プリキュアオールスターズ×仮面ライダー〜bの復活とsの暴走〜第三部 作:鈴木遥
宇宙 闇の同盟総本部
その空間が「どこ」にあるのか、数式的、また地学的に証明できる者は、おそらく地球上にはいないだろう。
「そこ」にあるのは単なる闇そのものだった。
闇のエネルギーで形作られた虚飾の城。
最奥にして頂上の会議室には、並行世界の激戦において未だ頭角を現していない7人の幹部たちが椅子に座り、互いに向かい合っていた。
「まさか、貴様が生き残るとはな。カイ……。」
「うるせー!シャドムンのおっさんだってフルボッコじゃねーか。」
「言い争っている時間はありませんぞ?ディケイド奴を殺し損ねたばかりか、シャイニーキングダムなどという新勢力まで……。」
ゴーヤーンが仲裁すると、燐席からジェネラルシャドウが挙手した。
「考えようによっては良い手だ、うまく利用すればその割り込み勢力により内乱が起こるかも知れん。」
「そう簡単な話じゃありませんよ、旦那衆……。」
会議室に入り込んだのは、二人のイマジンを連れ立った青年だった。
闇の幹部たちを前に、彼は微塵の緊張もプレッシャーもなく、ただ明るく笑っている。
むしろ逆説的に、幹部を威圧しているとも言えるかもしれない。
いや、下手をすればその表現すら間違っているだろう。
彼には、誰かを恐れる、与する感情、だけではなく、人が欠落していた。
遠い昔、どこかに落としてきてしまったのだ。
「貴様、どこから入った?」
「怒らないで下さいよ。シャドウムーンの旦那。ちゃんと入り口から入ったじゃないですか。」
「私が呼んだ。キングダムからの転職らしい。」
ジェネラルシャドウがせせら笑いながら言うと、カイがいきり立って立ち上がった。
「 何考えてんだジェネラルシャドウ!こんな奴 信用できるわけねーだろ!?ふざけんな!!俺、そういう顔してるだろ……?」
カイが取り出したライナーパスには、4ケタの時間表記全てにしゃせんの入った、記憶そのものを破綻させる魔のパスである。
「落ち着けカイ。お前の怒りは最も、だが、この男に力を与えたのは元を正せばお前の失態だ。其れにこ奴には、ドツクゾーンの魔女によって闇の刻印を施した。
裏切れば即死だ。」
ジェネラルシャドウに諭され、カイは舌打ちしながら着席した。
「旦那方、対策はオレに任せちゃくれませんか?」
「ずいぶんな自信ですな。考えがおありで?」
「そんな大層なもんじゃありませんよ、ゴーヤの旦那。半年前のキングダム急襲で被った痛手……オレも一因があると思ってね世界中に散ったキュアライダー達を、自前のネガデンライナーで駆逐して回るのがてっとりばやいかなーって」
「成功率は?」
「そーだね、少し控えめに見積もって『一人逃すが10%』。もしちゃんと全滅させられなかったら、何かしらで埋め合わせますよ。」
余裕綽々と言った具合で会議室を出る片桐。
その背中は、強靭勝かつ異端ながら、何処か空虚で寂しげだった。
「旦那方、オレは反対だぜ?あんな得体の知れないガキに同盟を左右されるなんざ!」
カイが頑なに片桐に噛み付くのは、単なる所見の悪印象ではなかった。
彼を一目見た時から、カイの頭がズキズキと傷んでいたのだ。
これまで感じたことのない異常を前に、カイの全身が彼を嫌悪していたのだ。
「カイよ、邪神継承権のプライドを案ずるもいいが、
組織を動かすことの大きさをいい加減覚えよ。 人格の人間性も問題にはならん。よりたくさん殺せるかどうか、それが問題だ。」
一方その頃、東京タワー直下避難所。
「まず、この戦いをより深く知る事から始めるべきだよね。」
相田マナ/キュアハートはホワイトボードを用意し、万丈と猿渡に、世界情勢を説明していた。
全ての始まりは、数ヶ月前。邪悪の神ブラックホールの復活予見した光のクイーンは、仮面ライダーディケイド/門矢士を始めとした異世界のキュアライダー達に招集をかけ、 彼の組織した闇の同盟の撃退を指示。
ところが、クイーンは秘密裏に、
キュアライダー達の目的とは異なる、『世界の統治』を目論んだ彼女は、自分の真の計画に不都合な戦士たちを次々と粛清。
