女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

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真面目なようでふざけているようでイチャついてる、いつもより文字数多め回。あ、そういえば本小説のUAが十万を超えました。ありがとうございます。


第三十六話 ――怖かった

 季節は三月上旬。あと少しすれば春休みという時期に差し掛かっていた。俺の誕生日が過ぎ、鈴とのお別れの時期が近づいている。

 自宅のソファーに座っている俺の気分は重く沈んでいた。それどころか、俺の隣にいる一夏や母さんまでもが俺と同じように暗い雰囲気を放っている。なんでこんな嫌な雰囲気になっているのかという理由を簡潔かつ説明するとしたらこれしかないな。

 さっきまで俺――誘拐されてました。いきなりのことで俺もまだ頭の整理が追い付いていないんだが、マジで誘拐されてたんだよ。

 

「ねえ、和行。本当に大丈夫だったの?」

「大丈夫だって。こうして無事でここにいるんだから、な?」

「分かってる。分かってるけど……」

 

 一夏がさっきから似たようなことばかり聞いてきてるけど仕方ないか。こいつ、俺が居なくなって凄く心配してたって母さんから聞いたから。一夏は放課後にクラスメイトの女の子たちとお喋りしてたお蔭で、帰るタイミングがズレたからか先に帰っていた俺の誘拐現場に合わずに済んだ。本当に良かった。一夏が巻き込まれなくて。

 それでだ。なんか目が覚めたら俺だけがコンテナっぽい物の中に入れられてたんだけど、外から監視する為なのか分からないけど窓みたいなのが付いてそこから外を覗いてみたら一機だけISが居ました。誘拐犯がなんでそんなものを持ってるんだよと思ったけど、そのお蔭で連中が唯の誘拐犯でないのは明白になった。

 正直怖かった。誘拐されたこともそうだけど、ISが居たのが一番怖かった要因だ。あんなのでビビらない人間なんて千冬さんくらいだろう。

 

「和行。あなた、お風呂に入ってきなさい」

「え?」

「汗、掻いたでしょ。お風呂はもう沸いているから」

「う、うん。ありがと、母さん」

 

 母さんの言葉に思考を中断させられた俺は母さんの言葉に従い、着替えを用意してから風呂に入ることにした。確かに汗を掻いたからな。あんな目にあって汗の一つも掻かないとか人間なんてやはり千冬さんくらいだろう。

 

「ふう……」

 

 俺は脱衣所で服を脱いで浴室へと入った。洗髪やら体を洗うのを済ませてから、母さんが沸かしておいてくれたお湯に浸かる。それだけで俺は少しだけ心が落ち着いてきたように感じていた。浴室の天井を見つめながら、俺は再び今日の出来事を思い出すことにした。

 なんかね、水色の髪をした多分俺よりも一歳年上くらいの人がISを纏って現れて、ISや誘拐犯を鎮圧と拘束をしてから俺をコンテナから出してくれたのよ。その人の言葉を信じるならば、千冬さんに影ながら護衛を頼まれてたらしいんだけど。

 それだけなら良かったんだけど、誘拐犯が俺が誘拐された証拠を残さないようにと考えたのか俺の鞄を俺と一緒にコンテナにブチ込んでいたのだが、その鞄には以前束姉さんがくれた例の人形が入れっぱなしになっていたのだ。水色の髪の人と一緒に逃げようとしたら伏兵的なものが現れたんだが、鞄から変な音が鳴ったので解放された腕で鞄を開けて人形を取ったら空からISが降ってきたんだ。水色の髪の人とそのISが視線を合わせた途端、

 

『誘拐犯死すべし、慈悲はない!』

 

 等と同時に言い出した時は変な声が出そうになった。目を合わせた間に何の意見の一致があったのかは知らないが、お前らどこのニンジャだよ、と。伏兵的なものが持ち出した二台目のISとの戦闘があったけど謎のISと水色の髪の人が操るISがほぼ圧倒してた所為で誘拐犯のISは一分も持たずに解除させれてた。誘拐犯よりこっちの方が怖いって思ったわ。

