プリキュアオールスターズ×仮面ライダー〜bの復活とsの暴走〜第三部   作:鈴木遥

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進化のとき

・ 光の王子の命の火が、今まさに消えかけていた。

 

意識が闇の中に落ち、体の感覚がなくなっていく。

 

(オレは……一体。)

 

※※※※※

 

ポルンが箱の中に入ってから、箱の外ではまだ二時間程度、 箱の中での時間は、おおよそ半年に至っていた。

 

精神衛生のためマイティが時間を操作し、 日が沈んで月が見えるように景色を変えた。

 

とはいえ、昼夜問わず続く戦闘訓練。

 

寝て食って、それ以外は全て戦いにまわしていた。

 

仲間たちが守り、最愛の女が眠っている キュアライダー達と人類最後の砦、 避難所がいつ、同盟やキングダムに襲われるか分からない。

 

焦ったからといって新たな力が得られるわけでもなければ、 今焦ることは訓練の妨げになる事も分かっている。

 

とはいえ、ルミナスのことが気がかりで仕方なかった。

 

『 強くなる事、それより大事な事。無事に戻ってくることを頼むよ。』

 

ココの言葉が脳裏に響く。

 

そうは言っても、 光のクイーンを裏切り、 力の源である 彼女の元から去った今、剣を振る理由は、九条ひかりを守るために他ならなかった。

 

いやが応にも手元が焦るが、 魔神達は的確に、ポルンの今の長所と短所、 どこをどうすれば伸びるか、戦いの時に何を意識しどこに重点を置くべきか、どういう精神を鍛えるかなど…… たくさんのことを教えてくれた。

 

「アンタは硬い! 一生懸命なのもいいけどもう少し柔軟さを取り持ちなさい。

そこに強さが宿ることだってあるんだからね?」

 

「 がっつく姿勢はなかなかCOOL!but、 いろんなものを一人で背負いすぎだyo‼

ただ一点を見つめ、 今最善のものを勝ち取るんだyo!」

 

「 恐れず進みなさい。 逃げないだけでなく、時に労わるのです。愛と勇気を持って進めば、成せぬ事はこの世にありません。」

 

魔神達に様々なことを教わりながら、 戦闘訓練を繰り返し繰り返し、 一日一歩づつ、確実に強くなるポルン。

 

そこからさらに半年が経った頃、 マイティーが突然魔神達とポルンを集めた。

 

「ここから先は、俺とコイツの一対一で戦闘訓練を行う。」

 

「サシ!? なめんなよな!今なら4対1だって……」

 

「 分からんのか?『これからは本気で行く』と言ったんだ……。」

 

「 今まで手抜いてたのかよ!」

 

「殺す気ではいたさ。 要は『生き残れるかどうか』の訓練から、 力を得られるか否かの訓練になる。

まあ、いずれにせよ殺す気で行くがな……」

 

魔神達も快く首を縦に振り、修行は最終局面へ。

 

景色を操作すると魔神達が消え失せ、 あたりは雪原に変化した。

 

建物はおろか岩石や樹木一つない。

 

空は白く染まり、 あちこちで吹雪が舞っている。

 

「 フィールドチェンジか…… 気分の出る演出だな。」

 

「 確かにここ数日、精神衛生のために景色は操作した。が…… ここからはこの何もない大地が適正なのだ。

距離感と2、3種類の色彩が判断できれば何でもいい。」

 

「 なるほど……」

 

「 余裕をこいてないでかかってこい。」

 

マイティの体が発火し、彼の足元だけ雪が溶け出した。

 

炎が横に燃え広がって胴体を覆い尽くし、 鎧のような形になってから火が収まる。

クウガのアルティメットフォームを思わせる黒い鎧。

 

体を売っていたはずの炎はマイティによって完全に制御できるようになったらしく、 右手のひらに炎が治っている。

 

「ただの……フォルムチェンジじゃねーよな。」

 

