女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

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第十四話 メイドと化した一夏ちゃん(2/2)

 和行の家で夕飯を頂いてから食後のケーキを食べつつお茶を飲んでいた時だった。やはり八千代さんの作るご飯とデザートは美味いなと思っていると先にケーキを食べ終わった和行がいきなり立ち上がり、二階へと昇って行ってしまった。ん? どうしたんだ? 八千代さんは溜息を吐いているし。

 

「やっぱりあの子もあの人と同じね。自然な感じで出て行けばいいのに」

「えっと……」

「ごめんね、一夏ちゃん。食後にね一夏ちゃんと話がしたいって私が言ってたからね、和行には席を外してもらったの」

 

 は、はあ……。だから和行は二階に行ったのか。急に立たれたから俺の傍に居るのが嫌なのかと思った。

 

「別に和行は一夏ちゃんのことを嫌ってないわよ。むしろ――これを言ったら和行に怒られるわね」

 

 八千代さんがなんか一人で納得し始めているが、俺にはちんぷんかんぷんだった。何だかよくわからない。あと俺の心を読まないでください。

 

「ねえ一夏ちゃん」

「なんですか?」

「一夏ちゃんが最近悩んでるって和行に聞いたんだけど本当?」

「……ええ」

 

 俺は否定する事なく頷いた。悩んでいる事は事実だからな。

 

「なんだか最近、和行が鈴以外の女の子と話しているのを見ているとムカムカしてくるようになって」

「ムカムカね」

「その所為で和行と話している子を睨んじゃうし。私、どうしちゃったんでしょう」

「……大丈夫よ、一夏ちゃん」

 

 八千代さんは俺の隣に来ると俺の手に自分の手を重ねてきた。――暖かい。俺は母親の手の温もりなんて知らないけど、俺の母親がいたらこんな感じなんだろうか。

 

「その気持ちはね、悪いものじゃないから」

「え、でも……私、ついつい睨んでしまって」

「うん。確かにそれはあまり良いとは言えないけど、それは仕方ないことなのよ」

 

 う、うーん……そうなのか? でもなあ、ただ話しているだけの相手を睨み付けるなんて俺は普通じゃないと思うんだけど。あと俺が和行のことをずっと考えていることも。あいつの事を考えてない時がないんじゃないかっていうくらいに頭から離れない。和行のことを考える度に胸が締め付けられるような感覚がするしさ。そのくせあいつと二人きりで居る時は安心するんだよな。

 

「これならあと一押しね」

「え?」

「なんでもないわ。その気持ちの正体は自分で気付けないと駄目よ」

「自分で……ですか?」

「ええ。じゃないと一夏ちゃんの為にならないもの」

 

 ……自分で気付かないと駄目、か。この調子だと八千代さんに聞いても絶対教えてくれないだろうな。なんなんだろうか、俺のこの感情は。俺が女の子になったのと何か関係があるんだろうか。

 小さく息を吐いてから八千代さんの方を見てみると、ここからが本番と言わんばかりの顔で俺を見ていた。え、どうしたんですか八千代さん。そんなにニヤニヤして。

 

「ねえ、一夏ちゃん。私からお願いがあるんだけど聞かない?」

 

 こっちの顔を見ながら唐突にそう口にした八千代さんの言葉に首を傾げながらも俺は話を聞くことにした。なんだろ……何処となく嫌な予感がする。

 

「お願いってなんですか?」

「和行にご奉仕してほしいのよ。私と一緒に」

「……はい?」

 

 突拍子もない話と俺は思わず淡白な疑問符を口に出してしまう。なんなんだ、いきなり。八千代さんと一緒に和行にご奉仕ってどういうことなんですか……。とりあえず内容は気になるのでそれ以上余計な口を挟まずに八千代さんに続きを話すように促す。

 

「最近和行がね、私に構ってくれないのよ。勉強しなきゃと言ってね」

「はあ」

「だからね、一夏ちゃんに和行が私達に構うように仕向けるのを手伝ってほしいって思ってね」

 

 ……ごめんなさい。何を言ってるのか全然分からない。俺には八千代さんが言っている内容が一字一句理解できなかった。あの、八千代さん。それってただ単に和行が勉強ばかりして構ってくれないから腹いせとして和行にちょっかいを掛けようってことですよね。俺にはそういう風にしか聞こえなかったんですけど。え、間違いじゃないんですか? 何考えてるんですかあなた……。

