プリキュアオールスターズ×仮面ライダー〜bの復活とsの暴走〜第三部 作:鈴木遥
・作戦当日の、シャイニーキングダム全体会議。
闇の同盟からの使者や、形骸化した各国政府の重鎮達が招かれ、キングダムによる盤石な新世界へと向けた、"話し合い"が行われる。
形上の同盟や連携は取られているものの、両組織は常に一触即発。
緊張感の漂う会合の中で、本日のメインイベントはどちらの組織にも与しなかった、スイート女王の処刑という異例の盛り上がり。
処刑を執行される15時。
それを遂行するため、またそれを見届けるためにこの地に集結した悪の大部隊。
その中心部には、闇のエネルギーによって心を支配されている、仮面ライダーオーズ/火野映司の姿もあった。
あるいはそれを押しのけて、女王と王国を奪還戦とする若き戦士たち。
15時を過ぎた後、この国と世界の勢力図がどうなっているか、一切誰にも予想できない状態だった。
「何、考えてた?」
仲間たちに先んじて城へ攻め込む算段を整えていたキュアドリーム/夢原のぞみと、運び屋の妖精シロップは、プリンの山の頂上から、香りの漂う風に吹かれていた。
「うまく言えないけど、この先の世界がどう変わっていくのか……私がそれを守りきれるのか……かな」
"それ"がすべてではないことを、1年もの間一緒に戦ってきたシロップはよく知っている。
そこにはあえて言及しなかった。
今の気持ち戦っている自分の原動力やその意味について生理がついていないのは彼も一緒だったからだ。
ごく最近のことである。
プリキュア達と協力して戦った、秘密組織エターナルの館長。
彼がコアメダルを研究していた錬金術師の一人であり、シロップの父親であったことが、思わぬ形で発覚してしまった。
自分とは何なのか。
何のために生まれて、今ここにいるのか。
答えのない問いに苦悩した彼を救ったのは、やはりプリキュアであり、シロップの愛する女性だった。
「やるしかねぇんだろ、俺たちみんなで」
少なくとも、今ここにいる理由としては充分すぎる回答であった。
にもかかわらず二人が別行動をとったのには、理由があった。
誰一人気づいた様子はなかったが、禍々しい闇の同盟においても搔き消える事の無い"異質゛な気配があった。
それはまるで、闇に堕ちたプリキュアのようで、のぞみを呼んでいるようにも感じた。
(つぼみちゃんの作戦には、三方からお城に攻め込むところしか含まれてない……だから)
先回りをし、気配の正体を探るだけでも出来れば……。
逆に言うと、その尖兵である自分がどうなろうとかまわない。
そういう戦士だったのだ。夢原のぞみとは。
意を決してホールケーキ城への潜入を開始する2人。
スイート女王の処刑時刻である15時まで、残り時間は9時間を切った。
一方、モモタロスたち本陣組や、別行動を取ったのぞみとシロップとは別に、遠方からホールケーキ城の様子を伺う人影があった。
「凰蓮さん、本当に大丈夫なんですかね.......」
「静かになさい、坊や、あーたここまで来て何をビクついてるってのよ」
「だって.......いよいよシャイニーキングダムとの決戦が始まるんでしょ.......俺たち、今度こそ無事に帰れるかどうか……」
城之内秀保と凰蓮・ピエール・アルフォンソ等、チームシャルモンの二人の仮面ライダーは、市街地で待機する本隊に先駆け、偵察に来ていた。
火野映司によるスイート女王の処刑。
闇の同盟や、シャイニーキングダムの一時的な連結。
否が応でも、この作戦の結果が今後の世界を左右することは明白だった。
城之内が怯えを隠せないのも無理はない。
キングダムも、同盟も、この歴史的瞬間において一切乗って抜かりを許すまいと避ける限りの全力を投じてきている。
両軍を敵に回すとなると、その危険度はこれまでとは一線を画するものとなる。
