女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

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今回から二、三話の間ヤンデレ成分が少なめになります。


第四十七話 当たった試しがない

 例の花見から一週間が経った。あの後、母さんと千冬さんが酒盛りを始めた所為で俺の頭が痛くなったが、桜の下に咲いていた一夏の笑顔が綺麗だったので気にしないようにした。なんであんなに可愛いんだよ。天使か、天使なのか? 

 それとだが、学校で俺達に根掘り葉掘りと聞いてくる奴も減ってきた。俺と一夏が仲良さげな雰囲気を作っているのを見て、なんにも言えなくなった奴等が多いみたい。度を越えたイチャイチャは家でだけやっているけど、学校でも甘々な雰囲気作っちまってるみたいだからな俺達は。弾達に指摘されて初めて気が付いたという有様だった。

 

「はい。終わったよ」

「ありがとうおじさん」

 

 そんなことを考えていると昔馴染みのおじさんから声が掛かった。昔から利用している理髪店で髪のカットをして貰っていたのだ。最近髪の毛が伸びてきて目に入ることもあったから髪を切りきたんだよね。俺が女の子だったら、一夏みたいに一定以上の長さにならないように長さを整えたりとかするんだけどな。

 バーバーチェアから降りて、ずっとソファーに座って待っていた一夏の方へと近寄っていくと一夏は俺へと男をドキドキさせる笑顔を向けてきた。

 

「和行、格好いいね!」

「そ、そうか?」

「うん。いつもより格好良さがレベルマーックス! って感じになってるよ!」

 

 ネタ台詞を口にするあたり、一夏が段々と俺色に染まってきているな。一夏を自分色に染めているという事実に背徳感ようなものを感じてゾクゾクしてきたが表に出さないようにしておこう。俺はおじさんにカットの代金を払い、店を出て行こうとしたのだが、

 

「ああ、和行君。ちょっと待ってくれるかい?」

「どうかしたんですか?」

 

 おじさんに呼び止められたので足を止めると、おじさんはチケットサイズの紙を二枚渡してきた。これって……。

 

「福引券?」

「和行君の分とお嬢さんの分だ」

「え? 私もいいんですか?」

「いいのいいの。さあ持ってて」

 

 少し気になったので何故これをくれるのかと尋ねてみたところ、商店街の企画で商店街内の店を利用したお客には渡すことには渡す事になっているらしい。俺がこの店を利用した時点で渡されることが確定していたみたいだ。でも、そうなると一夏の分はどうして渡されたんだ? 一夏は俺に付いてきただけでこの店を利用した訳じゃないし……。

 

「あの。なんで、い――夏菜子の分まで?」

「和行君が彼女を連れてきたのが嬉しくてね」

「……よく分かりましたね」

 

 ああ、そういうことですか。理解できました。この人、俺を自分の息子みたいに扱ってくれてるからなあ。俺に彼女が出来たことが嬉しいんだろうな。

 俺は貰える物は貰っておく主義なので突き返すようなことはせず、福引券を手にしたまま一夏と一緒に理髪店を出る。俺達はその足で福引をしている場所へと向かうことにした。

 

「福引かぁ」

「一等とか当たるかな?」

「はぁ……」

「福引、嫌なの?」

「……お前、俺のクジ運が酷いの忘れてないか?」

 

 右手で福引券をひらひらと動かしながら俺は一夏に言葉を返した。

 

「え? ……あっ」

「思い出したか?」

「う、うん」

 

 そうだ、俺にはクジ運がない。運が良い時で三等、運が悪いと一番低いのばかりしか当たったことがないのだ。それ以上は当たった試しがない。小学生の時も、俺と一夏と鈴の三人で当たり付きの駄菓子を買ったら一夏と鈴だけ当たりが出て、俺だけハズレとかザラだった。……やばい、思い出したら何だか涙が出そうになってきた。てか、なんで二人だけあんなに当たりが出るの? もう訳が分からないよ。

 今年の初詣で大吉を引いたアレは良いの当てたっていう認識から除外している。多分あれ、兎的な人が裏でなんかやったに違いないから。そうじゃなければ俺が大吉なんて引ける訳ないんだし。

 

「よしよし、泣かないで」

「ありがと……」

 

 俺の嫁である一夏が慰めてくれてたが、こいつも俺の目の前で当たりを当ててた方だから素直に喜べないんだが……。まあいいか、一夏だし。そこら辺のことは水に流すことにする。

 とりあえずアレだ。福引ではティッシュ箱が当たってくれればそれでいい。あの店とかで複数個セットになって売っているあのティッシュ箱が。そうすればティッシュ箱代も浮くから一夏も喜ぶと思うんだよ。そんなね、特賞とか一等の何か豪華な賞品とか当たってもさ、どうすればいいのか扱いに困るから要らんわ。

 