 というか、すっかり忘れてた。今の八千代さんの発言を聞くまで。八千代さんが和行の事を目に入れても痛くないくらいに愛している事を。和行曰く構ってちゃんであるとも。

 前に小学六年生辺りまで八千代さんが一人で風呂に入っている和行の所に突撃して一緒に風呂に入ろうとしていたりしてたって。浴室突入の件は和行が「もし次やったら母さんと二度と口を利かない」と言ってやめさせたらしいが。あと八千代さんに構わずにゲームやってる時に絡んで来たりもしたらしく流石にその時は本気で怒ったそうだけど。あいつ、ゲームやってるの邪魔されると怒るからなあ。こればっかりは八千代さんが悪い。最近は怒らないように努力はしているみたいだけどさ。

 

「あの、それで私に何をしろと言うんですか?」

「そうね。私と一夏ちゃんがメイド服を着て、和行をご主人様と呼ぶの」

「え?」

「そうすれば和行も私に構ってくれると思うの。あの子メイド服大好きだし」

「あの」

 

 ……なんだ、この暴論に暴論を重ねたような酷い話は。なんか八千代さんの目が完全に正気を失っている気がするんだが。え、ていうかメイド服を着て和行をご主人様って呼ばなきゃいけないのか? いや、あいつがメイド服を好きなのは知ってるけど、俺なんかがメイド服を着ていいのか? 喜ぶんだろうか。

 

「お願い一夏ちゃん。私のためと思って、ね?」

 

 八千代さんがイタズラっぽい笑みで俺にそう告げてきた。俺はその言葉を聞いた瞬間、断り切れないと判断した俺は目を伏せながら八千代さんに返事をする。

 

「はあ、わかりましたよ……」

「一夏ちゃんが協力してくれるなら百人力ね」

 

 なんか上手く八千代さんに乗せられた気がする。ついでに女性物の服を着ることに抵抗がなくなってきている自分が軽く怖くなってきた。……それで、メイド服って具体的にはどんなのを着るんですか? 和行はヴィクトリアンメイドとかクラシカルメイドだか和服メイド以外はメイド服とは認めないって前に言ってたぞ。

 そんなことを考えているといつの間にか席を立っていた八千代さんが手招きをしていたので、八千代さんの後に付いていくことにした。八千代さんがある部屋の前で急に止まると、部屋のドアを開けて入っていく。ここって確か八千代さんの部屋じゃなかったか。なんでこんなところに入る必要があるんだと頭を働かせつつ、俺は部屋の中に入っていく。

 

「はい。という訳で、一夏ちゃんにはこれを着て和行の世話をして貰います」

「え!? これ、ですか?」

「サイズはぴったりだからそこらへんは心配しないでね」

 

 予め用意してあったかのように鎮座しているそれの名前を俺は知っていた。何故八千代さんがこんなものを持っているのかとか、なんで俺のサイズを知っているのかとか色々とツッコみたい気持ちになったが、俺の口から飛び出した言葉は別のものだった。

 

「これ、和行が好きなやつだ」

 

 そう。目の前にあったのは和行が好きなあのメイド服だったのだから。

 

◇◇◇

 

 母さんが一夏との話が終わったから降りて来いって言われたんで一階に向かっている。あと見せたい物があるとも言っていたな。なんか嫌な予感的なものがぷんぷんするんだけど、行かないと母さんがぐずるからなあ。構ってちゃんめ。一夏の可愛い顔を拝むのがメインだから母さんのことはサブにしよう、そうしよう。リビングの扉前まで来た俺は一応ドアを数回ノックして入っていいかの確認を取る。

 

「母さん、入ってもいい?」

「いいわよ~」

「ちょ! や、八千代さん!? まだ心の準備が!」

 

 なんか一夏が慌てているようだけど、俺は一夏の声を聴く前にドアノブを捻って扉を開けてしまっていた。

 

「――え?」

 

 俺の視線の先に天使が居た。全てを光で包み込む慈愛の天使が。体の前方を覆う白色のエプロン。一夏の頭部に着けられたメイドキャップ。脛まで降ろされている黒色のスカート。シンプルながら実に艶やかなそれは俺の本能を呼び覚ますかのような完璧なデザインであった。

 

「一夏、お前……それって」

「……メイド服です。ご、ご主人様」

 

 そう、メイド服だった。しかも俺が大好きなクラシカルメイド服。それをあの一夏が着用しているという奇跡にも等しい光景がそこにはあった。俺は一夏の方から一旦視線を外して母さんの方を見る。母さんの顔から推察するに、あの素晴らしいメイド服を用意したのは母さんだろう。

 てか待って。なんで母さんもメイド服着てるの? しかもヴィクトリアンメイド服だし。なんか無駄に似合ってるし。あなた本当に俺の母親なんですか? 時々不安になるよ。この人本当に俺の母親なのかって。いや、いい。今は考えないようにしよう。いつの間に用意したのだとか、何故一夏に着させたのかとかこの際どうでもいい。