 吐かれたコトダマとは裏腹に伏兵を含めて死人ゼロで誘拐犯がまたもや捕縛されてたんだが、謎のISは水色の髪の人が止める間もなく飛び去っていったよ。……あれを作ったのって誰がどう考えても束姉さんだよね? ISの腕のところに兎のマークがあったし。

 それで俺は残った水色の髪の人に安全なところまでISで運んでもらったんだが、せめて名前だけでもと名前を尋ねたんだけどさ――

 

『謂れはなくても即参上。軒轅陵墓より良妻狐のデリバリーに――じゃないわね。通りすがりのIS操縦者よ! 覚えなくていいわ!』

 

 すいません。あなたのその台詞の所為で忘れることなんて出来そうにないです。なんで台詞がネタ塗れになってるんだ。よし、あの人の名前(仮)は露出強さんにしよう。なんか声似てるし等と考えている間になんか千冬さんが現れて「無事で良かった」と声を掛けられて安心したのか、その場にへたり込んでしまったのは許してほしい。

 そんなこんなで「その他諸々のごたごたはこちらに任せて、お前は家に帰って休め」と男前な口調で言ってくれた千冬さんに家まで送られて、家へと無事に帰ることが出来たという訳だ。

 

「あ、れ……」

 

 ふと、湯船に浸かっているいる自分の腕を見てみる。どういう訳なのか、俺の手はまた震えていた。……おかしい。一夏が傍に居てくれていた間は震えてなかったのに。

 ――ああ、駄目だ。震えが止まらない。震えを抑えようとしてみるが全く効く気配がない。それどころか震えが増すばかりだ。……なんだかんだと心の中で明るく言ったりしてみたものの、俺、やっぱり怖かったんだ。一夏もドイツで誘拐されてたあの時、同じようなことを考えていたのかな。……一夏。怖いよ、助けて……。

 

「一夏……」

「和行? どうかした?」

 

 縋るように呟いていた俺の言葉に近くいないはずの一夏の声がした。え? 一夏、何処にいるんだ? ……脱衣所に居るのって一夏か? このまま何も言葉を返さないで心配させるのもアレだし、いつも通りを装おう。

 

「な、なんでもないよ」

「そう? ここにバスタオル置いておくね」

「あ、ああ。ありがと」

 

 俺の言葉を聞いたのか、一夏は脱衣所から去って行ったようだ。

 

「あれ?」

 

 思考を中断して自分の体を触ってみる。先ほどまで震えていた体が、今は何ともないかのようだった。まさか、一夏の声を聴いたお蔭で震えが止まったのか? ……やっぱり一夏が俺の心の支えになっているみたいだ。多分、彼女が居なかったら今頃体を震わせたままだったかもしれない。

 それからしばらくして十分温まったと判断した俺は浴室から出た。脱衣所で用意していた着替えを着ると、リビングに居るはずの一夏の下へと向かった。リビングに入ると俺の視界にソファーに座っている一夏の姿が収まった。やっぱり一夏がそこに居るってだけで俺、安心してるな。

 

「一夏」

「あ、和行。上がったんだ」

「うん。母さんは?」

「八千代さんなら自室で千冬姉と電話してるよ」

 

 そうなのか。だから母さんの姿が見えなかったのか。……今ならいけるかも。

 

「傍に行ってもいいか」

「いいよ」

 

 一夏の了承を取った俺はそんな彼女の傍へと向かう。一夏の隣に腰を下ろして、彼女の方を向いた。ああ、やっぱり一夏が近くにいると心が落ち着く。俺がそんな風に考えていると一夏は俺へと視線を向けてくる。

 

「和行。本当に大丈夫?」

「大丈夫だって。心配性だな一夏は」

「だって……」

「俺としては一夏が誘拐に巻き込まれなくて本当に良かったよ。もし巻き込まれてたら気が気じゃなかったかも」

 

 好きな人の前だから明るく振る舞ってみたが、やはり心の中ではまだ恐怖が根を張り続けている。一夏の傍に居るからかあまり怯えずに済んでいるが。

 

「和行も昔の私と同じことを言うんだね……」

「ん? ああ、そういえばそんなことを言ってたな」

 

 口を開いていた俺の視界が突如急転する。左側から体に走る衝撃と共に俺の体はソファーの上に転がり、俺の目は天井を映していた。体から衝撃が抜けきれない中、俺の体にぶつかってきた人物へと視線を投げつける。先程まで俺が座っていた隣に居た一夏が俺の腹に跨るような体勢を取っていた。スカートがちゃんと防御しているお蔭か、一夏が穿いているおパンツは見えていない。セーフ……なのか?