メガネを押し上げる指先は、まるで凍えるように震えていた。
「信じなさい坊や。花咲つぼみの作戦を」
凰蓮は、ゴツゴツした手のひらで愛弟子の肩を叩いた。彼とて、本作戦の発案者である花咲つぼみをよく知っている訳ではなかった。
とはいえ、年端も行かない彼女たちプリキュアが、最前線で悩み、苦しみながらも、世界を救うために努力しているのだ。大人の自分が迷ってどうする。
トルーパーズで未開の星から戻ったばかりの葛葉紘汰に会った時、彼はプリキュアたちを頼むといった。
スイート女王の処刑阻止作戦への参加を買って出たのは、紘汰の言葉による影響が大きい。
彼もまた、若い身空で過酷な運命に従うことを強いられた、偉大な戦士の一人だ。
彼は全てを救うために自分1人を犠牲にした。
始まりの女の存在があったのが、彼にとってせめてもの救いだったかもしれない。
それすらもなければ、彼はもしかして求道苦界のような存在になっていたかもしれない。
後から思い起こせば、彼を怪物にしてしまったのは、シンプルにして悠久の孤独だ。
誰もがそれに染め上げられて、正気を失ってしまう。
その危険をはらんでいるのが人としてのジレンマであり、それがあるからこそ、生きることとは尊いのだ。
そこまで考えて、凰蓮はふと思った。
キングダムに寝返った戦士たちは、程度の個人差こそあれ、もしかすると苦界に似た闇を孤独に抱え込んでいたのではないだろうか。
キュアライダーズには、今や百や二百を軽く超える構成員がいる。
結果として、門矢士とその一派だけでは彼らを制御しきれなかったことになるが、彼らは意外と自分に身近な闇に付け込まれてクイーンの誘いに乗ってしまったのかもしれない。
いや、もしかするとそのクイーンですらも……。
「凰蓮さん!!」
弟子に呼びかけられ、凰蓮は我に返った。
双眼鏡をのぞき込んでいた城之内の顔色が変わった。
事態が動いたらしい。
「坊や、どうしたのよ」
信じがたいという表情で、彼の視線は城の上空に釘付けだった。闇の同盟近世のグンダリが空を巡回している。
……だけではなかった。
大きくてのろまなグンダリが気づかない間に、その群れの間を俊足でくぐり抜けていく大きな影。
城乃内はつい最近彼に会ったことがあった。
「シロップ……?」
「だけじゃないわ!背中に乗っているのは、ドリームのお嬢ちゃんじゃなくて?」
城乃内から双眼鏡をひったくった凰蓮もまた、信じられないという声を出した。
当然だ。
シロップの背に乗ったキュアドリームが単独で城を目指している。そんなことは作戦にないのだから。
「こちら宣言偵察部隊チームシャルモン。作戦隊長に代わって下さるかしら」
いつになく早口で無線に声をかける凰蓮。
冷静で予備動作のないその表情から、事態の緊迫度合いが見て取れた。
※
闇の同盟から派遣された戦士達にも、動きはあった。
情報が漏洩したのだった。
市街地の外れにある空き家に門矢士一派のキュアライダー達が潜伏しているというもの。
幸いなことに、チームシャルモンや夢原のぞみの動きはまだ気取られていなかったが、今回は同盟の動きが迅速だった。
キュアライダーズを城の裏口から先導する予定だった、側近のビターとドライ。
彼らはバイオレンスドーパントの拷問にかけられ、さらには女王の処刑を2時間早めるとの脅しをかけられた。
二人はやむなく情報を渡し、キュアライダー達の隠れ宿にはモールイマジンの大群が押し寄せていた。
指揮を執っているのは、ファイズの世界からやってきたクイーンの側近。
サガとオーガ。
それにアルビノレオイマジンと、錚々たるメンバーだった。
「待機命令……?」
根幹世界である、ディケイドの世界の、芝公園で待機していたココは、つぼみを経由しての凰蓮の報告に目を見開いた。
