女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

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第十三話 メイドと化した一夏ちゃん(1/2)

 遊園地に行った帰りに鈴に恋の手伝いをしろと言われてから時が進んで六月になった。俺は自宅にあるリビングのテーブルに向かいながら、ゴールデンウィーク明けにあった出来事をふと思い出していた。ゴールデンウィーク明けの学校で鈴と遭遇した際、すっかり伝えるのを忘れていた一夏が男に戻る可能性がある事を教えたら鈴に、

 

「なんでそういうことを真っ先にあたしに教えないのよ! この馬鹿!」

 

 と、鈴に怒りを孕んだ声を叩きつけられた挙句、物凄く素早い動きで腹パンされました。良い腹パンだ、だが無意味だな。鈴が腹パンしてきた際、近くに一夏も居た上に俺に腹パンをした光景をばっちり見ていたんで鈴が注意を喰らっていたからね。注意してた時の一夏の目が冗談抜きで千冬さんを彷彿とさせる鋭さであった所為で鈴はすっかり縮こまって俺に謝ってきたけどな。鈴のやつ、千冬さんが苦手みたいだから千冬さんみたいな視線をぶつけてきた一夏に恐怖心を抱いたのかもしれない。

 まあ、俺は別に鈴の腹パンはそこまで気にしてなかったけどね、鈴も一応加減してくれたのかそこまで痛くなかったから。てか、そもそも教えていなかった俺が悪いんだし。あ、例の恋の応援については断っておきました。お前にだけ肩入れしたら、他の一夏に惚れてる奴に俺が殺られると説明したら鈴も理解を示してくれました。まあ、こいつは話をすればちゃんと分かってくれる奴だからな。その点は心配してませんでした。

 それよりも俺は一夏の態度の方が気になるんだよな。以前なら何やってるんだよと鈴と三人して笑いあってたんだがなあ。鈴も最近の一夏に違和感があったみたいで俺に休み時間とかにこっそりと話しかけてきたし。幼馴染兼友達である鈴は、一夏とかにはできない相談とか話は俺に持ち込んでくるのでその時はあまり深くは考えてなかったんだが、

 

「ねえ、最近の夏菜子ってどこか変じゃない?」

「変ってどこら辺が?」

 

 俺の言葉に鈴が頭を悩ませるように口を開いた。

 

「うーん。なんかさ、和行があたし以外の女の子と話している時あるじゃない? そういう時に限って凄い目付きで和行と話している女の子を見てるし」

「……お前も気付いていたか」

「やっぱりあんたも気付いていたの?」

 

 俺は鈴の問いに首を縦に振った。やはり鈴も気付いていたかというどこか安心感に近いものを俺は覚えてしまう。鈴が言うには弾や数馬も気付いているとのこと。幼馴染と悪友たちはちゃんと一夏の事を見ているんだな。鈴が「まさか、一夏に限ってそんなこと……」とか呟いていたが何の事を指して鈴はあんなこと呟いたんだろうか。

 まあ、それは横に置いておくとしてだ。一夏の様子がおかしいってことは俺たちのグループ全員が知ってるっていうことになるな。俺は最初、一夏の視線は気のせいだと思うようにしていたのだが流石にこう何回も嫉妬を混ぜ込んだ視線を受けると嫌でも気付いてしまう。一夏のやつ、本当にどうしたんだろうか。

 それはまた考えるとしてだ。一つ喜ばしいことがあるんだけど……いや、その前に学校でのことをもう一つだけ話しておこうか。

 近隣の学校と同様のタイミングでうちの学校でも衣替えが行われ、男女共々夏服に変わったのは良いのですが――いや、ちっとも良くないわ。良くない理由としては一夏の夏服だ。女の子になる前の一夏なら別に夏服でもキマってんなこいつくらいの感想しか湧かなかったんだけどさ、女の子の一夏だと物凄くヤバいことになってるんですよ。

 何がヤバいかって? そりゃあその、あの……女性特有のメロンが、ですよ。一夏のメロンというかおっぱいはどう見ても中学生とは思えないサイズなんだよ。一夏は着痩せするタイプなのか、それとも収縮色である紺が基調の冬服のお蔭なのか学校では胸があまり目立たなかったんだよ。

