雨の向こうに青空を   作:世嗣

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基本的にノイズの平均出現数は100ってとこですが、覚醒ビッキー(一期)なら十秒あれば倒したりしちゃいます。
しかしこれは、融合症例の特例であり、普通の奏者にはこんなことできません。(と言うことに筆者の中ではなってる)。
因みに、原作開始時ビッキーは16歳。

現在の翼は12歳、奏は14歳です。



レイニーデイは雑音と共に

 

 ノイズ出現からおよそ十分。

 

 とある男性は自分の会社の屋上にノイズが降り立ったことを聞き、人でごった返す階段を慌てて降りていた。彼には帰るべき場所があった。まだ新婚で、今日の夜はディナーの約束をしてて。絶対に帰らなければならなかった。

 

 とある女性は特異災害警報を聞くと、幼い我が子を抱いて地下シェルターへと走る。しかし、ここ数年仕事も辞め子供の面倒を見ていたせいか、若い頃のように早くは走れない。それでも、子どもは絶対に守ることだけは決めていた。

 

 とある初老の男性は己の会社を捨てて逃げなければならないことに苦渋の決断を迫られていた。彼は元は小さな町工場の跡取りだった。それを必死に彼の代で大きくして、そしていずれは彼の息子に引き渡すつもりだった。かつて父がそうしてくれたように。

 

 とある特異災害対策機動部一課の職員は手にした銃の引き金を必死で引いていた。青空の中を我が物顔で泳ぐ『空中要塞型』から雨あられのごとく落とされるノイズに狙いをつけるが、全てが位相差障壁に阻まれて通り抜けていく。一人、また一人と仲間が黒い塵へと変わっていく。

 

 

 ノイズの軋むような音をあげ、人々の阿鼻叫喚の悲鳴で埋め尽くされる戦場で、それでも絶望に染められない音がある。

 

 響き、鳴り渡る希望の(うた)がある。

 

 

 

 

人と死しても、戦士と生きる(Croitzal ronzell Gungnir zizzl)

 

 

羽撃きは鋭く、風切る如く(Imyuteus amenohabakiri tron)

 

 

 

 その時に何が起きたかをその場にいた人間が詳しく語ることはない。

 

 彼ら、彼女らは多くの感謝とともにある約束をしてしまった。故にその場について語る言葉は持たない。

 

 でも、ただ一つ言うことがあるとすれば、皆、口を揃えてこう言うことだろう。

 

 

 ──美しい歌が聞こえたのだ、と。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

「シンフォギア奏者両名現場に到着しました! これより交戦するとの事です!」

 

「周辺住民の避難完了まで後十五分……いや、二十分はかかると思われます!」

 

「よし、なら市民の避難の援護を優先させろ。最悪建物は破壊して構わん。被害を一人で減らすんだ」

 

「現在奏者のバイタル安定! 今のところ奏ちゃんもLiNKERの負担は低そうです!」

 

「なら了子君にデータを送って後は一任しろ。ノイズ解析に手を回すんだ」

 

「一課司令から通達! 上空の大型ノイズをなんとかしてほしいとのこと!」

 

「あークソ、そっちも俺たちか……! あおい君、自衛隊と連絡はついたか」

 

「先程最も近い駐屯地からヘリを出してもらいましたが到着にはもう少しかかりそうです」

 

 弦十郎が細かく指示を飛ばしながらモニターを睨む。映し出されているのは全長十五メートル近い巨体で、悠々と空に浮かぶノイズ。その腹からは絶えることなくノイズが降り注いでいる。

 

 弦十郎の視線が藤堯の隣で計器を触っている戦兎へと向かう。

 

「戦兎、今ノイズの数は何体くらいになった」

 

「計器で観測できる分は500ちょいってとこ」

 

「翼たちに減らされてそれか?」

 

「いいや増えてそれだよ。増える数に翼たちの倒す数が間に合ってねえな」

 

「やはり発生源を潰さなきゃなんともならんか……」

 

 空中要塞型と呼ばれるノイズは以前奏が相手にした『強襲型』と似通ったノイズの投下という性質を持っている。強襲型と違い本体の戦闘力はほとんど無いが、その代わり空を飛び一定周期でノイズを発生させ続けることができ、その能力は厄介の一言に尽きる。

 しかも攻撃しないからか自壊時間も他のものよりも長いというおまけ付きである。

 

「よし、『空中要塞型』のノイズ投下予測時間の算出終了っ! モニターに時間表示します!」

 

 珍しく敬語の戦兎が機器を操作すると、二課の巨大なモニターの端に『15:23』を最大値とする時間が表示される。そして今の表示は『06:54』となっていた。

 

 それを見てあおいが苦い顔をする。

 

「これは……、ぎりぎり避難が間に合いませんね」

 

「藤堯、今の一般市民の避難はどの程度済んでる」

 

「多めに見積もって六割ってところですかね」

 

「因みに今のノイズの数はだいたい400ぐらいだ。お空のデカブツを守ってる飛行型は加えてないから実質的な数はもうちょい増えるな」

 

