分の中をおぞましい何かが走り抜けているような不快感と痛みを伴うものだった。

それに加えて蘇生したそばからぐちゃぐちゃにされてるのだから痛みは言うまでもない。

四肢を石で削り切り取られて失い、腹を木の枝で破られ内臓の半分を握り潰されて代わりに雪の塊を詰め込まれ、全身の骨は砕かれて肉はいたずらに殴られてあおあざができ、鼻は潰されて喉も潰されて目も舌も、聴覚と触覚を除く五感の全てが潰された。

音しか聞こえない、気配しか感じられない暗やみの恐怖の中でなお温もりを与えるものがある。

首飾りだ。

しかしこの状況でチグハグなその温もりは死をより強烈に自分に示すだけだった。

と、今まで首飾りに触れようとしなかった妖怪がそれを奪ってきた。

温もりが離れる。

 

「だいぶん苦しんだでしょうし、もう楽にしてあげます。この…首飾りでね。この首飾りであなたの心臓を貫いてあげます。嬉しいでしょう?こんなに大事な首飾りで死ねるのだから。じゃあ、さようなら。」

 

 

ずずッ、という音を聞いたと思ったら何も感じなくなった。

あぁ、そうか。

死とはこんなに。

“救い”だったんだな。

 

 

 

 

妖怪が去ったあと。

雪を赤く染めていた醜い肉塊の周りには妖獣が群がっていたそうな。

 

 




はい、イフルートでした。
書いてて自分の力不足を感じました
こういうの書いたの初めてなので拙いと思います。
指摘等ありましたらどうぞ…
本編の方では幸せになるので…幸太さん…
これからもよろしくお願いします…

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