魔王になってた主人公がひたすら状況を確認するだけお話。

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いくつか説明のない単語が出てきますがご容赦ください。


魔王新生

 ーーある日、魔王が誕生した。その魔王は人類を支配しようと魔獣を用いて侵略を始める。

 戦力で劣る人類は異世界から『来訪者』を召喚する。そして『来訪者』の力を借りる事で魔王討伐、封印に成功。しかし魔王は死の直前に呪いを遺す。

 時が経ち、新たに魔王が誕生した。これに備えて人類は新たな『来訪者』を召喚。しかし、その魔王は先代と打って変わって人類に繁栄をもたらした。様々な技術を生み出し人類の社会は著しい発展を遂げた。ところが、魔王が人類を裏切ると察知した新たな『来訪者』は、魔王を暗殺した。

 さらに時が経ち、三代目の魔王が誕生した。三代目はこれまでの魔王の中でも最大の武力を誇っていた。強力な配下『魔人』を何体も従え侵略を始めた。当時の人類の科学力を以ってしても、どうにか抵抗する事がやっとであった。その戦争を唯一回避していた国以外は滅亡した。この多大な犠牲により魔王を打倒が成功した。

 ーーこれが『この世界』の人類に伝えられている歴史です。

 

 そうか、そんな歴史があるのか。すごいな。

 

「ところで自分は何者で、あなたは何なんですか?」

 

 ふと気が付いたらこの場所に立ってた。目の前には煌びやかな装飾がされた椅子が点滅してる。神々しいっていうより、見るものに恐怖を齎す禍々しさみたいなものを感じる。

 そんな玉座的なものから声のようなものが聴こえてきて、なんやかんやと歴史講座が始まってた。意味がわからない。

 うん。まず最初に歴史について教えてもらっても全く状況が理解できない。もう少し、こう、順序を考えてほしい。こちらは不安と不快で堪らない。

 

 ーーあなたは『神』の力によって作られた四代目魔王です。私はあなたの置かれている状況を説明する為の存在です。

 

 ……どうしよう。情報は増えたけど、全く理解に繋がらない。俺が悪いんだろうか……。

 

「あの、すみません。私は自分を普通の人間だと思ってたんですけど……、魔王だったんですか? というか魔王って何ですか?」

 

 この謎が謎を呼ぶ負のスパイラルから早く抜け出したい。その為にもより多くの事を聞き出さなくては。

 

 ーーまず始めに、『魔王』とは『この世界』最強の生命体であり『魔族』の頂点に位置する存在です。次に、あなたは『神』の力で生成された魔王の身体に『あの世界』の人間の魂のコピーを憑依させた存在です。

 

 ……知らない状況の説明に意味がわからない単語が出てくる。負のスパイラルどころか最早、負の無限ループに陥っているのだろうか。いや、まあ、何となくニュアンスで分からなくはないけど。これは……、一から全部聞くよりも、自分の認識が合ってるのかを確認した方が早いかも知れない。

 

「確認したい事がいくつかあるんですが、まとめて質問しても良いですか?」

 

 質問に許可を求める事に関しては今更だけど。

 

 ーー私が答えられる事なら構いません。

 

「では、遠慮なく。『神』っていうのはあなたの事ですか? それとも別の存在の事ですか? 『この世界』は私のコピー元とやらがいた世界とは違うところなんですよね? ここはどういう世界なんですか? なんでコピーした魂を憑依させたんですか? ていうかコピーってどういう事ですか? そもそもなんで魔王を作る事になったんですか?」

 

 この理解不能な状況から逸早く脱したい思いで一息に話す。ひとまず確認したい事はこのくらいだろうか。

 

 ーー私は『神』によって約1500年前に作られた魔王への説明役であり、実験の調整役です。歴代魔王からは『端末』と呼ばれていました。『神』とは……、絶対的な存在としか私は説明できません。『この世界』は『神』が実験の為に作り出したものです。そして「人類を支配する魔王はどのような精神を持つ」のかを観察することが実験の内容との事です。「魂のコピー」とはその生命体の知識、記憶、経験、精神性を写しとる事です。魂を直接取らなかったのは、魂以外の余分なものも付随する可能性があったからです。

 

 実験とやらが『神』にとって娯楽なのか義務なのかはわからないけど、とんでもない事に巻き込まれたなぁ……。

 いや、コレの言う通りなら、『巻き込まれた』ってのはちょっと違うか。『今こうして考えてる俺』は実験の為にコピーされたものなんだもんな。

 そんな風に言われると、そんなもんかって気もするし。なんだかしっくりくる。さっきまでずっと不快に感じていたのは、知識も記憶も経験もあるのに、『自分』が何者なのかを知らなかったからなのかも知れない。

 ……ん?……そういえば。

 

「答えられる事なら構わないとの前置きでしたが、『説明役』を自称しているあなたに答えられない事があるんですか? 」

 

 絶対的な存在とまで言った『神』に『調整役』『説明役』として作られたのに答えられない、知らない事があるというのだろうか。

 それはなんだか不自然、というか不具合な気がするが。

 

 ーー私があなたからの質問に教えられる事は、『あなたが私から聞く事でしか知ることのできない事』だけです。この世界にいる他の存在から確認できる情報は教えられません。

 

 そうか。今までの質問は全部答えられる範囲だったのか……。という事は、この世界にいる普通の住人は『神』の存在について説明できないし、魔王がどうやって誕生しているのかも知らないってことか……。

 ……もう遅いかもだけど、目の前の存在が言ってる事を鵜呑みにしてるこの現状。これは危機管理的な意味でとても危ういのではないだろうか。……とは言っても、ほかに頼るものがない以上仕方ないよね。うん、そういう事にしておこう。

 

「……最初に話してた歴史はどうなんですか? 伝えられているって事は、この世界のヒトから聞けそうな事ですけど」

 

 ーーあれは、……あなたからの質問ではなく、私が勝手に教えただけなので例外です。細かい事は気にしないでください。

 

 それでいいのか、説明役! そういう立場のやつは、なんていうか普通、厳格な対応するもんだろう! 細かい事を気にしてこその調整役じゃないのか!

