女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

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第二十五話 自覚する思い(4/4)

 意識が浮上していく感覚に私はゆっくりと瞼を開く。体を起こして時計を見てみると時刻は午前六時を指していた。昨夜まで私に圧し掛かっていた体の不調も嘘のように消えている。喉の違和感もないし、頭痛と熱もなくなっていた。

 和行への愛の力で治ったのかな? うん、そういうことにしておこう。その方が気分良いし。さて、和行の寝顔を見に行かないとね。私はベッドから出るとスリッパを履いてドアを開けると、和行の部屋の前まで歩いていく。ゆっくりと部屋のドアを開けると和行はまだベッドの上で横になっていた。まだ起きるには早い時間だし仕方ないかな。和行の傍にゆっくりと近づいて和行の顔を覗き込んでみる。

 

「もう。可愛い寝顔しちゃって」

 

 本当に和行の寝顔は可愛い。これは襲われてもしょうがないと思うよ。私の本能を物凄い勢いで刺激してくるんだもん。思わずうっとりとした溜息が出てしまいそうだった。今まではあまり意識していなかったけど、恋心を自覚するだけでこんなにも違うものに見えるなんて思いもしなかった。

 ……これ、キスしちゃっても大丈夫だよね? 口は流石に駄目だと思うから、ほっぺかおでこにする。だって、口にしたら気付かれちゃうだろうし。うん、やっぱりほっぺかおでこにキスするしかないね。ほっぺとおでこならバレないだろうし。こ、これはあれだよ。看病してくれたお礼と和行に他の女の子からアプローチされない為のマーキングとかそういうのであって、いやらしい感情は殆どないからね。あ、それならほっぺとかじゃなくて首筋にした方がいいのかな。こう、キスマークが付くように。それなら他の女の子も寄ってこないと思うし。

 

「って、何考えてるの私……」

 

 私、馬鹿なの? なんでこんな脳内お花畑状態になってるの? でもでも、この隙だらけの和行を逃すなんて悪手だよ。和行にキスできるこの絶好のチャンスをふいにする訳にはいかない。よし、とりあえずほっぺかおでこにキスさえしてしまえば私の勝ち!

 そう自分に言い聞かせて和行のほっぺたにキスしようとしたのだが、

 

「一夏、何してんの?」

「あれ?」

 

 和行がいつの間にか起きていた。しかも私の方を怪しいものを見るような目で見てきている。ああ、なんて間の悪い……。私の馬鹿! もう少し早く行動していれば和行が起きない内にキスできたかもしれないのに。はあ、なんだか憂鬱になってきた。辛い。

 

「か、和行の寝顔を見ていただけだよ」

「……そうか。それで、風邪は治ったのか?」

「うん。和行が看病してくれたお蔭だよ」

 

 誤魔化すためにとびっきりの笑顔を和行に向けると、和行は嬉しさと恥ずかしさが入り混じったような表情をしていた。もう和行の反応でお腹が一杯だよ。やっぱり和行が欲しい。こういう反応をずっと見ていたい。

 私はそう考えながら今日の朝食を作る為に一階へと向かおうとしたのだが、和行が私の行動を止めてくる。なに、どうしたの?

 

「今日は俺が朝食を作るよ」

「え、でも」

「いいから。今日は俺に任せておけ」

「う、うん」

 

 はっきり言ってヤバい。胸を張って言い切った和行にきゅんときちゃった。まずい、もう惚れ直しそう。和行に抱き付きたい衝動をなんとか抑えて一階へと向かう和行の背中を見送る。……和行の部屋の中に私一人だけ。これは和行のベッドというか枕というか掛布団とか全部の匂いを嗅ぐ絶好のチャンスなのでは? よし、なら早速嗅ごう。和行が戻って来ないうちに。

 

「ふわぁ……良い匂い……」

 

 和行の枕とかの匂いをこっそりと嗅いだ。なにこれ、物凄く興奮してくるんだけど。鼻を通り抜けて、脳というか体の奥が直接刺激されるようなこの匂い――堪らない。今までは良い匂いがするなぁ程度にしか思ってなかったのに、和行の事が好きだと自覚した途端こんな感じになってしまっている。駄目だよこれ……。自分を抑えられなくなりそうだよ。うん、そろそろ匂いを嗅ぐのやめよう。これ以上は流石にまずいから。