魔神達とはもう何度も戦ったが、 彼らの力が 小さく見えるほどの魔力の増大。

頬を伝う汗は興奮ではなく恐怖。

剣を握る手の震えは 武者震いではなく 危機感。

 

どちらも、ポルンには残念な結果だ。

 

「来い……」

 

ここ数ヶ月で教わった全てを懸ける。

 

そのくらいの意気込みがなければ、彼には勝てない。 理屈ではなく、直感で分かっていた。

 

『あなたのコンテンツには、まだ上の段階があります』

 

タイタンから教わった言葉だ。

 

『上の段階って?』

 

『 光の力とはもっと強大かつ、強固です。

その気になれば時空すら歪める、光とはそういうものです。』

 

『どうすりゃその段階に行けるんだ?』

 

『あなたは、怒り、焦り、恐怖や悲しみから、一つ一つの技に磨きをかける機会がこれまでなかった。

コンテンツカードを信じ、 呪文に意思を乗せ、 心で繋がる仲間と共に戦うのです。』

 

その教えを100%理解できるかと言われると、 そうではない。

ただ、タイタンのこの教えを意識するようになってから、 自分が成長したのを実感できた気がしたのだ。

 

( 俺のコンテンツには使いどころがある。 俺はクイーンから受け継いだ力で、俺が高めるべき力だ。信じてやらなきゃ意味がねーのもその通り。)

 

上から首元に、剣で切りつける。

 

かなり強い勢いで振り下ろしたつもりだったが、 首に接触するとピタリと止まり、動かなくなった。

 

(!?)

 

「甘い……!」

 

マイティは首にかかった刃をつかみ、そのままポルンごと投げ飛ばした。

 

「うわ!」

 

「スキだらけだ……!」

 

自然発火能力で右手に炎を宿し、槍を形作る。

 

急いでカードを引き、腕輪にハメられたスマホ画面にかざす。

 

『シールド・コンテンツ!!』

 

丸い盾の結界ができるが、熱で溶け出し粉々に砕けた。

 

「ぐぁ……!!」

 

すんでの所で真横に飛び退くが、 右頬に切り傷を作り、火傷を負った。

 

「クソ……!」

 

「 お前は一体何を学んだ? コンテンツを乱発していれば 下手な鉄砲がそのうち当たると?

100年早い。」

 

『スクラッチ・コンテンツ!!』

 

光のつけ爪が展開し、 ポルンは再び飛びかかる。

 

「 接近戦ならばもう少し有利に運ぶ ……か?それが甘いというんだ!!」

カードをただの『戦略』に変えるな。武器をただの道具と思うな。戦う理由をないがしろにするな。

 

すべてと共に戦うのだ。

 

何かが彼の頭の中で叫んでいたが、その解釈をポルン自信が理解できなければ、この状況を脱することはできない。

 

「 ただの戦略にあらず! ただの武器にあらず!

戦う理由を曖昧にすべからず!」

 

声に出して叫んでみるが、結局その意図も意味もわからない。

初めから理解などしていなかったのかもしれない。

 

確かにこの半年の体感時間で、身体能力は確実に上がった。上がっていなければおかしいのだ。

 

だが、それではこのアルティメットの魔神に勝つことはできない。

 

身体能力を上げ、技を磨き、コンテンツを使うタイミングを見極めた。

では後は何を学ばなければならないか。

 

その答えを出すがために、あのフォームになった。だとすると、その答えとは何だ。

 

(ちくしょう! こうしてる間にも闇の同盟がこのままじゃ何も……)

 

「何も守れない、何も救えない、か?」

 

心の中で思っていたことを読み取られ、表情が固まるポルン。

 

「お前はいつもそれだ。 誰かを守りたい、世界を守りたい、愛する女を守りたい。そのために強くなりたい。

自分が強くならなければいけない。

何を犠牲にしてもいけない。

犠牲にしていいのが自分の身だけ……」

 

