あ、今回はいつもより文字数多めです。
俺が一夏ちゃんの裸を見てしまうというラッキースケベしてしまったあの日から時間が経ち、暦は九月二十七日になっていた。時刻は丁度夕方。今日の俺はテンションが高めだ。織斑家で母さん譲りの技術で一夏の為に丹精込めて作ったケーキや色んな食事を作り終えた俺だが、自分でもウザいと思うくらいにテンションが上がっている。今すぐにでも焼肉ポーズしながら「夜は焼肉っしょ!」とか言い出しそうなくらいには。
ていうかさ、俺ってばこんなに料理作ったの初めてなんだけど。具体的に言うと目の前のテーブル一杯に並ぶくらい。なんかね、一夏の為と言い聞かせて料理していたら物凄いパワーが出てきたんだ。気が付いたらいつの間にこうなってたよ、てへぺろ。うん、キモイな。これ以上はやめておこう。
何故俺のテンションが高いかと聞かれれば今日が一夏の誕生日だからだ。一夏が女の子になってから初めての誕生日なのでハッピーバースデー! と、どこぞの会長みたいな声量を出してみたいのだが俺じゃ無理だと悟りましたはい。ってか、あんな声を出したら近所迷惑になるだろうから尚更無理だわ。
あ、一夏はいま織斑家に居ません。一夏の誕生日を祝うために休暇を強引に捥ぎ取ってきたらしい母さんと昼間から一緒に出掛けている。母さんの奢りで下着やら服やらを買いに行ったよ。こりゃあ今頃、母さんの着せ替え人形にさせられてるな。すまないな一夏。暴走状態に入った母さんは俺には止めらないんだよ。まあ母さんなら服選びのセンスは確かだし、どこぞの家事が全くできない人やチャイナ娘のように店員さんに丸投げなんてしないだろう。その点ではあの人は信頼できる。
「ふう。あとはあいつらが来れば……」
今日は休みだから鈴達も一夏の家でやる誕生パーティに来るとか言っていた。一夏は最初のうちは別に誕生パーティとかやらなくていいとか言ってたんだけど、俺や母さんが一夏の意見を却下してゴリ押しする形でパーティを開くことになった。まあ、パーティと言ってもそんな大それたものじゃなくて皆で料理やジュースを飲み食いして、一夏に各々が用意したプレゼントを渡すってだけなんだけどね。
参加メンバーは俺と母さん。弾と数馬、鈴と蘭ちゃん。そして主役である一夏の七人だけだ。千冬さんは電話でパーティのことを教えた際に「私が居ては皆が楽しめないだろ」と言って参加を辞退してました。全くそんなことを気にしなくてもいいのに。別に妹である一夏の誕生日に千冬さんが居ても文句言いませんって。鈴は縮こまるかもしれないけど。玄関の呼び鈴が鳴ってるのに気付いた俺は作業の手を止めて玄関へと向かうことにした。
「よう、和行」
「おう。来たかお前ら」
「当たり前よ。一夏の誕生日なんだから来ない訳にはいかないでしょ」
「まあ鈴の言う通りだな」
玄関を開けたそこには時間通りに来た数馬と鈴と弾が居た。……ってあれ? 予定では蘭ちゃんも来るって聞いてたんだけど、蘭ちゃんは何処だ?
「あれ? 今日は蘭ちゃん来てないの?」
「蘭のやつは生徒会の仕事が入ったとかで今日は学校に行っててさ、帰るのが丁度誕生パーティの終了間際らしいから今回は諦めるってよ」
うーん、それなら仕方ないな。このまま玄関前で話し込むのは駄目だと思った俺は三人を家の中へと招き入れる。勝手知ったる他人の家といった感じで皆はそれぞれ自分の好きな場所に腰を下ろしていた。一夏が性転換する前はこいつらも頻繁に家に遊びに来てたしな。一夏が女の子になってからは頻度減ったけど。それでも鈴は今でも遊びに来るから油断ならないんだが。一夏と同居してるのをバレないようにするのに結構気を使ってるよ。
弾と数馬に関しては露骨に回数が減ってたな。やっぱり女の子の家というのに躊躇いを覚えたんだろう。でもあいつらは俺と一夏がくっ付けばいいと思っているから、ただ単に俺と一夏が居る時間を増やしてやろうと考えてるだけな気がする。
「それで、肝心の一夏はどこにいるのよ?」
「一夏は母さんと服とか買いに行ってるよ」
「え!? まさか、八千代さんも今日のパーティに来るの?」
「そうだよ」
(便乗)とは言わなかった。言う空気でもないし。……あの、心なしか以前遊園地に行ったときのように鈴の口から魂が出ているような……。あーあ、こりゃ着せ替え人形にさせられまくったトラウマが蘇ったんだろうな。可愛そうに。顔の前で手を振っても全然反応しないんだけど、本当に大丈夫かこれ?