 

「ほ、ほんとに危なかった……」

 

 男の頃は「お前、性欲とかないだろ」とか和行や弾や数馬にボロクソに言われたことがあったけど、ちゃんと性欲くらいあるよ。ほんと失礼しちゃう。確かに男の頃はあまりそういうのを表に出さなかったけどさ。だけど、男から女の子になった影響なのか男の頃よりも性欲が強くなってきたんだよね。それでその……一人で一日に何回もそういうことをしてました。和行のことを考えたりしたりすると余計そんな感じになったんだもん、しょうがないじゃん。流石に和行の家に住むようになってからは回数とか減らしてるけどね。和行にバレて、えっちな女の子だと思われたくないし。

 今までは和行の事を考えながらあんなことすることに対して罪悪感に塗れていたけど、和行の事を好きなのを自覚した今では罪悪感なんてないよ。好きな人のことを考えながらしちゃうのは悪いことじゃないはずだから。自分でも都合の良いこと言ってると思うけど、こんなこと誰かに相談できるわけないもん。こんな感じで自分で自分を納得させるのが精一杯だよ。

 

「み、身支度した方がいいよね」

 

 余計な事を頭の中から追い出し、私は身支度を整えて学校へと行く準備をすることにした。和行の部屋から出て一階で洗顔やら歯磨きをした私は二階の自室に戻り、学校の制服に身を通してからドレッサーの前で軽めの化粧を施す。うちの学校では濃いめのメイクは校則で禁じられているので、これくらいの化粧しかできない。別に不満とかはないから別にいいんだけどね。ちゃんとメイクが出来ているのを確認した私はドレッサーから離れると、部屋の隅に置いてある姿見で自分の姿を確認する。

 

「私ってやっぱり美少女なのかな?」

 

 前に弾と数馬が私を見て溢した発言を思い出してしまった。今まで自覚はなかったけど、確かにこうしてみれば私の容姿は整っている方だと思う。ここら辺は千冬姉譲りなのかな? 元が良いから薄めの化粧だけでも十分って、前に化粧品店の店員さんに言われたことがあったし。それに千冬姉もあまり濃い化粧とかしてないから余計そう感じてしまう。まあ、千冬姉の場合はあまり化粧とかに頓着してないだけかもしれないけど。

 この容姿なら和行の恋人やお嫁さんとして申し分ないよね。クラスメイトの女の子曰く私ってスタイルというか体のバランスも良い方みたいだし。……この胸だけはちょっとアレだけど。これの所為で可愛いデザインの下着があまりないわ、鈴には睨まれるわ、和行以外の男子や一部の女子からの視線が鬱陶しいの三重苦なんだよね。でも和行はおっぱいが大きい方が好きみたいだし、和行におっぱいを見られるのは嫌じゃないからある程度我慢できてるけど。……これ以上自分の容姿を肯定するのナルシストみたいだからこの辺でやめておこう。

 鞄を手にして部屋を出ると、再び一階に降りる。リビングに向かうと台所に居た和行が私の下まで来ると、

 

「お前、今日は休め」

 

 いきなりそう告げてきた。

 

「え、なんで?」

「無理に動いて風邪がぶり返したら大変だろ。だから今日は大事を取って休め」

「でも……」

 

 私を心配して言ってくれているのは分かるんだけど、何故か私にはお前と一緒に居たくないから家にいろと言われているように聞こえてしまった。私はずっと和行の傍に居たいのに。和行のお世話とかしていたいのに。和行の傍に私が居ちゃ駄目なの?