 

「一夏! お前――」

 

 何をやってるんだよと口を開こうとしたが――できなかった。一夏の表情を見た途端、俺は言葉を失ってしまったから。だって、

 

「泣いて、いるのか?」

 

 そう、あの一夏が()()()()()から。男の時でもあまり他人に見せたことのない沈痛な面持ちで俺を見つめている。こいつが泣くところなんて、一夏が誘拐されたあの時に千冬さんに謝っていた時以来見ていない。頻繁に泣くような奴じゃないからな一夏は。

 俺が泣かせたみたいに思えてしまう所為か、俺の心に次々と棘が突き刺さっているかのように心が痛む。……痛い、本当に痛い。心の鋭い痛みに耐えながら、一夏の瞳から溢れてくる大粒の涙が次々と俺の服へと落ちていくのを眺めていると一夏は静かに口にを開いた。

 

「――怖かった」

「えっ」

「和行が居なくなるかと思って、怖かったんだ」

「一夏……?」

「本当に怖かったんだぞ! 和行が居なくなったらって考えたら頭の中が真っ白になって、ぐちゃぐちゃになって!」

「……一夏」

()、和行が居なくなったら、どうやって生きていけばいいのかわかんねえよ……」

 

 一夏の口調がいつもの女言葉から、男の口調に戻っていた。……お前、自分の口調を崩す程に俺の事を思っていてくれたのか。俺のような奴には勿体ないくらいだな。でも、嬉しい。一夏の気持ちが本当に嬉しい。

 

「頼むから消えないでくれよ。お願いだから……」

 

 涙を流しながら俺に懇願してくる一夏に俺は何も言えなくなった。俺は一夏に退いて貰うように頼んでから、思い切り一夏のことを抱きしめた。今の俺にはこれくらいしか出来なかったし、それに何故だか分からないけど俺自身がこうしたいって感じたから。

 

「あっ」

 

 一夏の吐息と言葉が漏れるのが聞こえた。腕の中に一夏の温もりを感じる。本当に温かい。物理的な意味だけじゃなくて、心も温かくなってきている。この暖かさのお蔭で俺の心に巣食っていた恐怖心がどんどん消えていくのを感じる。一夏とずっとこうしていたい。少しだけ抱き締める力を強めると、一夏も俺の体に手を回してくれた。

 どれくらい一夏と抱き合っていただろうか。一夏が俺の背中を優しく叩いてきた。

 

「か、和行。そろそろ苦しいから離れてくれないか?」

「あ、ごめん」

 

 一夏にそう言われた俺は大人しく一夏から離れることにした。むう……もっと一夏に抱き付いていたかったのに。それにしても一夏の泣き顔もこうして見ると凄く良い。涙は女の武器って本当だな。もう一夏から抜け出せそうにないや。

 

「その、嫌じゃなかったか?」

「別に嫌じゃなかったから、今度からどんどん抱き付いてもいいぞ」

「いいのか?」

「いいんだよ」

 

 涙を拭き取りながら一夏はそう告げてきた。そう言うのなら今度からちゃんと許可を取ってから沢山抱き付こう。一夏をぎゅっとした時の感触が最高だったし。

 でだ、そろそろ口調の事を教えた方がいいよなこれ。だって、なんか一夏ってば自分の口調が変わってるのに気付いていないっぽいからさ。

 

「一夏」

「なんだ?」

「口調、男のやつに戻ってるぞ」

「……は?」

 

 俺の指摘した途端、一夏はやっと自分の言葉遣いが元に戻っていたことに気付いたのか、急に顔を赤らめた。泣いたり顔を赤くしたり忙しい奴だな。でもそこが可愛んだよなあ。

 

「あ、えっと。こ、これで大丈夫かな?」

「うん。戻ってるよ」

「……その、和行は嫌じゃなかった? 私の男口調」

 

 ん? もしかして一夏の奴、自分が男の口調で俺と会話してたのを気にしているのか。うーん、俺は別に気にしないんだけどなあ。だって口調が男だろうが、言葉遣いが女の子のものになっていようが一夏は一夏だから。俺が好きなのは一夏本人なんだし、口調なんて些細な問題というか。今更だが、変に矯正しないで男口調のままでも良かった気がしないでもない。ほら、家庭的で清楚そうな女の子が男勝りの言葉で話すとか最高じゃない?

