プリキュアオールスターズ×仮面ライダー〜bの復活とsの暴走〜第三部   作:鈴木遥

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解放・覚醒・天恵

「ハリー……!!なんでそいつの味方を!!!」

 

突然現れた予想外のピンチヒッターに、 動揺と怒りを隠せないビシン/アマゾンシグマ。

 

「ビシン……!」

 

「消えちゃえよ……そいつも、ハリーも……光に属するもの皆消え失せろ!!!」

 

闇の波動を体から溢れさせるアマゾンシグマ。

 

その時。

 

「止め給え。君ではどうにもならんよ…… 彼女達の力は本物だ。」

 

ビシンの背後から響く 野太い声 。

 

「アンタは……!」

 

あまりに予想外の、新手の刺客の登場に、エトワールは驚きを隠せない。

 

「うそ……なんで……!?」

 

そこにいたのは、プリキュア達にも見慣れた、仮面ライダービルドラビットタンクフォームの姿。

「 困るんだがね。君のような裏切り者に、作戦の完了地点を動かれては。」

 

「 だったら僕のことも消していけば?影山おねーさんのことも相手にすることになるけどね。」

 

「まぁそう急くな。 キュアライダー達の抵抗力は予想以上だ。 元老たちから言われた所定の時間を、もう20分以上オーバーしている。」

 

「 あんたらを妨害してるゴミ虫の中には、あんたの息子の桐生戦兎も混ざってるじゃないか!」

 

「息子……!?戦兎さんが!?」

 

 

 

努めて冷静な葛城巧(桐生戦兎)の父、葛城忍。 その存在と所属を思わぬ形で知ることになった二人は、動揺を隠せない。

 

「 10分やろう。私が『別の任務』を片付ける間に、君は彼女たちを始末したまえ。」

 

有無を言わせずに言い残し立ち去る葛城忍。ビシンはどこか、退路を断たれて、むしろスッキリしたような表情だ。

 

「そういう訳で……お姉さん達!」

 

図らずも数分間、体を休めることに成功したプリキュアたち。

 

「こっから……本気で行くよ!」

 

戦士となったハリーが加勢したことで、まだまだ形成逆転のチャンスは増えたと言える。マスクからでも分かるビシンの殺意に負けじと、 対峙する戦士達は今一度、呼吸を整えなおした。

 

 

 

一方。

 

※※※※※

 

『FINAL VENT』

 

『EXCEED CHARGE!』

 

『CRACK OUT

FINISH!!

BLIZZARD 』

 

黒いドラグレッダーが空中を旋回し カイザからは黄色のエネルギーが足に集中している。

 

グリスとローグはドライバーのハンドルを捻り、こちらも必殺技の用意を整える。

 

「終わりにしてやるよ……!」

 

「そいつァこっちのセリフよ……行くぜ髭ェェェ!」

 

「玄さんと呼べェェェェェェェェェ!!」

 

リュウガとカイザ、グリスブリザードとレッドブルローグが、互いに放つダブルライダーキックが、空中にて相殺。

 

「ウオオオオオオオオオオオオラァ!!」

 

爆煙が晴れた時、地面に堂々と立っていたのは、グリスとローグの二人であった。

 

「ほのほのんトコ行くぜ……髭!」

 

「ああ……カズミン!」

 

※※※※※

 

門矢士/仮面ライダーディケイドと、初代プリキュアのふたりは、 芝公園避難所の中央広場付近で、今回の指揮者と思しき ゴルドドライブ/蛮野天十郎と、ドツクゾーンの参謀の一人、サーキュラスと対峙していた。

 

「 門矢士よ、我々とてこれ以上の戦闘は無益。

どうだ 貴様らがこの土地を明け渡すならば元老院に俺達でかけ合ってやらんこともない。」

 

「 願ってもない好条件だなァ。実のところ、俺もさっさと帰って寝たかった……が!」

 

士の視線は、不満そうに彼を睨む プリキュア2人に向けられていた。

 

「見ろこの顔。何を言っても引き下がらない顔だ。」

 

「当たり前よ!さぁ……闇の力のしもべたちよ!」

 

「とっととおウチに帰りなさい!」

 

久しぶりの宣戦布告に、不安と武者震いの両方を感じ取るサーキュラス。

彼女らと対面するのが初めてのゴルドドライブは、まるで 意にも介さない。

 

「そういうワケだ…… 悪いがこの子達はお前らには渡せない。手始めに……!」

 

コートの内側のポケットからディケイドのカードを取り出す士。

 

「お前らを倒す!変身!」

 

『カメンライド!ディケイド!』

 

ネオディケイドライバーにカードがセットされると、 彼の周囲をアーマーが覆い、 空中に出現したバーコードが頭部に刺さる。

 

仮面ライダーディケイドへの変身完了まで、十数秒とかからなかった。

 

「ほう……!君があの……!」

 

余裕綽々で興味深げな ゴルドドライブに対し サーキュラスは警戒を怠らない。

 

「 貴様のデータも取らせてもらうぞ……。お手並み拝見といこうか!」

 

※※※※※

 