「司令、空中要塞型移動を始めました。ここは未避難の市民が多くいるポイントです。ノイズが投下されれば被害が拡大します」

 

「自衛隊のヘリもとても六分では来てくれそうにありませんね。司令、どうしますか?」

 

 伸ばした髭を触り思考を整理しながら、弦十郎は二課保有のトレーラーにいる了子へと通信をつなげる。

 

『はいはーい、こちら櫻井了子。何かご用かしら〜』

 

「空中要塞型が移動を始めた。このままでは被害が拡大する。知恵を貸して欲しい」

 

『そんなこと言われても私は戦略のことなんてわからないわよ?』

 

「構わない。俺の質問に答えて欲しい」

 

『仕方ないわねぇ。それで? 何が聞きたいのかしら』

 

「翼か奏君、どちらでもいいんだが、彼女たちが空中要塞型を落とせると思うか?」

 

『無理ね』

 

 セオリーとしては空中要塞型にはヘリなどの小回りが利く部隊で細かにダメージを与えていく。しかし、それも時間の関係から難しそうだった。

 

 だから、もしかしたらシンフォギアなら、という質問だったのだが、それもバッサリと切られてしまう。

 

 モニターに映し出された了子が、眼鏡を中指でクイッと押し上げる。

 

『確か、あの大っきいのってビルの上空、50メートルくらいを浮遊してるんだっけ、戦兎くん』

 

「ああ。個体によって違うけど、今回はそこら辺で高度は変わらないよ」

 

『じゃあやっぱ無理ね。今の翼ちゃんたちのギア出力じゃそこまで攻撃が届かないわ』

 

「翼や奏君は射程が長い攻撃をしていたようだが、それでも届かないのか?」

 

『無理ね。あそこまで届かせようと思ったら、それこそ遠距離攻撃に特化したシンフォギアが必要になるわ』

 

「そう、か」

 

 翼も奏もフォニックゲインを高めることで一時的に射程を伸ばせる技を一応持っている。しかし、ガングニールも天羽々斬もシンフォギアとなって多少変質しているとはいえ、元は『槍』と『剣』の聖遺物である。

 その本質はどうしようもなく近接武器であり、その範疇を超えて遠距離攻撃に特化した形態をとることはできない。

 

 もし仮に空中要塞型を落としたいならば、それこそ『弓』のような聖遺物から創られたシンフォギアがいるが、それも今は無い物ねだりだ。

 

「弦さん」

 

 戦兎が弦十郎の名前を呼ぶ。

 

 弦十郎の鳶色の瞳と戦兎の薄い灰色の瞳とが互いを写し合う。それだけで弦十郎は戦兎が何を言わんとしているかを感じ取った。

 

「俺が──」

 

「駄目だ。お前に今抜けられたら演算を誰が行うというんだ」

 

「それは、そうだけど……」

 

「それに了子君からもアレはまだ未完成だと聞いている。論外だ」

 

「でもっ!」

 

「俺は何か間違ったことを言ったか、戦兎」

 

「 …………いや、弦さんが正しい。悪かった」

 

 しばらく目を閉じて戦兎が唇を噛む。そして、何かを飲み込むように細く息を吐いて頭を下げる。

 

「でも、空中要塞型はなんとしても落とさなきゃならない。それだけは絶対だ」

 

「ああ……わかっているさ。それは、絶対だ」

 

 そうは言ったものの戦兎も弦十郎も何か腹案があるわけではない。

 

 もちろん翼か奏のどちらかを送れば良いのだが、問題はそれだけではない。

 

 現在ノイズの大部分は人の動きに合わせて避難場所である付近のシェルターへと移動している。二人はそこへの道を塞ぐようにしてノイズと相対しているのだが、それで満足とは言いがたいのだ。

 

 陣形としては、最前線に奏者二人が、その取りこぼしを自衛隊および一課が処理。その後ろに避難民がいるという形だ。

 翼と奏の取りこぼしは極々少数で、位相差障壁に防がれやすい自衛隊の装備でも対処することができている。

 

 だが、それはとても危ういバランスの上に成り立っているもので、恐らく空中要塞型の移動に合わせて一人奏者を送るだけで崩れるものだった。

 

 だから、戦兎は弦十郎が迂闊に奏者を動かせずにいることをわかっている。

 今動かせば、絶対に救えた人が救えなくなる可能性があり、救える()()しれない人たちのために、その人達を失うリスクを犯すことができない。

 

 それでも何とか足掻きたくて、けれど研究が本分の戦兎には戦術的な妙案は何もない。

 

 戦兎が悔しげに唇を噛む。まるで、自分の無力を恨むかのように。

 

「戦兎、了子君、もう一つばかり聞きたいことがある」

 

 そんな中弦十郎から声がかかる。その鳶色の瞳にはあいも変わらず強い光が宿っていた。

 

「弦、さん?」

 

