女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

39 / 51
第三十八話 九条和行ィ!

 あれから時間経ち、時期は春休みに突入していた。俺と一夏は鈴の見送りをする為に空港に行き、見送りを終えたので電車で駅前へと戻ってきていた。時間は既に午後の二時を過ぎている。鈴とのお別れはそこまで物悲しげな雰囲気にはならなかった。学校でのお別れ会でも明るい感じだったからな。ちなみだが見送りには俺と一夏、弾と数馬くらいしか来ていなかった。まあ鈴の「別に見送りはしなくていい」って言葉をガン無視してきたのが俺達くらいだから仕方ないんだけどさ。

 見送る際に「一夏を泣かせたり、変なことをしたら――あんたのタマを二重の意味で取りに行くから」となんか犯行予告染みたことを宣言されたよ。その言葉を聞いていた一夏は苦笑いを浮かべ、弾と数馬は俺に同情していたが……変な事、ねえ。俺、もしかしなくても鈴にタマを取られるの確定させられてます? だって、一夏との仲が進展していったら多分鈴が想像しているような変な事をするだろうし。

 そうだな。今の内に遺書を書いておかなきゃ。財産は全部一夏か俺の子供に託すって。……もう子供のことを考えるなんて、一夏に染められてきてるな俺。だって一夏のやつが俺との子供が欲しいって頻繁に呟いているから気にしないようにしても意識しちまうんだよ。

 

「さて、帰るか」

「うん」

 

 遅めの昼食を取るために寄っていたファミレスで会計を済ませて店の外に出たのを皮切りに、そんな会話を交わした。会計の際、一夏は自分の分は自分で出すと言ってたけど、好きな女の前で格好つけたいっていう欲求に駆られた俺が強引に全額支払った。その事で少しだけ一夏が膨れてたが、そんな一夏も可愛いのでよしとしよう。

 さて、今日は他に用事もないし早く帰るか。俺は一夏に声を掛けると帰宅する為にその場から歩き始めた。

 

「ねえ」

「ん?」

「恋人繋ぎして?」

「いいぞ」

 

 その最中に一夏が恋人繋ぎを要求してきたので快く応えた。断る理由なんてないからな。むしろ一夏から恋人繋ぎをしたいって言われて嬉しいくらいだから。一夏の手の柔らかさを堪能しながら歩き続けた俺は何事もなく家の近くへと戻ってきたことに胸を撫で下ろした。何事もなくて本当に良かった。

 あの誘拐事件以来、出かける際にかなりの神経を使うようになったからな。出かける際は必ず一夏が付いてきてくれるお蔭で精神的な負担はマシな方なのだが、それでも心配なものは心配なのだ。千冬さんがあの露出強さんが所属している組織が陰ながら俺やついでに一夏の護衛を続けてくれていると教えてくれたから大丈夫だとは思うんだが……。あれ? 一夏とこの手を繋いでいるのもあの露出強さんやその仲間達に見られてるってことになるよね?

 ……ヤバい。恥ずかしい。恋人同士でもないのに恋人繋ぎをしているのを見られているとか羞恥心で死ねる。うん、忘れよう。さあ、早く家の中に入って一夏と思う存分イチャイチャするぞ。

 

「あれ?」

 

 家の鍵を取り出して、ロックオープンって感じで鍵穴に入れたのだが――玄関のドアが閉まった。……おかしい。空港に行く前には鍵を閉めたはずだ。一夏にも確認して貰ったから空けたまま出かけたなんてことはあり得ない。普通ならばドアが開くはずなんだ。ドアを開けたのが誘拐犯の仲間である可能性を考えたが、そのパターンなら護衛の人達が現れて俺達を安全なところに連れて行く手筈になっている。未だに護衛の人達が出てこない時点で誘拐犯の仲間の線はないだろう。

 あれ? そういえば、前にもこんなことがあったような気がするぞ。確か束姉さんが去年うちの家に侵入していた時も似たような状況だった気がする。……うわあ、物凄く嫌な予感がしてきた。

 