 

「母さん」

「何でしょうか、ご主人様」

 

 俺が顔を伏せながらメイド服姿の母さんに近づいている所為か、一夏の奴は俺が一夏の事を助けようとしていると考えているに違いない。今の装いから解放してくれると。ちらっと見えた一夏の表情からそう判断する。すまんな一夏。今の俺は母さんの味方なんだ。

 

「俺が死んだら、俺の口座の金を全部一夏の口座に振り込んでおいて」

 

 俺はそう呟きながら、少しの間気絶したのだった。赤面している一夏ちゃんのクラシカルメイド服姿が尊かったんだ、仕方ないね。母さんは少し自重してくれ、頼むから。でもグッチョブ。

 その後、意識を取り戻した俺は楚々とした振る舞いを見せる一夏に手厚い奉仕を受けていた。リビングの椅子に座らされた俺の前には一夏が用意した紅茶と母さんが買い置きしていたクッキーが置かれている。更には一夏が俺の肩をマッサージしてくれているという状況だ。あ、一夏のマッサージ気持ちいい。あの千冬さんが影でベタ褒めしているだけある。褒めるなら直接褒めてあげればいいのにツンデレなんですか?

 ん? なんだ一夏。あ、マッサージ終わった? ありがとね。

 

「美味い」

 

 うん、一夏の淹れてくれた紅茶は美味い。イギリスだかの知り合いから母さんが貰った茶葉を使ったらしいのだが、一夏は紅茶の淹れ方も上手だな。クッキーはまあ、これ美味い店のやつだから美味くて当然だよな、うん。

 あの……一夏ちゃん? なんで立ったままクッキーを手に取って俺の方へと向けてくるの? あれ、物凄いデジャブ。具体的に言うと前に風邪を引いたときに一夏に雑炊を作ってもらったあの時と同じだ。

 

「は、はい。クッキーあーん」

「へ?」

「あーん」

 

 ああ、これ大人しくあーんされないといけないパターンだ。母さんが同じ部屋に居るのに。せめて前みたいに二人っきりなら別に問題ないんだが……。仕方ない。腹を括ろう。

 

「ご、ご主人様。美味しいですか?」

「う、うん」

 

 大人しくあーんされました。味なんて分かんねえよ馬鹿。一夏のバカ。男心を乱してくるなよ可愛すぎるから。母さんのにやけ顔を見るに、母さんがやれって言ったなこれ。くっそめっちゃ恥ずかしい。一夏も恥ずかしいならやった後に顔赤くするんじゃねえよもう。

 ……いかんいかん。えっと、なんだこの状況。ってか、なんで一夏は俺のことをご主人様って呼んだの? そういうプレイなのか。それとも母さんがそう言えば俺が喜ぶとでも吹き込んだのだろうか。うん、物凄く嬉しいんだ。今すぐ一夏に抱き付きたいくらいには。母さんのご主人様呼びはどうでもいい。だってあっちは完全に俺をからかうために呼んでるの丸わかりだもの。でもね、聞くことはちゃんと聞いておかないとさ。ソーサーに紅茶が入ったカップを置きながら俺は尋ねる。

 

「で、一夏」

「な、なんですか。ご主人様」

「なんで俺のことをご主人様って呼ぶの?」

「それは……八千代さんがそう言えばご主人様が喜ぶって」

 

 うん。一夏にご主人様って呼ばれるのは嬉しいけど、律儀にご主人様って言わなくてもいいからね。母さんの遊びに付き合う必要はないぞ。一夏も「七時半に空手の稽古があるの! 付き合えないわ」って言って断ればよかったのに。あ、そうなったら母さんに「今日は休め」って言われて結局母さんの遊びに付き合う羽目になるな。駄目だ、また混乱しているのかネタ的な発言しかできなくなってきた。よし、一夏を弄って精神を保とう。

 

「一夏。もう一回ご主人様って呼んで」

「ご、ご主人様」

「もう一回」

「ご主人様……」

「もう一回」

「ご、ご主人様……」

 

 ……ヤバい。超可愛い。茹蛸みたいに赤くなってる一夏可愛い。結婚して。今すぐ俺と結婚して。今の日本の法律じゃ男は十八歳未満、女は十六歳未満じゃ結婚できないとか知ったことではない。結婚してください。子供は二人くらいがいいです。……すいません、調子に乗りました。思考をまともな方向に切り替えておきます。