 現状の詰み加減はなかなかのものだ。通常のノイズ出現の数倍の数、しかもまだまだ増える可能性すらある。市街地に出たせいですでに被害は出ており、ヘリもすぐには駆けつけられない。

 

 そんな状況、普通に考えれば大被害が出てしかるべきなのだ。

 

 そう、()()()()()()()、無理だ。

 

 故に、常識や既存の知識を元に考えを発展させていくタイプの研究者である戦兎には思いつかない。思いつけない。

 

 では、風鳴弦十郎ならばどうだろうか。

 

 常識や、運命というルールを幾度となく、鍛え上げてきた拳でぶち破ってきたような、戦兎の知る中で最も『強い』男ならばどうするのだろうか。

 

「ーーーってできるか?」

 

「な、阿保かよ弦さん……」

 

『たしかにシンフォギアなら理論的には可能だけど……』

 

 きっと、戦兎や了子では思いつきもしない斜め上の解決方法を提示するのだろう。

 

「で、でも弦さんその案の成功率ってはっきり言ってかなり難しいと思う」

 

「どの道何かやらなきゃ後はねえよ」

 

『……勝算はあるのね? ミスしたら大惨事よ?』

 

「ふっ、くだらん事を聞くなよ」

 

 弦十郎がニッと口の端を釣り上げて豪快な笑みを見せた。

 

「思いつきを数字で語れるものかよッ!」

 

 オペレータルームに響き渡る野太い声。その音に全員がびくり、と体を震わせてやがて肩の力が抜けたように笑う。

 

「現状では司令の案が最も頼れそうです。やってみましょう、伸るか反るかの大勝負」

 

 藤堯がキーボードを叩きながら笑う。

 

「今は信じるしかない、わよね」

 

 あおいが周囲へと言い聞かせるように。

 

「まあ弦さんが言うなら、きっと大丈夫だよな」

 

 戦兎が力強く弦十郎を見つめる。

 

『はぁーーーー、もうほんっと仕方ないわねぇ。貴方の勝負強さにかけるとするわ」

 

 了子は半目で渋々といった様子で頷いた。

 

「よし、じゃあやるぞッ! 今すぐ奏者へと音声を繋げ!」

 

 全員の言葉を聞いて満足げに頷くと、弦十郎は大きく息を吸いこみ、そしてそれを音へと変える。

 

 

「今から『空中要塞型』を引き摺り堕とすぞッ!」

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 ずっと、イマイチ調子が上がらなかった。

 

「お、らぁっ!」

 

 槍を振るうとノイズがまとめて数体塵へと変わり、道路へと積もっていく。奏はそんな光景には目もくれず、次の瞬間には素早くステップして防衛ラインを抜けようとしていたノイズへと槍を投げる。

 

 ごう、と音を裂くようにして槍が駆けて人型ノイズを貫通してビルの壁面へと突き刺さる。

 

「はあ、はあ、数が多いな」

 

 根元近くまで埋まった槍を引き抜くために手を伸ばして引っ張る。それだけで槍はするりと抜ける。

 

「あれ?」

 

 いつもなら抜けそうな槍が抜けない。もう一度強く引いてみるが、何故かギアの先までうまく力が伝わらず槍が動かなかった。

 

(最近はこんな事なかったのに)

 

 奏の耳がゴム毬を擦り合わせたような足音を捉える。

 

 ちっ、と歌の合間に小さく舌打ちし、歌唱からのエネルギーを強めて槍へと充填していく。するといつもよりかは幾らか遅く槍が回り出す。

 

「ーーーーッ!」

 

 ビルの壁が、回転する穂先ががりがりと削られていきそのまま振り回すように引き抜かれて背後に迫っていたノイズに叩きつけられた。

 

(なんだ、こりゃ。いつもみたいに、体が動かない……)

 

 迫ってくるノイズを次々に槍で突き刺し、なぎ払いながら奏が昼間に戦兎とした会話を思い出す。

 

(これは確かに疲労が残ってんな……。さっさと寝とくべきだったか?)

 

 戦兎と了子の忠告を聞き流して、槍を振っていた奏だが出撃のタイミングを考えれば、短い睡眠で今の疲労が取れたかは怪しいのだが。

 

『神槍・ガングニール』を歌いながら奏が息を整える。今この不調が了子あたりにバレれば奏はすぐに帰投である。そんなのは御免だった。

 

 今のところ了子には奏の不調はバレていない。バイタルは安定しているし、ギアの出力も一定である。ただ、奏の疲労のせいでうまく力を引き出せていないと言うだけだ。

 

 データ面で確認するだけではこの不調はわからない。きっと気づけるのは、弦十郎や緒川のような武術の達人か、後は、同じ奏者である翼くらいのものだろう。

 

(奏さん、何か、疲れてる……?)

