女体化した親友に俺が恋をしてしまった話   作:風呂敷マウント

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感想で指摘を受けたので修正を入れました。主に一夏の学校内での扱いのところとか。前から自分でもこれで本当にいいのかと疑問に思っていたので丁度いい機会だと思って変更しました。これから学校では一夏は夏菜子と呼ばれます。



第五話 夏菜子ちゃん爆誕

 あたしは今目の前で起きていることから現実逃避するかのように一夏のことを考えていた。あたしが一夏に出会ったのは小学五年の時だった。最初はいけ好かない男だと思ってたけど困っていたところを助けてくれてからかしらね、あいつ一直線になってしまったのは。同じクラスの女子たちも気になる男子の話で大抵一夏のことを話していたし、それだけあいつが女の子にフラグ立てまくってたということになるんだけど。

 たまに和行のことを話している子も居たけど当の本人は自分は全くモテないと公言しているのよね。なんか一夏の鈍感(悪いところ)が和行に少しだけど伝染しているんじゃないかと心配になったわ。まあ、そんなこんなでかれこれ三年以上一夏にホの字なあたしだったんだけど……つい先日、ある事件が起きた。

 一夏が、女の子になってしまった。な、何を言っているのかわからないと思うけどあたしが一番分からなかったわ。時間より早く一夏の家に着いてしまったからいつも通りの調子で声を掛けたのよ。そしたらね、玄関が開いたそこに知らない女の子が居たのよ。その所為であたしパニックになっちゃって一夏が連れ込んだ女扱いもして、酷いこと言ってしまったのは反省してるわ。

 あたしだけじゃどうにもできないと思い、買い物に行ってたらしい和行に電話を掛けたら早めに駆けつけてくれて本当に助かったわ。あの空間に一夏とあたしだけじゃ多分精神的に持たなかったから。篠ノ之束博士が犯人じゃないかという話になって二人ともなんだかあり得るっていう顔してたけど、篠ノ之博士ってそんなにフリーダムなのかしら。

 

「か、和行、助けて! 皆ちょっと怖いよ!?」

「夏菜子、絶対俺の後ろから出るんじゃねえぞ。隠れてろ」

 

 ……何か二人の声が聞こえたけど無視しておくわ。あの後、和行が千冬さんを呼んで千冬さんと一夏の服を買いに行く羽目になったけどなんで女になった想い人の服や下着を選ぶとか何この拷問。千冬さんが慰めてくれたけど辛すぎる。心が張り裂けそう……。もう精神的にかなり来たから、あとは店員さんにぶん投げたけどあたしたちじゃ多分まともなの選べなかっただろうから反って良かったかもしれないわねあれ。

 でも一夏を着せ替え人形にしたかったかも。そういう風に考えたりしないと頭変になりそうなのよ、仕方ないでしょ。てか、一夏。その胸なんなの? 胸がないあたしへの当てつけなの? ホント最初は一夏が女になったことに気が動転して気が付いてなかったけど千冬さんより大きいんじゃないのあれ。巨乳は敵よ、敵。

 でも、料理は美味しかったわ。やっぱり女になっても腕は変わらないわね。あれならいい女になれるんじゃない? やばい。ちょっと泣きたくなってきた。女のブライドがズタズタにされる予感しかない。男の時点で家事方面で女の精神をへし折ってきたのに女に変わった途端に完璧な嫁っぽい存在になるって……もうやだ。

 てか、なんであたしの回りの男どもはこうも料理が得意なのよ。あ、弾と数馬は例外ね。和行は自分は料理上手くないとか言ってるけど、比べてる基準が一夏な時点でおかしいのよ。一夏と比べちゃダメよ、自信持ちなさいよあんた。

 そういえば、料理してた時に和行が一夏に言葉を掛けられて顔が赤くなってたけど、あんたはこっち側に着ちゃ駄目よ。ちゃんと一夏を元に戻すことに尽力してちょうだい。

 

「だーかーらー! その子を俺に紹介してくれ! 頼む、この通りだ。ジャパニーズ土下座するから」

「私も同意見よ! その可憐な人を私に紹介して!」

「うるせえ! お前らやめろ、夏菜子が嫌がってるじゃねえか。あれから五日だぞ。よく飽きないな!」

「文句あんのかオォン!?」

「大ありだ! おい弾、数馬! お前ら塩持って来いはよ!」

「数馬。お前、塩持ってるか?」

「ねぇよそんなもん」

 

 もう現実逃避はやめておきましょうか。現実逃避してたのに悲しくなってきたし、このカオスな状況が変わるわけでもないし。

 困惑している一夏――西邑(にしむら)夏菜子(かなこ)とそんな夏菜子を守ろうとするかの如く夏菜子を自分の後ろに匿いながら弾と数馬に塩を要求する和行。そんな和行の要求を他人事のように聞いている弾と数馬、夏菜子と和行を囲い込むクラスメイトという異様な光景が広がっている所為か頭が痛い。

 ……なんなのよこのクラスは! 誰かあいつらを鎮めて頼むから!