嘲笑するようなマイティの声色。

 

自分を訓練していた相手に対し、ポルンは初めて、怒りにも似た悔しさを覚える。

 

「 何か間違ってるってのかよ……!仲間の……ルミナスのために戦うってことが」

 

「 ああ間違っている!」

 

全面的に否定された事に怒りを覚え、『Bomber』のカードを翳して燃える拳を突き出すも、 やはりマイティには届かない。

 

「 俺は別にないがしろになんかしてねーよ! 本気で全部守るために強くなりてえんだ! 何が間違ってんだ!」

 

「 俺が否定したのは守るという意思そのものではない、手段だ。」

 

「!?」

 

「 修行の過程で、お前の記憶が伝わってきたぞ……?確か、光のクイーンはお前に言ったな。

自分を敵と見定めながら一人でのこのこ乗り込んでくることを愚かと思わなかったのかと。

俺も同意見だ。

あの場でルミナスのことを お前一人で守れると?

思い上がりも甚だしい。」

 

「 じゃあどうすりゃ良かったんだよ!!」

 

爆ぜる拳で数発叩き込むが、煙を上げるマイティの体は ダメージをかけらも感じていないらしい。

 

「 あの場でクイーンの正体に気付いていたのは俺だけ! もうルミナスの身柄は 宮殿に持ってかれてた!」

 

「 援軍を呼ぶこともできたはずだ!」

 

「 戻ってる間にあいつが兵器にされちまってたかもしれねえ !」

 

「 そしてテントに戻れば力を剥奪すると言われ、それに反対し一人で守れる、と。」

 

「 あいつは力を奪われて、一人安全な場所に待機することで守られることなんて望んでねー!

仲間に腫れ物扱いされて守られるくらいなら、 危険を犯して一緒に戦うことを望んだはずだ。」

 

「 若い、青い、無鉄砲で無責任。

お前は何もわかっていない。」

 

「何をだよ!!!!」

 

彼の怒りは最大に達し、エネルギーを最大級に込めた斬撃を放つ。

ようやく鎧にヒビが入ったがマイティーは顔色ひとつ変えない。

 

「 そうしてプリキュアとしての彼女を守り、お前はどうなるというのだ!」

 

「 言っただろう! あいつを守れるなら俺は死んだってかまわねー!」

 

「 それが間違っているというのがわからんのかァ!!!」

 

今度は先ほどのポルン以上の渾身の怒りを込めて、マイティが 右拳でナックルを放つ。

 

右ほほにクリーンヒットしたパンチは、これまでのどの攻撃より痛かった。

ドラマで怒り狂う父親にげんこつを食らう時のシーンがあった。

 

親と呼べる存在がクイーンしかおらず、げんこつを食らった経験などもないポルンにとって、 それは実に貴重な経験だった。

 

「 すべてをやり尽くしお前が死ねば丸く収まるだと!?

ふざけるのも大概にしろよ!!

お前がし命を賭して守りたいと思う彼女は、お前が死んでも悲しみはしないのか!?

妖精のまとめ役のココ王子は!?

Max Heart の他の二人のプリキュアは!?

お前耳をずっと案じていた火野明美は!?

 

記憶を読み取っただけの俺ですらこれほど思い浮かぶのに、 お前が誰一人浮かばないとは言わせんぞ!!

 

お前はわかっていなかったんじゃない!!!ずっと目を背けていたんだ!!!

 

甘えるなよ!

