女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

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四話連続一夏ちゃん視点中は普段より文字数多めになってます(今更)


第二十三話 自覚する思い(2/4)

 雨に打たれた翌日。時間は朝の七時半に差し掛かろうとしていた。パジャマ姿のままマスクを着けている和行がベッド近くにある椅子に座りながら、ベッドに横たわっている俺を見ている。和行の右手にはデジタル体温計が握られていた。温度が表示される部分を眺めた和行は小さく溜息を溢すと、目を眇めながら俺の方へと視線を投げかけてくる。

 

「あの、三十七度を超えてるんだけど……。一夏の平熱って何度だっけ?」

「三十五度だよ。ってことは、やっぱり……」

「風邪だな」

 

 和行の言葉を聞きながら俺は咳き込んでしまった。やっぱりな。俺は風邪を引いたようだ。額には冷却ジェルシートを張り、マスクを着けて飛沫が飛ばないようにしている。額のこれはともかくマスクの方は正直言って息苦しい。俺、冬でもあまりマスクとかしないし。和行は良くマスクを使ってるけど。俺が風邪を引いた原因はやっぱり昨日のアレしかないだろう。和行が追い付いてくるまで傘も差さずに雨に濡れたまま歩いていた所為だ。

 うーん、咳が少し酷いかな。頭痛と熱はそこまで辛くはないが、意識というか頭が少しだけぼうっとする。ついでに言うと若干体も怠い。それでも症状が軽く済んでいるのはやはり普段から健康に気を使っているからだろうか。和行が俺の部屋に居るのはいつも和行よりも早く起きている俺が起きてこないから心配して様子を見に来たらしい。それで計っていたデジタル体温計を和行に手渡して温度を見てもらった次第なんだが、自分でも馬鹿らしい風邪の引き方だと思う。

 それよりもだ。俺って風邪引いたことなんて殆どなかったからこんな状態になってどうすればいいのか分からないんだが。和行にはベッドで安静にしているように言われたけど、家事とかをしてないと気分が落ち着かないんだよなぁ。……もどかしい。

 

「朝ご飯、食べるか?」

「ううん。食欲ないし、作ってたら和行が遅れちゃうから要らないよ」

 

 時計へと視線を移してみれば既に家を出ないといけない時間になっていた。俺に構っていないで早く着替えて学校に行ってこい。遅刻するぞ。

 

「じゃあ行ってくるぞ」

「行ってらっしゃい」

「ちゃんとそこにある水とスポーツドリンクを飲めよ」

「うん。分かった」

「あとティッシュ箱はそこに置いてあるからな」

「分かったから早く学校に行って?」

 

 なんか異様に俺のことを心配している和行にさっさと学校に行くことを促す。さっきから俺の方をちらちらと見てくるんだよ。どんだけ俺の事が心配なんだ。学校へ行くように促さないと和行のやつ、絶対学校を休んでまで俺の看病をしようとするぞ。渋々といった感じで部屋を出ていく和行の背中を見送る。和行の部屋の扉が開閉する音が二回聞こえ、次に和行が階段を下りていく音を聞いた俺は小さく息を吐いた。

 ホント、なんで俺が風邪なんて引いてるんだろう。和行との約束を破った罰なんだろうか。

 

「……寂しい」

 

 枕に預けている頭を少しだけ動かして部屋の中を見回した俺は思わず呟いてしまった。いつもと変わりない部屋なはずなのに何処か違う光景に俺は戸惑いを覚える。風邪の影響で上手く働かない頭を使い、考えた。何故寂しいと思ってしまうのかを。

 至極簡単な答えだった。和行が傍に居ないからだ。いつもなら近くに居るはずの和行はいま学校に向かっている。和行の姿が見えない。それだけなのにこんなに心細くなるなんて……。確かにあいつの傍に居ると心が温まるし、なんだか嬉しくなれるから出来れば離れたくなかったし。ずっとあいつの傍に居たいよ。

 

「和行」

 

 和行が昨日洗濯して乾かしてくれた制服を見つめながら、気が付けば和行の名を口に出していた。途端に胸が熱くなり、風邪とは違う熱が胸の辺りに留まっているのを感じる。風邪の熱とは違い、和行の事を考えていると感じるこの熱は不快ではなかった。

