プリキュアオールスターズ×仮面ライダー〜bの復活とsの暴走〜第三部 作:鈴木遥
・ 救護テントの行列がひとまず治ったのは、時計が天辺を周り、 看護にあたっていたプリキュアや仮面ライダー達の疲労がピークに達した頃だ。
と同時に、 かろうじて生きている並行世界のインターネット上に、 シャイニーキングダムからの報告動画が入った。
なんとこともあろうに、闇の同盟との一時的な協定を結ぶというのだ。
門矢士の指示でフィリップがスタッグフォンを起動。
士もダークディケイド/灰クグツとの戦いで負傷し、 ようやく身体を起こしたところであった。
「士君!無理しないで下さい。」
「うるさい夏みかん!! くそ!あいつ今度会ったら、ただじゃおかん!!」
光夏海が止めるのも聞かず、 包帯だらけの体を引きずって起きてきた。
身体の痛みもそうだが、自分とスペックの全く同じ戦士にここまでボコボコにやられたことが、 どうにも我慢ならなかったらしい。
それは桐生戦兎も同じだった。
正規版ビルドドライバーのスペックを大きく上回る、ジーニアスフルボトルの力だが、 彼はそれを本来あり得なかった世界線で手に入れてしまった。その代償は大きく、使用制限時間を大幅に少なくしてしまうものであった。
「オイ戦兔! 無理すんじゃねえって!」
久方ぶりに戦兎と合流した万丈龍我。
彼が新たなる力を手に入れていたこともそうだが、 父との確執やその焦り、 世界に起きている異変などについて頭がついていけてない部分もあった。
「 でも、クイーンが報告していることって……本当なんでしょうか?」
九条ひかりが不安そうにお茶を並べる。 湯のみをあおいだ夢原のぞみは、ゆっくりと立ち上がる。
「 どっちにしても、 クイーンが公開した映像を見てみるしかないと思うな。」
「あの…… 僕も賛成です。クイーンの思惑については得体が知れない。こっちのペースをいつも崩されかねませんから。」
野上良太郎がゆっくりと手をあげる。彼の傍では、桜井侑斗とモモタロスがうんうんと頷いている。
「 フィリップ、つなげてくれ。」
翔太郎の言葉に頷くと、フィリップはスタックメモリを装填。
画面に映し出されたのは、 ポルンが先日戦った光の宮殿の玉座の間。
頬杖をつき玉座に座ったクイーンの姿は、 神秘的で美しいが何より高圧的で少なくとも美墨なぎさたちの味方であった頃の彼女とは大きく違った。
「 アンク、お前はどう思う?」
鴻上ファウンデーションのネットワークを使い電波を傍受していた後藤と伊達は、アンクと二人、同じ映像を見ていた。
「どうって?」
「クイーンの話だよ。つい先日、 お前も接触しただろう。いや確か先兵にコアメダルを取られたはずだ。」
後藤が詰め寄ったのには理由があった。
オーズとして戦っていた映司のそばで、 彼はいつも作戦を練る役だった。
先の戦いでは、門矢士たちとともに根幹世界であるこのテントの付近で戦い、 あまつさえクイーンに接触している。
怪人の復活は闇の同盟の18番。
もし彼が何か目をつけられているとしたら……あるいは人格を切り替えられてスパイされているという可能性もなくはない。
「 火野が連れさらわれた瞬間、お前は何も見てないんだな?」
「 あっという間に消えてた、何度も言ったろ。」
「 クイーンが急にこんな発表を始めたことといい……お前どちらかの組織と繋がってるんじゃ! そもそもお前どうやって戻ってきたんだ!?」
「知るか。 どっちについても聞きたいのは俺の方だ」
「お前……!」
「 やめろ後藤ちゃん! 今そんな話ししてたって火野は戻っちゃこねえだろ!」
こういうやりとりの時はアンクに厳しい言葉を浴びせる伊達が、 珍しく後藤を厳しく叱った。
あるいは、飲み物を置きに来た火野明美に配慮してのことだったのかもしれない。
「ご……ごめんなさいね! 大事なお話ししてる途中だったかなと思って……その……」
明美は目を上に下に泳がせ、 伊達も後藤もどう言ったらいいかわからない。
「映司のこと……よね?」
「 すみません!!俺がちゃんとしてないばっかりに」
「 そんなことを言わないで後藤君。 あなた達には何度も助けられたって……映司も言ってたわ。」
二人に粉末ココアが入ったマグカップを渡し、最後にアンクの前に立つ明美。
「はい!」
