プリキュアオールスターズ×仮面ライダー〜bの復活とsの暴走〜第三部 作:鈴木遥
・秋の夜風と虫の音は、対戦の真っただ中にある芝公園避難所にも、分け隔てなく、心地よく響く。
避難テントの周りの、草むらが風になびいていい音を立てている。
こんなご時世だからこそ、心を和ませてくれる良い清涼剤だ
「いい風ね……。」
水無月かれんが青い髪をなびかせ、眠ったままの九条ひかりにささやく。
彼女のパートナー妖精である『光の王子』ポルンが、『試練の箱』に突入して間もなく3時間。
依然として、彼は静観する気配を見せない。
「大丈夫よ。きっとすぐ戻ってくるわ。」
眠っているひかりの手を握り、彼女に、そして自分にいい聞かせるようにつぶやき、もう片手でキュアモを握りしめる。
ゼクトルーパー隊、および、結界の見張りをしている氷室玄徳と猿渡一海からは、今のところ、異常事態の報告はない。久しぶりに、ぐっすり眠れる夜が来る。
誰もがそう思った。
少なくとも、かれんはそう思いたいはずなのに……。
明かりのつかなくなった、深夜の東京タワーを眺めながら、 うまく説明できない、言い知れぬ不安を覚えていた。
(一体何だというの……この胸騒ぎは……。)
その頃 試練の箱内部では。
洞窟だった場所は、いつの間にか草原に変わっていた。
箱の中は、神々の任意によって景色を自在に変えられるらしい。
古代リントの力を宿す3人の神々が、休む間もなくポルンに攻撃をしかけていた。 サイズは人間ほどになり 肌色と赤、青、緑、紫のタトゥーに彩られた姿に変異した。
「むぅん!」
「ぐぁっ!」
現状は ポルンが圧倒的に不利である。
真正面から強烈な格闘技を繰り出してくる、赤いタトゥーの神、マイティ。
「ホァー!ハイ!ハイ!」
「ごぁあ!!」
細身の身体でしなやかな棒術を繰り出し、 圧倒的なリーチの差をつけてくる青いタトゥーの女神、ドラゴニア。
「ora Ora!余所見すんなyO!」
「くっ……!」
遠距離から光線を放ち、ポルンの逃げ場を奪い続ける、緑のタトゥーの神、 ペガザン。
「にがしませんよ……ふん!」
華奢なカラダに似合わぬ大剣をぶんぶん振り回し、 圧倒的な意欲と振り幅でポルンを追い詰める、 紫のタトゥーの女神、タイタニア。
( 分かっちゃいたが、楽じゃねーな! てゆーか……下手すりゃ死ぬぞこれ!中でも、あの赤いヤツ……。)
ポルンが最も警戒していたのは、 マイティだった。
他の3人と比べ目立った武器はないものの、新体能力がずば抜けて高い。
さらに厄介なのは、まるで彼の動きを読んででもいるかのように、打撃の一撃一撃を、まるで躱せないのだ。
「どうした!? 先ほどまでの勢いが消えているぞ!!」
まるで指導するような言い草だが、その拳は殺す気満々である。
「わーってら!くっそォ……!」
やむなく『SWORD』のカードを解除し、拳での戦闘に移行。
だが、その場合リーチのある攻撃を剣でさばく事が出来なくなる。
「スキあり!」
「ガラ空きだyO!」
「仕舞いです……。」
ドォォン!!!
三方向からの強烈な一撃を受け、ついに倒れるポルン。
「ポポ……まだ……ポポ……!!」
「妖精……だと!?」
久しぶりに変身解除され、 ダメージのあまり人間の姿を保てなくなってしまった。
「休憩だ。 その体で挑戦を受けても面白みはない。」
「そんな時間はないポポ! こうしてる間にも、みんなが危ない目にあって、必死に戦ってるポポ!」
「妖精の身空でここまでやるやつはお前が初めてだ。
じっくり鍛えた方が、より良い成長に期待できる。」
「でも……。」
「 焦っても得することはないyo!
You は今成長過程にあるんだからsa!
