節分でも豆まきをする豆も無い夫婦。うっかり鬼は内なんて言っていたら、やってきたのは赤鬼と青鬼、ではなく・・・。
西本鶏介氏著の絵本「おにはうち ふくはそと」を原作とした二次創作です。
読んでいて東方の例の吸血鬼姉妹を思い浮かべたので即興で書いたものです。苦手な方はブラウザバックをお願いします。

1 / 1
吸血鬼は内 福は外

幻想郷は人里の片隅に、お百姓の男とそのおかみさんが住んでいた。

酷い貧乏暮らしで、節分の日が来ても豆まきをする豆も無い。

「福は内、鬼は外!」

「痛っ痛い!!」

「福は内、鬼は外!!」

「や、やめて(ピチューン)」

近所の家では、賑やかな豆まきが始まった。

 

「うちでも、豆まきをしたいのう。」

男が言った。

「本当だよ、豆まきも出来ないなんて、みっともない。」

おかみさんが言った。

「仕方がない。声だけで豆まきをしよう。」

男は、空っぽの升(ます)を抱えて立ち上がった。

 

でも、声だけの豆まきなんて、やった事が無い。

悔しいやら、恥ずかしいやら、中々言葉が出てこない。

「さあ、早く。」

おかみさんに言われて、男は声を張り上げた。

「鬼は内、福は外。鬼は内、福は外。」

(あれえ、何だかおかしいぞ。)

 

さあ、喜んだのはレミリアとフランドールの吸血鬼姉妹。

あっちの紅魔館でも、こっちの人里でも、大嫌いな豆を鬼巫女に投げられ、逃げ回っていた所だ。

「しめた。隠れる所が見つかったわよ」

二人の吸血鬼は、男の家に飛び込んだ。

 

「きゅ、きゅ、吸血鬼…。」

男とおかみさんは、腰が抜ける程驚いた。

「助かったわ。私達、どこの家でも追い払われて困っていた所よ。今夜泊めてくれない?」

「と、と、とんでもない。」

男は、慌てて首を振った。

 

「それならどうして『鬼は内』なんて言ったの。」

吸血鬼姉妹は怖い顔で睨みつけた。

原典の赤鬼と青鬼ならまだしも、赤い瞳と覗く牙で凄むのだから尚怖い。

「それは、その…、でも、うちには、お二人を寝かせるベッドが無い。」

男が震えながら言った。

「それに、飲んでもらう紅茶も無い。」

おかみさんも泣きそうな声で言った。

するとレミリアがにやりと笑った。

 

「それなら、このパンツをあげるから、ティーセットと取り換えて頂戴。」

レミリアは、自分の履いていたクマさんのパンツを外して、おかみさんに渡した。

 

おかみさんはレミリアのクマさんパンツを隠し持って香霖堂へ出かけた。

男だったら通報されていた所だ、危ない危ない。

「何、レミリア・スカーレットのパンツだと。」

店主は信じ難い表情でしばらく見ていたが、

「成程、本物のようだ。彼女が自分から手放すとは珍しい。」

と言って、お洒落なティーセットに茶葉と取り換えてくれた。

 

おかみさんはその紅茶を淹れて、姉妹に飲ませ、自分達も飲んだ。

ところが、次の日になると、また紅茶が無くなってしまった。

「もう紅茶が無くなったので、出て行っておくれ」

するとフランが、自分の履いていた苺柄のパンツを外して、言った。

「これを持って行って、紅茶と取り換えてきて。」

 

おかみさんは、フランの苺柄のパンツを持って、再び香霖堂へ行った。

「今度は妹フランドールのパンツか。いやあ、吸血鬼姉妹のパンツが二つ揃ったなんて有難い。家の宝物にはしないが、どこかで買い手がつくだろう。」

すっかり(ズレた所で)喜んだ店主は、手伝いの朱鷺子まで貸してくれ、その両手に持てるだけの紅茶を持たせてくれた。

 

おかみさんはその紅茶を淹れて姉妹に飲ませ、自分達も飲んだ。

でも、幾ら飲んでもまだ紅茶はどっさりある。

(幾ら紅茶があると言っても、飲んでばかりじゃお嬢さん達が気の毒だ。今夜はうんと茶請けを用意しよう。)

おかみさんは紅茶を売ってワインを買い、クッキーやスコーンもどっさり買ってきた。

 

「うわあ、何だか凄い事になっちゃったぞ。」

姉妹は揃って目を丸くした。

おぜう…コホン、お膳の上には山のように茶菓子が並んでいる。

「さあ、飲んでおくれ。」

おかみさんが、ワインをグラスに注いだ。

「よし、今夜は酒盛りね。貴方達も飲みましょう。」

吸血鬼姉妹は大喜びで、クッキーを食べ、ワインを飲み、歌を歌って踊り始めた。

もう楽しくて楽しくて、男もおかみさんも一緒になって踊った。

 

次の日になると、節分の行事もすっかり終わり、近所も静かになった。

「どうやら豆まきも終わったようね。咲夜も待ってるしそろそろ帰るわ。」

「お陰で豆を投げられずに済んだし、あの巫女も帰った頃合いね。」

 

「もう帰るのかい。こんな所で良かったらいつまでも居ておくれ。」

おかみさんが言った。

「お二人のお陰で楽しい時間を過ごす事が出来た。せめて紅茶が無くなるまでここに居ておくれ」

男も吸血鬼の姉妹と別れるのが悲しくなった。

 

「いえ、世話になったのは私達の方よ。貴方達の運命を少しだけ良い方に弄っておくから、それを忘れずにしっかりと働く事ね。」

「そうそう、姉様は家一軒を幸せに出来る力があるの。幾ら鬼巫女でも全ての人間を救うのは無理ね。」

そう言って二人の姉妹は、こっそり家を出て行った。

 

男とおかみさんは、姉妹の言いつけを守って、一生懸命働いた。

すると一年も経たないうちに、人里一番の金持ちになり、それからは、一生幸せに暮らしたと。

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。