「せめて、せめてティッシュ箱くらいは当ててやる……!」

「私は特等とか当ててみたいなあ」

「は? なんで?」

「だって、もし特等とか一等が旅行券とかだったら欲しくならない?」

「それは俺と旅行に行きたいと言ってるのか?」

 

 俺の問いかけに一夏は静かに首肯した。……旅行、ねえ。俺達の年齢じゃ保護者同伴じゃないと無理じゃないか? 高校生とからな未だしもさあ。そのうち一夏と一緒に行ってみたいなあとは思ってはいるけど。でも、なんか旅行に行ったら一夏に性的な意味で襲われる予感しかしないんだが。よし、高校卒業するまでは旅行はなしだ。なしったらなしだ。

 

「やっぱり遠出とかあまり好きじゃない?」

「いや、そんなことはないぞ」

「本当?」

「ああ。一夏と一緒なら別に抵抗なんてないし」

 

 俺がそう言い切った途端、一夏の目が俺を獲物として狙う目に変わった。やばい。あれ、絶対頭の中でえっちい考えを張り巡らせている時の顔だ。一夏のやつ、最近こういった表情をすることが増えてきたなぁ……。

 お、俺も一応男だからそういうのには興味はあるし、一夏となら喜んでそういう関係になりたい。けれど、自分がまだ学生だと認識しているお蔭か俺は寸前のところで思い留まれていた。というか、俺が思い留まっていなかったら一夏と俺は既にアクエリオンしていると思う。そんなことを大真面目に考えながら歩き続けていると、俺と一夏は福引会場へとやってきていた。

 

「一夏からやっていいぞ」

「ホント?」

「ああ」

 

 俺は真っ先に引くのを一夏に譲る。嬉々とした顔で福引を引こうとしている一夏可愛い。目が今すぐにでも何かを殺しそうなくらいに血走ってなければだけど。こいつ、特賞に二泊三日の温泉旅行があるのを見つけた途端に目の色を変えやがったんだよ。もうこれ俺の手には負えないわ。こうなった一夏はなに言っても聴かないだろうから。

 一夏は祈りを捧げてからガラポンのハンドルを握って回し始める。抽選球の排出口から吐き出され、受け皿の上に落ちた球の色を見た一夏は露骨に肩を落としていた。

 

「ティッシュかぁ……」

 

 まあ、そうなるな。そんな簡単に特賞なんて当たる訳ないからな。……あの、一夏ちゃん? なんで俺にそんな縋るような目線を向けてくるの? 涙目になりかけてるのもあってかなりの破壊力があるんだけど。俺のことを萌え殺しにするつもりなの?

 

「和行ぃ……」

「な、なんだよ」

「頑張って特賞当てて!」

「無茶言うな!」

「和行! お願い!」

 

 お前、俺がさっき言った事もう忘れたのか!? つうかなに? そんなに俺と温泉旅行に行きたいの? 高校卒業したら幾らでも連れてってやるから今は諦めろください。……俺が心の中でそう叫ぶも、そんな考えが一夏に伝わるはずもない。

 

「き、期待はするなよ」

 

 そう返事をするのが精一杯だった。どうせ俺が引いても当たる訳ないんだ。一夏も抽選結果を見ればすっぱりと諦めてくれるだろ。福引券を抽選を担当している顔馴染みのおばちゃんに渡すと、俺は一夏と同じ要領でガラポンを回す。出てくる抽選球が見えないように上を向きながらだが。

 だって、外れたら分かってたとはいえ何とも言えない気持ちになるし、当たったら当たったらで反応に困ることになるからだ。カランと抽選球が受け皿に落ちる音が聞こえた。さあ、一夏。諦めるんだ。

 

「えっ!? 嘘っ!?」

 

 一夏が驚いた声をあげているが、どうせ当たったのはティッシュ箱のセットか参加賞のボールペンに決まってる。従って今のは落胆による驚きの声だろう。俺が三等以上の景品を当てることなんてありえない。

 

「和行! 特賞だよ! 特賞! 温泉旅行に行けるよ!」

 

 特賞なんて当たる訳――。

 

「和行? 和行? 聞いてる?」

 

 特賞なんて……。

 

「…………あっれぇ?」

 

 なんで俺、特賞当ててるの……?

 

◇◇◇

 

 ――由々しき事態だ。家に帰宅した俺は上機嫌な一夏の横で脳内会議を開催していた。俺がまさか特賞――それも温泉旅行のチケットを手に入れるとは。これアレだな。何も考えずにクエスト周回とかして、物欲センサーが動かなかったお蔭でレアなアイテムとか出まくるあの現象なんだろうな。

 

「和行と温泉……えへへ」

「……」

 

 ……マズい。これは非常にマズい。このまま温泉旅行に行ったら一夏に性的な意味で襲われる。旅行先でテンションが上がりまくった一夏に美味しく食べられる未来しか見えない。だが、まだ一夏に襲われる未来が確定した訳ではない。なんと温泉旅行のチケットは三枚あるのだ。つまり俺達の他に誰か一人を連れて行くことができるのだ。