じっくり鍛え上げて、心技体の極意を極めれば、第一級邪神継承権にだって勝てるyO」
「 逆に言えば、今のアンタの実力で、外に出るのは自殺行為……より強大な兵力に、ぶちのめされて終わりってこと……。」
「ポポ……!?」
「見た所あなたには予知能力があるようですね。
あなたが焦りだしたタイミングで、外の世界に妙な気配を我々も察知しました。
けれど心配は無用。こちらでは外の世界より早く時間が流れます……もうあと1日、一週間鍛えても、
向こうでは一日経っていないでしょう。」
「要はそれまでに強くなり、力を得ればいい。ただそれだけの話だ。」
マイティに説得されたポルンは、仕方なく休息をとることにした。
「お前、 なぜ戦うんだ?」
「今更何?」
これまで、特に事情を聞かないままで滅多打ちにされたこともあって、ポルンは無愛想に聞いた。
マイティと彼が囲んでいる焚き火には、どこから持ってきたのか、 巨大な獣の肉が串刺しになって焼かれている。
「これ食っていいの……?」
「 食ってはいけないものを目の前に並べると思うか ?
その辺で拾った。 気にせず食え。」
「それ 食っちゃダメな奴じゃねーかァァァァァァ!?
その日ってどの辺だよ!?
けものなんかどこにいたんだよ!!」
「うるさい奴め…… この空間は確かに幻惑だ。ただし、質量を伴うな…… 獣の肉があるのも、何一つ不思議じゃない。」
今一つ納得できないが、一番重要なのはそこではない。
肉にかじりつきながら、 ポルンは一人思案していた。
ここに来てから一体、向こうではどれくらい時間が経ったんだろう。
あくまで幻らしいが、時感覚を狂わせないために陽が沈んだ。最低でも、6時間ほど経っているはずだ。
(あいつら、無事だろうな……。)
「仲間が心配か?」
「まぁな。 料理の上手いライダー、下手なライダー、
戦闘で活躍するプリキュア、誰も殺さないことに徹するプリキュア……色々いるよ。」
数々のキュアライダー達の顔を思い浮かべる。
思い返してみれば、彼らはみんな笑っている。
どんな逆境においても、どんな絶望的な戦いに陥っても、 絶対に希望を捨てない。
闇の同盟との圧倒的な違いは、孤独な奴らがいないということだろうか?
……いや、その中に『例外』が何人もいる。
だから、シャイニーキングダムみたいなのが出来上がっちまったんだよな。
己を戒めつつ、 ポルンは誓った。
( オレたちの仲間は絶対に取り戻す!どのみちいつまでも、闇の同盟の思うとおりには転ばねー。
なんたって、
「女だな。」
肉をかじっていたマイティがポツリと言った。
「な……な……何言ってんだ!?」
シャイニールミナス/九条ひかりの顔を思い浮かべ、図星であったポルンの顔は真っ赤になった。
「バレバレだよ。 なるほど合点がいったぜ。」
どこまでも冷静なマイティに、ポルンは隠し通すことを諦めた。
「別にそれだけじゃねーよ。わ、笑いたきゃ笑えよ!」
「なぜオレが笑う? ロマンじゃねぇか。 いい女に勝る 宝物はこのようにねーもんなァ。」
「アンタも…… 恋人とかいんのかよ?」
「遠い昔にいた気もするが、もう覚えちゃいねえな。」
やけに素直な答えに、深掘りしようとした自分が悪いような気がしてきた。
突然夜空を見上げたマイティは、怪訝な顔をして言った。
「 雲行きが変わってきやがった……!」
「!?……やばい奴が来てるって言うのかよ!」
「さぁな。 今のお前がそれを知ってもどうにもできん。
仲間の様子を知りたきゃ……わかるな?」
「 皆まで言うなよ。一刻も早く強くなれって事だろ?」
「わかってんじゃねーか。なら要望通り、休憩はここまでにしてやる。
こっからスパルタになるぞ……ふんどし締め直せ!」
「元より其のつもりさ…… 行くぜ、神様ァァ!!」
立ち上がり、武器を取る両者。
『試練の箱』での修行は、ここから佳境へと入っていく。
避難生活が長引くことにより生じる問題は、衛生面や生活環境だけではない。娯楽の不足である。
夢原のぞみや花咲つぼみたちリーダーキュアを始め、
子供の扱いに長けているプリキュアたちが協議し、 避難所の子供たちをいくつものレクリエーションで ストレスから救ってきた。
明日のレクリエーションを仕切るのは、キュアミント/秋元こまちの担当であった。
交際者の夏ことナッツ王子と、夜なべをし明日のプログラムをうんうん唸りながら考案していた。
「 こまち、紙芝居はできたか……?」
「う〜ん、 いいのはいっぱい浮かんでいるんだけれど、 いろんな年齢の子どもたちがいるでしょう?