反応すらしない鈴を放っておくことにした俺は、弾と数馬にお茶を出した。一応鈴の前にもお茶を置いておく。多分あの調子じゃ飲まないだろうけど。そのまま弾や数馬と野郎同士の馬鹿話を繰り広げながら待っていると玄関の方から扉が開く音がした。お客さんならインターホン鳴らすだろうし、一夏と母さんが帰ってきたのかな。
「ただいま~。帰ったわよ」
「うう……酷い目にあった」
なんか妙に肌艶が良い母さんと何処かやつれている一夏がリビングに現れた。なんというか、うん。予想通りというか……母さんに着せ替え人形にされたのは確定っぽいっすねこれ。とりあえず一夏を労おう。話はそれからだ。
「大丈夫か? ほれ、お茶だ」
「あ、ありがとう……」
「その様子だとあれをやられたのか……」
「八千代さんったら酷いんだよ! 私を着せ替え人形みたいにしてさ! 箒や鈴の気持ちがよく分かったよ……」
うん。俺は実際に母さんのアレの被害にあった訳じゃないから気持ちが分かるなんてとても言えないが、母さんの着せ替え人形にさせられた箒や鈴や一夏を見ているとかなり精神的に来ているというのは俺にもよく分かる。全く……。今日は一夏の誕生日を祝う日だってのに主役を疲れさせるとかどういう了見なんだ、母さんめ。
俺は母さんの方を千冬さん直伝の鋭い眼光で睨むと、母さんは露骨に俺から目を反らした。おいこら、いいからこっち向けよ。ほら、怒らないから正直に謝罪して。怒るから。……今は一夏の誕生パーティの方が重要だな。なんとかやつれた状態から復活した一夏が俺達の方を見つめているんだからさ、母さんの事は後だ後。
「えっと、その。私、こういうパーティとかあまりしたことないし、何を言えばいいのか分からないんだけど……その……。きょ、今日は来てくれてありがとう皆!」
「もっと捻りを加えろ」
「挨拶が普通すぎる」
「及第点にすら届かないわね」
「一夏。良い挨拶だったよ」
「和行以外のコメントが辛辣なんだけど!?」
弾、数馬、鈴、俺の順でコメントを述べたのだが……何故か俺以外のコメントがめっちゃ辛かった。思わず一夏がツッコミを入れるレベルで。どうしたんだよお前ら、一夏に奇を衒うことを期待するんじゃねえよ。下手にギャグとか言われるよりは普通のコメントの方がマシだと思うんだが。
俺は咳払いをしてから、皆を代表をして一夏に声を掛ける。この言葉を言わないとパーティが始まらないからな。
「一夏、誕生日おめでとう」
「うん! ありがとう!」
俺のその言葉を皮切りにパーティが始まった。あーだこーだと馬鹿を言いあいながらジュースを飲んでいる弾達が居るという光景がそこにはあった。まあ、なんというか。俺達らしいというべきか。一夏が女の子になってから色々と変化があったけどさっきの一夏や弾たちとのやりとりは全然変わらない。懐かしいという思いが沸き上がってくる。一夏が女の子になって早いもので五カ月を過ぎたのか。時の流れは早いな。
ん? 一夏が呼んでるな。俺は考えていたことを頭の片隅に追いやると、ジンジャーエールで喉を潤しつつ一夏の下へと向かった。
「ねえ、このケーキって和行が作ってくれたの?」
「ああ。母さんに作り方を教わって作ったんだ」
「これ凄く美味しいよ。和行、さんきゅーね」
ああ、この感じだ。一夏の笑顔に浄化されるこの感覚。実に心地良い。正直俺なんかのケーキよりもそこらへんの美味いケーキ屋から買ってきたケーキの方が美味いと思うのだが、そんなことを実際に口にするほど俺は阿呆ではない。一夏が喜んでくれているのだからそれでいい。一夏の笑顔に勝るものはないのだから。
「ハァハァ……鈴ちゃん。あとでうちに来ない? 可愛い服いっぱいあるわよ」
「い、嫌ですよ! 近づかないでください!」
うちの母さんと鈴がなんかやっているが無視しておこう。そうするのが一番平和だ。俺がそう心に決めていると数馬が俺の方へと声を掛けてきた。どうかしたのか?