 ところで母さんがさっきから部屋の隅でにやにやしてるだが。まさかこのためだけに一夏を今日の夕飯に呼んだって事はないよな? でも母さんなら一夏との話を終えてからやりそうだし、一応話を聞いてからこういうことをしようと考えたのかな。というか、俺にべったりな筈の母さんが俺と一夏をくっつけさせようとしていることにはちょっと違和感があるんだよなあ。なに考えてるんだろ? まあいいや、今は母さんのことは忘れよう。

 

「それにしても本当に似合ってるな。一夏のメイド服姿」

「そ、そうかな?」

 

 俺に褒められたことがそんなに照れたのか俺から顔をずらした。赤くなっている一夏ホント大好き。元男なのが信じられないくらいに可愛い。思わずエプロンとメイド服を押し上げている一夏の自己主張が激しい双丘に視線が向きそうになるが、頑張ってそちらには目を向けないようにしながら俺は考えを巡らせる。

 容姿端麗で家事は上手だし、気遣いができて面倒見も良いとか何度考えても完璧だわ。あれ? そういえば男の時でも恋愛関係を除けば大体こんな感じだったような。あと変なとこで負けず嫌いで、変なとこで抜けているのさえなければ。うん、これは今関係ないな。ていうか、女の子になるだけでここまでの破壊力になるとかTS恐ろしい……。

 

「ところで母さんはなんでメイド服持ってたの?」

「これ? 昔お父さんの為に買ったやつだったんけどね、お父さんも亡くなったから着るのもご無沙汰で。あ、一夏ちゃんのは新しく買ったやつだから安心してね」

「あ、うん。もういいです」

 

 これ以上母さんの話を聞きたくなかった俺は強制的に会話を終わらせる。おいこら親父。あんたか、あんたが母さんがメイド服を持ってた原因か。てか安心ってなんだよ。意味わからんぞ母さん。

 

「一夏。お前は立ってないで座れよ、ほら」

「あ、うん。わかった」

「じゃあ私も」

「申し訳ないが母さんはNG」

 

 一夏を座らせようとしたのに合わせて母さんも座ろうとしていたがやめさせた。一夏は休んでもいいけど母さんは駄目だ。母さんが不服そうな顔しているが、かまってちゃんに一夏を巻き込んだ罰だと思ってくれ。全くもう。

 それでなんだが、一夏のメイド服姿は目の保養になりすぎている件について。いつまでも見ていたいが、一夏も慣れない服じゃ辛いだろうからそろそろ脱いでも良いと思う。

 

「一夏。そろそろ着替えてもいいんだぞ」

「ううん、もう少しこのままでいるよ」

 

 ……なん、だと? ごめん、満面の笑みでメイド服のままで居ると一夏に言われて心が揺れ動かない人間がいるだろうか。いや、いない。やばい、なんなんだ、この尊さと可愛さと清廉さが滲み出たメイドは。専属メイドとしてうちで過ごして貰いたい。

 ……いやいやいや、落ち着け俺。なんで一夏はメイド服を脱がないんだ。それがさっきから引っかかってるんだけど。

 

「なんで着替えないの?」

「……和行はこれ嫌なの?」

 

 駄目だ。もう無理。可愛すぎる。なんでそんなモジモジとした仕草をするんだよ。恥ずかしいなら言わなければいいのに。全く一夏は最高だぜ!

 

「そんなことはないけど」

「ならいいじゃん」

「でもさ、慣れない格好なのに大丈夫なのか?」

「うん。もう慣れてきたから」

 

 ええ……。一夏ちゃん、適応力高すぎませんかねえ……。そういえば、最近は女性物の服を着るのに抵抗もなくなってる感じがするとか言ってたし、仮に男に戻った際とか大丈夫なんですかねこれ。俺は戻ってほしくないけど。

 男に戻るで思い出したけど、束姉さんはまだ薬の開発終わらないのだろうか。あの人は自分は薬の方面には詳しくないとか言ってたけどさ、いつも簡単に色んな物を作っちまうあの人がここまで連絡を寄越さないとかなんか企んでるんじゃないかと疑うレベルなんだけど。一夏を女の子にした理由が理由だし、余計そう感じるわ。

 でも、

 

「八千代さん!? なんでそんなに写真を取るんですか!? ていうか、いつの間にカメラ用意したんですか!」

「はぁはぁ……良いわ! 一夏ちゃんのメイド服姿さいいいいいっこうに良いわ!」

 

 なんだかんだで楽しそうな一夏を見ていると今こんな事を考えるのは無粋のような気がしてきたよ。あ、テンション上がってる母さんや。一夏の写真、あとで俺に頂戴ね。家宝にするから。




僕はね、一夏ちゃんのメイド服姿とあーんが書きたかったんだ。
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