帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:鉄鋼怪人

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少し短めです


第百七十二話 電気というものは現代社会の基盤という話

 宇宙暦792年四月四日……この年のハイネセン北半球は十年ぶりの厳冬から漸く麗らかな春の戸口に入ろうとしている時期であり、長く冷え込む夜は少しずつではあるが短くなりつつあった。

 

 それでもまだ雪は深々と降り、その寒さは到底コートやマフラー無しで夜を過ごすのは無謀と言える程のものではあった。ここ数日降り続ける雪はハイネセンポリス市が保有する除雪ドローンでは処理しきれず、街道の端では仕方なく積もった雪が山を作っていた。市の行政は除雪ドローンの追加調達も視野に入れていたが、ここ数年続く同盟財政の赤字と、それによる部分的な緊縮政策もありその提案は却下されてしまった。

 

 そんなハイネセンポリスの夜に、グラティア・フォン・ケッテラー伯爵令嬢はホテルカプリコーン・ハイネセンポリスの借りきった地上六三階のスイートルームの窓際で、緋色の絨毯が下に敷かれた安楽椅子に座りながら編み物をしていた。

 

 クラシックな趣の室内でカーディガンを纏いながら、暖炉の前で黙々と編み針を動かす姿は手慣れていて、また様になっていた。幾つもの配色……軽く一ダースは越えているだろう……の毛糸をよどみなく編み上げてゆくその手腕は十分に玄人はだしと言えよう。

 

 実際、彼女は女学院に通う前から粗方の淑女としての教養は最低限仕込まれていたし、その中でもヴァイオリンや作詩と並んで編み物はどちらかと言えば彼女にとって得意な分野でもあった。弟の幼い頃に帽子や手袋、靴下を作って上げた事もある。

 

 それは財政が豊かではないケッテラー伯爵家にとっても都合は良かった。本来ならば高級なオーダーメイドを購入すべきであるがそんな金銭もなく、かといって大量生産の工業製品を使うのも体面が悪い。門閥貴族の令嬢が自身の時間を使って手作りで編み上げた衣類は、その意味で実際の値段以上の価値がある代物であり、伯爵家にとっても辛うじて言い訳が出来た。

 

 ふと、グラティアは編み物をする手を止める。部屋の奥から足音が響いたからだ。視線を上向かせて彼女は部屋の奥を見つめる。

 

「春が近づいているにしては随分と冷え込みましたね、姉上。……今夜の祝宴会の出席はどうなさるお積もりなのですか?」

 

 軍服を基調とした礼服を着こんだ弟は、若干緊張した面持ちで姉にそう尋ねた。

 

「……御招待して頂いたリヒター男爵には恐れ多い事では御座いますが、欠席すると伝えて下さい。旦那様の御友人方に男爵の御親族がおりますので御納得頂けるとは思います」

「姉上!?」

 

 憂いを秘めて、困り顔で、本当に済まなそうに答える姉に対して駆け寄るヘルフリート。その表情は不満と怒りに打ち震えていた。

 

「男爵は確かに御納得頂ける事でしょう!ですが他に出席する貴族連中は別です!この前の欠席だって顰蹙を買ったんです!!あんな連絡無視してしまえば良いではないですか……!!?」

 

 そう言ってヘルフリートが視線を向けるのは姉弟から少し離れた場所に置かれたマホガニー材のテーブルであった。より正確に言えばテーブルの上に置かれた二つの封筒であった。共に高級紙が使われ、封筒には鷲獅子の蝋封が為されている。中に納められた便箋には達筆かつ完璧に礼を執った宮廷帝国語による連絡が記されており、恐らくは薫り付けのためであろう、ラベンダーの香水の仄かな香りも漂っていた。

 

 おおよそ、帝国貴族が婚約者に贈る手紙としては完璧な形式と礼節を備えたものであると言えよう。尤も、ヘルフリートからすれば所詮形式以外何もない存在であった。義兄となる筈の男がつい先日して見せた所業を思えば、その中身の時点で今すぐにでも封筒ごと手紙をズタズタに引き裂き、燃え盛る暖炉の中に投げ捨てたい気持ちであった。

 

「これまでの所業から薄々気付いてはいましたがね。まだ姉上はあんな男に従う積もりなのですか……!!?」

 

 ヘルフリートは、義理の兄となる筈である男のして見せた裏切りに顔を歪ませる。

 

 全ては二週間前の事に遡る。

 

 ここ数ヶ月、グラティアは自身の婚約者と同じハイネセンに住んでいても碌に顔を合わせる事もなかった。一つには婚約者が重要な軍務があり休暇を取る事が困難であった事もあるし、グラティア自身もハイネセンに集まった貴族達のサロンや御茶会、酒宴への招待に応じる必要があったためだ。そのため連絡は主に手紙によるやり取りであったのだが………。

 