 ところが、白を基調とした夏服の所為で自己主張が激しいことになっててさ……一夏に惚れていない奴等の視線までもが一夏の胸に向けられてるんだよ。

 くそったれ! 一夏をそういう目で見ていいのは俺だけだ! ……じゃなかった。お前らのその視線とか全部一夏にバレてんぞ、今すぐやめろ。先日、野郎共と一部の淑女の視線に困っている一夏が俺のところに相談しにきたんだよ。自重しろお前ら。

 

「ねえ、和行。なんか皆が私の胸を見ているような気がするんだけど……」

「夏菜子。そういう時は見ている奴の方を見てやれ、大抵の奴は視線を逸らすから」

 

 そうアドバイスするのが精一杯だった。俺だってじっくり見たいけど、表面上はそういうのに興味がないのを装っている手前出来るわけもない。もし、なんらかのボロが出て一夏に俺がそういう目で見ているってことを知ったら多分俺に対して冷たくなるかもしれないので絶対にする訳がない。一夏に冷たくされたら多分俺この世から消える。それも一瞬で塵も残さずに。

 話はちょっと変わるが、以前の母さんとの面会で言った通り一夏への告白はまだしていないし、まだする気もない。確かに一夏のことは好きだけど、ただ単に俺って一夏の外見が好きなだけじゃないのかって疑心暗鬼になってるんだよ。

 まあ、そりゃあ一夏の容姿も好きだよ? 可愛いしさあ。でもその事を考えていると、俺って一夏の内面を良く見てないんじゃないのかって思うようになっててさ……なんだ俺、これじゃただの面倒くさい奴じゃねえか。あいつの内面なんてこれ以上知る必要もないくらい知ってるのに。うーん、せめて一夏が俺のことをどう思ってるのかさえ判ればなあ。まあ、そんなの判ったら苦労しないっていうね。

 

「はあ……」

「なに辛気臭い顔してるのよ。もっとにこやかな顔してなさいよ」

「別にどんな顔してたっていいでしょ、母さん」

 

 思考の世界にダイブしていた俺だったが、母さんの言葉によって引き戻されてしまった。母さんが俺の目線の先にいるけどここは病室ではなく自宅だ。ちなみに一夏は休日を利用して自分の家の掃除をするっていま頑張ってます。あとでアレだ。最近うちの学校の女子達の間で美味いと評判になってるパフェでもご馳走してやろう。めっちゃ高いらしいけど一夏の為なら問題ない。

 先程言っていた喜ばしい事とは母さんのことだ。母さんが退院したんだ。以前面会に行ってからその後も何回か一夏を連れて行っていた。その度に理屈は分からないけど母さんが元気になっていきそれで今はこの自宅に戻ってきて、親子二人の生活を再開しているわけだ。まあ元々七月までには退院できるって言われてたけどさ、なんか当初よりも元気がありすぎて逆に困惑する羽目になっている。そんな母さんは本日のデザートにする為のケーキをスポンジから作り始め、ワンホール分のケーキを作ろうとしている。もうすぐ完成するそうだ。俺は携帯ゲーム機でゲームをしつつ、コーラを飲みながら母さんが作業しているところを見ている。

 母さんが帰ってきてからは家事などは任せっぱなしとなっている。俺がやろうとすると「いいから私にやらせなさい」と五月蠅いのだ。最初はそれでも抵抗して俺もやろうとしたのだが、母さんに根負けして今はこの状況になっている。幾ら元気になったと言ってもまだ仕事に復帰できるレベルではないらしいので、母さんはこうやって家事をして気分を落ち着けているみたいだ。

 そういえば、千冬さんばかり職業不定みたいな感じで言ってたことがあったけど、俺も母さんが何の仕事をしてるか知らないんだよね。前に聞いた時は研究職とか言ってた気がする。まあ、母さんの職業はある程度予想付いているけど。千冬さんがたまに帰ってきたときに母さんとIS関連の話題で妙に噛み合った会話をしていたから、研究職ってそういうことなんだろう。それでぶっ倒れたっていうのが未だに理解できないけど。もしかしてぶっ倒れたっていうの嘘なんじゃ……。そういえば、「なんか爆発に巻き込まれた。てへぺろ」とか言ってた気が……。いや、これ以上その事を考えても良い事ないな、うん。爆発に巻き込まれたのが本当なら母さんの耐久力って人外じゃね? とか言いたいことが色々とあったがやめておこう。