 

 太刀型のアームドギアを振るいながら翼は、なんとなく奏の不調を感じ取っていた。今朝に比べて明らかに槍のキレが鈍いし、歌唱の合間に息を整えている様子が多くみられる。

 

 翼も歌う間に呼吸くらいするが、でも奏のそれはどう見ても調子の悪い人間がする細かい息のように見えた。

 

(でも今は目の前のことに集中しよう)

 

 奏のことは心配だ。しかし、今の翼にはできることはないし、何より今こうしてノイズを一体でも多く倒すことが人々や二課、そして奏を助けることだということを理解していた。

 

 故に今は信じて、剣を振るうしかないのだ。

 

「ー ー ー ー ー」

 

 ふと、頭上で軋むような嫌な音が響いた。思わず、翼も奏もノイズを相手する手を緩めて空を見上げてしまう。

 

「『空中要塞型』が、動き始めた……?」

 

「おいおい、嘘だろこれ」

 

 青空を汚すようにノイズを生み出しながら旋回していた空中要塞型が、ゆっくりと移動し始めていた。

 

「くそ、巫山戯んなよッ!」

 

「ま、待って奏さん!」

 

「あァ?」

 

 舌打ちをして走り出そうとした奏を翼が止める。

 

「今あなたがここを抜けたら私だけじゃこの戦線を維持できない」

 

「ならあのデカブツが逃げるのを指咥えて見てろってのかよ!」

 

「そ、それは仕方ない、です」

 

「馬鹿言うのも大概にしろよ! あたしはノイズを殺さなきゃいけないんだよ! ここにいるやつも、あのノイズもみんな!」

 

「でもっ!」

 

 吠えるように叫ぶ奏の言葉を翼が遮る。そして、翼は刀を強く握りながら顔を上げて奏を見つめた。

 

「でも、後ろの人たちを見捨てることになる選択を、私は見過ごせない」

 

 じっと奏を見つめ、翼がしっかりとした口調で言い放つ。翼の澄んだ湖のような美しさを閉じ込めた瞳は強い意志が宿っているように思えた。

 

 それは、奏が初めて見た翼が己自身の気持ちをしっかりと伝えて来た瞬間だった。

 

「そんくらいあたしだってわかってるよ。でも、ここでノイズを倒してるだけじゃ根本的な解決にはならねえだろ」

 

「それは、そうだけど……」

 

「ならどうするよ? ここでチマチマやってるより一か八かでぶつかった方が良いだろ」

 

「そ、それは、私たちじゃなくて叔父様達が決める事で……」

 

『呼んだか?』

 

「叔父様?!」「旦那?!」

 

 突然弦十郎からの通信が入って来た二人はほとんど同時に驚きの声を上げる。

 

『驚かせたならすまん。だが事態は一刻を争う。手短に用件だけを伝えるぞ』

 

 弦十郎の厳つい声に二人が短く了承の言葉を返す。

 

『今からお前達のどちらかに『空中要塞型』を倒してほしい』

 

「叔父様正気ですか!? 今どちらかが抜ければ……」

 

『わかっている。だから事は一秒を争うんだ』

 

「しかし……」

 

「旦那、そう言うからには策はあるんだろうな。あたしの技でもあの高さのノイズには届かないぞ?」

 

『ああ、そこの所はバッチリだ。既に完璧に計算は終わらせてある。安心しろ』

 

『俺と藤堯さんがね! 自分でしたみたいに言うなよ弦さん!』

 

『大事の前の小事だ。流せ』

 

『たぶん使い方違ゥ!』

 

 通信に戦兎の声が割り込んできたのに翼と奏が微妙な表情を浮かべる。

 

『ところで、翼、奏君、お前達はどちらか空を走る願望はあったりするか?』

 

「「は?」」

 

 翼と奏の気の抜けたような声が重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 奏がノイズをついでとばかりに切り裂きながら道路を走り抜けていく。

 

「なあ戦兎、弦十郎の旦那ってとんでもないこと思いつくな」

 

『それが弦さんの凄さだよ。俺なんか足元にも及ばない』

 

「ただ脳筋なんじゃねえのかな」

 

 呆れたように奏が言いながら、頭上の空中要塞型の真下伸びるまでやってくると足を止める。二課のオペレータールームでそれを確認した戦兎は今は一人で戦線を抑えている翼へと通信をつないだ。

 

『よし翼、手筈通りにやってくれ』

 

『うんわかった、数はいくつ?』

 

『七、いや六でいい。シンフォギア通して網膜にデータを投影する。いけるな?』

 

『任せて』

 

『じゃあ奏も頼むぞ』

 

「ああ問題ねえよ』

 

『じゃあ、作戦、開始ッ!』

 

 戦兎の声を合図に翼がいつも使っている刀型のギアを地面に突き刺すと、左右の手に三つずつ少し幅広い刀身のアームドギアを生み出す。

 脇差、と言うよりか杭の形状に近いかもしれない。

 

 翼がサイドスロー気味に杭を構えて投影された指示の通りに手首のスナップを利かせて投げる。

 

 投げられた杭は全く回転する事なく奏のそばのビルの壁面に次々に突き刺さっていく。

 

『奏、行けっ!』

 