 

「別に俺は気にしてないよ」

「ほんと?」

「ああ。だって口調がどうであれ、一夏は一夏だし」

「和行……」

「ま、まあ。女の子口調の方を聞き慣れちゃってるから、そっちの方が俺としては助かるけど」

 

 俺のその言葉を聞いた一夏は一瞬だけポカンとした顔をしてから、俺の顔を見つめながら微笑んできた。やばい、クッソ可愛い。

 

「和行って本当に変わってるね」

「朴念仁のお前にだけは言われたくない」

「む? 私の何処が朴念仁なの?」

 

 そういうところだよと言いたくなったのだが、何故か俺の腹が返事をした。……やばい。腹減ったみたいだ。急に気恥ずかしくなって俺は一夏から視線を逸らす。

 

「お腹減ったの? 何か軽いもの――そうだね、サンドイッチでも作ろうか?」

「……頼む」

 

 空腹に耐えられそうにもなかったので一夏にそうお願いすることにした。一夏は俺に待っていてと言い残すと、そのままキッチンへと向かっていく。俺はそんな一夏の背中を見送りながら、ある事を考え始める。

 やっぱり俺は一夏のことが好きだ。大好きだ。愛してると言っても過言じゃない。まだ中学生の癖に何を言ってやがると自分でも思うのだが、もうこれ以上はこの気持ちを止められそうにない。

 ……そろそろ告白しないとな。さっき一夏が俺が居なくなったらどう生きて行けば分からないって言ってたけど、それは俺も同じだ。俺も一夏が居ないと駄目なのかもしれない。気が付けば一夏のことばかり考えているし、一夏と一緒に居れるのが何より嬉しい。だから、告白する。絶対に。

 

「和行。サンドイッチ出来たよ」

「ありがと」

 

 一夏からサンドイッチが盛られた皿を受け取ると、いただきますの挨拶をしてから俺はサンドイッチを食べ始めた。昨晩の残りのポテトサラダを挟んだものだったが、腹を満たすにはこれで十分だ。あっという間に食べ終えた俺はごちそうさまの挨拶を忘れない。

 

「ごちそうさま」

「うん。よかった、ご飯はちゃんと食べられるみたいだね」

「まあなんとかな。それに一夏が俺の為に作ってくれたんだ。残すわけにはいかないだろ」

「も、もう! なんでそういうことを堂々と言えるのかな……」

 

 そう呟いている一夏が物凄く可愛く思えるのは俺だけですかね。だって、嬉しそうな顔しながらこんなことを目の前で言われたら誰もが俺と同じことを考えると思う。俺がこういう台詞を吐けるのは相手が一夏だからだよ。他の人間相手ならこういう事言わないから。

 そんなやりとりをしていると千冬さんとの電話を終えたのか、母さんがスマートフォンを片手にリビングへ戻ってきた。もう時間だから早く寝ろと言われたので時計を見てみると、時刻はすでに夜の十時を指していた。正直、あんな事があった後だからちゃんと寝れるか不安なのだが、無視する訳にもいかず母さんの言葉に従うことにした。俺は歯を磨いてから自室へと向かって寝巻に着替えたのだが、

 

「一夏? 何してるんだ?」

「和行の傍に居ようかと思って」

「いや駄目だろ」

 

 俺の部屋に一夏まで付いてきた件。いつの間に着替えたのかパジャマ姿になっている一夏はとても可愛らしいが……あの、君の部屋は俺の部屋の反対側ですよね? 今の君は女の子なんだからそっちに行きましょうよ。野郎と同じ部屋なんて駄目だろ。

 

「私と同じ部屋で寝るの……嫌なの?」

「い、嫌じゃないけどさ……」

 

 でもほら、俺達まだ学生だしさ、冗談抜きで何かの間違いが起きたらヤバいと思うのよ。もし間違いを犯して子供が出来たら母さんは普通に受け入れるかもしれんが、千冬さんがどういう態度を取るか分からない。下手をしなくてもぶっ飛ばされると思うんだ。千冬さんにぶっ飛ばされたら俺死ぬかもしれんな。あの人の身体能力って完全に人外に達してる感あるから。

 

「じゃあ一緒に寝てもいいよね? あ、枕取ってくるからちょっと待ってて」

 

 俺にそう告げた一夏は自室へと行ったと思ったら、あっという間に枕を持って俺の部屋に戻ってきた。一体なにをどうやったら一瞬で部屋の行き来ができるんだ?