「なあ和行」
「どうした数馬」
「テーブルに並んでる料理作ったの誰?」
「俺だけど?」
数馬の問いかけに答えた俺の発言に数馬、弾、母さんから一時的に解放されたのであろう鈴が固まった。え、なに? 俺がこんなに料理を作れたのがそんなに意外だったの? あの、お願いだから反応してくれないか。気まずいから。
「なあ。和行の料理スキル上がってないか? 俺はてっきり八千代さんが作ったものだと思ってた」
「あたしもそれ思った。なんなのよ、一夏といい和行といい……女のプライドをどんだけへし折れば済むのよ!?」
「俺達の友人の料理スキルが高すぎる件」
おいお前ら。コソコソ話しているつもりなんだろうが、俺には丸聞こえだからな。すると、三人は人間の挙動とは思えない動きをしながら一気に俺が作った料理にがっつき始めた。……うん。一夏の分を確保しておいてよかったわ。ていうか、母さんもさりげなく混ざってんじゃねえよ。あんたは俺の料理なんて食い慣れてるだろうが。
四人の行動から目を反らすようにして、ちらりと俺は一夏の方を見る。俺の目に映っている彼女の笑顔は心の底からから楽しいと思えているからこそ出せるものだろう。
俺がまだ残っているジンジャーエールを飲んでいるうちに、弾達は一夏を呼んでプレゼントを手渡し始めていた。あの、すいません。俺にも声を掛けてもらえませんかね?
「よっし、じゃあ一夏にプレゼントを渡すぞ」
うん、俺のことなんて誰も気にしてないね。弾の音頭でもう完全にプレゼントタイムに移行しているからね、仕方ないね。鈴たちが各々選んだプレゼントを渡していくのを俺は眺めることにした。鈴たちが選んだものは殆どが一夏との欲しがっていた物や、それとなく探りを入れたりして選んだ物だ。うん、一夏の笑顔はホント可愛い。独り占めしたいと考えながらプレゼントをくれた数馬達にお礼を述べてる一夏を見つめていた俺に鈴が声を掛けてきた。ん? どうしたんだ?
「あんた、プレゼントは? まさか用意してないとか言わないわよね?」
「いやプレゼントは買ってあるよ。ただ――」
「ただ?」
「皆が見ている前で一夏にプレゼントを渡すとか恥ずかしすぎて無理」
俺が頬を掻きながら口にした言葉に鈴は口を開けつつこちらを呆れたような目で見ていた。やめて、その目やめてくれ。ヘタレとかチキンとか言われた方がまだマシだわ。その後も、俺は鈴の視線に晒され、俺がプレゼントをこの場に持ってきていない理由を鈴の手によって弾と数馬に告げ口され、野郎二人に弄られるという展開が待ってました。ちくしょう……。仕方ないだろ、本当に恥ずかしいんだから。許せよそれくらい。
鈴に言った通り一夏に対するプレゼントはあるんだ。貯金を切り崩して買ったやつが。あとで渡すつもりだから隠してあるけど。ついでに言うと一緒に買う予定だった花は諦めた。だってあれ、花言葉的に遠回しに告白しているようなもんだから恥ずかしすぎて死ねるんだよ。
最初は白いカーネーションを渡そうと思ったけど、五月頃の母の日に母さんへ赤いカーネーションをプレゼントしたのを思い出して論外になった。花言葉が違うにしても、想い人へ渡す花と母さんへ渡した花が同じなのはちょっと困る。赤のナデシコやブーゲンビリアやキキョウは渡すの恥ずかしいし、ひまわりは出回り時期を過ぎてる感がある。バラの束を渡すとか完全にキザな奴だろ。ていうか、そもそも花を贈るとか俺のキャラじゃないし。はあ……やっぱ俺ってヘタレなのかな。
今日は楽しかった。鈴達が帰り、パーティで使った食器やらの後片付けをしている和行の背中を見ながら俺は心からそう思った。こういうパーティみたいなことなんてあまりしたことなかったし、別にやらなくていいと言ったんだが、今年は和行と八千代さんのごり押しでパーティをやることになった。