 

「お前のことが心配なんだ。分かってくれ」

「は、はい……」

 

 ああ、私の事を思って言ってくれてたんだ。うん、家で大人しくしています。自分でも簡単に言うこと聞きすぎでしょと思うけど、お前が心配なんだと直に言われたら言う事を聞かないなんて出来る訳ないじゃない。

 

「あとはそうだな。もうすぐ母さんが朝帰りしてくるはずなんだ」

「朝帰りって……」

「それでさ、母さんが今日は一日家に居るとか言ってたんだよ」

「ああ。八千代さんに私のことを押し付ける気なんだ」

「身も蓋もない言い方やめろ」

 

 八千代さんかあ。私が女の子になってから初めて八千代さんのお見舞いに行ったあの時に、八千代さんから掛けられた「自分に素直になって」という言葉の意味がようやく理解できたから。この思いを八千代さんに伝えないと。和行を私にくださいって。

 

「まあ、とにかく朝ご飯食べちまえよ」

「うん。ありがとう」

 

 お言葉に甘えて和行が作ってくれた朝食を食べることにした。いただきますの挨拶をして箸を手に取る。今朝は和食だ。納豆に卵焼き、鮭にたくあんに豆腐とわかめのお味噌汁だ。和行は朝は和食派だからね。でも、なんでこんなに美味しそうに見えるんだろう。一昨日の夕食と変わらないように見えるのに。まあいいや。早く食べてしまおう。冷めたら勿体無いし。

 

「ただいま~」

「お帰り。母さん」

「お帰りなさい、八千代さん」

 

 和行と一緒に朝食を食べ始めてすぐのタイミングで八千代さんが帰宅してきた。本当に朝帰りしてきたよこの人……。

 

「母さんも食べる?」

「うん。食べる食べる」

「じゃあ座っててくれ」

 

 ご飯を食べる手を止めて八千代さんの分の料理を用意し始めた。和行はこの事を見越して多めに作ってたみたい。うん、やっぱり和行は気が利くね。お嫁さん――じゃなかった、旦那さんに欲しい。男の子にお嫁さんは駄目だよね。

 あ、そうだ。八千代さんにも風邪を引いたことを教えておかないと。和行が八千代さんの分の料理を持ってきタイミングで私は昨日まで風邪を引いていたことを話した。和行の今日は大事を取って休ませるという援護付きで。うん、私の想像通り驚いてた。昔、私が風邪を引いたときのことを話し始めて恥ずかしかったよ。なんで余計な事思い出すんですか、もう。

 

「じゃあ俺は学校に行ってくるから」

「はいはい。気を付けて行ってらっしゃい」

「和行、行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 

 ご飯を食べ終え、弁当を鞄に入れるなどの支度を終えて学校に向かう和行を八千代さんと一緒に見送った。学校へは既に私が休むというのは連絡済みなので問題ない。休むと言っても体調の方は良い方なのでベッドで寝るまでもないのだが、何もしないでぼうっとしているのは嫌なので食器の片づけでもしようかなと考えた時だった。八千代さんに話があると言われたので大人しくリビングのソファーにお互い向かい合う形で座る。

 

「一夏ちゃん、何か良い事でもあった?」

「え? どうしてですか?」

「いつもより生き生きしてるように見えるから」

 

 まあ、八千代さんにはバレちゃうよね。隠しても仕方ないだろうし、正直に八千代さんに話すことにした。

 

「私、和行のこと好きになっちゃったみたいです」

「それは異性として?」

「はい。異性としてです」

「和行とお付き合いする気ある?」

「はい。あります! 和行を私にください!」

 

 私は意を決してそう告げた。和行に溺愛に近いレベルで接している八千代さんの言葉を待つことしかできなかった。私は元の性別関係なく和行と恋人――もしくはそれ以上の関係になりたいと真剣に考えているが、八千代さんが私の事を本当はどう思っているのか分からないからね。私よりも最初から女の子になっている子の方がふさわしいと尤もな言葉を突き付けてくるかもしれない。

 だが、八千代さんから返ってきた言葉は私の予想を外れていた。

 

「いいわよ。はぁ……良かったわ。これで和行にも彼女が出来るわね」

「あ、あれ?」

 

 てっきり駄目だと言われるかと思っていたのに案外あっさりとした反応だった。あの、すいません。私、八千代さんに反対されると踏んでたんですけど。

 

「反対されると思ってた?」

「ええ、まあ」

「ほら、あの子ってばあまりにも女っ気がないでしょ? だから、ね」

「そ、そうでしたね……」

 