「いきなり直接顔合わせしたいだなんて身勝手な事を。ましてや姉上が必死に時間を作ったのに約束を反古にするなんて……あいつはどれだけ姉上を馬鹿にしているのだ!!」

 

 ヘルフリートが詰るのもある意味では当然であった。グラティアは、ケッテラー伯爵家はこの十数年の間その血筋と御家騒動による弱体化から他の諸侯達から敬遠されていた。前当主は開明的過ぎる事で眉を顰められていたものの、一応は同じ門閥貴族として遇されてはいたが、その妻や子供達は違う。社交界への誘いは激減し、疎遠となる家もかなりの数に登った。

 

 そんな数少ない誘いでも参列者達はケッテラー伯爵家の妻子に対して不躾な視線を送る事も珍しくなかった。珍獣扱いならば、まだ好意的だ、貴族主義の強い家の中にはあからさまに蔑みの視線を向ける者も少なくない。

 

 ティルピッツ伯爵家やゴールドシュタイン公爵家との婚姻が確定した事で漸く少しずつ社交界への誘いが増えて、尚も蔑視する者も少なくないとは言え、以前程軽視されなくなったのは事実だった。皇帝から姉への配慮の言葉も効いた事だろう。漸く、漸く姉への風当たりが緩まって来たと思えたタイミングでその手紙は来た。

 

 婚約者が直接会いたい、その手紙の内容は簡潔に言い表すとそういう内容となる。しかし、だからと言って気軽に会える訳でもない。婚約者も、姉も、共に自由に使える時間は少なく、その少ない時間を合わせるのも至難の技であった。当然、会うといっても外で会う訳にも行かない。大貴族を出迎えるとなると相応の準備も必要だった。

 

 祖父はサロンや茶会の一部で姉を欠席させてでも婚約者の要望に答えるように姉に命じたのは、この一件でティルピッツ伯爵家側の機嫌を損ねたくなかったからだ。そうして姉は婚約者に望みの時間で出迎える事を手紙で伝え、その間の時間を幾つかの誘いを、それこそ誠心誠意謝罪して出席を断る事となった。

 

「そうやって姉上が作った時間を、事前の連絡無しに無為にするなんて……!!」

「落ち着いて、ヘルフリート。旦那様にも事情があるのですから」

「事情があれば許されるのですかっ!?仮に事情があったとして、姉上がこう何度も何度も辱しめられる必要なぞないでしょう!!?」

「ヘルフリート………」

「っ……!!」

 

 姉の悲しげな表情にヘルフリートはそれ以上の言葉を封じられる。

 

 ヘルフリートにとって、姉を取り巻く余りに身勝手な環境は、そして姉を虐げいたぶる男の存在は憎しみの対象でしかなかった。それ故に彼には姉が何故そこまであの放蕩貴族を庇いだてするのか理解出来なかった。

 

「……もう御時間です。貴方はお行きなさい。どの道私はこれから準備しても間に合いません。貴方まで遅れる訳には行きませんよ?」

 

 優しく、諭すようにそう声をかけるグラティア。歯を食い縛り、悔しそうにしつつも、しかし姉の言の通り彼もまた遅れる訳には行かなかった。それ故に葛藤しつつも彼は一礼する。するしかなかった。

 

「……分かりました姉上。失礼致します」

「はい、ヘルフリート。どうぞケッテラー伯爵家の嫡男として恥ずかしくないように。……余り緊張せずに楽しんで下さいね?」

 

 最初は厳しげに、しかし最後は優しそうにそうグラティアは弟に言った。その姿に、ヘルフリートは内心で一層無力感を感じつつも粛々とその場を去るしかなかった。

 

「……」

 

 弟が部屋を去るのを最後まで見届けると、ふと極自然にグラティアは窓辺に視線を向けた。ホテルの高層階からは広大なハイネセンポリスの摩天楼、そして多くのトレードマークを視認する事が出来る。

 

 第一区の最高評議会ビル、第四区にあるハイネセンポリス最大の高層ビル『リパブリック・エレメンタル・ビルディング』は七七七階建て全長一キロメートルを越える複合ビルであり、大企業オフィスや高級レストラン、有名ブランドのショップが軒を連ねている。目を凝らせば市街地を一望出来る郊外の山地に佇む全長一八八メートルのアーレ・ハイネセン像もうっすらと見る事が出来るだろう。港湾部に近い一〇区にあるハイネセン記念スタジアムでは今夜有名アイドルのコンサートが行われるために花火が打ち上げられ、虹色の照明の光が遠くからもはっきりと視認出来た。どれもハイネセンポリスの観光名所である。

 

「雪もそれなりに積もってますね。この分では道が少し渋滞するかも知れません」

 

 幾ら宇宙暦8世紀の効率化された交通インフラとは言え、この雪に大規模なイベントが重なっているとなれば渋滞も十分にあり得た。特に長年に渡る戦争による高度かつ熟練の専門技術者の慢性的不足は少しずつ、未だに表面化はしていないが同盟社会システムに罅を入れつつある。ともなれば油断は出来ない。