シャイニールミナスを保護している中央テントの前に、

葛城忍はすでに侵入していた。

 

第一級の元老たちからも一目置かれている彼が、 自分に課せられた単独のミッションをしくじるハズはなく、 忍者とコミックの力をもってして通常のビルドドライバーの力を遺憾なく発揮。

 

シャイニールミナス確保の任務などと大仰に掲げられてはいるが 所詮箱の中に厳重に管理された水晶を持ちさればいいだけのこと。

ボックスを破壊してしまえば一番楽なのだが、 中にあるという水晶が傷ついては面倒だ。

 

実際葛城は箱の中身について知らず、興味もなかったがここで元老の機嫌を損ねるのは困る。

 

(これか…… 金属の箱に入れれば満足するとはな……。 巧もそうだが、最近の詰めが甘い……)

 

ゆっくりと手を伸ばす葛城。

 

彼のここまでの計画に、たった一つ、誤りがあったとすれば、 ルミナスの水晶の周りに注意が行き届いていなかったことだろう。

 

それも彼の真後ろには、彼にとって厄介なものがあったのだ。

 

ドゥン!

 

鈍い音が鳴ると同時に、 背後にある真っ黒く大きな箱の蓋が開く。

 

中から出てきたのは、短く整えた水色の髪が印象的な、白い甲冑を着た青年だった。

 

「何だ……キングダムか?」

 

『 《輝く命》と共にあり!気高き栄光の証・プリンス・ポルン。』

 

青年を無視して箱を持ち去ろうとする葛城だが、不意打ちと言えるほど激しい拳が真横から飛んできた。

 

「!?」

 

ガシャァァあん!!

 

奥のテントに突っ込む葛城。

 

想定外に強力な伏兵が紛れ込んでいたと、慌てて体を起こす。

 

『RABBIT!TANK!』

 

即座にフォームチェンジし、剣を構える葛城。

 

ポルンは呆けた顔をし、てんで警戒心が見られない。

 

「 思ったよりパワーアップしてやんな。 これなら、お前一人何とかなりそうだ。」

 

「ッ……!!」

 

「 それからも一つ言っとくぜ?あんたの息子、もうすぐ戻ってくる。」

 

「何ッ……!!」

 

身構える葛城。ポルンの背後に、『世界を分かつ壁』が出現し、中からフルボトルの効果音が鳴る。

 

『ジーニアス!!』

 

その名のとおり、仮面ライダービルド・ジーニアスフォームが、堂々たる凱旋帰還を果たした。

 

「ポルン……この場はオレに、譲ってくれるか。」

 

「OK。取り敢えずオレは…… 姫君に目覚めのキスでもしてくるぜ。」

 

テントの中の、結晶化したルミナスの前に立ち、 懐から長い杖を取り出す。

ベルトについているスマートフォンを杖に合体させ、 手元のバックルから、3枚のカードを出してかざす。

 

「待たせたな……ルミナス……!!」

 

解放(リベレーション)』、『覚醒(ウェイクアップ)』『天恵(ゴッドブレイズ)』の三枚。

 

リベレーションにより結晶が徐々に拡大し、 中のルミナスが元の大きさ程になるまでに。

ウェイクアップにより、結晶に鍵穴が開き、 ポルンがそこに 星を突き刺すことでカチャっと音がする。

 

「お目覚めの時間だ……輝く命よ……!」

 

まばゆい光があたりを満たし、二人のビルドが、そばにいたロストスマッシュが、眩しさに顔を手で覆ったその時。

 

視界が開けたその場所には、ポルンが心待ちにしていた彼女の姿があった。

 

『輝く命・シャイニールミナス!光の心と光の意思!!すべてを一つにするために!!』

 

クイーンの分身であり、光のエネルギーの塊に過ぎなかった彼女は、 パートナーの妖精の必死の戦いの数々により、 完全に力を取り戻し、 同時に一人の人間となったのだ。

 

「ココ! あんたの言い分は尤もだ! プリキュア内においても、こいつの力は絶大!敵に奪われれば、こっちの勝利は一気に絶望的になる!」

 

ポルンの声は 裏手のテントにいる、二人の王子に届いていた。

 

「 だから僕はお前の意見を突っぱねた。 けれど、今の強くなったお前を見ていると、何か別の可能性を感じる!

それを信じてもいいのか?」

 

「今それを言おうと思ってた。とりあえずあんたがこれまで持ってきたこの避難所、 絶対こいつらごときには潰させねー!