「あいよっ!」

 

 奏が槍をナックルガードに戻すと翼がビルの壁面に突き刺した杭を足場にして一気に屋上まで駆け上がって行く。

 

『このビルは周辺では一番の高さだ。この機会を逃せばもう打つ手はねえぞ!』

 

「安心しろ一発で決めてやる!」

 

 屋上に降り立った奏の網膜にシンフォギアを中継地点として二課で藤堯と戦兎が計算したデータが送られてきた。

 それは今の奏の視界とリンクして、遠くにいる『空中要塞型』と、その手前の飛行型ノイズへと薄い線を伸ばしていく。

 

『奏、許される誤差はゼロコンマ一秒以内。超シビアだが俺はできると信じてる』

 

「バーロー、誰に言ってんだできるに決まってるだろ」

 

 ニッと奏が笑みを浮かべて、大きく深呼吸して息を整える。

 

(まだギアが上がらないけど……、それでもこのくらいできる)

 

 奏が最後にもう一度大きく息を吐いて、そしてビルの屋上の柵に足をかけて、()()()()()()

 

 

 

 

────神槍・ガングニール────

 

 

 

 

 歌が、響く。

 

 ガングニールのシンフォギア奏者の心を組み上げた歌はこの世ならざる存在のノイズの存在を調律、固定させる。

 

 柵を大きく歪めながら奏は大きく宙へと身を踊らせると重力に引っ張られて地面を落ちる前に、計算通り自分の目の前にいたノイズへ()()()()()

 

(──ここッ!)

 

 奏はシンフォギアからの衝撃を受けて灰へと変わろうとするよりも早く、全力で蹴って次のノイズへと方向を変える。

 

 そしてまた目の前に来ていたノイズへと膝のバネを効かせながら着地して素早く次の一歩を踏み出す。そんな工程を何度も繰り返して、奏がじりじりと『空中要塞型』への距離を縮めて行く。

 

 もうここまで書けばわかっただろう。

 

 奏は今、ノイズからノイズへと飛び移り、上空を我が物顔で飛ぶ『空中要塞型』へと迫って行っているのだ。

 

(へへ、やりゃあできるもんだな。コツを掴めば難しいものでもない)

 

 歌を歌いながらそんなことを心の中でのたまう奏。

 

 しかし実際これはそんなに簡単なことではない。奏があまりにも普通にやっているため勘違いしそうになるが、基本的に小型ノイズはシンフォギアに触れられるだけで塵へと変わってしまう。

 そのため空中でノイズからノイズへと飛び移る、なんて事をやろうとすれば許される誤差は一秒にも満たない。

 早く炭素変換をし過ぎれば足場できず貫いてしまうし、遅ければ変形して攻撃を仕掛けてくる可能性もある。

 

 シンフォギアが凄い? 奏が凄い? 

 

 違う。『シンフォギア』を纏った『奏』が凄いのだ。

 

『49、50、51……よし次だ! 次のノイズを足場にしたら全力で跳べ!』

 

 飛行型52体、きっちり計算通りに足場にした奏がついに、『空中要塞型』の頭上を陣取る。

 

 上空300メートルオーバー。風をきって青空の中落ちていきながら、奏がナックルガードを再び槍へと変形させる。

 

 そこで奏は歌のサビの部分に向けてフォニックゲインを高めていき、そのエネルギーをアームドギアへと充填して行く。

 

(一撃で決めるには、今までの技じゃ足りねえ。直接、あたしが攻撃を)

 

 集められたエネルギーは臨界点を超えて、抑えきれなくなった力を光と、熱へと変換して、アームドギアを輝かせて行く。

 

「全力の、あたしの一撃をッ!」

 

 どくん、と心臓が跳ねる。通常ではあり得ないエネルギーを扱ったせいか、視界の赤が濃くなって行く。

 

 その嫌な感覚を押し込めながら、奏が叫ぶ。

 

 

「『GRAVITY∞PAIN』!」

 

 

 奏が槍を握り、そして全力で蹴りを叩き込んだ。そうすると、アームドギアは自然に落ちようとする重力と、奏の蹴りによって加速して、ブーストをかけながら『空中要塞型』へと向かって行く。

 

「いっ、けええええええっ!」

 

 奏が叫び、槍の穂先を足へと見立てた、全力の蹴り(ライダーキック)を叩き込む。

 

「ー ー ー ー ー」

 

 かつてない程のフォニックゲインを溜め込んだ一撃に空中要塞型ノイズは耐えきれるはずもない。

 

 奏の蹴りが背中から腹部にかけて貫通し、空中要塞型に巨大な風穴を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 モニターに映し出された奏が地面に降り立った瞬間、オペレーターたちは静かに刻一刻と時間を減らしていたタイマーへと釘付けになっていた。

 

 その数値は、『00:42』。

 

「や、やりました! 時間ギリギリ! ガングニールの一撃が空中要塞型を撃破! 」

 