 

「地上車は暖房が効いているでしょうが……一応準備だけでもしておくに限りますね」

 

 呼び鈴を鳴らし、奉公人の女中達を呼び出し、万一に備え温かい飲み物と毛布を用意するようにグラティアは命じる。そして。それを終えると再度外の景色を見やり、小さく溜め息をこぼし、彼女は編み物を再開したのだった………。

 

 

 

 

 

 ハイネセンポリス・リムノス湾の人工島に建設されたハイネセン民間宇宙港に着陸したシャトル、そこから降り立った私を出迎えたのは冷えきった冬の風と深々と静かに降り注ぐ雪であった。遠征軍総司令部人事部に掛け合って紆余曲折の末にハイネセンポリスへ降り立つ事が出来たのは不良騎士との食事をして助言を受け取ってから三日が過ぎての事であった。

 

「若様、失礼致します」

 

 背後から直ぐ様ベアトが私の軍服の上に防寒着を被せる。

 

「あぁ、有り難う。……行こうか」

 

 カプチェランカに派遣された時とは違い日帰りの予定なのでアタッシュケース等の大柄の荷物は持ってきていなかった。『アレ』を除けば精々がハンドブラスターに財布、携帯端末程度のものだ。それは連れ添う従士二人も例外ではない。

 

「旅行シーズンでもないのに存外混み入っているな……」

 

 ハイネセン民間宇宙港のターミナルを進みながら私はぼやく。例年に比べてこの時期に比べて客が異様に多いように思えたのだった。いや、確かに冬季であろうともアルビカ氷河湖やマウント・レジャイナ等観光やレジャーに向いた場所はあるが……それを差し引いても若干混んでいるように思える。

 

「あー、大方お前のせいだな?」

 

 ふと、ターミナルの壁に貼られた広告を偶然見つけ、私は足を止めて苦々しく呟いた。私の視線の先には生意気にウインクするヘーゼル色の髪をした美少女がいた。広告の見出しは『超銀河級!!銀河の妖精ハイネセン記念スタジアムで三日連続コンサート!!』である。

 

 フレデリカ・グリーンヒル、愛称としてフリッカ、フレイ等とも呼ばれるこの少女は宇宙暦792年四月時点で一六歳、若さと美しさと話題と技術を兼ね備えた油の乗り切った大人気美少女アイドルである。

 

 気さくさと可愛らしさ、そして時たま見せるキレキレの毒舌は老若男女の心を掴み、歌唱力だけでなく、その記憶力や演技力からアニメの声優やCM・ドラマ・映画で子役やヒロイン、主役としても幅広く仕事をこなす。

 

 しかも父親は自由惑星同盟宇宙軍第四艦隊司令官ドワイト・グリーンヒル中将であり、惑星エル・ファシルでの脱出劇にも関わり、挙げ句には政府のサービスとは言え民間人でありながら自由戦士勲章を受けた数少ない受章者であった。銀河三大映画祭の内サジタリウス腕映画祭とフェザーン国際映画祭の双方で主演女優賞を受賞した事、ギャラクシー・レコード一七週連続一位を三度経験した点も見逃せない。

 

 止めは所属プロダクションであろう。銀河七大プロダクションにしてサジタリウス・アイドル事務所四天王の一つである大手老舗プロダクション『クワトロ・ワン・プロダクション』の筆頭アイドルの地位は全銀河のアイドル達の羨望の的だ。

 

 ……因みに年収では既に父親を遥かに凌駕しているので課税対策のために収入を分けているそうな。最早どちらが生活費を稼いでいるのか分からない位らしい。この前グリーンヒル中将が娘のコンサートをCDで見ながら遠い目で教えてくれた。娘に養われる父親って悲しいね、バナージ。

 

「いや、まさかこんな形で原作改変されるとか誰が想像するかよ……」

「……若様?何か仰りましたか?」

「んっ!?い、いや……大した事じゃないさ」

 

 独り言に反応してテレジア(此方も軍服姿にコートだった)が尋ねる。私は肩を竦めて誤魔化し、そのままターミナルを出て駐車場に停車する無人タクシーを捕まえる。

 

 身分証明書を兼ねるクレジットカードをかざせばセンサーで存在を探知した無人タクシーが扉を自動で開いてくれた。

 

 助手席にベアト、後部座席に私とテレジアが乗り込むと、それを確認したベアトが音声で行き先の指示を出す。次の瞬間には車載AIが安全確認とシートベルト着用の呼び掛け、目的地と人数を復唱して扉を閉め、若干雪が積もるアスファルトの道を発車した。

 

「そう言えばこのルートで降りるのは久し振りだな」

 

