幻想郷貧乏生活録   作:塩で美味しくいただかれそうなサンマ

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遅れてすいません!
更新について詳しいこととか色々なことがありますので活動報告を見ていただきたいです。
では、どうぞ


萃夢想編
第二十七話 黒に交われば灰になる


幽々子さんが意味不明な発言をして部屋を出た後。

俺は未だに外の喧騒以外なんの音もしない部屋の片隅で蹲っていた。

障子の外から光の路が伸びる。

強烈な不安が身体を襲う。

思考と気力を毒が回るかのように滲み血が淀む。

 

「死ぬ…」

 

何気なく出た言葉だった。

でもなぜか胸に違和感もなく落ち着く言葉だった。

今まで常に日常に溢れすぎて深く考えなんてしなかったなと思った。

 

何か他者を殺すのは当然。

殺されたなにかの死骸を見ることも多い。

何より自分がいつも死と直面した生活を送っているからだろうか。

 

理由は分からない。

でも思うことが一つ。

俺は“死”をどう思ってるんだろう?

 

忌むべきものとして避けてるんだろうか。

いずれ来るものと受け入れているんだろうか。

それとも逃げとして救いを求めてるんだろうか。

 

ちょっと思考してみたがどれも自分を納得させるものじゃなかった。

 

「あ…上納金…」

 

またしてもふと思ったことだった。

暗いことを考えているとつい思考が鬱になりがちだな。

今ぐらい…考えなくてもいいかな。

でも、そんなことを言って逃げれる事柄でないことも理解している。

上納金は俺にとって命に等しい。

俺は、上納金によって生きているとも言える。

馬鹿げた話だなぁとは思う。

俺は上納金を支払うことによって人里から“生きることを黙認されている”のだから。

まぁ…実際は上納金を払わせる為の方便なのは知っている。

しかし上納金を払えない俺を奴らがどうするかは…想像に難くない。

上納金のことを思い出したのもこういったことがあるからだろうか。

 

「…家には、狩の道具と釣り具一式か…」

 

今日の徴収は多分それらが持っていかれてしまうだろう。

なんとかしたいものだが身体を上手く動かせない今、何ができるというのだろう。

それにそれらを回収しても今日俺が出せる財はない。

そして…それらを今日、上納金として出しても明日はない。

絶望的な状況。

 

「なんでだろうな…」

 

どうして俺がこんな目に合うんだろう?

今まで“善く”生きてきたと思う。

思いやりを持ち、慈愛の心を持ち、奉仕してきた。

文句も言わず、我慢して、ただただ人のために。

心に暗雲が垂れ込める。

ふつとした憤懣で満ちた。

 

「あぁ…そうだったな…」

 

曇っていた思考が突然晴れたようだった。

所詮、俺は“罪人”だからなぁ。

そんな思考が空一面に広がっていた。

またしても暗い気持ちが呼び起こした、山吹色の地獄だった。

 

霊夢の顔が浮かんだ。

チルノも、大妖精も、ルーミアも、レミリアも、霖之助も、魔理沙も、射命丸も、小鈴も。

みんなにこの話をしたら多分怒られるんだろうなぁ。

そして頼れと、言ってくるだろう。

 

「…頼りたいなぁ。」

 

ぽつりと溢れた心の声。

弱さの発露。

決して叶わない夢物語。

あぁ…なんで俺はこんなことも見落としてたんだろうか。

苦しさと辛さで頭がおかしくなってたか。

見つけてしまった暖かさに酩酊したか。

何が自分の状況を知らないだろうか。

何が意地をはっていただろうか。

何が今からは頼ると言えるのだろうか。

何が…俺は普通の人間なのだろうか。

 

いじけて目をそらして逃げただけじゃないか。

 

さらに身を抱えるように小さく縮こまる。

両手を顔に持っていって強く当て、泣く。

喧騒が身を包み、薄暗い部屋に伸びる光の路が身体を刺す。

 

俺は…“罪人”だろう?

生けるものを殺し、多く穢れていて。

妖を喰らい、人に非る者に堕ちて。

 

 

手を離して右腕の包帯を解いた。

 

数個の目がじいっと、こちらを静かに眺めていた。

 




はい、主人公独白会でした。
感想では救い会を早く!って声が多いですがその…流れ的な問題で結構遅くなると思います。
更新遅くなってほんとうにすみません!
失踪はなるべくしたくないのですが忙しくてですね…
今後の更新に関して活動報告に詳しくまとめました!
是非みてください!
これからもよろしくお願いします

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