 

◇◇◇

 

 鈴が何やら天を仰ぎみるような仕草をした後に祈るようなポースをしていたが、まさか祈りが届いたというのだろうか。うちのクラスの良心である担任の峯崎先生がクラスに来て俺たちを囲っていた馬鹿どもの手から俺と一夏を救ってくれたのだ、昼休みに入ったばかりなのに。ありがたや、ありがたや。

 

「きっつ……」

「ははは……」

 

 疲れた俺が自分の机に突っ伏しているのを、隣の席に座っている女生徒用の制服にちゃんと身を通した一夏が苦笑いをしながらこちらを見ている。一夏の笑顔が可愛いなあと現実逃避気味に思いながら、なんであのカオスな光景が繰り広げられることになったのかを整理していくことにした。

 きっかけはあの日の翌日。女の子になった一夏をそのまま通わせるのは流石に無理との判断がなされた。まあ、そうなるよね。まんまだと色々面倒が起きそうだしな。千冬さんとアイアンクローから復帰した束姉さんの協力で別人として通うことになった。

 一応、他の学校に転校する案もあったが、俺や鈴達の傍を離れたくないという一夏の希望によってこうするしかなかったんだ。流石に一夏が女であることを真っ先に把握していた鈴は西邑夏菜子――織斑一夏の存在を知っているし、一夏と俺の悪友である弾と数馬には話してあるけどね。あいつらはダチの為なら男気を発揮する奴等だから、フォローとかもちゃんと入れてくれるだろうから信頼できる。

 あとは親交のある弾の実家である五反田家と鈴の両親だな。学校とかには偉い人たちとクラス担任である峯崎先生にしか一夏が女になったことは知らされていないみたいだけどな。

 ……なお五反田家に説明に行った際にちょっとだけいざこざがあったが、それは横に置いておく。学校に対しては千冬さんが裏でなんとか説明だのをしてくれたみたいだが、自分の学校の生徒がいきなり性転換されたら色々な疲れも溜まるだろう。だって一夏というか夏菜子のことを紹介する際に峯崎先生がめっちゃ疲れたような顔してたし。

 一夏が性転換してから学校の上の方にこの事が伝わるまで二日も経ってなかったので、多分ウサミミおっぱいアリスも何かやったに違いない。でなきゃ幾ら千冬さんが居るとはいえ、ほんの一日程度で学校とかへの情報の周知とか上手くいくようには思えない。偽の戸籍とかそれに付随する関係書類の改竄もしたと聞いた時は流石に頭痛がしたけど。あの人からしたら改竄なんて朝飯前だから気にしたら負けだ。

 最初皆は一夏が海外の学校――具体的な場所を言うならアメリカの学校に行ったことになっているのに驚いていたり、そんな突飛な事情になっていることに困惑してた。こんな中途半端な時期に新しい生徒が来るのかと疑問に思う輩も出てきそうだったので、少し病弱なせいで転入するのが遅れたという設定にした。これなら誤魔化しやすいからね。

 そこまでは良かったんだが、徐々にさきほど夏菜子と俺を囲んでいたような奴等が現れるようになったのだ。こいつら、本能レベルで一夏を好きになってないかこれ。性別どころか名前も変わってるのに一夏に近づいてくるとか怖すぎるんだけど。しかもこれが五日ほど続いているし。

 それと、女の子になっても唐変木なところが変わっていない一夏にはある意味感心させられました。今日の午前中にまた告白を受けてたんだけど、女の子になっても付き合ってと言われて買い物と脳内変換できるのはお前くらいだよ一夏。