 うん。確かに和行には女っ気がないですね。あったらあったらで私が困るから無い方がいいんだけどね。なんだかあっさりとし過ぎてて腑に落ちない。これだけは尋ねておかないと私の気が済まない。

 

「あの、一つ聞きたいんですけど」

「なに?」

「八千代さんって和行のこと溺愛してましたよね?」

「うん、してるわよ」

「彼女が出来たりするのに抵抗はないんですか?」

「ない――って言えば嘘になるけど、あの子と一夏ちゃんが幸せになってくれる方が私は嬉しいから。……涙を呑んで我慢するわ」

「は、はぁ」

 

 私が困惑気味に頷くと八千代さんから「和行はあげるけど、ちゃんと告白してから付き合いなさいね」と続けざまに言われた。え、あのちょっと。それって私が和行に告白しないと駄目ってことですか? ……あの、ちょっと待って。は、恥ずかしいんですけどそれ。和行に面と向かって告白とかちゃんと出来るかな? うん、ちゃんと覚悟が出来てから言おう。昨日の今日で告白できる勇気は私にはないから。散々脳内で旦那に欲しいだのと言っておいてなんだけど、脳内で考えるのと実際に行動に起こすことは別問題だし。

 何はともあれ、これで八千代さんという関門は突破したことになる。あとの問題は千冬姉かな? 千冬姉なら「妹が欲しければ私を乗り越えていけ」とか和行に対して言い出すだろうし。というか、言い出さないとおかしい。普通は男親とかがそういう発言をするんだろうけど、うちの場合は千冬姉が家長なので必然的にそうなってしまう。

 もしそうなって和行と一緒になることができなかったら私、千冬姉と縁を切るかも。千冬姉よりも今は和行の方が大事だもん。和行と一緒になれないなら――ふふふ、邪魔する輩には消えて貰わないとね。それが例え千冬姉でも。国であっても、世界であっても。私がそんな物騒なことを考えているといつもの柔らかな笑みでこちらを見てきていた。あ、これ、また心を読まれたかも。

 

「千冬ちゃんのことなら大丈夫よ」

「なんでそう言い切れるんですか?」

「私が根回ししておいたから」

 

 ん? どういうこと? え、八千代さんは何を言ってるの?

 

「……はい? い、いつそんな事したんですか?」

「一夏ちゃんと和行を同居させる話を千冬ちゃんに持ちかけた時にね、他の悪い男に一夏ちゃんを渡すくらいなら和行の方がいいと小一時間教えたのよ」

 

 ええっと、すいません。理解が追い付かないんですけど。え、あの千冬姉を説得したんですか? 嘘でしょ……。でも八千代さんが嘘を吐くと思えないし。

 

「それに、あの同居話は元々は和行と一夏ちゃんをくっ付けるために考えた話だったからね」

「え? 私は私の身の安全を考慮してって千冬姉に聞いてたんですけど」

「あー、やっぱり千冬ちゃんはそう言ったのね」

 

 え、あれって嘘だったの? 本当は私と和行をくっ付けるための同居って……頭が痛い。あの、未成年の二人をくっ付けるためにわざわざ同居させるとか何を考えてるんですか? はあ、八千代さん達の掌の上で転がされてたんだね私と和行は。……なんかイライラしてきた。最初から知らされてても困っただろうけど、それはそれ。これはこれだ。

 うん、とりあえず八千代さんに尋ねておきたいことがある。和行が同居の本当の理由を知っているかどうかだ。これで和行が八千代さんや千冬姉と同じく折檻対象に入るかどうかが決まる。もし折檻対象に入る事になったら和行には優しくするつもりだよ。もしかしなくても、私の恋人になるかもしれないんだから体や精神とかに負担を掛けたくないから。

 

「八千代さん。和行はその事を知ってますか?」

「うん知ってるわよ」

「本当ですか?」

「本当よ。和行は男女の同居はダメって言ってたんだけど、一夏ちゃんの事を考えて同居を受け入れたんだから」

 

 ああ、やっぱり和行は和行だ。私の事をちゃんと考えてくれていたんだ。嬉しい、大好き。こう胸の辺りがぽかぽかしてくる。よし、和行への折檻はなし。はい決定。

 