 人工島とメガロポリスが広がる大陸の間に架かる大橋を無人タクシーが走る中で私はふと、思い出してベアトに問いかけた。普段はスパルタ市の軍事宇宙港から降りる事が多いので、民間宇宙港を使うのは本当に久し振りの事であった。具体的には士官学校入学試験のために初めてハイネセンを訪れた時以来だ。

 

「随分と昔の事で御座いますね」

「十年以上前の事だからな。いやはや、時間の流れは早いものだね」

 

 そう言って、頬杖をしながら私は窓から外の風景を見やる。そして、目を細める。

 

「……まぁ、あの頃と変わらないのは喜ぶべきか悲しむべきか、悩む所ではあるがな」

 

 ハイネセンポリス程の大都会ともなれば常に建設作業や再開発が為されるものだ。そして宇宙暦8世紀の建築技術は前世より遥かに迅速に高層ビルの建設を行って見せる。十年もあればそれなりに市街地の姿が変貌していても可笑しくはない。しかしながら………。

 

(昔と変わらんな。いや、僅かに寂れている?人気も記憶にある頃よりは若干少ない気がしない事もない、か……)

 

 夜のオフィス街に灯る電灯、あるいは商業区のテナントやネオンの光を、もしくは歩道を歩く人々やハイウェイの車列を過去の記憶と比較して、私は僅かに焦燥感を抱く。

 

 流石にあからさまには衰退はしていないにしても、私が士官学校に入学してから今日までの間に同盟政府は段階的に、少しずつではあっても確実に増税し、軍事費を拡大してきた。そしてそれと連動するかのように同時に毎年の戦死者数も微増を続けて来た。

 

 イゼルローン要塞の存在が、補給の限界から限定されていた同盟・帝国間の軍事的対立を激化させてきたためであるが、それによる同盟経済の軋みは刻一刻と、確実に社会そのものを蝕みつつある。

 

 特にエル・ファシル陥落から発生した十数もの有人惑星の陥落と一億に迫る難民の発生が同盟経済に大打撃を与えた事は記憶に新しい。難民の発生は国境宙域の経済活動を停止させ、同盟政府の税収の減少と歳出の増大、航路の治安の不安定化とそれらの要因による株価下落、企業業績悪化による不景気を引き起こした。そして、同じような事は今後何度でも起こり得る。

 

(アルレスハイム星系まで陥落していたら洒落にならんかっただろうな……)

 

 単純計算で難民が倍近くまで増えたら同盟政府の財政予算的に洒落にならない。原作の帝国領遠征でも一億二億の占領地住民を養うので精一杯であった。国内なのを考慮してもどれだけの財源を確保出来た事か……。

 

(これでも『まだマシ』かも知れない訳か。笑えんな)

 

 私の存在が、あるいはそれ以外の理由でどれ程原作と状況が乖離しているのか正確には判断出来ない。ただ、少なくとも原作の状況よりはマシである可能性が高い。それだけは救いであった。

 

 ………無論、必死に改善しても全てひっくり返される可能性もあるのだがね?

 

「はぁ、まるで賽の河原の石積みだな……って、うん?」

 

 ふと次の瞬間、それが私の視界に映りこんだ。横断歩道を通り過ぎる刹那、突如市街の電灯が次々と消え、またたった今通り過ぎた横断歩道に設けられた信号機の色もまた、一瞬で全て消え去った事に気付く。そして………。

 

「……!!若様、失礼致します……!!」

「えっ!?」

 

 鳴り響くクラクション、急停止する無人タクシー、慣性の法則に従い前のめりになる私を誰かが伏せさせた。そして、次の瞬間には私は激しい衝撃に襲われていた。

 

 宇宙暦792年四月四日午後六時三五分、ハイネセンポリスの三割を占める市街地で大規模な停電が発生した。宇宙暦746年に発生した『アッシュビー暴動』による送電設備破壊による大規模停電以来、首都を襲った四六年ぶりの大停電であった。そしてそれは、慢性的に続く戦争の負担により自由惑星同盟の社会インフラが崩落し始めている事を表す最初のシグナルであった………。

 

 

 

 

 

「首都にて大規模停電?」

 

 その報告を受けたシドニー・シトレ大将は神妙な顔付きとなった。補佐官なるダスティ・アッテンボロー中尉は報告を続ける。

 

「治安機関と憲兵隊の調査の結果、幸い破壊工作の類いではないようです。どうやら老朽化した送電システムにガタが生じたのが原因だそうで。現在発電会社と警察、消防、首都防衛軍等が混乱の収拾を開始しております。二四時間以内に送電は再開されるかと。統合作戦本部及び国防事務総局からも遠征軍は本件に介入するな、との事です」

 

 事件性はなく、しかも大規模な遠征前である。下手に遠征部隊を動かして機密情報が漏れる事を政府と軍上層部は恐れているのであろう。被害自体は決して重度のものではなく、一日前後で復旧する程度のものである事も理由だろう。とは言え、遠征軍に一切の影響がないかと言えばそれも嘘ではある。

 