「攻撃を受けたノイズは予測地点に落下を始めました。おそらくこのまま自壊して行くと思われますっ!」

 

「よし、よくやってくれた!」

 

 二課の中で大きく歓声が上がる。

 

 発案者の弦十郎から見ても正直分の悪い賭けだったのだが、奏は見事にやりきってくれた。

 

「了子君、奏君のバイタルはどうだ?」

 

『今日二回めの出撃だけど()()()()()()()()()よー。とっても安定してるし』

 

「LiNKERの負担のことを心配していたが……杞憂で何よりだ」

 

 モニター越しに安心した様子の弦十郎に、了子が含むように笑う。

 それからすぐに弦十郎は顔を軽く叩いて気を引き締め治すと、オペレーターを見回した。

 

「『空中要塞型』を落としたとは言え、まだまだ安心はできん。奏君にもすぐ防衛ラインに戻ってもらうように指示するんだ」

 

 そう、指示を出して視界の端にモニターを睨んで全く動かない戦兎の事を捉えて、怪訝な表情を浮かべる。

 

「どうした戦兎、嬉しくないのか? こういうのは一番お前が派手に喜ぶだろう?」

 

「いや、嬉しいさ、嬉しいよ」

 

「じゃあ、どうしてそんなに難しい顔をしているんだ」

 

「なんか、何となくだけど嫌な予感がするんだ」

 

「嫌な予感?」

 

 弦十郎の問いに戦兎がああ、と頷いた。

 

「たぶん勘違いだけど、何て言うか胸がぞわぞわするんだ」

 

 戦兎の不安そうな顔を見て、弦十郎はふと思う。

 

 戦兎が勘とか曖昧な事を言うのはとても珍しいな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ、く、そッ!」

 

 奏はビルに半ば寄りかかるようにして足を進めていた。歌を歌う余裕はすでになく、荒い息を何とか整えようと、無理矢理に深呼吸を繰り返すがなかなか落ち着かない。

 

 気づかれるのが嫌でさっき戦兎との通信は一方的にきってしまった。

 

「へ、へへ……、了子さんに、バレてないのがラッキーだな」

 

 目指すは翼が必死に一人で支えている戦線。その途中で『空中要塞型』が落ちたようだから、本当に倒せているのかどうか確認するのも奏が請け負った仕事だ。

 

「別に、アイツのためじゃないけど、あの目は、本物だったからな……」

 

 奏の脳裏に弦十郎が作戦を説明した後、迷う事なく『自分一人で戦線を維持してみせる』と言った翼の瞳が蘇る。

 

 この戦いにおいてのみ、翼が『守る』為に決意した時の言葉は信じられるような気がしていた。

 

 しばらく歩いて、奏の視界に大きな翼を持ったノイズが横たわっているのが映る。

 

「こりゃ、たしかに倒せてるな」

 

 その体は腹に開いた巨大な穴から次第に炭素化が広がっており、もう半分以上は炭素になりきっているようだ。それに翼も、ノイズを格納していたであろう場所も粉々になっているし、これ以上危険性はなさそうだった。

 

「じゃあ、アイツのとこに……」

 

 ぴくり、と朽ちかけの空中要塞型が体を震わせた。その何でもない行動が、何かとても良くないものにつながる、ということを奏が直感的に感じ取る。

 

 すぐに止めようと体を動かそうとしたが、疲労のたまりきっていたせいか、足が震えていつもなら踏み出せる一歩が踏み出せない。

 

「あ────」

 

 そしてその一瞬さえあれば、空中要塞型にとっては十分だった。

 

 

「ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー」

 

 ノイズが絶叫した。

 

 いや、ノイズに発声器官はない為絶叫という表現は正しくはないのかもしれない。

 だが、ゴム毬を擦り合わせたような、黒板を引っかいたような、ガラス片を擦り合わせたような、蝿が耳元で飛び回るような、そんなありとあらゆる不快な音(ノイズ)の属性を含むその音は、奏に言わせれば、紛れもなく『絶叫』だった。

 

「ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー」

 

「な、んだ……この音……!」

 

 シンフォギア越しにも耳を覆わざるを得ない程の音量で、不快な声がノイズから響いてくる。

 

 ノイズの体は刻一刻と炭素化していく。しかし、そんな事に頓着せずひたすらにノイズは叫ぶ。

 

 まるで、何かを呼ぶように。

 

「止まっ、た……?」

 

 しばらくして音が収まり、奏が手を耳から外しノイズの方を見るとそこには体の形にうず高く積まれた塵があるだけだった。

 

「何だったんだ、今の……」

 

 奏は眉を寄せたが、首を振って雑念を消してしまう。

 今必要なのは一刻でも早く戦線に戻る事だ。過ぎ去ったことをいちいち考えてなんていられない。

 

「ー ー ー ー ー ー」

 

 奏の耳に、小さく音が届く。よく聞き覚えがあって、そう、ついさっきまで聞いていたような気がするそんな音が。

 