 ちなみに西邑夏菜子こと一夏は織斑家の親戚兼俺の幼馴染という扱いになっている。身寄りなんて本当にいるのか状態の織斑家の親戚にするより、うちの親戚にした方が無理がない感じでいけるんじゃねと思っていたが、今の一夏の顔が若干千冬さんに似ていることもあってか「うちの親戚にしたらボロが出る可能性高くならねえかこれ?」と俺と束姉さんにより判断され、最終的には織斑家の親戚で通すことにしたのだ。幼馴染云々は俺が織斑家と仲が良い事を知ってる人は多いので、その辺りを利用させて貰った感じだ。そこに関しては嘘言ってないし。

 こんな美少女が幼馴染とかなんだこのギャルゲ設定。お蔭で俺が野郎どもから血の涙と共に嫉妬の視線を向けられてるんだぞ。この設定考えたの誰だよ。あ、俺だったわ。ついでに一夏がアメリカの学校に行った設定にしたのも俺だったわ。頭疲れてんな俺。

 一応、夏菜子の正体を知っている人間だけが周囲に居る時は一夏と呼んでいいとなってるけど、その他の場面では夏菜子と呼ぶよう徹底することになってる。やるなら徹底的にやらないといけないからね、仕方ないね。

 

「なんかもう色々と疲れた……帰っていい?」

「駄目だよ。午後も授業あるんだからちゃんと受けないと」

 

 そう言いながら俺と同じタイミングで鞄から弁当を取り出して、弁当を広げている一夏は今では完璧な女言葉で喋るようになりました。鈴と俺が一緒になって教え込んでいたからな。その際鈴がめっちゃ泣いてたのは見なかったことにしている。つうか、一週間も経ってない内に女言葉を使いこなすとかやっぱこいつのポテンシャルおかしいわ。俺なら絶対無理だって。

 

「わかってるって。言ってみただけだ。あ、その卵焼きくれ」

「いいよ。じゃあ和行の卵焼きと交換ね」

「え、いいのか? 俺の卵焼きはやめといた方が……」

「いいの。ほら早く」

 

 一夏がそう言うなら仕方ないな。俺が卵焼きが入った容器を一夏が箸で一個だけ卵焼きを取り、一夏も同じように卵焼きが入った容器を差し出してきたので俺も一個だけ卵焼きを貰った。俺は貰った卵焼きを早速口に放り込む。

 うん、やっぱ一夏の卵焼きは美味いな。今日のは出汁巻き卵か。出汁の味がしっかり出ているし、五臓六腑に染みわたっていく感覚がする。ちょっと大げさか。

 対して俺の卵焼きはどうか。見た目は悪くないし、味もそこまで悪い訳ではない。一夏と比べたら味が劣るかもしれないがそこそこは上手くできている自信はある。とある欠点を除けば、だが。

 

「うん、やっぱり甘すぎるね、和行の卵焼き」

「だからやめておけって言ったろ……」

「でも不味くないし、大丈夫だよ?」

 

 俺が焼いた卵焼きの欠点、それは甘すぎることだった。俺は卵焼きは甘い方が好きなので砂糖を入れて焼くのだが、何故かは知らんがそんなに砂糖を入れ過ぎた覚えもないのに意味が解らないくらい甘いのだ。

 もしかしたら自分が気づいていないだけで、本当は砂糖の分量を間違えてるかもしれないと考えた俺は一度だけ鈴や一夏に見て貰いながら卵焼きを焼いたことがあったのだが、砂糖の量を間違えてもいないのに物凄く甘くなっていたことでもう完全に甘さに関しては諦めてしまっている。他の料理はまともに出来るのにどうしてこうなった。

 

「本当に甘いわね、和行の卵焼き。呪われてんじゃないの?」

「幾ら甘いものが好きな俺でもこれは――って鈴! お前、俺の卵焼き勝手に食うなよ!」

 

 鈴が勝手に人の卵焼きを食べていたでござる。鈴本人は別に減るもんじゃないからいいでしょとか言っているが、俺の卵焼きが現在進行形で減ってるのにそれを言いますか。いや、別に食うなとは言わん。たださ、断りを入れてくれないか? そうすれば俺も怒らないから。てかなんだよ呪いって、意味わからんぞ。

 あれ? そういえば、母さんの卵焼きも確かめっちゃ甘かったような……。よし、考えないことにしよう。俺は心の中でそう纏めながら自分の弁当箱から焼肉のタレで焼いた一口サイズに切ってある豚肉を箸で取り、口に放り込んだ。うん、美味い。