 あれ、そういえばこいつ、布団とかを敷こうとする気配すらないんだが……とてつもなく嫌な予感がする。

 

「布団とかないけど、何処で寝るつもりなんだ?」

「和行のベッドだけど?」

 

 あの、すいません。そうなると俺が寝る場所がなくなる――ああ、そういうことですか。こいつ、俺と添い寝するつもりか。……なんかもうツッコむのも疲れた。早く寝たい。でも俺、ちゃんと寝れるのだろうか。とにかく間違いだけは起きないようにしないと。それだけは本当に気を付けないと駄目だ。

 

「あ、あれ? 和行が珍しく抵抗しない……」

「……抵抗する気も失せたよ」

 

 俺は一夏にそう返しながらベッドに入り、壁の方へと背中を押し付ける。これで何とか一夏もベッドに入れるだろう。そんなことを考えている内に一夏は俺の方へと顔を向けながらベッドに入ってきた。一人用ベッドに二人が入っている所為で軽く密着する形になっているが不可抗力ということにしておこう。

 ところで、なんで一夏は俺の頭がある辺りに自分の胸を置いてるんですかね。これじゃガン見するつもりじゃなくてもガン見してしまうんだが。あの思わず視線を向けてしまう程に大きい一夏のおっぱいが俺の眼前にあるとかやばい。前から思ったけど、中学生なのに何でこんなに大きいんだよ。高校生とか成人になったらどうなるんだこれ。……変な気分になってきた。一瞬だけ一夏でドスケベな事を考えちまったよ。一夏のおっぱいの匂いをルイズしたい。

 

「えい!」

 

 俺が邪なことを考えていると、いきなり一夏が自分の両腕を俺の後頭部へと回した。するとそのまま両腕を俺の頭へと押し当てて、自分の胸に抱き寄せた。

 え、あの……。おいおい! 何やってんのこのTS娘は!? 俺の頭を自分のおっぱいに押し付けるとか、お前に恥じらいはないのか!? てか、このパジャマの裏側にある布状の感触って、もしかしなくてもブラジャーだよね? や、やばい。おっぱいの他に目の前に一夏のブラがあるって認識した途端、体中が熱くなってきた。あっ、でも、このままでいいかも。物凄く落ち着くし、パジャマとブラ越しの一夏のおっぱいは柔らかいし……。一夏大好き……。

 ――って! 待て! 意識を保つんだ俺。このままじゃ駄目だろ。なんで一夏はこんなことをしてるんだ? 完全に付き合っても居ない男に対してやっていい行動じゃないだろこれ。

 

「和行が眠るまでこうしてあげるね」

 

 そんな優しい声が俺の耳朶に届いた。……ああ、なんだか一夏のこの声を聴いただけで些細な疑問なんて吹き飛んだ上に眠たくなってきたよ。本当に一夏ってば母性に溢れすぎじゃないの? 前までなら駄目にされるって拒否してたけど、今は別にいいかな。だって一夏だし、この包容力には抗えそうにもないくらいに心地いいから。

 俺は抵抗する事なく彼女の抱擁を受け入れ続けた。そして、段々と眠気が回ってきたので眠る前に一夏への挨拶を忘れずにしておく。

 

「お休み。一夏」

「うん。お休み、和行」

 

 一夏の声を聞きながら、俺は微睡の中へと落ちていく。心の中で一夏への愛を以前よりも膨らませながら。

 

 ――大好きだよ、一夏。絶対に誰にも渡さない。一夏は俺のモノだ。




誘拐云々は一話とか二話を丸々使って書くとガチシリアスになるのでこうなりました。
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