 

そんな逃げてばかりの軟弱者が、誰一人守ることなど、まして世界を守ることなどできはしない!!」

 

畳み掛けるようなマイティの言葉が、次々と心に突き刺さる。

ようやくわかった。

コンテンツカードが自分の体にフィットしていないように感じたのは、 成長段階の初期不良などではない。

 

単にポルン自身が理解していなかったのだ。

世界を救う ということの真の意味を。

 

自分が、どういう環境で戦っていたのか。何を守るべきだったのか。

 

全てを救うと口にしていたものの、何を守らなければいけなかったのか、具体的なビジョンが全く見えていなかった。

 

故にコンテンツカードは真の力を発揮できず、不調が続いていたのだ。

 

「 久々に骨のあるやつが入ってきたと思ったら……全く残念極まりない。」

 

マイティのため息には、はっきりした怒りがこもっていた。

 

「 弱卒の相手をするほど暇じゃないんでな。 次の一撃で決めさせてもらう!」

 

マイティは両腕に力を込める。

 

天高く掲げた拳に、 赤い炎と稲妻両方のエネルギーが宿っていく。

 

「 これを受け切り!なおかつ次の一撃で俺を倒せなければ、どちらにしろお前の運命に先はない!

よくよく思い出してみるんだな !一体お前の周りに、前に、後ろに、隣に誰がいたのか!

お前ごときが本当に一人で戦うにふさわしい人間だったのか!

見極められんというのなら、本当にここで死ね!!」

 

一面雪に覆われた銀世界を、あまりにまばゆい炎と稲妻の光が満たしていく。あれを食らっては本当に命がないだろう。

 

目を閉じて、ゆっくりと考える。

誰の声が聞こえるだろう。

 

「 ね、ポルン。明日のテストの問題とか……分かる?」

 

悪知恵を働かせるなぎさの声。

 

「 未来を予知するなんて……どんな仕組みが働いてるのかしら……!!」

 

自分の能力に対し、妙なスイッチが入るほのかの声。

 

「 ポルンならきっと、立派な光の王子になれるココ。」

 

度重なるオールスターズ決戦の時に、先輩妖精であるココがくれた言葉。

 

「 もう一人で悩まなくていいんだよ。ひかりちゃんのこと一緒に考えよう……?」

 

勝手に基地を出て行った自分を、温かく出迎えてくれた明美の言葉。

 

「大丈夫!みんな……同じ空の下にいるんだから!」

 

強大な敵を前にしても怖気付かない。

 

強く明るく前向きなのぞみの、嘘偽りない言葉。

 

「 みんなの笑顔のために、 それと…… 君や、つかさやプリキュアたち。

大事な仲間たちの笑顔のために。」

 

姿を消した五代に代わり、クウガとして奮闘していた、小野寺ユウスケの言葉。

 

「 これからも旅は続くさ。 俺達が続けようと願う限り。 生きること、そして戦うことの旅は、

ディケイドと、キュアライダー達の旅は終わらない。」

 

世界の破壊者と邪険にされ、 全てのライダーを敵に回してなお、 運命と戦うためにその足を止めなかった仮面ライダーディケイド/門矢士の言葉。

 

そして……。

 

「ポルン……。」

 

いつも自分を選んでくれた優しい声。

愛と温かさに満ちた、彼女の、シャイニールミナス/九条ひかりの声。

 

「ポルン!」

 

そうだったんだ。俺、こんなにたくさんの人に。

 

本当は気付いていた。なのに、どうしても素直になれなかった。そして、今……!!

 

『COMPLETE・コンテンツ!!』

 

目を開いたポルンは、赤と金色に光るマイティの光線を 光の実態なき剣で受け流した。

 

ふぶきがやんで晴れ上がった真っ白な大地。

 

パリィン!!

 

ガラスが割れるような音と共に、マイティの鎧が砕き割れた。

 

「ようやくか……!」

 

「これが……!!」

 

「そう、 それがお前の新たなる力。

信頼と繋がり、絆を確かめ、 強さを見極めた者のみがたどり着ける力だ。

今のお前ならどんな闇も討ち払えよう。」

 

全身から満ち溢れる光のエネルギー。

この涙はなんだろう。

この高揚感は何だろう。

そんなことは、後で確かめればいい。

 

ひとまずマイティから告げられた事実のみが、 光の公爵と化したポルンに刻みつけられた。

 

「 最終試練・合格だ。」

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