 弾かれるように奏が空を見上げようとするが、それよりも早く極彩色の雨が青空を埋め尽くすように降ってきた。

 

「う、そだろ……」

 

 青空を見える限り埋め尽くし、こちらへと落ちてくる物体。

 

 雨? 否、青空の下に降る雨などあるはずもない。

 

「これ、全部ノイズなのか……」

 

 べちゃべちゃ、と無数のノイズが地面に落ちていく音で奏の言葉が打ち消されていく。

 

 そんな光景を生み出しながら、青空の向こうでは先程倒した個体とよく似た巨体が悠々と泳いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 ノイズに死体は残らない。

 何故ならば個体としての終わりを迎えたノイズは遍く全て炭素となって、消えていくからだ。

 

 だから、人がノイズを識別する際には以前とったデータから波形を参照する。能力に関しては映像や、実際に見た人たちが共有していかなければならない。

 

 だが、ノイズの能力全てをそれで明らかにする事はできない。

 何故ならノイズが見せた能力が全てである確証はどこにもない。あまりのノイズの数で、埋もれてしまったノイズの能力があってもおかしくない。

 

 普通に自壊するだけでは発揮されない、頭を一撃で潰されただけでは発揮されない、死に瀕した時だけに使う能力。

 

 例えば、無理矢理に地面に引きずり落とされたりしなければ、発揮しない、そんな能力。

 

 そんな能力が運悪くあるかもしれない。

 

『シンフォギア』という今までになかった攻撃方法でしかわからなかったような、そんな能力が偶然発揮されてしまう、そんなことがあるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 奏は力を絞り出すようにして、立ち上がる。アームドギアは何処かで落としてきてしまった為、何にも捕まることなく自分の力だけで、何度も血の混ざる咳をしながら、それでも必死に。

 

 奏の視界には、数えるのがアホらしくなるほどのノイズが存在し、あたりにいる唯一の人間である自身に向かってくる。

 人型、空襲型、鳥形、蛞蝓型、蛙型、その他記憶にないようなタイプのノイズもちらほらいるようだ。

 

「ー ー ー ー」

 

 その全てがゴム毬を擦り合わせたような不快な音を断続的に響かせている。まるで、奏の死を求めるかのように。

 

「気に入らねえ」

 

 そんな状況に、奏はただ一言呟く、「ふざけるな」と。

 

「お前らはあたしからもう充分奪っただろうが。父さんを、母さんを、妹を。その上、あたしの命までほしがってんのか?」

 

 ぎり、と唇を強く噛み締めて必死に口の端から血がこぼれ出るのを耐える。LiNKERの負担のせいか、頭はどこか熱っぽく、関節は鉄でも流し込まれたかのようだ。

 

 それでも、崩れそうになる膝を根性だけで支えて、目の前の無数のノイズを全力の殺意を込めて睨みつけた。

 

「お前らは、あたしが一匹残らず殺す」

 

 奏が右手を天に掲げた。

 

「ガン、グニーールッ!」

 

 それだけで、どこかに落としてきたはずのアームドギアはひとりでに空を飛び、ついでに数体のノイズを貫通しながら奏の元に戻ってくる。

 

「最近、ガングニールについて勉強しといて助かったな」

 

 ガングニールとはドヴェルグによって作られた神の槍だ。その伝承には、この槍は決して的を射損なうことはなく、敵を貫いた後、自動的に持ち主の元に戻るという性質がある。

 今のアームドギアの呼び寄せは、ガングニールの伝承を応用したものである。

 心の武器であるアームドギアは、心の持ちようによってこういった事すら容易くやってみせる。

 

 奏は勉強に付き合ってくれた友里に了子に心の中で礼を述べて、だん、と地面を強く踏みしめた。

 

「行くぞ、ノイズ共」

 

 そして、歌を歌う余裕もなく、ただ全力でやりを切り払おうとして、突如膝から力が抜けた。

 

 しまった、と思った時にはもう遅い。ノイズ群は次々と奏を押しつぶすように襲いかかろうとして、薙ぐように蒼い残光が走った。

 

 一閃。

 

 そういうにふさわしい一撃だった。極限まで絞られた刃は尋常ではない切れ味と持続力を発揮し、奏の眼前のノイズをあらかた真っ二つにした。

 

「奏さん、大丈夫?!」

 

「お、まえ、何で……?」

 

「何でって奏さんのバイタルが急変したっていうから駆けつけてきただけ」

 

「戦線、放り出してか?」

 

「それなら今しがた終わったところだよ。自衛隊のヘリが途中で来てくれて、ノイズも何とかなったんだ」

 

「は? そんなことあたしは知らないぞ」

 

「だって奏さん通信機能切っちゃったんでしょう? 戦兎が心配してたよ」

 

「あ、そうか……」

 

 翼が膝をつく奏へと手を差し出す。

 

「何だよ、それ」

 

「え、その……立ち上がるのに使うかな……と」

 

「……いらねえよ」

 