 

「和行、早く帰ってきて……」

 

 睡魔に襲われた俺はそのまま目を閉じてしまった。ふと、俺は光を感じて目を開ける。体を襲っていた怠さや喉の違和感がないことを不思議に思いながら体を起こしてみた。額に感じる冷たさも、着けていたマスクもなくなっていた。

 

「えっ?」

 

 そこは俺が和行の家で借りている部屋ではなく、織斑家の自室だった。

 は? なんで俺、自宅に戻ってきているんだ? 和行が戻ってきて俺をこっちに運んだとも思えないし、そもそも運ぶ理由すらない。てかちょっと待て。今の俺の声、おかしくなかったか? いつもの俺の声と違うような。変声期を終えた男の声だった気がする。訝しみながらベッドから出ると自分の目線が妙に高いように感じた。丁度女の子に変わる前の自分の目線と同じだった。

 ……まさか。俺は部屋のドアを開け放つと一階の洗面所へと向かう。洗面所の鏡を見た俺は自分の姿に驚愕した。

 

「も、戻ってる?」

 

 そう、俺の姿が元に戻っていたのだ。男の姿に。本来の性別に。女性特有の胸もなくなり、身長も元の大きさに戻っている。鏡で自分の姿を見つめ続ける俺は、女の子の姿でなくなった事に心にぽっかり穴が開いた気分に陥っていた。失くしてはいけないものを失くしてしまった気がしたんだ。

 嬉しいはずなのに嬉しくない。相反する感情が鬩ぎ合っている。なんで俺が男に戻っているのか。どうして俺が自分の家に戻ってきているのか。様々な疑問が浮かんでくる。だが、どの疑問よりも優先すべきことがあった。それだけが俺の頭の中を支配していたのだから。

 

「和行、ちゃんと起きてるかな」

 

 何故かその考えだけが俺を突き動かしていた。和行の家に行こうと玄関で靴を履き、玄関のドアを開ける。左を向けば和行がある。早く和行に会わないといけない。起きてきた和行に朝ご飯を作って、和行の笑顔を見たいと俺は切望した。だが、俺のそんな思いは簡単に打ち砕かれた。だって、八千代さんや和行が住んでいる家があるはず土地が()()()になっていたのだから。その事を理解した俺は一瞬だけ呼吸の仕方を忘れてしまった。立ち眩みを覚えた所為か体が崩れそうになるのに耐えながら頭を働かせる。

 どうして二人の家が消えているんだ? ……まさか、今まで見ていたのは夢だったのか? いや、そんなはずない。だってあの二人はちゃんと俺と……。なんだこれ、なんなんだよ。思考がぐちゃぐちゃになる。もう何がなんなのか、本当に和行と八千代さんが存在していたのかすら分からなくなっている。自分の記憶が壊されるような感覚に恐怖心を覚えた俺はいつの間にか自宅へと戻っていた。階段を駆け上がって自室へと逃げ込むと、ドアに鍵を閉めて部屋に閉じ籠った。

 

「和行、和行……!」

 

 毛布を頭から被り、唇から漏れた声は動揺を隠し切れずに震えていた。夢なら覚めてほしいという考えばかりが心や頭を支配して他の事など考えられなかった。俺は目を瞑りながら和行の名前を狂ったかのように和行の呼び続ける以外、俺は何もできなくなっていたから。永遠とも思える時間の最中、ふと何かに引っ張られるような感覚と共に俺は目を開けた。

 

「あ、あれ?」

 

 今度はまだ気怠さが残り、喉にも違和感がある状態で目が覚めた。頭痛もするし、発熱も感じる。少しだけ体を起こし、視線を下に向けた。そこには俺が女性であることを示す胸がちゃんと付いていた。ついでに股間の方も触ってみるがアレは付いていなかった。声も既に聴き慣れた女性の声に戻っている。部屋も俺が貸して貰っているあの部屋だった。