「被害地域とのテレビ電話が出来ない事で一万件余りの苦情が遠征軍より出ています。その他宅配等の遅配が六〇〇〇件余り、また被害地域に降りていた将校等四〇三名の内、一一八名との連絡が未だに取れていません」

 

 出征前の家族友人との最後の電話が出来ない事は兵士達の士気に大きな影響を与える。宅配便の大半は私的なものではあるが時期が時期だけにこれも問題だ。大半が少尉以上の将校であり、全軍の中では極々一部とは言え、遠征軍参加の軍人が出発までに帰還出来なければこれはこれで問題であった。

 

「ふむ、成る程。国防事務総局との会談が必要だな。……それにしても、首都でこれ程の大停電が起こるとはな」

 

 宇宙暦8世紀においたは地震や津波、火山活動といった自然災害はほぼ完全な予測が可能となっており、そもそも都市の大半はそう言った自然災害の起こりうる地域に設けられる事はない。故に此度のような事が起こりうるのは機械的・人的な理由による事故かテロや暴動、破壊工作によるもののどちらかである。そして、過去四六年に渡りその双方の面でここまでの規模の大停電が発生したのは初めての事だ。

 

「単純な事故ではありますが、そう楽観的に考えるのは早計ですね」

 

 アッテンボロー中尉は此度の大停電が単なる事故であり、同時にそれだけでない事も熟知していた。特にイゼルローン要塞建設とそれによる戦闘の激化が同盟の民間インフラ・人材投資に悪影響を与えている事を、士官学校において品行以外は優秀であった彼は見抜いていた。

 

 特に兵器がハイテク化の一途を辿る宇宙暦8世紀においては銃を撃つだけの無学な戦闘屋は殆んど役に立たない。末端の兵士に至るまでハイテク兵器運用のために大なり小なりの科学知識と機械工学的技術が求められる。事務方や後方勤務にしてもそれはそれで高度な専門知識が必要だ。自由惑星同盟軍は確かに人口比による動員兵力は歴史上の国軍に比べて格別に高い訳ではない。しかし、その動員する兵士達の教育面での質は同盟社会の上澄みであり、その喪失は単なる数以上のものである事は確実なのだ。

 

「数年前から経済開発・情報交通・人的資源委員会の三委員会が軍部に対して専門技術者の民間放出を要求していたからな。財政委員会も軍事費の削減を要求していた。軍部の上層部は今が国防の正念場であるとして要求を拒否してきたが」

 

 ここで言う国防の正念場とは、即ちイゼルローン要塞の攻略である事は疑いなかった。あの要塞さえ陥落すれば帝国国境の警備の負担は予算的にも人員的にも数分の一となろう。国境星系の『帝国リスク』も消え、投資と開発も活発になる筈だ。故に、此度の遠征は政府も軍部も何としても成功させねばならず、そのための六万隻という過去にない大動員が行われたのだ。

 

「逆に今回の遠征が失敗したら、財政的にも人的資源的にも一層苦境に立たされるという訳ですか」

「今回のような案件が今後も頻発しかねない訳だな。何とまぁ、責任重大な役目な事さ。さて、アッテンボロー中尉。国防事務総局との会談の調整を頼む。彼方もてんてこ舞いとは言え、我々も出立まで時間がない。無理にでも時間を作るように言っておいて欲しい」

「了解しました。いやはや、まさか最後の最後でこんな仕事が舞い込んで来るとは……だから宮仕えは嫌なのですがねぇ」

 

 肩を竦めてから、自称革命家中尉は上官に向け敬礼、そして執務室を退出する。副官の姿が見えなくなった後、シトレ大将は溜め息を吐く。その表情には緊張による徒労が伺えた。

 

「……そうだ。今回の遠征で勝たねばならん。一刻も早くこの戦争を終わらせねば」

 

 椅子に持たれかかり、腕を組ながら、天井をぼんやりと見つめながら宇宙艦隊司令長官は呟く。彼はその階級と社会的地位から自由惑星同盟という巨大国家が如何なる状態であるのかを良く良く理解していた。そして、それ故のその焦燥感と責任感もまた、ひとしおのものであった。

 

「そうでなければ、同盟は……」

 

 深く溜め息を吐き、紡がれる言葉は静かにオフィスに反響した。彼以外誰もいない室内で、その言葉に答える者はいなかった………。

 

 

 

 

 

「………っ!?」

 

 むち打ちのように全身に感じる鈍痛に私は目を覚ました。視界は揺れていて、何が起きているのか良く分からない。ただ、顔は視界を満たすエアバッグのような柔らかい物で包まれており、背中もまたクッションのような感触がしていた。

 

「わ、若様……ご無事で御座いますか……?」

「ベアトか……?あ、あぁ。少し身体が痛いが……別に血が流れていたり、骨が折れるなりなんなりは無さそうだって……ん?」

 