「……」

「和行?」

「一夏。今すぐ千冬さんに連絡できるよう準備しておけ」

「え? どうして?」

「家の中にウサミミ付けた変なのが居る可能性が高い」

「っ!? わ、分かったよ」

 

 一夏に電話を掛ける準備をして貰いつつ、俺は玄関の鍵を開けた。俺は中に居る人物を確かめようと、なるべく音を立てないように静かに屋内へと入る。靴からスリッパに履き替え、リビングのドアをゆっくりと開くと、

 

「やっぱりか……」

「はろー! かずくん! お久しぶり!」

 

 ――兎が、そこにいた。目の下に隈を作っている所為で折角整っている顔が台無しになっている気がするが、この人は自分の外見にあまり頓着してないだろうから指摘するだけ無意味だろう。ソファーからこっちをチラチラと見ているウサミミを認識した俺の行動は早かった。

 

「一夏! 千冬さんに通報!」

「了解!」

「ちょ、やめて!?」

 

 玄関前に居る一夏にそう叫んだタイミングでうさみみ――束姉さんが俺の腰に両手を回して抱き付いてきた。俺の太腿に束姉さんのボリュームがある双丘が当たっているけど全然嬉しくない。

 一夏に恋する前だったら少しくらいは意識したかもしれないけど、一夏に懸想していて一夏のメロンの柔らかさを服越しとはいえ何度も味わってしまった今となっては鬱陶しいだけである。それに形が好みじゃないからね、一夏のスイカの方が俺好みの形してるから。

 

「離れないとそのウサミミ捥ぎますよ?」

「かずくんが辛辣すぎる!? 私、かずくんの好感度を下げることなんてしてないはず!」

 

 一夏を強制的に女の子に変えたり、人の家に勝手に侵入して来たり、俺の腰に抱き付いて居る人が何を言ってるんですかねえ……。本当だったらもう少し罵ってやりたいところだが、この人には誘拐事件の際に助けられた借りがあるのであまり強く出られないんだよなぁ。

 とにかく一夏を呼ぼう。一夏が居ないと多分話が進まないぞこれ。

 

「一夏。家の中に入ってきていいぞ。あと助けてくれ」

「なにかあったの?」

「束姉さんに抱き付かれてる」

 

 俺がそう告げた瞬間、何をどうやったのか一夏がいつの間にか俺の傍に立っていた。遅れて玄関が締まる音がリビングにまで聞こえてくる。一夏の足元を見てるときちんとスリッパを履いていた。え、ちょっと……ホント、一体何をどうやったんだ?

 そして一夏の顔と気迫がマジギレ寸前の千冬さんみたいになっている件。あれ、これヤバくね? 主に束姉さんの生命活動的な意味合いで。

 

「束さん。早く和行から離れてください。汚らわしいので」

「あれ? 聞き間違いかな? いっちゃんが私に向かって汚らわしいって言った?」

「言いましたけど何か?」

 

 にっこりとしているが、その裏で憤怒の炎を燃え上がらせながら一夏は束姉さんに言葉を返した。それを見た俺は「まあ、そうなるな」と心の中で呟いた。一夏は俺の事になるとかなり嫉妬深くなるからな。まあ、それ俺もなんだけど。

 そんな事を考えていると、一夏の方を見ていた束姉さんは顔を俺の方へとくるりと向けてくる。

 

「かずくん」

「なんですか?」

「私のおっぱい、どう?」

「嬉しくも何ともないです。冗談抜きで千冬さん呼びますよ?」

 

 軽く怒気を込めながら放った俺の言葉が利いたのか、これ以上弄るのに飽きたのかは知らないけど束さんはようやく俺に抱き付くのをやめてくれた。

 

「かずくんもいっちゃんもつれないよぉ~」

「それで、勝手に人の家に上がり込んだ理由は?」

 

 くだらない用事ならガチで千冬さんに来てもらって、この不審者を連行してもらう事にしよう。

 

「普通に二人に進級祝いを持ってきただけだよ?」

「怪しい」

「普通過ぎるよね」

 