 そんな感じで考えを纏めていると、俺が勉強の息抜きにやっていたゲームのデータをセーブをし終えたタイミングで母さんが話しかけてきた。

 

「ねえ和行? 最近の一夏ちゃんはどう?」

「それ、聞きます……?」

「うん聞いちゃう」

 

 作業の腕は止めずにこちらに声を投げかけてくる母さん。俺はコーラを啜りつつ少しだけ頭を悩ませながら、最近の一夏の事を母さんに話すことにした。一夏が女子のグループに持前のコミュ力ですんなりと溶け込んだ事とか、一夏というか夏菜子の事を紹介しろと言ってくる男子が多くて鬱陶しかった事とかをだ。

 俺は最初、元は男である一夏が女子のグループに溶け込めるのかという不安を抱いていた。あいつ外見が物凄く良いし、弾や数馬と俺を除いたクラスの男子からも結構ちやほやとかされてるからな。陰口を言われたりしないかと俺と弾と数馬と鈴の四人は一夏の心配していたのだがそれは杞憂に終わった。

 俺よりも断然高いコミュ力により女子達との仲は良好も良好。それどころか、女子の中には一夏というか夏菜子の事をお姉さまと慕い始めたり、恋をするのが出てくる始末だ。流石だ一夏。女になってもきっちり男の時と大差ないことをやってのけてるぜ。なんでお前は女の子になってまで女の子を落とすのか。俺、少し怖くなってきたぞ。あと心折れそう。

 

「モテモテね。一夏ちゃん」

「一夏に恋をしている身としてはかなり複雑だわ」

「頑張りなさい。一夏ちゃんをなんとしても手に入れるのよ」

「なんで母さんそんなに乗り気なの?」

 

 軽くネガティブな感情が湧きだしてきたので話題を切り替えていくことにした。夏菜子の事を紹介しろと奴等が居たのだが、俺は紹介する事をなんてせずに全部突っぱねていた。だってあいつら、夏菜子に告白する気マンマンだったし。惚れている女を他の男に紹介するとか寝取られ属性持ちじゃない限りやらないだろ。俺は寝取られが嫌いなんで。イライラしながらも、その手の手合いを追い払うの繰り返しているうちに夏菜子に告白した奴の末路が段々と学校中に広まるようになってきたので俺に取り入ろうとする輩とかは減ってきている。まあ、俺に取り入ったところで夏菜子というか一夏に告白したら玉砕するのが目に見えているのでやらないってなってるだけだと思うけどね。

 

「くっくっく……ざまあねえな」

「……たまにだけど、あなたの将来が心配になることがあるわ」

 

 母さんが何か言っているけど何の事かな? 俺は極めて正常ですよ。まあ、そんなこんなでいつもと大差ない感じだったよ。ある一点を除けば。

 やはりというか、一夏の態度が気になって仕方ない。先生に頼まれた要件とかを話している時も構わずにそういった眼で見てくるんで正直困ってるんだよね。この前遊園地に行った時は鈴以外の女の子なんて近くにいなかったから前と同じ一夏だったけどさ。いや、駅で鈴と話し合ってから合流した一夏はおかしかったか。笑顔がぎこちないっていうかなんていうかさ。

 

「一夏がさ、俺が鈴以外女の子と話していると睨んでくることが多いんだけど……あれって嫉妬なのかな?」

「多分ね。で、一夏ちゃんはその事に……」

「気付くわけないでしょ」

「うん、知ってたわ」

 

 俺と母さんの会話が物凄くスピーディーに進んでいく。流石親子というべきかなのかよくわからないが会話しやすいのは事実だし。で、話の続きだけど。最近やたらと俺と居ようとすることもあるのよ。他の女の子が俺に近づかないようにしているように見えるというかさ。一夏と居られる時間が増えるは良いけどさ、なんかこう……ね?