アンクにはマグカップではなく、アイスキャンディーを渡す。
「 これ、好きなんでしょ?」
少し驚いたような顔をして明美と目を合わせたアンクは、 乱暴にそれをひったくると袋をあげてからもう一度彼女を見た。
「映司は俺のこと、どんだけ悪く言ってた?」
「そうね…… 乱暴でわがままで口が悪くて自分勝手。 何度言っても命を軽んじて自分のためにメダル集めるし振り回されてばっかり。 アンクに使われてたら、命がいくつあっても足りな〜い、って、 大声で嘆いてたわ。」
フン!と鼻を鳴らすアンクだが、その後に明美はこう続けた。
「 とびっきりの笑顔でね!」
アンクはバツの悪そうな顔でアイスを頬張ると、 本来の姿になった右手で、目から流れてくる液体を拭った。
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仮面ライダーフォーゼ/如月弦太朗が やり取りしていたのは魔法使いプリキュアの 二人だった。
彼女たちのチームの同士・キュアフェリーチェ/花海ことはが、フェムシンムのような右腕になって帰ってきたことから、 彼女たちはその解決法を探して四苦八苦していたのだが、 弦太郎の質問はそこではなかった。
クイーンが超能力により発足宣言を世界中に流出してから 世界中の人々の脳内には直接クイーンが 演説をしている映像が流し込まれた。
直後インターネット上でも公開されたその映像の中には行方不明になっていた仮面ライダーウィザード/相馬晴人や、 他姿をくらました プリキュア・仮面ライダー達がいた。
現在のところ 闇の同盟にヘッドハンティングされたとされる仮面ライダーオーズ/ 火野映司以外 ほぼ全員の行方不明者の居所はシャイニーキングダムということになるが、 直接の後輩でありかつて一緒に戦った操真晴人の存在が 弦太朗としても気がかりだった。
「 それじゃああんたたちも、晴人が消えた理由はわからずじまいってことか……。」
「ごめんなさい……」
キュアマジカル/十六夜リコが頭を下げるが、弦太朗はその頭をわしゃわしゃとした。
「 謝ることじゃねえ。確認したかっただけなんだ。 あいつがキングダムに行ったのにも、何か理由があると思う。 世話になった映司のことも俺が何とかしてやりてえんだ!」
「 弦太朗さんは……二人のことが大好きなんだね!」
ことはが目を輝かせると、 弦太朗は大きく頷いた。
「 おうよ!ダチだからな!」
「ダチ!なんだか……わくわくもんだぁ!」
みらいお決まりの決め台詞が出ると、 弦太郎は拳を突き出した。
「 友達になったやつとは……誓いをやるんだよ。」
「 私たち……もう友達なの?」
「 あたりめーだろ!同盟とキングダムから一緒にダチを取り返すんだ! 俺たちもダチじゃねえか!」
遠慮がちだったリコも自信満々に 拳を突き出す。
男女四人で拳を交わし必ずやキュアライダー達の奪還を誓った夜のことであった。
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以下は、同日明朝に公開された、 シャイニーキングダム首領・光のクイーンの演説映像である。
『 これをご覧になっている、並行世界の皆さん。
おはようございます。光のクイーンです。
私の理想に反する悪しき者たちの抵抗は激しく、 世界の崩壊までも予断を許さない状況です。
しかし私は皆が笑って対等に過ごすことのできる、平和な世界の実現のため、 この力ある限り戦う所存です。
その第一歩として、
闇の同盟と協定を結ぶことにしました。
驚かれる方も多いでしょう。
確かに同盟の理念は一部、私の目指す世界に違う項目があります。 しかしながら今排除すべきは同盟ではなく、 門矢士・仮面ライダーディケイド
そして彼に感化され、我が道を見失っている哀れな人間、プリキュア、仮面ライダー達であると判断いたしました。
彼らの救済のためであれば 一時同盟と協定を結ぶことも、 必ずしもリスクだけではないと判断し、 その第一歩として 我々はキングダムに反乱していた 妖精の王国を陥落これを拠点とし キングダムに仇なす者を排除していく所存です。
つきましては今から7日後これに該当する国家の代表を処刑します。
お菓子の国スイート女王。
処刑人を務めますは闇の同盟からの使者
仮面ライダーオーズ/火野映司殿です。」