更に独自に統制した軍団で、闇の同盟の総本部を攻撃。
これにより、両軍に多大な影響が出ただけではなく、各並行世界に歪みが生じ、 混乱に乗じたクイーンは 各並行世界に直接侵攻を開始。
初めのうちは、国連や民間の企業(鴻上ファウンデーションなど)が抵抗していたが、それも長くは持たず、事実上この避難所以外、地球上のほぼ100%が キングダムの統制下にあると言える。
「それだけじゃなく、キュアライダーとして数ヶ月前まで戦ってた仲間の中に、何人かキングダム側に入っちゃった人もいるんだ。」
「デカイ組織に蔵替えて、裏切ったってのか……。」
「それがそうでもなくてね……。」
キュアホワイト/雪白ほのかがタブレットを差し出した。
そこには、数カ月前、クイーンが本格的な侵略を開始した頃、 世界中に向けて発信した映像があった。
玉座に座るクイーンが、自分の理想とする世界を5分間語り続ける さして変わり映えない映像。
『ごきげんよう皆さん。私は光の力の権化にして、
……連日連夜止まぬ戦闘に混乱している事でしょう。
しかしこれは起こるべくして起こった災害 闇の力はもとより世界の根幹に内在していたのです。
その元凶たるは、この世界に住まうすべての人々の心の闇。
皆さんが本当に自分を見つめ直さない限り、災厄が止まることはありません。
このメッセージを聞いているこことは異なる世界の戦士たちへ、問いことがあります。
あなた達は今この世界に、自分の世界と違わぬ守る価値を見いだせますか?
この世界の住人にこの世界の命運を任せるべきだと本当に思いますか?
今の問いに、はっきり頷けない人がほとんどでしょう。なぜなら、今世界が行こうとしている道は間違っているのだから!
あなた達が、いくどとなく必死に戦い世界を守ったところで、この世界はあなたがたに溝を作り、冷たく当たるばかり……この様な事があって良い筈がない!
今こそ立ち上がりましょう!私と……
「…… この茶番演説がなんだって?」
「そう思うわよね。 けれど恥ずかしい事に、何人かこの言葉に乗せられて、輝ける帝国《シャイニーキングダム》に与してしまったの……おかげで今、かなり不利な状況に……。」
キュアテンダー/氷川まりあが、少しうつむいて言った。
「 このままではキングダム開いてたとかっても多勢に無勢……頼みの綱の仮面ライダーも、一人行方不明に。
時期にここも落とされる。」
「酷え話だな。」
「そうでもなくてね。」
テントの奥から、茶髪の美青年が現れる。
パルミエ王国王子、ココだ。
「妖精たちのまとめ役なんて言われているけど、僕とて所詮ひ弱な妖精さ。 プリキュアがいなければ、闇の使徒にすぐにでも殺される。
ところが何人から『例外』がいてね。
その一人に 最終兵器を持たせた。
向こうに不本位でさらわれた連中を取り戻したら、すぐにでも戦いを仕掛ける。」
「例外……?」
「初めてプリキュア以外の戦士に完全覚醒した、光の王子ポルンだよ。」
荒廃したクウガの世界
その世界は、猿渡たちのいるディケイドの世界以上の惨状だった。
ポルンはあてもなく瓦礫の山の中をゆっくりと歩いていた。
はたして、生きている人間が、この世界にいるのかどうかそれさえも定かではない。
彼の背負った粗末な、リュックサックの中には パルミエ王国の王子から渡された秘密兵器と、小さな妖精ハーティエルの姿に変貌したシャイニールミナスを閉じ込めた結晶が入っている。
シャイニーキングダム首領の正体が判明し、彼が宮殿から逃亡してから何日経ったか、もう片手で数えられなくなっていた。
それは、恐らく今度の旅に出てから、ココとの間に交わした約束を破った数に比例するだろう。
「あと……少しだ。もう、少し……。」
度重なる連戦で、ポルンはとうに満身創痍だった。
されど、そんな傷は問題にもならない。
ココに、門矢に初めて反抗し、かれら中立派を離反宣言したのち、彼に味方と呼べる者は居なかった。
己の唯一の目的、ルミナスを護るという事に、もう誰も、賛同してはくれないのだから……。
「もう少し、だから、死ぬなよ……ルミナス!!」
明日の希望も、勝利も見えぬ暗闇の中、青年は独り、荒野を駆ける。