 私はここまで口にして、違和感に気付く。ベアトの声がするのは良い。問題はそれが妙に近くから聞こえて来る事だ。それこそ丁度頭の上辺りから………。

 

「あっ……」

 

 視界を上に移動させた次の瞬間、私は紅色の鮮やかな瞳と視線が合った。

 

「ベアト……?」

「は、はい……若様。ベアトで御座います。お、お怪我はございませんか……?」

 

 淡々とした口調で、しかし少しむず痒そうな表情で尋ねる従士。私は一瞬呆けた表情でそんな彼女を見続け、咄嗟に我に帰り肯定の返事をしようと首を振り、柔らかい隙間に顔がめり込む。

 

「ふぇっ……!?」

「んっ……わ、若様……それは少しくすぐったいですのでどうか………」

 

 若干顔を赤らめる従士が何か言おうとするが、その前に私は今自分が何処に顔を埋めているのかを理解する。同時に飛び上がるように立ち上がった。当然だ、幾ら肉体関係があり、その下着姿やそれ以上のものを見た事があるとはいえ、流石に相手の胸の谷間に顔が埋まっている状態で平然とする事は不可能だった。

 

「済まんベアト!!気付か……痛てぇ!!?」

 

 立ち上がった私はそのままタクシーの天井に頭をぶつけて後ろに倒れる。

 

「きゃっ……!?」

 

 次いで後部座席に倒れた私は誰かをクッション代わりにした事に気付く。いや、誰かでは無かろう。私がベアト以外に常に側に置く従士も、この無人タクシーに乗せた人物も残り一人しか存在しなかった。

 

「テレジアっ……!?済まないっ……!!うわっ……ちょっ……!!?」

 

 再度慌てるように跳び跳ねるように立ち上がり、私は思わず足を縺れさせた。そのまま私はテレジアを下敷きに倒れそうになり、ギリギリで腕で身体を支え、どうにかそれを阻止した。

 

「糞っ……そう言えば地上車の中だったか。何があったんだ?ベアト、テレジア、怪我はあるか……?」

「わ、私は身体を打ちましたが問題はありません……」

 

 背中を痛そうに擦りながらテレジアは答える。恐らく私を守るために覆い被さり、後部座席のクッションに叩きつけられたのだろう。

 

「っ……私も問題はありません。少し頭が切れましたが傷は深くはありません」

「そうか……いや、待て。それは普通に危険だからなっ!?」

 

 私は慌てて自分の首元のスカーフをほどいて血の流れるベアトの頭部を押さえる。出来れば消毒もしたい所ではあるが……。

 

「取り敢えず降りるぞ……!!」

 

 ひび割れた無人タクシーのフロントガラスを一瞥した後、シートベルトを外して私は従士達に降車を命じる。テレジアが先導で降りて周囲の安全確認した後にベアトの肩に手を回して、その頭の出血をスカーフで押さえながら降りる。

 

「こりゃあ、酷いな。クラッシュしてやがる」

 

 恐らくはAIが路上で急停止したのだろう。無人タクシーは十字交差点で正面から別の地上車とぶつかった状態で停車していた。周囲には似たように停車する地上車が何台かあり、私達の乗っていた無人タクシー同様に衝突事故を起こしているものもあった。乗員の多くは途方に暮れるか、言い争いをするか、何処かに携帯端末で連絡を入れようとしている者もいる。繋がらないようであるが。

 

 見たところ、軽傷者も何人かいるようだが幸い重傷者は確認出来なかった。腐っても宇宙暦8世紀の地上車は安全設計も前世とは比べ物にならないらしい。

 

「とは言えこれは……信号機だけじゃなくて市街地の照明も大半が消えているな」

 

 商業区画なのもあって少なくない市民が建物の内外で混乱しているのが良く見えた。

 

「この分だと……やはりか」

 

 携帯端末を取り出して見るが圏外。基地局が停電なのだろう。尤も、暫くすれば自家発電に切り替わるかも知れないが。

 

「若様、これは……」

「テロないし破壊工作、という線も否定は出来ないが……それにしては静か過ぎるな」

 

 送電の停止による都市部及び通信施設・交通設備等のインフラへの電力供給の断絶が今の状況であると思われる。災害ではないとして、起こり得るのは事故か事件かだが……ハイネセンのインフラを攻撃出来る程の組織等滅多にいないし、可能だとしても都市部の停電だけで済むとは思えない。

 

 寧ろ停電を陽動にキプリング街の国防委員会及び国防事務総局ビル、あるいは最高評議会ビルや同盟議会に大規模な襲撃をかけるだろう。今の所遠くから爆発音なり銃声なりは聞こえない。となればここはやや楽観的であるが単純な事故と思う方が良いだろう。

 

(原作でも似たように事はあったしな……)

 

 うろ覚えであるが、原作では魔術師が亜麻色髪の養子と停電の家で一晩明かしたり、交通機関のミスで校長殿やレベロ議員とヘリに乗り込む場面があったような気がする。

 