 

「嬉しいくせにそんなこと言うの?」

「あの、心読まな――いやもういいです」

 

 もう母さんがこっちの心を読んでくるのを注意するのは諦めました。一々指摘してたら疲れるっていうか現在進行形で疲れてるし。

 

「しっかし、なんで一夏はあんな嫉妬したような視線を向けてくるんだ?」

「……和行に一夏ちゃんの鈍感が移ったのかしら」

 

 なんか母さんが俺の言葉を聞いた途端に物凄く失礼な言葉を吐いていた。なんだと、俺の何処が鈍感なんだよ。母さん、こっち向いて説明してよ。ねえ、ちょっと。説明しなさいよ貴女。

 俺の言葉を聞いていないふりをしている母さんは唐突に別の話題を吹っかけてきた。おいこら母さん、ちゃんと俺の話を聞きなさいってば。

 

「そうだ、今日は一夏ちゃんも呼んでお夕飯にしましょうか?」

「俺は別に問題ないけどさ。その様子だとまた一夏と二人きりで会話するんでしょ? ご飯食べた後にでも」

「そうね。一夏ちゃんはあなたが居ると多分何も話さないと思うから」

 

 どういう会話が行われることになるのかは気になるが、女の会話を立ち聞きしたりする趣味はないので二人の話し合いが始まったら大人しく二階に行くとしよう。

 母さんとのそんな会話を終わってから時間が経ち、夕飯時になっていた。母さんが帰ってきてからはあまり一夏の家で食べることも少なくなったのだが、たまに出かけた帰りに母さんが外で食べてくることがあったりすることがちょくちょくあったんでそういう時は一夏の家で飯を食べてます。俺が夕飯を食べに行くと一夏がめっちゃ喜ぶんでその顔を見たいっていうのもあるけどね。

 でだ、さっき一夏の家に行って今日の夕飯の事を直接教えたらなんか妙に距離感が近くて良い匂いがしました。なんか俺、結構一夏の匂いの事を心の中で話していることが多いけどもしかして俺って匂いフェチ? まあ、別にいいんだけどね。俺がこういう感想抱くのって一夏に対してだけだし。

 織斑家に居た一夏を連れて、一緒に自分の家に帰ってきた俺は母さんが料理の盛り付けをしている間、母さんにテーブルで待っているように言われた。んだけど、何を思ったのか母さんは一夏を俺の隣に座らせてきたのだ。あの、すいません……あなた絶対解ってやってますよね母さん。俺の隣に意図的に一夏を座らせるとかそうとしか思えん。

 

「すまないな一夏。最近お前と夕飯食べる機会が減って」

「ううん、気にしてないから大丈夫だよ」

 

 一夏はそう言うが心なしか残念そうな表情を浮かべているように見えた。俺としても一夏と食べる機会が減って少し寂しいんだよな。かと言って母さんが作ってくれた夕飯をほっぽって、一夏の家に行くのも飯を作ってくれた母さんに申し訳ないし。はあ、いっそ一夏と一緒暮らせればなあ……。

 って、何言ってんだよ俺。確かに一夏とは一緒になれるならなりたいけど、千冬さんとかへの説明のあれこれとか母さんへの負担やら、その他のあれこれを考えるとそんなの夢物語な気がしてきた。

 

「私は一夏ちゃんがうちで暮らしても問題ないけどね。娘が増えるようなものだし。千冬ちゃんへの許可とかは取っておいた方がいいだろうけど。それか和行が一夏ちゃんの家で過ごすとかね」

 

 ……俺はもう何も言わんぞ。頭痛くなってきた。もうやだこの母さん、マジでエスパーというかサイコメトリーとかテレパスの超能力でも持ってるんじゃないの?

 

「え、え、八千代さんは何を言ってるの?」

「……お前と俺を一つ屋根の下で暮らさせようと画策してるだけだよ」

 

 俺の呟きが良くわからなかったのか、一夏は和行は何を言っているんだとでも言いたげな顔をしている。可愛い。

 それから少ししてから俺たちは母さんの手料理を食べることになった。今日のメニューはサラダと鶏の照り焼きだ。分かってはいたが母さんの料理は美味い。だが一夏の料理を食べ続けた所為か一夏の料理の方が美味しく感じてしまう。すまんな母さん、やはり俺の胃袋は一夏に掴まれてしまっているみたいだよ。




なんか足んねぇよなぁ(主にテンポの良さ)
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