でもそのお蔭でなんというか、今までの誕生日の中で一番記憶に焼き付きそうだ。馬鹿話をしながら料理を食べて、飲んで……ああ、本当に楽しかった。俺が女の子になったあの日から今日まで色々とあったな。遊園地に行ったり、プールに行ったり、夏祭りに行ったり。思い起こした記憶の中にいつも和行が居ることに思わず笑みを溢す。そうだ、和行はいつも俺の傍にいてくれた。女の子になったあの日から俺の傍に居てくれたんだ。それとだ、プールに行ったあの日から、気が付けば和行の事ばかり考えるようになっていた。一人の事を一日に何回も考えるなんて、なんでそんなことをしているのか自分でも良く理解できないんだよな。悪い感じはしないから別に良いんだけどさ。
「一夏。皿ってこっちで良かったよな?」
「うん。そこにしまっておいて」
和行の背中がかなり頼もしく感じる。なんか、和行の一挙手一投足が前よりも格好良く見えて困るんだが。ていうかあいつ、自覚はしてないみたいだけど案外女の子達の間で噂になってたりするんだよな。
噂をしている女の子達曰く「あれ? もしかして九条君って結構格好良くない? でも気付いているのは私だけだよね?」みたいな感じで。その話を聞く度に和行の事を誇らしく思うと同時に和行が女の子と話している時に感じるあのモヤモヤって感情もするんだけどな。って、あれ? 和行のやつ、もう片付け終えたのか。早いな。
「ふう。やっと終わった」
「お疲れ様。はい、コーヒー。ミルク多めで入れておいたよ」
「おっ、サンキュー」
俺から受け取ったコーヒーを飲む和行の顔を見ながら、俺はふと考えた。さっきのプレゼントの事だ。和行は皆の前で俺に渡すのを恥ずかしがってたみたいだけど何を渡すつもりだったんだろうか。和行のことだから、ちゃんと俺の事を考えて選んでくれていると思うから変なのとかは渡してこないだろうけどさ。ああいう態度を見るとやっぱり気になっちまうんだよなぁ。
「ん? どうかしたか?」
「和行が私に渡そうとしたプレゼントが何なのか気になって」
「……ああ。母さんも家に戻っているし、渡すなら今の方がいいかもな」
コーヒーが入ったカップをテーブルに置くと、和行は足を動かし始める。リビングの棚をがそごそと漁って長方形の箱のような物と小さい紙の袋のようなものを取り出すのが見えた。あれが和行が俺にプレゼントしたかったやつなのか。つうか、なんで隠してたんだよ。それって隠すようなものなのか? もうちょっと堂々と俺に渡せばいいのに。
「は、はいこれ。一夏へのプレゼント」
「ありがとう。開けてもいい?」
「うん。いいよ」
俺の下に来てプレゼントを手渡してくれた和行に尋ねた俺は箱をゆっくりと開けた。そこに入っていたのは一つのネックレスだった。それも女性用の。もう一つの方も開けてみる。もう一つの方はヘアピンだった。白色の可愛いやつが数本台紙に収まっている。俺は和行からのプレゼントに思わず目を丸くする。本当に驚いた。まさか和行がこういうプレゼントを俺に渡してくるなんて思ってもみなかったよ。
和行からのプレゼントを貰ったんだと認識した俺の胸がカッと熱くなる。その熱が段々と体中に広がっていく感覚が手に取るように分かった。それと同時に胸の息苦しさも感じてしまう。でも、不思議とその感覚が嫌ではなかった。むしろ嬉しいくらいだ。もっと感じていたいくらいに。
「これ、どこで?」
「レゾナンスのアクセサリー売り場で買った。その……なんだ。最初はさ、一夏に花も一緒に贈ろうと考えたんだけどさ、俺のキャラに合わないって思ってこっちだけにしたんだ」
花? 和行が花? なんだそれ! ヤバい、笑い堪えるので精一杯だ。想像してみたけど、和行が花を贈るとか本当に似合わねえな。