 俺と一夏が間を開けずにそう言い放った所為か、わざとらしく束姉さんが項垂れていた。本当はショックとか思ってないんじゃないか? まあそれは横に置いておくとしてだ。この人はつまらない嘘を吐くタイプではないから進学祝いを持ってきたのは本当だろう。まあ本当の事を言ってるか判断できない時もあるけど。

 

「はぁ……。一夏、とりあえずこの兎さんにお茶でも淹れてくれ」

「あ、うん。分かった。和行にも何か淹れるね」

 

 俺の頼みを聞いてくれた一夏はキッチンへとすたすたと向かってくれた。はぁ……もうやだ。束姉さんと話していたくない。進級祝いって言ったって、それがまともな物じゃなくてヤバい物だったりする可能性があるのがなあ……。だって、過去の行動とかの所為でこの人の事なんて殆ど信用できないんだよ。そういう面での信頼はあるんだけどさ。この人なら絶対に何かやらかすだろうなっていう。

 とりあえず、当時男子小学生だった俺に自分の下着姿の自撮り写真を手渡してくるような真似をまたしてこないとも限らないので警戒しておこう。

 

「それで進級祝いってなんですか?」

「あれだよ。ほら、この前かずくんを誘拐した奴等が居たでしょ?」

「……ええ。居ましたね」

「あいつ等に二度と誘拐とか出来ないように恐か――脅しを掛けておいたから、もう怯えながら外に出る必要ないよ! やったねかずくん!」

「おいばかやめろ」

 

 そのネタは冗談抜きでやめろォ! 危険なネタを口走るのやめてください。昔からこういうところは変わってないなホント! ていうか、いま恐喝って言い掛けませんでしたか貴女? つうか脅しとか……どちらにせよ手荒な事をしたと白状しているようにしか聞こえないんだが。というか意味変わってないし。

 はあ……もういいです。言及する気が失せたのもあるけど、聞いても気分が良い話にはならないだろうから。とりあえず、大手を振って外を歩けるようになった事に対して俺は感謝の言葉を述べることにした。

 

「その、ありがとうございます」

「気にすることないよ。私とかずくんの仲じゃないか!」

 

 無駄にキマっているサムズアップをしてくる束姉さんを見つめながら、俺は前から疑問に感じていた事をまた頭に思い浮かべてしまう。

 この人はどうして俺に興味を持っているんだ? この人は自分が身内と認めた相手以外にはとことん冷たい人間のはずだ。束姉さんに最初会った時にかなり冷たくされたから、俺は身を以てそれを実感している。一夏や千冬さん、束さんの妹である箒は分からなくもないんだが、何故この人は俺みたいな凡人に近い存在を身内として認識しているのだろうか。あ、そうだった。うちの母さんも一応身内判定に入ってるらしい。こちらも理由は不明だ。

 本当に疑問だ。なんでこの人が俺に興味を持っているのかだけはこの際だから知っておきたい。

 

「束姉さん。聞きたいことがあるんですけど」

「なになに? かずくんになら私のスリーサイズやらアンダーカップ、トップバストのサイズを教えてもいいよ」

 

 うん、聞くのやめようかな。なんで自分の色々なサイズを俺に対して大っぴらにする必要があるんですかねえ……。てか、束姉さんのサイズとか誰得なんだろうか。少なくとも俺得ではない。

 束姉さんのサイズよりも俺は一夏のスリーサイズ、アンダーカップやトップバストのサイズの方が知りたいです。好きな人の事は何でも把握していたいっていう純粋な気持ちから知りたいのであって、変態的な気持ちから知りたいって考えた訳じゃないからな。

 いや、今はその事は横に置いておこう。それよりもちゃんとさっき考えた事を束姉さんに尋ねないと駄目でしょ。この機会を逃したら多分この人とはしばらく会えないだろうから。

 

「はぁ……。束姉さんはなんで俺なんかに興味を持ってるんですか?」

「うわあ、スルーされたよ」

「で、どうしてなんです?」

 

 俺の問いに束姉さんは少しばかり顔を伏せたと思いきや、いきなり顔を上げて俺に対して迫真の表情を向けてきた。

 