 ……夢、だったのか。脱力した手足をそのままベッドに広げてしまう。夢の中とはいえ、男に戻れたのに俺には嬉しいなんて欠片ほども思わなかった。ああ、やっぱり男に戻りたくなくなっているんだな。和行と女の子として一緒に居るのが楽しいと思えてるからなのかもしれないが。そんな和行がいないだけで、あんな身も凍るような孤独感に苛まれるなんて……俺の中での和行の存在がそれだけ大きいってことなんだろうか? 悪夢を見た胸糞悪さに苦虫を噛み潰した顔をしてから、そんな悪夢から解放された事に胸を撫で下ろしながら大きく息を吐いた時だった。

 

「ただいまー」

 

 ……あれ? なんかいま和行の声が聞こえたような。時計を見てみたらまだ八時半を過ぎたばかりだ。まさか学校を早退してきたのか? 俺がまだ夢から覚めたばかりでぼうっとする頭を動かしていると、和行と思われる足音が部屋の前まで来ているのが分かった。ドアノブが捻られ、ドアが開かれたそこには私服を着た和行が立っていた。

 ――和行がそこにいる。そう認識した瞬間、俺は自分の体の不調など忘れてしまったかのように動き出していた。体に掛かっていた掛布団を引き剥がすと、ベッドから飛び出して和行に抱き付いていた。俺は以前よりも十センチほど小さくなっていることもあってか、俺の頭は和行の胸元に丁度収まった。冷却ジェルシートを貼った額が和行の鎖骨に当たっている。……ああ、和行はちゃんとここに居る。和行の匂いも、体温もここにあるんだ。こっちが現実だ。だって、和行が生きているんだから。

 

「い、一夏!? お前、何して!」

「怖い夢を見たの……」

「……」

 

 和行はそれ以上何も言わず、俺を引き剥がそうとはしなかった。それどころか俺の事を優しく抱きしめ返してくれていた。和行とこうしているとドキドキしているのと同時に本当に落ち着いてくる。和行とずっとこうしていたい気分だ。

 どれくらいそうしていただろうか。俺はようやく気分が落ち着いてきたので、和行の背中を優しく叩く。俺の意図が伝わったのか、和行は俺を抱きしめていた腕を放してくれた。和行から離れてお礼を言おうと、和行の顔を見つめる。

 

「ありがとうね。和行」

「お、お安いご用です」

 

 ああ、和行が居てくれる。こうして俺と向かい合ってくれている。それが何よりも嬉しい。和行とこうやって会話できるのが本当に心地良い。

 

「な、なあ。そのさ、一夏が見た夢のこと教えてくれないか?」

「え? えっと……」

「嫌なら別に言わなくていいからな」

「そ、そうじゃないよ。話すから」

 

 とりあえず俺は自分のベッドへと腰かけ、和行を椅子に座らせた。一呼吸置いてから俺は話した。夢の中で和行が居なくて、和行が住んでいる家すら存在していなくて怖くなった事を。夢の中とはいえ、男に戻っても嬉しくなかったことは話さなかったけどな。俺の話を聞いていた和行は静かに立ち上がると、俺の前に来て立ち膝になった。俺に視線を合わせてくれているのだろう。

 

「……本当に怖かったんだな」

「うん。和行や八千代さんが消えたと思ったら物凄く不安になって辛かった」

「ありがと。一夏」

 

 え、なんでお礼を言うんだ?

 

「え?」

「だって、俺達が消えて取り乱すなんて、それだけ俺と母さんを大切に思ってくれているってことだろ?」

「……当たり前でしょ。八千代さんは千冬姉と同じくらい大事だし、和行はそれ以上に大切だと思ってるんだから」

「そ、そうか」

 

 俺の言葉に和行は気恥ずかしそうに顔を逸らした。そうだ、俺は和行のことを本当に大切に思っている。だって和行は昔からの付き合いだし、和行が居てくれなかったら女の子になったあの日から今までこうやって過ごしてくることができなかったと思うし。

 俺がそんなことを考えていると顔を逸らしていた和行は頭を横に振り、立ち膝の状態をやめて俺に手を差し出してきていた。

 