 ところで、さっきから昼時に俺と一夏が飯を食べているのを見ている連中はなんなんですかね? なんか血の涙的なものを流しているのも居るし。俺はいつも通り一夏とおかず交換しただけなんだが……。ああ、そういうことか。一夏というか夏菜子はとてつもない美少女なんだ。その上、夏菜子とおかず交換して食べていたらそりゃ嫉妬されるか。

 ……やべえ。俺、めっちゃ恥ずかしいことしてるじゃねえか。自覚しなきゃよかった……。落ち着け、こういうときはお茶を飲んで落ち着くんだ。

 

「どうしたの和行?」

「いや、なんでもねえよ」

 

 一夏が小首をかしげている。超可愛い。やめて、お前がそういう仕草をする度に俺の心の防壁がドリルとパイルバンカーで破壊されていくような感覚がするんだよ。俺は平静を装いながら、弁当を食べることに集中することにした。正直身が持たないです。

 それから時間が経ち、放課後になったので帰路についていた。部活には所属していないので学校には長居せずに帰宅するのがほぼパターン化している。鈴と弾は今日は実家の手伝いがあるから先に帰ると言い、数馬も今日は用事があるとかでそそくさと帰ってしまった。そういうわけで残された俺と一夏は二人で一緒に帰ることになったわけだが、

 

「雨、降ってきたな」

「だね……」

 

 学校を出た辺りから雲行きが怪しいと感じていたが、まさか本当に降り出してくるとは……。雨が降ってくることに気づいた俺たちは学校近くの公園に備え付けらえているトイレの出入り口に二人で避難した。ここなら屋根っぽいのもあるお蔭でずぶ濡れにならないで済む。

 降り注ぐ雨が地面に叩き付けられている所為か、雨が降ったときに臭うあの臭いが俺の鼻孔を刺激してくる。うーん、学校を出る前なら職員室で傘を借りれたかもしれないけど……どうしようかこれ。

 

「出る前に空模様の確認しておけばよかったね。どうする? 学校に戻る?」

「この雨の中で戻れるわけないだろ」

「そうだよね……」

 

 あ、そういえば……確か鞄の中に折り畳み傘が――あった。俺は鞄から折り畳み傘を取り出しながら一夏の方を見る。一夏はどうやら今日は折り畳み傘を持っていないようだ。

 俺のように鞄を探ろうともしていないし、困ったなあとでも言いたげな表情を浮かべて雨が降ってきている外を眺めているだけだ。

 

「ほら、一夏。折り畳み傘貸すよ」

「え? でも、それじゃ和行は?」

「俺の事はいいから、ほれ」

 

 一夏の雨に濡れるところを見るのがなんとなく嫌になった俺は、一夏に無理やり俺が手に持っていた傘を手渡した。一夏が風邪を引くなんてことになったら何故か自分を許せなくなりそうだったという自分でも理解できない感情が俺の中で渦巻いている。

 一夏が男の頃だったら一緒にずぶ濡れになる前に帰ろうぜとか言い出していたはずなのに。一夏が女になったというの意識がある所為なのだろうか、俺は一夏が女の子になる前と変わらない調子で接しようとしているのにところどころで何処かいつもの自分と違う行動を取る自分に違和感を覚えてしまう。一夏が女の子として登校し始めてからだ。一日経つ毎に自分の考えと、自分の行動とのズレが激しくなってきている。

 今日も一夏が告白されてたっていう話を聞いたけど、前までなら「また告白されてるよ、一夏の奴」といつもの事と思うところだったのだが……今日はそうも言っていられなかった。何故か今日は一夏が告白されてたことにムカムカして、授業中に手に持ってたまだ使い始めたばかりの鉛筆をへし折りそうになったし。

 まあ……一夏はどういう意図で告白されたのか理解できなくて、告白した側は玉砕してたけどね。いつもなら玉砕した側に同情するところだが、今日は少しだけ玉砕した側をあざ笑うというか、他人の不幸を喜ぶ気持ちが出てきてしまった。どうしたんだ俺……。

 

「私が使ったら和行が風邪を引いちゃうよ……」

「お前が風邪を引くよりマシだ」

 

 そんなこと考えながらも俺は一夏に折り畳み傘を押し付けようとしていた。のだが、俺の折り畳み傘を使うのに抵抗があるのか食い下がってくる一夏に対して俺は言い切る。一夏が納得がいかないような顔をしていたが、何かを思いついたかようにコロコロと表情を変えた。

 

「じゃあ、せめて一緒に傘に入ろう」

「はっ? お前それって……」

 