「九条和行ィ! 何故君が私の身内判定に入っているのか!」

「そういうのはいいので真面目に答えてください」

「ちぇー」

 

 どうしてどこぞの社長というか神になる必要があるんだか。俺には世界で初めて例のウイルスに感染した過去もないんだから真面目に教えてくださいよ。

 

「私がかずくんに興味ある理由だっけ? それはね――」

「それは……?」

「君が――私の()()だからだよ」

 

 紡がれた言葉に一瞬だけ呼吸する方法を忘れてしまった。……どう、るい? 俺が束姉さんと? ははっ、冗談だろう? 俺には束姉さんのような頭脳や知識の引き出しなんてないぞ。ていうか、細胞レベルで人類を超越しているこの人と俺が同類とか冗談にしては質が悪すぎるぞ。

 

「冗談なら――」

「冗談じゃないよ。君は私と同類なんだよ」

「何を根拠に……」

「言っているかって? だってかずくん、私と同じで近しい人間以外どうでもいいって考えてるでしょ?」

 

 ……なんだ。そっちの方か。吃驚させないでくださいよ。いやまあ、勝手に俺が早とちりしたのが悪かったんだけどさ。だってあの言い方じゃ誰が聞いてもそっち方面にしか聞こえないでしょあれ。

 確かに束姉さんが言っていることは合っている。正直言って仲の良い人間以外なんてどうでもいいし、優しくする必要もないって考えてるよ。俺が一夏に対してやたらと甘くて優しいのも多分その影響だろうから。勿論普段はそんな考えなんて表には出していない。ずっと内側にしまいこんでいるからな。束姉さんみたいに露骨に拒絶反応を出すのは流石に不味いから。

 

「まあ確かに」

「ふふふ! さっすが私のかずくんだね!」

「あの、褒められてる気がしないんですが……」

 

 それに俺は貴女のモノじゃないです。俺は一夏のモノなんで。束姉さんの発言に呆れていると飲み物を淹れ終えた一夏がお茶請けのお菓子と飲み物を俺達の下へと戻ってきた。

 

「和行、コーヒーだよ」

「ありがと」

「束さんにはお茶です」

 

 一夏は俺に対しては手渡しで飲み物を渡してくれたが、束姉さんに対してはテーブルの上にお菓子と一緒に雑に置くというあまりにも差がある対応を取っていた。……やっぱり俺に束姉さんが抱き付いていたことに相当キレてるなこいつ。俺も一夏とのイチャイチャラブラブタイムを邪魔された所為でかなり頭にきてるから気持ちは分かるけどね。

 だが、束姉さんはそんな一夏の対応を特に気にする素振りも見せずに出されたお茶をぐびぐびと飲んでいた。俺の左隣へと来た一夏は不審者を見る目でお茶を飲んでいる束姉さんを睨んでいる。

 

「ぷっはぁ! 生き返るぅ~」

「それで束姉さん。俺への進級祝いは分かりましたけど、一夏の進級祝いはなんなんですか?」

 

 お茶が入った湯呑をテーブルに置きながら、束姉さんはわざとらしく右手で拳を作って左手の掌をぽんと叩いた。そして自分の服のポケットを弄り、何かを取り出した。水色の液体と思しきものが入った小瓶のような物を手に持ちながら立ち上がると、一夏の右手を出すように促した。言う通りに一夏が右手を出すとその小瓶を静かに置き、束姉さんソファーへと戻っていった。

 

「あの、これは?」

「――性転換薬だよ」

 

 何気なく発せられた束姉さんの一言に俺と一夏は顔を見合わせる。は? 今頃になってこれを渡すか? そんな視線を束姉さんに投げかけてみるが、当の本人は俺達の視線など何処吹く風といった感じの表情を浮かべている。

 

「あ、それの使い方を一応説明しておくねー。瓶を開けて飲み物か食べ物に混ぜて摂取する。以上!」

 

 至極簡単な説明をした束姉さんはえっへんと胸を張った。その所為で束姉さんの胸に付いているクッションが揺れるが、それと同時に俺は一夏のおっぱいの方へと視線を移した。うん、これで問題ない。やっぱり一夏のおっぱい凄いよな。手から絶対はみ出すだろこれ。やっぱり一夏のおっぱいは最高ってはっきりわかんだね。