「ほ、ほら。出かけるぞ」

「何処に?」

「病院だよ病院。ちゃんと見て貰っておいた方がいいだろ?」

 

 あーそうだよな。一応は診察受けておいた方がいいよな。俺は和行の手を取って立ち上がると部屋の外で和行を待たせることにした。着替えくらいならまだ自分だけで出来るし、和行も俺の下着姿なんて見たくないだろうからな。和行なら綺麗って言ってくれるだろうけど、そんなの風邪を引いている時に期待するものじゃない。

 俺は私服に着替え終えるとその事を和行に教えて一緒に一階へと降りて、家を出た。その道すがら、俺は和行に気になっていたことを尋ねる。

 

「ねえ、和行」

「どうした?」

「まだこの時間帯なのにどうして帰ってきたの?」

「……お前、今日が何の日か忘れたのか?」

 

 え、今日? 今日って何の日だったっけ? 思い出せないんだが……。俺は分からないという意思表示をする為に頭を横に振る。それを見た和行は少しだけ呆れたようにしながら今日が何の日か教えてくれた。

 

「今日はうちの開校記念日だろうが。だから今日は休み」

「へ? ……あっ」

「本当に忘れてたのか……」

「じゃ、じゃあ和行が家を出て行ったのは?」

「ATMでお金を下すのと、お粥とか雑炊を作る為の買い物に出ただけだよ」

 

 ……そういえば、帰ってきた和行の服って私服だったな。風邪の所為で本当に頭回らなくなってるなこれ。俺が自分のアホさ加減に呆れていると、俺の左を歩いていた和行が唐突に自分の右手で俺の左手を握ってきた。俺は拒否しないで和行が手を握るのを受け入れた。和行に握ってもらっていると不安とかがなくなるし、何より安心できるから。

 

「俺から離れるなよ」

「離れないよ」

 

 俺は和行の手を強く握り返す。この手を放したくないと考えながら病院へと向かう歩を進めていく。病院に辿り着いた俺は診察してもらい、薬を処方されることになった。今日行った病院は以前まで八千代さんが入院していたあの病院だ。ついでに言うと千冬姉の伝手で女の子になってしまった悪影響が出てないか等の定期的な俺の身体検査などをしてくれている病院でもある。なのでかなり信頼出来る。薬を受け取り、和行と一緒に自宅へと戻った俺は再度寝巻に着替えると和行がキッチンでお粥を作ってくれているのを自室で待つことになった。今の時間は十時半。朝ご飯としては遅め、昼ご飯としては早めな時間だ。

 和行がお粥と雑炊のどっちがいいかと尋ねてきたのでお粥を選んだ。雑炊じゃなくてお粥を選んだのは和行と違って俺はお粥が好きだからだ。さてと、まだ和行が料理を終えるまで時間があるな。

 

「これでも読んでようかな」

 

 俺の手にあるのは少女漫画だ。これなら寝転がりながらでも読めるからいいと思う。和行に寝ていろと叱られるかもしれないがこればかりは目を瞑ってほしい。本当はこのまま横になっていた方が良いのは分かっているが、あの悪夢の所為で寝るのにまだ抵抗があるんだよ。

 俺が今手に持っているこの少女漫画は俺の私物じゃない。俺の事を慕ってくれているクラスメイトの女の子がオススメだとか言ってシリーズもののやつをとりあえず五巻ほど俺に貸してきたんだよ。元男だからこういうの読んだことないし、女の子の今でも少女漫画より少年漫画の方が好きなんだよな。でも借りてしまった手前、そのまま読まないってのもなんだか癪なので読んでみることにしたのだ。

 ……ふむふむ。さっき借りていた本の一巻目を読み終えて二巻目を見てるんだが、主人公に物凄く共感出来ている。うん、その気持ち分かるぞ。大切な人の事を考えているとそんな気持ちになるよな。他の女の子と話しているのが気に喰わなかったり、その人と話していると胸がドキドキしたり、苦しくなったり、その人の事ばかり考えたりな。まるで和行を考えている時の俺みたいだな。

 

「へっ?」

 

