母さんの一声で急遽出掛けることになった俺達は、支度を済ませてレゾナンスに来ていた。結論から言うと外出前に抱いていた不安は杞憂に終わったよ。百パーセントオフなんてなかったし、筋肉モリモリマッチョマンの変態は居なかったのでドンパチ賑やかな騒ぎが起きることもなかった。
外出前に買い物の内容を一夏に伝えたら、妙にテンションが上がりまくった姿に軽く引いてしまうところだったが、一夏のおっぱいが軽く揺れたのを見て気を持ち直したよ。一夏のおっぱいは良いぞ。最高だ。おっぱいぷるんぷるん。
「はあ……」
思わずため息を吐いてしまうが、別にダブルベッドが買えなかった訳ではない。既にレゾナンス内の家具屋で無事にダブルベッドを購入して、自宅に配送して貰う手配は終えている。そこまでは良かったのだが、
「八千代さん、帰っちゃったね」
「ああ……」
母さんの野郎、買い物を済ませたらそそくさと帰りやがったよ。母さん曰く「後は若い人同士で」とか言ってたけど、あんたもまだ若いでしょうが。てか、俺と一夏はお見合いしてないから、あの台詞は不適切な気がするんだが。全く、俺達二人を残して先に帰るとか意味わかんねえ……。
「どうする?」
「どうするって言われても……」
俺の左隣に立っている一夏は困惑気味な表情をしていた。本来だったらダブルベッドを買ってそのまま帰宅するはずだったし。この場に居る身近な人間は俺と一夏だけだ。男と女。カップル……外出……。
――ああ、そういうことか。母さんめ、余計な気を回したな。まあいいか。明日にでも一夏を誘おうかと思ってたから、それが一日早まっただけだ。
「一夏」
「なに?」
「デートしよう」
「ふぇ!?」
え、なにその反応。
「だ、駄目だったか?」
「ううん、違うよ。その、私も同じことを言おうって考えてたからビックリしちゃって」
「そ、そうだったのか」
やっぱり俺と一夏は気が合うな。今回はレゾナンス内に居るし、家で調べ物をしていた際にレゾナンス内に一夏が好きそうな店があるのを見つけたから、今日はそこに行くことにしよう。
「和行」
「ん?」
「いま着ている服、凄く似合ってるよ」
俺が着ている服は以前母さんと一夏が暴走した際に俺が試着して、母さんが購入した服だ。一夏が俺の事を見ながら、うっとりとした顔をしていたのをまだ覚えている。
正直、春が近いのに時期外れかもしれない服を着ているとかなんかアレだけど、着れればそれでいいっていうスタンスなので俺は気にしない。みっともない服装って訳でもないし、一夏も喜んでいるからな。
「あ、ありがとな」
一夏に褒められた事に内心照れまくっているが、何とか表に出さないようにする。家とかならともかく、ここは人目があるから一夏以外にはあまりそういう表情を見せたくないんだよ。
よし、俺も一夏のことを褒めちぎるとしよう。今日の一夏はいつものストレートじゃない別の髪型をセットしている。所謂ハーフアップという髪型だ。今日も俺がセットしようかと聞いたんだが、珍しく拒否られたので少しだけしょんぼりしたのはこの際置いておくことにする。
「一夏もその服似合ってるぞ」
「ほ、ほんと?」
「うん。一夏の雰囲気にマッチしてるよ」
本当に凄いぞこれは。白の膝丈スカートとグレーのニットが一夏の可憐さを倍増させている。まさにスーパーベストマッチというやつだ。
次いでに言うと、たすき掛けされている鞄の所為でパイスラッシュが発生している。一夏のおっぱいが強調されててもうヤバい。服の色の所為もあるのだろうが、一夏のおっぱいがいつもより大きく見える。こ、こんなの駄目だろ。俺以外の男の目に触れさせたら駄目だ。一夏は俺のモノなんだから。
「本当に綺麗だよな一夏は」
「え、あの、その……。ありがと」
俺の発言に照れてしまっている一夏に左手を差し出すと、俺の意図を汲み取ってくれたのか表情を変えた。彼女は微笑みながら右手を俺の左手に絡ませてくる。
「さあ、行こうか」
「うん」
一夏の言葉を合図に俺達はレゾナンス内を歩き始めた。前々から一夏とやっていた恋人繋ぎだが、恋人同士になった俺達ならこれを堂々とやっても問題はないだろう。
「一夏。イヤリングとか興味あるか?」
一夏と手を繋ぎながら歩いているとアクセサリー店が目に止まったので試しに聞いてみた。以前よりは興味とか出ているんじゃないかと思ったのだが、
「うーん、要らないかな」
「まだ駄目か?」
「まだというか、絶対駄目な気がする。耳に穴を空けるのが怖くて……」
やっぱりそうなるか。女の子になってから可愛い服装とかもするようになった際に聞いてたけどさ。やはりネックレスまでが限界なのか。まあ、元が男だからな。女の子に性別が固定されたといえ、あまりそういうのを身に着ける気持ちにならないんだろう。男の時もピアスとかするタイプじゃなかったし。
「じゃあマニキュアとかネイルは?」
「興味ない」
清々しいほどの即答と断言を見たぞおい。一夏が要らないと言っているし、今話題に出た物はスルーさせて貰おう。大丈夫だ。君達のことは他の女の子が買ってくれるさ。俺がそんなことを思量していると、一夏が俺の腕を引っ張ってこちらを見つめてきた。どうしたんだ?