ルミナスもしっかり守って 俺がこいつらに勝つから…… そしたらこいつを一人の戦士と見てやってほしい!」

 

向こうのテントから返事が来たのは、数秒たってからだった。

 

「彼女をその結晶から解放したのはお前だ! かなりひどいことも言ったが、それを承知で言う。

ルミナスを守ってくれ!頼む!」

 

「了解。」

 

ゴッドフレイズのカードをかざすと、再び世界を分かつ壁が出現。

 

中から現れたのはキュアエール。

 

「めちょっく! あれなんで私ここにいるんだっけ!?」

 

「オレの能力(カード)さ! 西テントの端の方にあんたの仲間がいる!加勢に行きな!」

 

「あ、ポルン君戻ったのね!あ、了解!!」

 

それだけではなく 避難所内にいた光の戦士たちの力を ゴッドブレイズのカードが 強化。

誰の目にも明らかな形勢逆転だが、それで撤退するほど闇の同盟も甘くない。

 

「攻めろ!攻めて攻めて攻め落とせ!」

 

ディケイド との戦闘中にも関わらず、部下に命令を下す余裕を見せるゴルドドライブ。

 

そして……。

 

異変は、フレッシュプリキュア管轄のテントでも起こっていた。

 

「那由多さん……!?」

 

「そんな女、端から存在しないわ。 私はノーザ。元管理国家ラビリンス幹部。

メビウス様の忠実なる下僕。今はブラックホール様の名のもとに、第二級邪神継承権を務めているわ。」

 

祐喜にとって、その残酷な宣告は、どんな攻撃以上のダメージを生み出した。

 

「 そ、……そんな……嘘ですよね?だって、那由多さんは……」

 

腰を抜かした裕喜を見かねたノーザは、 赤銅色の光線を放つ。

 

「 記憶を失っている間、お世話になったわね。あなたはもう用済み…… 短い間だったけれど、楽しかったわ。」

 

冷たい笑みを浮かべるノーザ。

 

体の震えと悪寒、死への恐怖。

闇の中へと引きずり込まれるような予感。これを地獄に落ちるというのだろうか。

 

裕喜は 目に涙を滲ませこそしたが、 一瞬ゆっくりと深呼吸したかと思えば、精一杯 笑顔を作った。

 

「なんだ…… 俺が騙されてただけだったんですね。なら、もういいや……。」

 

目を閉じて、笑いながら、呼吸をし続ける。最後の一瞬まで、 自分が生きていた証をこの世に止めるようにと、縋るように、食らいつくように、人生の 思い出を振り返る。

 

走馬灯、という現象を実体験したのは、彼自身、これが初めてだ。

 

「幸せに、なって下さいよ?」

その時だった。

 

ノーザの 頭に激痛が走り、攻撃を中止。必死に頭を押さえるが、痛みは消えてなくならない。

 

「なに……何なの!?あなたは……お前は一体……私の……!」

 

「時間切れだ!」

 

背後に立っていたのは、マックスハート組とぶつかっていたはずのサーキュラス。

 

「あ……なた……!!」

 

「 化学班め、いい加減な施術をしやがって。 お前の記憶にもバグが発生している。」

 

「い……や……!!」

 

「暴れるな。」

 

サーキュラスは右腕でノーザの腹部に拳を当てる。

 

力なくへたり込んだノーザは、 サーキュラスの肩に担がれて闇の彼方へと消えていった。

 

「那由多さん!!」

 

必死に駆け寄るが、そこにも彼女の姿はない。

代わりにキツネの魔化魍達が彼を襲いにかかるが、そこへ……。

 

「タァッ!!」

 

「!?」

 

「 大丈夫か少年、よくここまで持ったな!」

 

「響鬼さん!」

 

西テントでも。

 

『プリキュア!トリニティ……コンサート!!』

 

3人揃ったHUGっと組の必殺技に、さすがのラッキークローバーも押し負け、 ローズオルフェノクを筆頭とした現ラッキークローバーは、一人残らずリタイヤを強いられた。

 

「あ〜あ…… 全員消されちゃったよ。葛城おじさんも戻ってこないし、どうしようか?影山のお姉さん!」

 

「ビシン様、 今の一撃で彼女達は虫の息です。

国は我々で駆逐して帰るのが得策かと。」

 

「ちょっと待ったァ!」

 

ゴッドブレイズの恩恵はまだ残っていた。

 

時空間の穴が開きそこからの路線が出現。

 

「あれは……!!」

 

安堵の表情に変わる、アンジュとエトワール。

 

現れた時の列車からは、何やら戸惑いの声がする。

 

「これ、どうするのですか!?」

 

「とびおりんだよ!当たりメーだろが!」

 

「 落ちたら死んでしまうのです!」

 

「心配無用ですえみる。 私が支えていますので負傷する確率は 0.1%未満です。」

 

「ええええええええ!?」

 

瞬時に記憶に影が舞い、落下してきたのは、一人の仮面ライダーとふたりのプリキュア。

 

「「 輝く未来を〜〜っ!抱きしめて!!みんな大好き・愛のプリキュア!」」

 

「キュアアムール!」

 

「キュアマシェリ!」

 

「オレ、参上!!」

 

「うそ……えみる……!?」

 

「ルールーも……!?」

 

「 クライアス社から抜けてきた ルールーを、バッチリ迎えに行ったのです!」

 

「 その節はご迷惑おかけしました!」

 

「良かったぁ……皆そろって。」

 

続いて声をかけたのは、はなだった。

 

「おかえり、ルールー!!」

 

「はい……戻りました!!」

 

「 挨拶が済んだらぶちかますぜ!言っとくが俺は、最初から最後までクライマックスだからよ!」

 

着々と揃いつつあるキュアライダー達。闇の同盟襲撃作戦、いよいよ終盤へ。


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