 奏は翼の手に応じることなく、槍を支えにして立ち上がった。

 翼がしょんぼりと手を引っ込めて、ため息ひとつで気持ちを切り替える。そして、ゆっくりとアームドギアを構える。

 

 

 

 

 

────絶刀・天羽々斬────

 

 

 

 

 

 

 翼が刀を手に風のように駆けた。

 比喩表現などではなく、正真正銘翼は風のスピードで走った。シンフォギアのサポートと、風鳴機関の武術を最大限に利用した一歩は、一般人にはただ青い光が瞬いた様にしか見えないだろう。

 それ程の恐るべきスピード。

 

 翼は一瞬のうちに道路の反対側に回り込むと、刀型のアームドギアを瞬時に斬馬刀を超える大きさまで巨大化させる。

 

 刀身の前兆十倍近く、厚さならば二十倍近く、しかし切れ味は変わらず。そんな矛盾さえ両立させる剣に、歌唱から生まれるフォニックゲインを伝達する。

 

「────ッ!」

 

『蒼ノ一閃』。

 先程奏を救った蒼の残光が再び横薙ぎに振るわれて今度もまた数十体のノイズを纏めて灰燼に帰した。

 

 ちら、と翼が奏を伺う。

 

 肩で息をしながら、それでも体重移動だけで巧みに槍を振るいノイズを一体ずつ倒して行く。その技量は見事の一言でしかないが、普段の奏は見る影もない。

 

(奏さんを長々と戦わせるわけにはいかない。早くここを片付けて良子さんに来てもらわなきゃ)

 

 風鳴翼は天才ではない。

 

 もちろん人並み以上に戦うセンスはあるし、体だって丈夫な方だ。

 だが、奏の様に勘で相手の攻撃を避けられたり、土壇場で新技を思いついたりもしない。

 今まで積み上げて来た技を応用しながら器用に戦って行く、秀才タイプだと言えるだろう。

 だから、翼はこの周囲をノイズに囲まれた状況を解決するために、ノイズを全て倒さなければ、と考えた翼は今ある手札で勝負する。

 

 選んだのは『蒼ノ一閃』。

 はじめての実戦で使った技で、訓練の時も好んで使う、今ある技の中では最も威力があって使い勝手もいいものだ。

 

「────」

 

 翼は未だ超巨大なアームドギアをそのままに再びフォニックゲインを充填して行く。そして、エネルギーを溜めながら刀を腰だめに構えて腰を限界まで捻る。

 

「奏さん、急いでしゃがんでください!」

 

「は、なんでだよ」

 

「はやく!」

 

 ノイズを持ち手の部分で転ばして、足で踏み潰していた奏は怪訝な顔をしながらも翼の言う通り頭を低くする。

 瞬間、奏の髪の毛を数本切り裂いて青い刃が広がった。

 

 今の光景を頭上から見れば、くるりと回った翼を中心に青い円が丸ごとノイズを切り裂いていくのが見えるだろう。

 

「は────?」

 

 はらり、と髪が落ちてくるのを見ながら奏の顔から血の気が引いた。数秒遅ければ首チョンパコースである。

 

 一体何が起こったのか。その疑問の答えは至極簡単。翼が円を描く様にアームドギアを全力で振り回した。ただそれだけである。

 

 いつもは一気に放出するエネルギーを調整し、細く一定に飛ばす様にする。すると、できるのは同心円状に広がっていく蒼ノ一閃。

 

 秀才らしい翼の今ある手札を使った、ノイズ一掃の手段だった。

 

 一気に切り裂かれたノイズが弾ける様に塵へと変わり翼と奏の視界を奪う。

 翼はほとんど倒せた、と確信した。しかし、同時に翼の聴覚は何かが、剣を弾いた様な金属質な音を聞いていた。

 

(蒼ノ一閃が、弾かれたっ!?)

 

 ノイズではない。ノイズにアームドギアを弾けるほどの硬度を持った種類は存在しない。

 

 ならば、()()()()

 

 翼が疑念の思いを抱えながらアームドギアをいつもの刀型に戻す。すると、それに合わせる様にして次第に塵が晴れていく。

 

 一秒、シルエットが見えた。

 二足歩行の、ずんぐりと丸いフォルムをしていた。

 

 二秒、体を覆うものが見えた。

 青と橙。奇しくも奏者二人と同じ体色。

 

 三秒、翼がその存在が何であるかに気がついた。

 

 四秒、奏がそのよくわからない存在を、本能的に『ノイズと似て非なるものだ』と感じ取る。

 

 煙が晴れた向こうで、がしゃんとアスファルトを踏み砕きながら異形が一歩踏み出した。

 

 その姿を見て、翼がポツリと呟いた。

 

 

 

 

「スマッシュ、ノイズ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







今出てるやつはストロングスマッシュというメカニカルなゴリラみたいな見た目なスマッシュです。

主人公より早くライダーキックを打つキャラクターがいるんだって!!?

それは本当かい?!

ああそれもこれも全て乾巧って奴のせいなんだ。

嘘だそんなことー!

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