「ねえ、和行」
「ん?」
「一年前の私達が今の私達を見たらさ、どう思うのかな?」
何気なく尋ねてきた一夏の問いに俺は考える仕草をする。だが、それもすぐに終わり、俺は一夏の瞳を見つめながら一夏の問いかけに答えた。よくよく考えなくても俺達が取る反応は決まってるだろうからな。
「間違いなく驚くだろうな。特に一夏は女の子になってるから」
「だよね……」
「前の一夏なら頭を抱えだすんじゃないか?」
「うっ! ひ、否定できない」
まあ実際、一夏が女の子になってから何回も頭を抱えてるところを見てたからな俺は。女の子になった自分を見たら脳の処理が追い付かなくて倒れるとかありそう。そして鈴とかに心配される展開まで読めた。
俺は……まあ、驚きはするだろうな。でも、その後の反応は俺がやってきた対応と変わらない気がする。絶対こいつの力になろうとするだろう。
「そういえば、和行ってどうして私のことを好きになったの?」
「知りたいか?」
「うん。知りたい」
いつかは聞かれるとは思ってたけど、このタイミングで来たか……。でもこれ、言うの恥ずかしいんだが。惚れた理由を自分で自分の彼女に告げるとかさ。まあ、いいか。どうせ近い内に教えるつもりだったからな。時期が早まっただけだ。
「――惚れ」
「え? ごめん、もう少し大きな声で」
「一目惚れしたんだよ。お前が女の子になったあの日に」
俺の言葉に一夏は一瞬だけ呆けてから笑みを溢し始めた。くっそ、可愛い笑顔を見せてきやがって。あとでお姫様だっこの刑にしてやる。今のでめっちゃドキドキしたからそれくらいの仕返しは許されると思うの。
「和行が一目惚れかぁ」
「変なら変って言えよ……」
「別に変じゃないと思うよ」
「そうか?」
「うん。私の外見って和行好みだから、和行が私に惚れちゃうのも仕方ないかなって」
「お、おう」
あの、そんな納得の仕方されても困るんですが。まあ確かに、一夏に一目惚れしたのは外見が俺の好みにボルテックフィニッシュしたからだけどさ。
でも俺が本格的に一夏に惹かれたのは、俺が風邪を引いて、一夏に看病されたあの時だろう。自分のことで手一杯なはずなのに、俺の事を心配してくれたことが嬉しかったんだ。あの一件の前から一夏の事を考えることあったけど、看病してくれた後から一夏のことを考えることが急激に増えたからな。
なんだろ。俺って割とチョロいのかな? 一か月も経ってないのに、女の子になった一夏に恋しちゃったからな。でもなあ、一目惚れしてたんだからチョロいのとは違う気がしないでもないんだよなあ。……まあいいや、あまり深く考えないことにしよう。
「そういう一夏は? どうして俺の事を?」
「女の子になってから和行と過ごす内に、和行のことが段々気になって……」
一夏はそこで一旦言葉を切ってから再び口を動かし始めた。
「それでね。和行が私の看病をしてくれたあの日に、クラスメイトの女の子から貸して貰ってた恋愛物の少女漫画を読んで――」
「え? 少女漫画?」
「その少女漫画の主人公が私と同じことを考えてて、それで自分の行動に納得しちゃって」
なるほどね。あの時の少女漫画の影響で自覚したと。あの漫画に何かあるのは勘付いていたけど、まさかそんな理由だったとは。
「少女漫画で恋心に気づくとはなぁ……」
「もう少しロマンチックな状況で気付きたかったよ……」
そう言って肩を落としている一夏だが、俺はそんな一夏も愛おしく感じてしまった。どんな理由であれ、一夏が俺が好きな事に気付いた事に変わりはない。その少女漫画を今度買って作者さんを応援しよう。つうか、あの鈍感一夏に恋心を自覚させるとか、一夏が読んだ少女漫画には一体どんなパワーを秘められているんだ……?