 出来れば大人の人がいいだろう。一番適任なのは千冬さんだ。あの人なら一夏が暴走するのを抑えることができるだろうからな。だが、問題が一つだけある。あの人がゴールデンウィーク中に休めるかどうか分からないということだ。スケジュールが合わないという展開が容易に想像できる。

 そうなると消去法でうちの母さんを連れて行くしかないんのだが、あの人は俺と一夏が今すぐにでもスケベなことをするのを望んでいる節があるのではっきり言って連れて行くのは適任じゃない。まあ、あの人を丸め込む方法がない訳ではないが。

 

「あの、一夏?」

「なに?」

「本当に温泉行く気か?」

「当たり前でしょ。和行との温泉だもん!」

 

 ああ、もうこれ駄目ですね。聞く耳持ってないわ。俺と温泉に行くことしか頭にないわ。マズい。本当にマズい。このTS娘、完全に暴走してやがる。それとさっきから俺の下半身をちらちらと見てくるのやめろ。完全にこいつ脳内ピンクじゃねえか。俺とえっちなことする事しか考えてないだろ。

 

「一応ゴムは持っていった方が良いよね? うん、ちゃんと持っていこう」

 

 何やら聞いてはいけないワードが聞こえてきたので無視することにした。はあ、どうしようほんとマジでどうしよう。俺がそんなことを何回も反芻して考えている内に夕飯時になったので、一夏は夕飯を作りにキッチンに行ってしまった。一夏が料理を作っているうちにこの温泉旅行のチケットを隠してしまおうかと思ってしまった。だが、そんなことをしても一夏には即座にバレてしまうだろう。下手をすればその場で押し倒されてちょめちょめする羽目になるかもしれない。

 

「ただいま~」

「おかえりなさい。八千代さん」

「八千代さんじゃなくてお義母さんって呼んでくれてもいいのよ」

「そ、そうですか?」

 

 いきなり玄関の方から音がしたと思ったら母さんが帰ってきたんだけど。それでいて一夏と話し込んでいるのが見える。……仕方ない。もうこうなったら背に腹は変えられん。奥の手を使って、旅行の間だけでも母さんをこちらに引き込むしかない。そんな決意を固めた俺は母さんに手招きして、母さんを近くに呼び寄せることにした。

 

「どうしたの和行」

「母さん。今日、俺たち商店街の福引でこれを当てたんだ」

「温泉旅行のチケット?」

「ここに三人分あるんだけど、母さんにも来て欲しいんだ。俺達、まだ中学生だからさ。駄目かな?」

「勿論良いわよ。……でも、何か条件があるんでしょ?」

 

 流石母さん。俺が言いたいことを分かってくれたみたいだ。……ほんと、こういう時だけは母さんの俺の心を読むスキルは便利だと思うよ。

 

「一夏が俺に変なことをしようとしたら制止してほしいんだ」

「変な事って子作り的なこと?」

 

 あの、すいません。せめてオブラートに包んで発言して貰えます? この前ダブルベッドを買いに行く前にしてた会話もそうだけど、母さんから子作りって単語が出てくるとびっくりするから。

 

「ま、まあそんな感じ?」

「一夏ちゃんとそういうことするの嫌なの?」

「嫌じゃないけどさ、まだ心の準備が……。それに高校卒業まではそういうことをしないって心に決めてるし」

「うーん。和行の気持ちも分からなくはないけど、一夏ちゃんの思いも汲み取ってあげたら?」

「……だから困ってるんだよ」

 

 分かってるよ。俺だって一夏の思いを叶えてあげたいと思ってるさ。でも、その……一夏と一度そういう事をしてしまったら、自分で自分の欲望を止められる気がしないんだよ。一夏への負担も考えずに本能のまま一夏を貪って朝チュンしそうでさ。

 

「頼む、母さん。今回だけだから! この通り!」

「でもね……」

 

 頭を下げて頼んだのだが、まだ首を縦に振りそうにない母さんに俺は切り札を使う事にした。

 

「母さん。お願い! 今度母さんが好きなハンバーグとカレーライス作るから!」

「っ!?」

 

 切り札。それは母さんを好物で釣ることだ。母さんはこう見えてハンバーグとカレーライスが大大大好きなのだ。ついでにいうといちごパフェとプリンも大好きだ。

 

「ち、チーズ入りは?」

「作るよ」

「デミグラスは?」

「勿論作るよ」

「カツカレーも?」

「ちゃんと作るから!」

 

 母さんの質問に次々と答えていく。さあ、どう出る? 俺が母さんの出方を窺っていると、母さんは急に右腕の袖を捲り上げ、左手を二の腕の内側に添え始めた。

 

「お母さんに任せなさい!」

 

 良い笑顔でそう言い切った母さんに俺は安堵の息を吐く。これで何とか母さんを懐柔できた。あとは母さんが裏切ったり、一夏が母さんの制止を振り切る形で暴走しないことを祈るだけだ。

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