 ……うん。薬に関しては要するに束姉さんが前に一夏に性転換薬を飲ませた時のようにすればいいのだろう。だが――

 

「和行……」

「……」

 

 一夏が声を震わせながら俺の名前を呼んでいた。左手で一夏の右手を咄嗟に握る。一夏を安心させるために大丈夫だという思いを込めながら。

 

「ふーん。やっぱりそうなんだ」

 

 束姉さんがにやにやとした顔でこちらを見ていた。何を考えているのか読めない束姉さんの表情に俺は反射的に眉根を寄せる。本当に何を考えているんだこの人は。どうしてこのタイミングで性転換薬なんかを手渡したんだろうか。やはり今まで薬を寄越さなかったのは何等かの思惑があったのだろう。それは一体……なんだ?

 

「そうだ。もう一つ言う事があったんだ」

「なんですか?」

「それの効能についてだよ」

 

 束姉さんの行動に疑問符を浮かべていると、束姉さんが付け足すように口を開いた。

 

「以前のは飲んだ人物の性別とは反対の性別に変わるようになっていたけど、それは使用する人物の強い思いに反応して性別が変わるよう改良したんだよね」

「かい、りょう……?」

「だから、それを使う際は自分が成りたいと思っている性別を念じながら飲むといいよ。上手くやれば性別を固定出来るはずだから」

 

 それ、以前のやつの方が科学的じゃないですかね? なんで改良後は効果がファンタジーっぽいんだよと、俺は心の中でツッコミを入れた。だけどさ、一夏は恐らくこのまま女の子で居るつもりだろうから、これを使う必要はないんじゃなかろうか。そんなことを考えていると、小瓶を見つめていた一夏が束姉さんに向かって質問をしていた。

 

「束さん」

「なにかな? いっちゃん」

「もし仮に私がこれを飲まなかったら、どうなるんです?」

「あー、それ聞いちゃうんだ」

 

 悪戯っ子のような笑みを浮かべながらそんな言葉を発した束姉さんに、俺の背筋が凍るかと思った。なんでこんなに楽しそうな顔をしてるんだこの人……。

 

「別に飲まなくてもいいけどー、何かの()()で性転換薬が食べ物とかに混入したりしてたら大変な事になっちゃうかもよ?」

 

 ……何が事故だ。それは暗に「お前が飲まなかったら、私が後でこっそり飲ませてやる」って言ってるようなものじゃねえか。視線を這わせると一夏も俺と同じ考えに至ったのか苦い顔をしている。

 ――選択肢を与えているようで、選択肢など存在しない。一夏がこれを使う以外の道など残されていないことに俺はただ狼狽するしかなかった。

 

「それとだけど、性転換薬が使えるのはあと一回だけだから」

「どういうことですか?」

「二回使用すると性転換薬に対する完全な耐性が体に出来ちゃうんだよ~。だから、使うならちゃんと考えて使ってねー。やり直しは効かないから!」

 

 終始笑顔を絶やしていない束姉さんとは対照的に俺の表情は暗く沈んだものになっていた。だってあまり考えたくもない可能性が頭に浮かんでしまったから。無意識下で一夏が男に戻りたいと思っている可能性を。

 一夏と目が合う。彼女も俺と同じように陰鬱そうな表情を張り付けている。恐らく一夏も同じことを考えているのだろう。可能性は殆どないに等しいはずだが、万が一ということもある。束姉さんなら何かの仕掛けをしていてもおかしくはないのだから。

 もし、俺が変わりに念じて一夏に薬を使っても、それは一夏の意思じゃなくて俺の意思で性別を固定させたことになる。そんな行動取るのにかなりの抵抗感がある。一夏に全てを委ねるしかないのと悟った俺には、一夏が女の子のままで居てくれることを信じる事しかできなかった。そんな中、俺は最悪の事態に備えてある決意を固めることにした。

 

 ――もし一夏が男に戻ってしまったら、俺も性別を変えてやるよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。