「自分が元男なことを後ろめたいとか、そういうのはなかったのか?」
「少しはあったけど、すぐに吹っ切れたよ?」
「マジか……」
「誰かを好きになるのに性別なんて関係ないって気付いたからね」
俺のことを見つめながら言い切った一夏に俺は耳が熱くなるのを感じた。お前、なんでそういう事をさらっと言えるんだよ。一夏のこういうところは本当に変わってないな。
「それに、和行ならちゃんと私の想いに向き合ってくれるって思ってたから」
「て、照れるからそれ以上はやめてくれ……」
「なら、やめておくね」
一夏の言葉に段々恥ずかしくなってきた俺は一夏から顔を背けた。その際に一瞬だけ見えた一夏の笑顔の所為で、更に俺の羞恥心が加速している。もう駄目だ、顔が熱い。一夏め……俺が嬉しく感じることをポンポンと口にしやがって。家に帰ったら一夏の脇を擽りまくってやる。一夏に対してちょっかいを掛けられるし、一夏に触れて匂いを嗅ぐこと出来るだろうからな。
さて、そんなことをしている内に俺達は目的の場所へと来ていた。目の前にあるのはいかにも甘くて冷たそうな物が売っている店が建っていた。そう、アイスクリーム店だ。
「アイスクリーム屋さん?」
「お前、甘いもの好きだろ?」
「そうだけど……。それがどうかしたの?」
一夏は昔と違って最近では甘いものを積極的に食べるようになってきた。ケーキとかの話をクラスメイトの女の子と話す事が明らかに増えているからなあ。去年の夏休み辺りまではあまりスイーツの話なんてしなかったのにさ。まあ、甘い食べ物の話で盛り上がっている一夏も可愛いから別にやめろとか言わないけどね。
「もしかして、私の為に?」
「他に理由なんてないだろうが」
俺は一夏を伴って店内に入ると、それぞれ自分が食べたいアイスを注文した。会計は勿論俺持ちで。母さんにはあとで礼を言っておこう。別れ際に一夏に見られないように五千円札を手渡して来た時は何事かと思ったが、こうやって一夏の前で格好つけることが出来たからな。ていうか、絶対母さんはこうなること分かってたよね? うん、絶対そうだ。
「美味いな」
「美味しいね」
テーブル席に座りながら俺達は注文したアイスを食べていた。俺が頼んだのはバニラアイスとキャラメルアイスだ。我ながら無難過ぎる味をチョイスしたと思う。俺の正面に座っている一夏は細かく砕かれたクッキーが入っているバニラアイスとストロベリーアイスだった。種類は違うとはいえ二人ともバニラ系のアイスを選ぶとか、やっぱり俺達って気が合うな。
……ところで、一夏がさっきから俺が握っているカップに入っているアイスをちらちらと見てきてるんだけど。なんだ、そんなにチラチラ見てきて。俺が食べてるアイスが欲しいのか?
「……食べる?」
俺がそう尋ねると一夏は首肯した。可愛い。よし、ならこのキャラメルアイスを俺が食べさせてあげよう。
「はい、あーん」
「じ、自分で食べるからいいよ」
「あーん」
「か、和行?」
「あーん」
「……あ、あーん」
俺があーんを止めようとしないことに観念したのか、一夏は大人しく自分の口を開いた。俺はスプーンを動かして一夏の口にアイスを押し込んだ。
「美味しい?」
「うん……美味しい……」
そう返してくる一夏の顔は熟した林檎のように真っ赤になっていた。可愛い。超可愛い。なんだこの可愛い生き物。……待って。いま気付いたんだけどさ、これって完全に一夏との間接キスになってるよね? まあ、別にいいか。今さら間接キス如きで騒ぐ俺ではない。だって相手が一夏だし。その一夏にもっとやべーキスされたから。
「和行」
「なに?」
「んっ!」
あの、一夏ちゃん? そのスプーンはなんですか? なんで軽く涙目になりながら俺にアイスが乗ったスプーンを向けてきているんですか?
あ、そういうことですか。目の前の超絶美少女の言いたいことが分かりました。一夏の意図を察した俺は大人しく口を開き、ストロベリーアイスを食べた。うん、美味しい。一夏との間接キスになってるのも相まって美味しく感じる。
「お、美味しい?」
「ああ、美味しいよ」
「和行の馬鹿……。なんでそんなに嬉しそうなの?」
「一夏とイチャイチャできてるから」
「っ! もう!」
照れたのだろうか。俺から視線を外した一夏はアイスを食べるのに集中し始めた。そんな一夏を眺めながら、俺も自分の分のアイスを食べることにした。
うん、さっきよりもアイスが美味しいや。そんなことを考えながら、俺は今度から外で一夏にあーんするのを自重しようと心に決めるのだった。周囲の視線が痛すぎるんだよ……。
一夏ちゃんの属性&特徴一覧(今のところ)
・TSっ娘(最重要)
・ヤンデレ(超重要)
・幼馴染(結構重要)
・黒髪ロング(かなり重要)
・巨乳(ウルトラ重要&成長途中)
・清楚系美少女(重要過ぎる)
・家事万能(デフォルト)
・世話好き(ここも重要)
・気が利く(これまた重要)
・妹(TSした影響で弟から変質)
・たまに出る男口調(隠し切れないオレっ娘属性)
・(オリ主君の前でだけ)脳内ピンク
・(オリ主君の前でだけ)ポンコツ
・成績優秀(愛の力で成長)
・ママ(溢れでる母性から断定)
・良妻(確定)