みんなに平等に楽しんでもらうために、どんなのがいいかな〜って 。」
「スイプリチームの合奏も、ハートキャッチガーデンも、子供達は すごく楽しそうにしていた。
作っている人たちの思いがこもってるから それは自然と伝わるんだよ。
こまちもそうだ。頑張ったことはきっと思いが伝わる 。だから、もっと自信を持っていい。」
「 ありがとう。 私は大丈夫。 でも、かれん……。」
彼女は心配そうに、 奥の部屋でカルテを見つめる親友の背中を見る。
水無月かれんの恋人、美々野くるみ/ミルキィーローズは、 何を思ったのかシャイニーキングダムのスカウトに応じてしまった。
彼女の思うところが如何なものか、はたまたクイーンに心から賛同していたのか、どちらにしても、皆に、そしてかれんにすら気づけなかった『心の闇』をがあった事だけは間違いない。
「あいつは俺やココよりずっと多感な年頃だ。
将来に不安を覚えていたのか、何かを成し遂げようとしていたのか……気づけなかったオレたちの過失だ。どちらにしても、かれんの心中は計り知れない。」
「無理もないわ。だってかれんはあんなに、くるみさんを愛していたんだもの。」
こまちの思った通りか、あるいは、今夜の妙な胸騒ぎのせいか、かれんの背中はどこか、小さく細くなって見えた。
5gogoチームのテントを少し離れた、MAX HEART チームのテント内では、雪城ほのかが夜更けまで、ドライバー片手に設計図と睨み合っていた。
机の上には、天道総司と加賀美新からメンテナンスを依頼されていたカブトゼクターとガタックゼクター、
そして、ビルドの世界の『スクラッシュドライバー』に装填する変身アイテム、『スクラッシュゼリー』が二つ置かれていた。
「ほのかさん……。」
ほのかの交際相手キリヤが アイスコーヒーを持ってやってきた。
「まぁ。ありがと、キリヤくん。」
「ほのかさんは連日働きづめなのに、俺が休んでるわけにはいきませんよ。」
「ホントにコーヒー淹れるの上手ね。キリヤくんは。」
幸せそうにマグカップを仰ぐほのかを見て、彼女の緊張が解けたように見えて、少し安堵していた。
長いこと生き別れていたキリヤとほのか。
10年弱の歳月の間に、本来ならば彼は、どれだけの事をほのかにしてやれただろう。
その歳月を取り戻したくて、彼はなるべくほのかのそばにいることにしていた。
そうでなくても彼女は、誰かのために自分を犠牲にすることを全く厭わないタイプの人間なのだから。
闇の同盟に物言わぬ人形兵にされていた、自分を救いに来た時もそうだった。
最後まで振り回しただけだった。
危険な目にあわせただけだった。
にもかかわらずほのかは、ただ自分との再会に涙を流したのだ。
プリキュアや仮面ライダーほど強くなどない。だが、いや……だからこそ、彼女だけは、絶対に守ってみせる。 キリヤは心に固く誓っていた。
「あまり、無理しないでくださいね。」
「大丈夫よ。 プリキュアの仮面ライダーも私一人じゃないんだし、 皆がいれば、すぐに世界は元に戻るから。」
「……ならいいですけど、どうしても辛くてきついって時は、ちゃんと俺を頼ってくださいね。」
「ありがとう。じゃあ、早速……。」
突然ふっと息を吐いてマグカップを置いたかと思うと、 椅子から立ち上がってキリヤを抱きしめた。
「え、ちょっ……ほのかさん!?」
「1分……。」
「!?」
「あと1分、このままでいい?」
これが、彼女なりの甘え方なのだと察知したキリヤは、ぶっきらぼうに返した。
「……5分でも10分でも、何なら1時間でも……お好きにどうぞ。」
「ありがとう。」
秋の静かな風の中で、まるで永遠のような1分が、少しずつ過ぎていく。
彼の心臓は徐々に落ち着きを失い、顔はすでに真っ赤になっている。
一方でほのかは、心音こそ聞こえるが、キリヤほど不安定になってはいない。
(くそ……落ち着け!落ち着くんだオレ! ほのかさんはもうか、か……彼女なんだし、 何を慌てることがあるって言うんだ!いくら胸が当たっ……当たっ……。)
とうとう思考にも落ち着きがなくなりつつあった。
だがその時、彼は妙なことに気付いた。
ほのかの顔が当たっている右肩が急に重くなったのだ。
(え……ちょっ……。)
「すぅ……すぅ……。」
よりにもよって、よりかかったままほのかは眠っていたのだ。
(ウソオオオオオオオオオオオオん!?ちょっ……コレどーしよーコレェェェェェ!!)