『僕としても心苦しいけど、みんなが出て行く前に話した通り、のぞみはそういう子なんだ。事態が動くまでは、様子を見るしかない作戦をかき乱すわけにはいかないからね』
「でも……!!」
「お前の大事な女ではないのか」
会話に割って入ったのはチェイスだった。
「見捨てても構わないと?」
『そんなハズないだろ!!僕だって心配でたまらないよ!!けれど……』
ココの言い分はもっともだった。
スイート王国は今立派な敵陣である上、その戦力も全くもって未知数だ。今ある戦力を、のぞみとの合流に割り当てる余裕がなかった。
『僕も急ぎ合流するから、作戦は一旦中断してみんな』
そこでガチャリと電話を切ったのはモモタロスだった。
「悪ぃな、こちとらまどろっこしい話は嫌ぇなんだよ」
「ちょっとモモ!!」
諌めるりんに、モモタロスは眉一つ動かさない。
「俺たちの作戦隊長は今つぼみだ!つぼみが、時間も作戦も決めたなら、俺達の意見は変えねえ!」
隠れ宿が戸惑いザワつく中、手を挙げたのは火野明美だった。
「自分の息子が絡んでるからって言うわけじゃないけど、私もモモタロスくんに賛成」
「明美さん」
心配そうな顔をするりんに、明美は続けた。
「敵の戦力も判らない上に、処刑時刻は刻一刻と迫ってる。つぼみちゃんの作戦をすぐにでも発動しないといつ何が起きてもおかしくない状況になってる。それに私たちが待機してたとして、ココくんは多分自分ひとりでのぞみちゃんを助けに行くでしょう?人質が増えることになるわ」
「でも、第二班との合流もまだで……」
「多少不利な方が燃えてくるじゃねーか、最初からクライマックスってな」
不安そうな顔をするスイート女王の娘、ショコラ。
母親の処刑が迫っているばかりか、彼女はキュアドリームとも浅からぬ縁があった。
不安はダブルパンチで襲ってきているはずだ。
第二班に合流する予定の4人の仮面ライダーと、火野映司に対して想いを抱いていたプリキュアたち。
彼らの合流なくしては困難を極めると思われた作戦だが、敵にこの場所での潜入がバレた以上、こちらから攻めるのが最も安パイなのは変わりなかった。
「善は急げってやつだな!」
気合いを入れる小野寺ユウスケ。
そこに来てキバーラが騒ぎ立てた。
「大変どうしましょう!建物の外に、怪人がいっぱい!!」
「来ると思ってたよ」
海東大樹は冷静な顔をして、ディエンドライバーをくるくる回している。
彼のポケットからは一枚のカードと、いくつかのダンデライオン、スイカ、ローズロックシードがあった。
「人数分ある。開戦と行こうか」
※
「おいどうなってんだよ、戦士どもが出てこねぇじゃねえか」
アルビノレオイマジンは苛立っていた。
第二級邪神継承権を数多の怪人たちと争っていた彼にとっては、この作戦での武功が千載一遇のチャンスだった。
迫る処刑時間。
敵がホールケーキ城に入るまでもなく自分に仕留められ、全滅したと知ったら、元締めであるカイは一体どんな褒美をくれるだろう?
だが現場に来てみれば、伝説の戦士どころか、ひとっ子ひとり気配すらしない。部下に連れていたモールイマジン達は痺れを切らし、彼もまた念入りに研いだ爪がうなっていた。
事態が動いたのは、ほどなくしてたった。
噴火のように地下から浴びせられる無数の弾丸。
舞い上がる土埃の中から自分達の頭上を越えて発信する無数のビークルたち。
「構えろ!!」
大声で叫んだ時にはもう遅かった。
突撃隊として構えていたイマジンは半数近くがやられ、二人のライダーもバランスを崩して倒れている。
「やってくれたな……!!」
そんなアルビノレオイマジンの恨み事など意に介さず、バラの形を模したバイクの上から電王ソードフォームが、高らかに叫んだ。
「行くぜ行くぜ行くぜェ!!攻城戦開始だァ!!」