「乙女の顔になっているわよ、一夏ちゃん」

「ッ! か、和行のことを考えるとこうなっちゃうんです! 気にしないでください!」

「完全に女の子の反応よね。これ」

 

 八千代さんが何か言っているけど私の頭には入ってこなかった。だって、気を抜いていると和行の事ばかり考えちゃうんだもん。現に頭の中が和行のことで埋め尽くされてるし。ああ、早く和行帰ってこないかなあ。あ、そうだ。忘れない内にあれをやっておかないと。やること? もちろん、八千代さんの折檻だよ。

 その後、私は昼食を八千代さんと食べたりして和行が帰ってくるのを待っていた。そして、その時は来た。そう和行の帰宅時間が迫っていた。

 

「ただいま」

 

 あ、和行が帰ってきた。私は椅子から立ち上がると和行を迎えるために玄関へと向かう。

 

「おかえり」

「おう、ただいま。って、その服、お前持ってたっけ?」

「これ? 私の誕生日に八千代さんが私に買ってくれた服だよ」

 

 私が今着ている服が気になったのか、和行を見てきている。あの後、制服から私服へと着替えようとしたんだけど、新しく買ったこれの存在を思い出したので着る事にしたのだ。ちょっとスカートが短めなのが難点だけど。スカートから見える黒色のタイツと私の胸元に、和行の視線が段々と集中しだしているのが手に取るように分かった。

 もう、和行ってばえっちなんだから……。軽く見ているつもりなんだろうけど、ガン見の範疇に入ってるよそれ。和行はやっぱりおっぱいと黒タイツが好きと脳内メモに書き記しておき、和行に感想を尋ねることにした。

 

「ど、どうかな?」

「似合ってるよ」

「あ、ありがとう……」

 

 えへへ、和行に褒められた。それだけで胸がかなり熱くなった。和行、大好き。結婚して。今すぐにでも和行に抱き付いてキスしたい衝動に駆られるが、そこはまだ正常に動いている理性でぐっと堪えることにする。

 

「そういえば、母さんは?」

「八千代さんならリビングにいるよ」

 

 靴を脱いで家に上がった和行にそう教えた。和行はスリッパを履いてリビングへと向かっていったので、私もそれに続く。が、和行は入口近くで固まっていた。ああ、中の八千代さんの様子を見ちゃったんだね。今の八千代さんがどうなっているのかというと、痺れたカエルのように足をひくひくとさせている。まあ、昼食時とトイレに行くとき以外はずっと正座させててさっき解放したばかりだからね。

 

「お前、母さんに何をした?」

「それ以上は乙女の秘密だから聞いちゃ駄目だよ?」

「アッハイ」

 

 有無を言わせぬオーラを纏いながら和行に言葉を返したら、和行からは気のない返事をしてきた。

 

「そ、そうだ。これ、今日の分のプリント」

「ありがと」

「鈴達も心配してたから、明日学校に行ったら声を掛けてやれよ」

「うん。わかってるよ」

 

 そう言い残して二階の自室へと向かう和行の背中を見送りながら、私は思わず頬を緩めてしまった。やっぱり和行のことが格好良く見えて仕方ない。にやにやが止まらない。

 

「和行の背中、格好良かったなぁ……」

「これは重症ね」

 

 いつの間に復活していた八千代さんがそんなことを呟いていたけど、私には何の事か分からなかった。仮に私の脳内恋愛フィルターの所為で和行の事がかなり格好良く見えているのだとしても、和行の格好良さは揺るがないと思う。確かに和行はイケメンって感じじゃないけど、それでもカッコいい部分はカッコいいんだよ。そうだ、八千代さんにあの話をしてみよう。

 

「八千代さん、お話があります」

「なになに? 面白い話?」

「ええ。飛びっきり楽しい話ですよ」

 

 目論見を話し終えたこの時の私と八千代さんは完全に共犯者のような顔をしていたと思う。だって、この時は二人の意見が一致してしまっていたから。和行を着せ替え人形にするという一つの考えが。




うちの一夏ちゃんから肉食系の臭いが漂っているのは、この一連の話を書く前に息抜き感覚で伝説のあの人の活動報告を見返してしまったからです。あと私の趣味。
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