弾幕ごっこをする場は少し離れた森の中になった。
ほんとにあっという間に、疲れずについたから魔法というのは便利だなとしみじみ思う。
自分だったらここまで山の中の悪路を、この猛暑の中根気強く歩くしかないからな。
「…んで?今回はなんの相談だ?魔理沙」
「いやーいつも悪いな…幸太…」
目の前で少し浮かない顔をしている魔理沙にそう尋ねる。
魔理沙が「俺と弾幕ごっこをしよう」というときはたいていこんな感じでお悩み相談なのだ。
今回も何かあったんだろう。
ま、十中八九魔理沙の想い人である[森近霖之助]のことであろうが。
「私さ…実は他人が怖いんだ…怖いんだよ…」
…重かった。
予想以上すぎる。
いつもみたいに想い人との惚気話を延々と聞かされるんだろうなと薄っぺらく覚悟してきたんだが…
こんな重い話をされるとは。
いや、気づいていなかったわけではない。
魔理沙が、道化師を演じていたのは。
しかしそれは過去の話。
今はそうでもない気がするが…
「私は昔から異端でさ、同年代の子供に混じってても人の内心が気になって仕方なかったんだ…多分…自分が人より違う、異端だってことをどこか悟ってたんだと思う。興味の方向も、精神性も、何もかも人と違ったんだ。」
「そうか。」
魔理沙が顔を下げ独白し出す。
こういうときは無理に遮らないがいい。
相槌だけ打って先を進める。
とりあえず全部吐かないとな。
「そこでさ、演じたんだよ。みんなが望む自分を。快活で、少しお馬鹿なおっちょこちょいみたいに。人にわざと、侮られて、仲良くしてもらえるように。」
「うん。」
「でもさ、それは違ったんだよ。自分は人に迷惑ばかりかけると。そうなってさ、そのせいで嫌われてさ。結局異端になったんだ。違う自分を出し続ける不快感に耐えた結果がこれなのかと、その時は本当に死んでもいいと思えたよ。」
間が空く。
何かを言うのを躊躇っているのか、こちらの顔色をうかがっているのか。
俺は何も言わない。
ただただ待つ。
と…魔理沙が先を話す。
「ここで香霖とか、霊夢とかに助けられて、もう忘れたと思ってたんだ。だけど癖って言うのはなかなか抜けないな…また…霊夢とか香霖とか…お前にも…迷惑かけて。演じていた自分が染み付いたんだ。のりで顔に貼り付けていた仮面が…取れないんだよ。…それから怖くてさ。いつお前たちに嫌われないかビクビクしながら過ごしてるんだ。馬鹿みたいだろ?自分が悪いのに。こんなこと聞いても、迷惑だって分かってるのに。」
うーん…重いな。
魔理沙はもう泣き出してしまっている。
これは俺だけでどうこうできる問題じゃない気がしてきたぞ。
まぁ、なんとも気負いすぎだと言わざるを得ない。
昔のトラウマも合わさって自分のことに自信が持てずにいる。
「今の魔理沙はありのままだろう」と、そう言っても信じてくれないに違いない。
実際魔理沙はそう思ってないが、魔理沙の仮面はとっくに剥がれている。
俺らに対する行為はむしろそう言う感情からくるものではない…と思う…
そこに関しては自信がないが。
1つ、自信を持って言えることがある。
魔理沙の両頬を手で挟み、顔を上げさせて言う。
「なにしんみりしてるのよ!この馬鹿魔理沙!そんなわけないじゃない!」
「…え?なっ…えっ?」
俺の全力の女声だったがお気に召さなかったようだ。
しかし無視は辛い。
「…霊夢なら、そう言うだろうな。もちろん!香霖も、俺もだ。お前が仮面被ってただなんだの取れないだのなんだのは俺らは知らんが、どうせ知っても、俺らはそれが魔理沙だろ?関係ないよ。って言って、それで終わりだよ。そりゃあ、お前に迷惑かけられたことだって何回もある。怒ったことも。でも、それだけで嫌いになるはずがないだろ?俺ら三人、みんなお前のことが大好きだよ。特に!香霖な!」
「あ…あぅ…なんだよそれ…プフッ…霊夢の真似、似てないぞ?」
ちょっと笑ったようだ。
うん、良かった。
答えとして合ってたかどうかは分からんがまぁ、少し軽くなったんなら良かった。
あとは香霖がなんとかしてくれるだろう。
「あー!なんか笑ったらスッキリした!ありがとな!って事で弾幕ごっこしようぜ?」
「え?それ本気で言ってる?」
「おお!大マジさ!あ、幸太は横文字あんまり分かんないか。まぁ、本気さ!」
この後ほんとにした。
結果はまぁ…予想通りかな。
惨敗どころじゃないよ。瞬殺だよ、瞬殺。
主人公に対する感情集
霊夢 親愛
魔理沙 友愛
チルノ 親愛
大妖精 友愛
ルーミア 食欲+友愛
こんな感じでしょうかね。