(寧ろ、これまで何十年もそのような事がなかった訳だからな。嫌な意味で原作に事態が近付いているという事か……)

 

 そう思うと余り愉快な事では無さそうだ。

 

「テレジア」

「承知しております。少々お待ち下さいませ」

 

 私が一〇〇ディナール札を渡せば直ぐに要望を理解したテレジアがそれを受け取り近場の薬局に向け小走りする。その間に私はベアトを安全な歩道まで歩かせて、すぐ近くの喫茶店から椅子を借り受けて座らせる。

 

「さてさて、どうするべきかね……」

 

 この規模の大停電となれば、警察や消防だけでなく、首都防衛軍辺りも出動していても可笑しくはない。一日以内に事態は収拾されるだろう。しかし………。

 

(遠征軍の出立もそう時間がないからなぁ)

 

 婚約者の滞在するホテルは直線距離で一四キロはあるだろう。交通網が麻痺しているために徒歩で行くしかあるまい。しかも猛吹雪とは言わずともに雪が降っている。行き帰り含めると遠征軍に戻る時間は厳しい。

 

「とは言え、またドタキャンも少しなぁ……」

 

 これまでのマウントに更に約束の無断キャンセルで相手の顔に泥を塗った身である。いくら理由があろうとも二度目は流石に厳しい。と言うよりもこれまでの所業を許してくれた婚約者様は聖女かな?

 

「若様、此方を……」

「あぁ、ご苦労。……ベアト、少し痛いが我慢してくれ」

 

 一〇〇ディナール札を押し付けてから薬局から籠ごと商品を持ってきたテレジアに私は謝意を伝え、ベアトの怪我の手当てを始める。血塗れのスカーフを傷口から離してミネラルウォーターをかける。次いで一旦水分を拭き取り消毒液をかけて、冷却スプレーで止血、ガーゼを傷口に当てて、包帯で巻いて固定する。後で遠征軍に戻ったら再度見てもらった方が良かろうが今はこれで十分だろう。

 

「ベアト、大丈夫か?傷は浅く見えるが……何処か異常はあるか?」

「はい。脳震盪でしょう、少し意識がふらつきますが……暫し時間を頂ければ問題御座いません」

 

 その返事に私は頷き、次いでテレジアにも念のため尋ねる。此方も問題ない事を伝えられる。幸いな事だ。

 

「分かった。無理はするなよ?違和感があれば直ぐに言ってくれ。後は……軍用回線は復旧したか」

 

 軍から配られている携帯端末から着信音が鳴り響く。内容を確認すれば送信者は統合作戦本部からのものであった。機密保持のために遠征軍の名称を使いたくないためであろう。代わりに統合作戦本部が命令する形になっているようだった。

 

 内容について言えば、此方も婉曲的な言い方で遠征軍の名称こそ使われていないが、読む者が読めばそれは実質今回の停電に遭遇した者を含む全てのハイネセン滞在中の遠征軍参加将校の可能な限り迅速な帰還を命令したものだった。

 

「参ったな、これは……」

 

 遠征軍総司令部からしてみれば当然と言えば当然の事ではあるのだが……私個人としては中々従いにくい命令であった。

 

 婚約者との約束もあるから直ぐに帰る訳には行かない。いや、それどころかこの事態である、彼女がどうしているのか心配でもあった。まぁ、流石に停電程度であれば家臣もいるので余程の事がなければ大丈夫であろうが……。

 

(そうは言っても、ベアト達を置いていくのもなぁ……)

 

 ちらり、と私は椅子に座るベアトと寄り添うテレジアを横目に見て考える。従士達、特に怪我しているベアトを置いてきぼりと言うのも愉快ではない。かといって連れていくのも宜しくない。怪我をしている女性に何キロも歩かせる訳にもいかなかった。

 

「ふむ………」

「若様、私の方は問題御座いません。どうぞお気になさらずに御願い致します」

 

 私の視線と、考え込む姿に気付いたのか、ベアトが答える。

 

「そうは言うがね……。ん、あれは………」

 

 腕を組み、ベアトの発言に難色を示す私は道路の向こう側からやってくる眩い光に気付く。道路を走る地上車の音が響き、目を凝らせば次第に近付くその姿が見えてくる。

 

「首都防衛軍の地上部隊か」

 

 ジープやトラック、雪上車、電源車、救急車等を中心とした迷彩柄に車体を包んだ一〇数台の地上車の列がライトを付けてやって来ていた。備え付けられた部隊章は首都防衛軍第一二歩兵師団所属の部隊である事を示していた。暗闇での行軍だからか市民に気付かれるよう夜間迷彩も都市型迷彩もしないグリーンの車体であり、戦闘も想定していないので戦車や戦闘装甲車等も引き連れていない。全て非装甲車両である。

 