 一夏、それがどういう意味を指しているのか解っているのか? それ、俺と相合傘しようって言ってるんだぞお前。でもなあ、折り畳み傘は一人分のスペースを確保するのが精一杯だからなあ……。しゃーない、俺が濡れることで一夏が濡れるのを少しでも抑えるようにしますか。

 俺は傘を一夏から受け取ると傘を開く。そして、一夏があまり濡れないように傘の位置を調整して一夏に入ってもらうことになった。右側に一夏、左側に俺といった具合で公園のトイレの入り口から歩き出した。非常に近い位置に一夏が居るというか、ほぼ密着するような形で歩いているお蔭でさっきから胸が高鳴りっぱなしになっている。

 歩きづらいけど、なんだか今の状態を心地よく感じてきているんだよね。一夏が傍に居てくれると安心するっていうか。それに凄く良い匂いがするし。一夏は香水でも付けているのだろうか? 余計な考えを振り払い、そこらへんの話題を一夏に振らないようにしながら歩いていると一夏がふいに声を掛けてきた。

 

「和行。その、ありがとう」

「気にすんな。俺がやりたくてやっただけだから」

 

 微笑みながらお礼を言ってくる一夏に俺は急に気恥ずかしさを覚えた。一夏の笑みを見ているとなんだかこう嬉しいというか、俺にだけその笑顔を見せて欲しいというか……独占欲のようなものが湧いてくる。男から女に変わってしまった一夏だが、どうやら変わったのは一夏だけじゃなく俺もみたいだ。以前ならこんな感情が湧くことなんてなかった。全て一夏がどこぞのウサミミおっぱいアリスの所為で女に変貌させられてからだ。俺がこんなことを考えるようになったのは。一夏の変化が俺の心にも何等かの影響を及ぼしたのかもしれない。

 あの人が俺の家に不法侵入してた際に聞かされた話は、翌日の束姉さんの出現によって一夏も知る事になった。一夏も最初は束姉さんに対して呆れるというか怒りに似た感情を覚えてたらしいが、元に戻れる可能性があるならと我慢することに決めたらしい。

 ……俺は、これからどうしたらいいんだろう。一夏の女性として見せる笑顔や仕草などを見続けた俺は、一夏に男に戻ってほしくないと考えるようになってしまっていた。一夏には絶対に口が裂けても言えないことを考えたのだ。

 もしかして俺は一夏のことを――。そこまで考えて頭を振った。いや、そんな馬鹿な……。もし俺が抱いているこの感情がそうなのだとしても一夏が男に戻ったら果たされない想いを抱えることになる。男の一夏が好きだった鈴やその他の女子達、一部の男子達のように。一夏に恋していた人たちはそんな感じになっている。

 

「――ゆき、和行!」

「ん? どうした一夏」

「大丈夫? ちょっとぼうっとしてたよ?」

「なんでもないよ。今日の晩御飯をどうするか考えてたんだ」

 

 一夏がこちらを案じるような表情で俺の顔を覗き込んできたので適当にごまかすことにした。鈴や男であった頃一夏の好きになった者達ような気持ちになりたくない、味わいたくないという自分の卑しい部分を彼女に見られないようにするように。

 そんな感情を隠しながら夕食を何にするかを話し合い、今晩は織斑家の冷凍庫に残っていた鱈を使った鱈のフライに決まった。俺、鱈好きだから嬉しいわ。

 その後、無事家には付いたのだが俺はかなり濡れている。特に左半身が顕著という事態になっていたため即座に家に入り、服を着替えることにした。制服は明日まで乾くかなあ? うーん、大丈夫なんだろうかこれ。うちの制服は一応洗濯機や洗えるし、乾燥機を使ってもタイプだから大丈夫だとは思うんだが。ちなみに一夏は右肩以外は濡れておらず無事だった。

 いつもの夕食の時間帯になったので外を見てみると既に雨は止んでいた。通り雨だったのだろう。雨の中歩いている最中に頭の中を巡りまわった考えが再び湧き上がってくるが、頭を振るいあのことを考えないように意識を切り替える。

 そんなこんなでいつもの通り、一夏の家で一緒にご飯を食べて再び家に戻ってきたのだが俺はその時、自分の体に起きている異変に気付けていなかった。体が妙に怠いな、くらいにしか考えていなかったが、その違和感の正体を俺は翌日知ることになる。




今後、一人称で描写するのは一夏と主人公だけに絞っていきたいと思います。他の人物の描写をする場合は三人称的なものでやります。
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