いや起こせよ。と、冷静なツッコミを入れたい作者であった。
1分などとうに経過しているが、早くこの状況を何とかしたい気持ちと、いつまでもほのかの寝顔を見ていたい気持ちの板挟みにされ、彼は動けないままでいた。
「ほのかさん……ほのかさ……。」
「んにゃ……あ、ゴメンキリヤくん……。」
「大丈夫ですか!? やっぱり少し寝た方が……。」
「オイ、もういいか?」
テントの外からしたクールな声に、ふたりはビクッとなった。
仮面ライダーカブト/天道総司が、タイミングを見計らったかの様に、テントの壁に寄りかかって立っていた。
「お楽しみの所、邪魔するぞ。」
「いかがわしい言い方しないで!」
「何だ違うのか。 心配して損した。」
キュアホワイトなのに、真っ赤になっているほのかに対し、 天道は全くもってクールな姿勢を崩さない。
「オレと加賀美のぜクターはどうだ?」
「メンテナンスは終わったわ。 ベルトを巻けばすぐ飛んでくるはずよ。」
「例を言う。 そっちの二つは?」
「これは NEW スクラッシュゼリー。『グリスブリザード』と『レッドブル』で、猿渡さんと氷室さんに頼まれてるの。」
「オレも あの二人に負けてられんな。あいつら今日は夜非番だから、もう寝ているが?」
「元々 明日取りに来る約束だったから大丈夫。」
「そうか、オレも休ませてもらうとしよう。」
去っていく天道の背中を恨めしげに睨むキリヤ。
と、その時……。
ドォォォォン!!
避難所全域を 体になれない謎の振動が襲った。
遠くから、 パルミエの王子二人の、揃った叫び声が聞こえた。
「「何か出たぞ!!」」
一分前。
芝公園の入り口辺り、 避難所の門番がいるあたりで、 最初の異変は静かに起こっていた。
その日の門番は、キュアブラック/美墨なぎさ。
門番とは言っても、周辺は カンドロイドやメモリガジェット、ディスクアニマル達が巡回している。
なぎさのやる事といえば、周囲を視覚的に監視する事、 そして、メカ達に異常があった時にほのかに報告することである。
ヤグラに乗って数時間。
体が丈夫な方ではあるが、そろそろあくびが出てくる。
「ふぁ……もう何も来ないんじゃない……?」
だが……
パァん!
ジジ……バン!
何かが破裂するような音、壊れるような音が数回響いたと思ったら、 何かの影が地面の中を動いてるように見える。
何かが通過した後にはその上を飛んでいたタカカンドロイドやディスクアニマル達が地面に 落下している。
大気汚染により命を奪われた動物たちのようだ。
と、電子望遠鏡が突然お釈迦になり、 無線からもザーザーと奇妙な音がしている。
「コレ……ヤバいかも!!」
やぐらを降りようとしたその時。
すぐ近くの噴水広場で、爆発が起こった。
その正体が、地面を移動していた何かが衝突したものであると、なぎさはすぐには理解できなかった。
すぐそこにはハートキャッチガーデンがあり、真っ先に駆けつけたのは 花咲つぼみの妹、ふたばだった。
「お花……お花が!ウッ……!!」
土埃の中から現れた、黄色と黒の模様の手に ふたばは突然首元を掴まれる。
「 まったくふざけた連中だ。夜中に遠征した客に茶も出せんとはな。」
後ろからすぐに駆けつけ地面に放り出されたふたばを受け止めるゆり/キュアムーンライト。
「 あなた……何者!?」
「そう睨むな。 いずれ貴様らを支配する宿敵以外、誰がこんな強行突破をする?」
「まさか……。」
土埃が晴れると同時に闇の戦士の姿が明らかになる。
姿は仮面ライダードライブに似ているが、色が黒と黄色、更に、溢れんばかりの闇のエネルギーから、どう見ても泊の変身するそれとは違う。
「 我が名はゴルドドライブ!闇の同盟、『第二級邪神継承権』也! 邪悪の神の御名において、たった今よりここを占拠する!」
「ふざけたことを……。」
仮面ライダー ブレイブ/鏡飛彩が睨みつけた時。
突然ゴルドドライブの足下がせり上がり、 巨大な蛇の化け物が現れた。
バケモノの上には3人の仮面ライダーが載っているが、全員もれなく闇のエネルギーを放っている。
「抗ってみても一向に構わんぞ? ブラックホール様のお達しはひとつ、『抵抗したものを皆殺し』。それだけだ!!」