「な、なんだよ……」
「和行が花とか本当に合わないなって思って」
「……ふん」
あ、和行が拗ねた。自分でもよく分からないけど、この和行の姿も可愛いと思ってしまった。
「ねえ和行。なんか凄く良い出来が良いけど、これ幾らくらいしたの?」
「――円」
「え? ごめん、もう少し大きな声で言って」
「……四万円だ。ヘアピンも合わせれば四万超えてるけどな。お蔭で貯金が半分なくなったよ」
え? はあああああ!? よ、四万!? それに貯金が半分消えたって……。確か和行の奴、タブレット端末だか新しいパソコンだかを買うためにお金溜めてたんじゃなかったっけ? 俺なんかへのプレゼントの為にお金使うとか……。俺に対する思いという点では鈴達からプレゼントと和行に貰ったプレゼントに大差なんてないはずなのに、何処か違って見える和行からのプレゼントに俺は思わず狼狽してしまう。
「え、え? そんなにするのこれ!? う、受け取れないよ!」
「いいんだよ。お前の事を思って買ったんだから素直に受け取れ」
思わずネックレスを突き返そうとした俺だったが、和行の力強い言葉でそんな気も一瞬で失せてしまう。和行にそう言われたら受け取るしかねえだろこれ。俺はネックレスが入った箱とヘアピンの入った袋に入る力を思わず強めていた。
和行にお前を思って買ったと言われた所為だ。その所為でさっきから熱くなっていた俺の体が更に熱を帯びた感じがした。頬まで赤く染まっているのが理解できた。心臓も痛いくらいに脈を打っている。
……和行。ありがとう。
「……ねえ」
「ん?」
「これ、私に着けてくれない?」
「え、俺が?」
俺が着けていいのかと和行が聞いてくるが俺は首を縦に振ってそれを肯定した。だって俺、和行に付けて欲しいんだよ。ほら、早く。
「じゃ、じゃあ行くぞ」
俺から箱を受け取って、ネックレスを手に取った和行が俺の首へ手を回した。付け方は八千代さんから教わったそうだから大丈夫だと思うけど……なんだこれ、ヤバいぞ。和行が俺のすぐ傍に居るからか、心臓がさっきよりもバクバクしてるんだよ。冗談抜きで心臓が破裂するんじゃないかこれ。……ちょっと怖くなってきた。
「はい。終わったよ」
そう言って俺から和行が離れていった所為で心臓は落ち着いたがちょっとだけ寂しいと思ってしまった。俺は和行に付けて貰った首から垂れるネックレスを右手で触る。これ、似合ってるのか? ちょうどいいや、目の前に和行が居るし和行に聞いてみよう。
「ねえ、和行。似合ってるかな?」
「凄く似合ってるぞ」
「あ、ありがと……」
――和行に褒められた。ただそれだけなのに物凄く幸せだ。和行が俺の為にプレゼントしてくれたこのネックレス、絶対大事にするよ。あとこのヘアピンも。明日にでも付けて和行に感想を聞いてみるか。和行に褒めてもらいたいし。
ネックレスを見つめながら、ふと考えてしまった。男に戻っても和行とは以前のような関係には戻れないんじゃないかと。そりゃあ、一日でも早く男に戻りたいと思ってたさ。少なくともあのプールの日までは。あの日を境に、俺が女の子から男に戻ったら和行はどんな顔をするんだろうという疑問が浮かんでくることが多くなってきた。女の子になってから和行の俺に対して向けてくれている態度が、和行の優しさとか気遣いとかが消えてしまうんじゃないかと不安になる。それはだけは絶対に嫌だ。我儘だと言われようと和行のあの優しい眼差しとかを独占していたいんだ。
もし、和行との関係が崩れてしまうなら……俺は――男に戻れなくてもいい。
一夏ちゃんのおっぱいの大きさは箒より小さめになってます。
大きい順に名前を出すと、山田先生>箒>一夏ちゃん>その他の原作ヒロインって感じです。