 当然トラック等から降り立つ兵士達も精々ハンドブラスターを装備する位のもので、戦闘用ではなく災害派遣用の装備であった。懐中電灯ないし暗視装置で周囲を把握し、負傷者の治療や市民の誘導、星道を塞ぐ車両の撤去、その他交通整理や、救助作業、治安維持任務を実施し始める。

 

 初動にしては迅速ではあったと言えるが、残念ながら兵士達の現場での動きとしては余り誉められたものではなかった。兵士達自身、首都での大規模停電における対処を実際に対処した経験がないためであろう。只でさえ首都防衛軍は実質ハイネセン星系警備隊が名前を変えただけの存在であり、兵員の半分以上は最前線での対帝国戦闘を想定していない士気と練度の低いハイネセン市民からの徴用兵だ。ハイネセンポリス駐留部隊は比較的練度は高いとは言え大半は任務経験は要人や重要施設等の護衛と警備、軍事パレードへの参加、極々小規模なテロ事件の鎮圧程度しかない。大都市での災害派遣任務なぞ想定していなかった。

 

「すみません、現在停電中のようでして。この寒さですから市民の皆様には屋内か公共シェルターへの避難を御願いしたいのですが……」

 

 交通整理と市民誘導のための誘導棒を持った兵士が頭を低くして私達の元に駆け寄って来た。旧式の六六式鉄帽にこれまた旧式の迷彩服、その上に古ぼけた防寒コート四型を着こんだ若い兵士であった。恐らくは徴兵されて訓練期間を終えたハイネセン在住の新兵であろう。首元の階級章の星は彼が一等兵である事を示していた。

 

「いや、それならジープを一台用意してくれ。付き添いがこの騒ぎのせいで怪我をしてね。歩いて宇宙港に戻らせたくない」

 

 私は上着の下の軍服の内ポケットから軍内での所属を表す手帳を見せる。

 

「ほえ?……!?じ、准将閣下で御座いますかっ!?これは失礼を……!!」

 

 一瞬呆けた顔つきで手帳を見やり、次いでその内容を読み取り理解した兵士は慌てて敬礼をした。自由惑星同盟軍における少尉以上の士官の割合は一割も有りやしない。ましてや准将ともなれば大半の兵士達からしてみれば遠目で見る事はあれど、直接会話なぞまずあり得なかった。首都防衛軍の徴兵されたしたっぱが驚愕するのもやむ無しであろう。とは言え、私も時間がないので余り長話をしたくなかった。

 

「別に構わんよ。それよりジープを頼む」

「す、少しお待ち下さい!!今小隊長に連絡致しますので……!」

 

 白い息を吐きながら慌てて車列の方に走る一等兵。その姿を一瞥してから私はベアト達に命令する。

 

「余り時間はない。二人は先に借りたジープで宇宙に戻ってくれ」

「若様はどうなさるのでしょうか?」

 

 私の命令にテレジアが容赦なく疑問をぶつける。まぁ、そうだろうねぇ。

 

「私は……当初の予定があるからそれを終えてから合流する。御上がさっさと戻れと言っている以上、私的な理由でお前達まで遅刻させる訳には行かないからな」

 

 正直、この選択も既に命令違反なのだが……まぁ、ピクニックに出発するまでに合流出来ればセーフな筈だ。

 

「ですが……せめてもう一台ジープを用意させては?ここからホテルまで徒歩というのは……」

「先程と同様の理由で却下だな。もっとしたっぱの頃なら兎も角、准将だとジープだけ借りるって訳にも行かないからなぁ」

 

 確実に護衛と運転手もセットで来るだろう。宇宙港に行くだけなら良いが、寄り道するというのは兵士や機材を借り受けて動かす法的根拠としては少々厳しい。というかここ最近ハイネセンに疎開する者が増えたせいで結構亡命貴族の好き勝手をすっぱ抜かれているのに私が新しい叩きネタを提供する訳にはいかない。

 

 ……無論、それ以外にも打算的な理由もあるのだがね?

 

「しかし、それでは……やはり単独では危険では御座いませんか?そうでなくても出立に遅れますと……」

 

 尚も不安そうに渋るテレジアである。ベアトの方も口には出さないが心配そうに此方を見やる。そんな二人に対して私は安心させるように笑み浮かべた。

 

「いや、一応策は思いついたんだよ。思いついたんだが……」

 

 恐らく最低限満足行く結果となろうが、余り使いたくない手段なんだよなぁ。しかし………。

 

「背に腹はかえられない、か」

 

 私自身、葛藤を重ね、迷いながらも携帯端末のその連絡先を打ち、端末を耳に当てる。残念ながら他に上手い解決方法を私は知らなかった……。




原作フレデリカはコンピュータの又従姉並みの記憶力を持ち、魔術師の前で猫被る演技力持ち、顔については言わずもがなでノイエ版基準だと中の人が銀河の妖精

……そりゃあオールマイティな大人気アイドルにもなれますわ

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