 

 ーー……他に質問がなければ、こちらから説明しなければならない事がありますが。いかがですか? 質問はいつでも受け付けますよ。あ、話し方は敬語だとか丁寧語でなくても構いませんよ? 私の事は親しみを込めて、端末さんと呼んでくださいね。

 

 急にフランクになってきた……。大丈夫なのか、コレは……。現時点で唯一の頼りが途轍もなく頼りなく思えてきた。……まぁいいか。

 

「はい。今すぐに確認したい事はないので、説明お願いします」

 

 ーーそれでは、『神』から授けられた権利について説明を始めます。

 

「権利?」

 

 ーーはい。あなた方、魔王には「他者に特別な能力を与える権利」が一度だけ授けられます。この「他者」とは、どんな者でもどれだけの数でも構いません。ただし、数が多いほど「能力」の効果は相対的に低下します。そして与えられる能力には上限があります。

 

 おお。なんだか心が踊り出しそうな話題になってきた。特別な能力かあ……。うーん。

 

「自分自身に与える事は出来ないんですか?」

 

 ーーもちろんあなた自身に能力を付与する事はできません。

 

 そこは曲げられないのか。他人を強化できる権利ね……。強過ぎる能力を与えて裏切られたりなんかしたら、目も当てられないな。

 ……裏切り? ……どっかで聞いたな?

 …………。

 ……ああ。最初に聞いた歴史に出てきた魔王だっけか。

 

「そういえば、今までの魔王も私と同じように作られたんですか?」

 

 ーーそうですよ。

 

「因みに、歴代魔王が誰にどんな能力を与えたのかは教えてもらえますか?」

 

 ーーはい。初代は「魔王の身体能力と思考をコピーし、影武者になる」能力を近くにいた魔族に与えました。二代目は「開発に優れた知能を得る」能力を捕虜にしていた人間に与えました。三代目は「魔王に一生の忠誠を誓う事で、魔王に匹敵する身体能力を得る」能力を部下の魔族十三人に与えました。

 

 へえー。魔王によって結構違うんだな。

 ていうか二代目、ひょっとして能力与えた人間に裏切られたのでは。さっきのは人間の歴史って言ってたし真実とは限らないよな。だって魔王が人間を繁栄させて、その後裏切るっておかしいだろ。ちゃんと支配しとけよ、先輩魔王!

 

「人数が多いほど弱くなるって事でしたけど、初代の影武者と三代目の部下一人だとどのくらいの力の差があるんですか?」

 

 ーー初代の影武者はほとんど魔王と変わらない強さでした。一方、三代目の部下一人は魔王の足元にも及ばない程度です。十三人合わせても魔王に挑んでも完敗するでしょう。

 

 魔王に匹敵する身体能力でも、複数人に与えてしまうとそんなに弱くなるのか。

 あ。そもそも魔王ってどんくらい強いのかわかんないわ。強さの基準にされてもピンとこない。

 

「そもそも魔王の身体能力とか強さって具体的にどのくらいなんですか? 『世界最強の生命体』とか『魔族の頂点』とか言ってましたけど」

 

 そうだよ。確認し忘れてたけど『魔族』ってなんだよ。……かなり質問してるのに疑問が尽きない。さっきの歴史の話にも全然知らない単語あったし。何なんだよ『来訪者』って、ちょっと格好いいなおい。

 

 ーーそれは私が教えられない事です。誰か探して聞いてください。

 

 マジかよ。重要なことなのに……。……あれ? ひょっとして『人類に伝えられている歴史』にある単語は全部コイツから教えてもらえないって事になるのか……。

 

「その誰かって?」

 

 ーーそれもご自身で探してください。頑張って。

 

 腹立つな、コイツ。もういいや。

 

「他に説明する事ってあります?」

 

 ーーはい。とても大切な事があります。

 

「……何ですか?」

 

 ーー大切な事なら早く説明しとけよ、とでも言いたげな表情をされていますが、これはある程度説明を終えてからでなければ理解できない可能性もあるので後回しにしていました。それでは、……既にお伝えした通りこの実験は「魔王が人間を支配する」事が主軸となっています。なので人間が絶滅するとこの世界は消滅します。『神』がそのような世界として作られたので。

 

「は?」

 

 ーー大サービスでお教えしますが、現時点での人間の人口は219人です。既に絶滅しそうですよ。

 

「は?」

 

 

 

 こうして主人公の人間が絶滅しないように気を遣いつつも支配を目指す魔王生活が始まりました。




設定だけ考えてるオリジナル小説です。
もし似たような作品が既にあったら教えてくださると助かります。よろしくお願いします。

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