 …………ちょっと待て。この主人公、自分の気持ちを恋だと言ってるんだが。

 え、え? は? いやいや、待て待て。色々と待て。頼むから待ってくれ。うん、少し落ち着こうか。俺は和行にこの漫画の主人公と似たような感情を抱いている。それでこの漫画の主人公はその気持ちを恋だと断言した。これはそのままそっくり俺が和行に感じていることに当てはまるんじゃないか? いや違うだろ。幾らなんでも考えを飛躍させすぎだ。俺が和行のことが好きなのは親友としてだ。そんな異性とかそんなのじゃない……はずだ。そうだよ、だって俺は男なんだ。そして和行は男だ。

 同性愛を否定する気はないけど、俺の場合は絶対にそういうのはあり得ない。和行とは昔から一緒で、あいつとなら男女の関係になっても別に良いかもと思ったりしたこともあったけどこればっかりは違うぞ。俺と和行は親友同士だと自分に言い聞かせて和行への恋愛感情を否定しようとしたのだが、今まで自分がしてきた行動を振り返った俺は――否定するのを諦めてしまった。

 だって、俺が女の子になってからしてきた行動に親友に対して行うことではないのが多数含まれているのに気付いてしまったから。和行に抱き付いたのだってそうだし、和行が照れたりしているのを可愛いと思ったりするなんて、どう見ても親友に対してする行動や感情ではない。完全に異性に対する態度なのだから。

 

「あっ……」

 

 今までズレていた歯車が噛み合うような感覚がした。和行と他の女の子が話しているのが気に喰わなかったのは、もしかして嫉妬していたからなのか? 他の女子に負けたくないと思ったのは和行を取られたくないって思ったからなのか? 和行の笑顔や優しい顔を独占したいと考えたり、離れたくないと思ったり、和行に可愛いとか綺麗だと言われて褒められたいと思っていたのは和行に恋していたから? 和行に好きな子が出来たっていう噂に自分でも分からないくらいに苛立ったのもそれが原因なんだろうか。

 

「そういうこと、なんだね」

 

 ――ああ、そうか。俺、和行に恋しているのか。なんというか腑に落ちたというか、全てがフィットしたような感覚がした。今までの自分の行動もそれで説明が付く。……ああ、まずい。自覚した途端にすっごい恥ずかしい気持ちが心から噴きあがってきている。顔から火が出そうだ。今まで気付けるタイミングなんて腐るほどあったのに今まで気付かないで、借りた漫画を読んで自分の気持ちに気付くとか馬鹿すぎるだろ俺……。

 ていうか、俺って恋をするのなんて初めてなんだけど。男の時はその感覚がよく分からなかったし。可愛い子だなって思う子は居てもそれ以上の感情っていうのがよく分からなくてさ。

 そっか、……これが恋なんだ。

 

「和行」

 

 今までと同じように和行の名前を口にしたが、何処か違う感じがした。和行への愛おしさ等が混ぜ合わされた声だった。こんな声を出せるんだと心の中で驚いてしまう。

 和行の名前を呼ぶだけ。それだけの行為だったのに俺の心は躍っていた。自分が体調不良の身だということを忘れそうなくらいに。読んでいた本にしおりを挟んでから俺は天井を見つめる。

 こ、これからどうしよう……。恋心を自覚した所為か、これまで通り和行と接することができる自信なんてない。色々と考えが頭の中を駆け巡るが、とりあえず和行にはバレないようにしたいという考えが一番強く頭に浮かんでいた。俺は和行の事がす、好きだけど、和行が俺の事を恋愛対象と見ることができるかなんて分からないからな。何せ俺は元男だ。そんな俺よりも最初から女の子である子の方が俺なんかよりもずっと良いと思う。もし俺の思いがバレて和行に拒否されたら正気を保てないと思う。

 

「一夏。入っても大丈夫か?」

 

 物思いに耽っていた俺の意識を引き上げるような和行の声が聞こえた。お粥を作り終えたんだろうか。とりあえず、今まで考えていたことは頭の片隅に追いやることにしよう。

 

「うん。いいよ」

 

 俺は――私は和行を部屋に招き入れることにした。




一夏ちゃんのおっぱい。
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