ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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どうも。
書けば書くほど評価が下がる、
レベル5の“評価低下《アホクソライター》”こと江波界司です。
とある3期楽しみですね。
それでは本編をどうぞ


探求者― ボッチ ―

 エルキア王国。人類種(イマニティ)最大にして最後の砦。

 現在は王が不在。前国王の遺言に従い、国では次期国王選定戦が行われている。参加権を持つのは全国民、選定方法はなんでもありのゲーム、王の条件はただ一つ。

人類種(イマニティ)最強のギャンブラー……か」

 昨夜ゲームでステフをボコボコにし(空が)、盟約で縛って惚れさせ(空が)、要求を出して王宮に住ませてもらっている(俺たちが)。

 そんなわけでエルキア王国王宮。空白と共に行動することになった俺は、ステフに頼んで本を貸してもらっている。

 ただ一つ問題があり、言語が全く違うという事だ。文法と発音自体は同じ為、暗記と慣れの必要なところではあるが、やはり大変な作業だ。

 ん?白と空とステフ?

 なんでも風呂に入るらしい。昨日の件で空と白が離れられないのは分かった。それ故に、風呂に入るのが極度に嫌いな白を入浴させるために「湯気先輩とステフに力を借りるっ」とのこと。さっき恐らくステフの従者が死に物狂いで薪を燃やしていたが、なんか可哀想でしたマル

 

 

 

 

 小一時間経ち、風呂上がりの3人がやってきた。

「これが執事服か……まぁコスプレみたいで面白いな」

 顔のパーツ自体は整っている空は、クマとボサボサの髪をどうにかすれば、かなり見違えるだろう。ステフは白に対して小さかった頃の服とかなんとか残酷なことを言っていたが、まぁいいか。

「よう。温まったか?」

「おかげ様で。……」

 何やら意味有りげな視線を向ける空。お前目付き悪くて睨んでるみたいに見えるからやめて欲しい。

「なんだよ」

「いや、似合わないな」

 ヘラヘラしながら言うな。似合わないこと自体は最初から分かってる。

 流石に洗濯の必要があるとの事で、ステフは俺たちの服を受け取ると王宮にあった執事服を着替えに貸してくれた。制服よりも更にかたい為動きにくいが、この際なんでもいい。

「それより調子はどうだ?八」

「まぁ、ぼちぼちだな」

 俺の渡す本を受け取って、空はそれを眺める。

「日本語じゃねぇのか」

 当たり前だ。ここ日本じゃねぇし。

人類種(イマニティ)語ですわ」

「「うわ〜まんま」」

 思わずハモっちゃったよ。俺と空はぐったりと呟いた。

「となると、まずは覚えることからか。どうだ?」

「「覚えた」」

 次は白とハモる。何これ流行ってんの?

「は!?覚えたってまさか…言語を一つ習得したってことですの!?」

 おい、耳元で叫ぶな。耳キーンなるわ。確かどっかの芸人は高低差あり過ぎてなるとか言ってたな。うんどうでもいい。

「お、さっすが白〜。てか八もかよ」

「……もっと褒める……」

「お前らが風呂入ってる間にな」

 白の頭を撫でながら、空は俺にも聞いてきた。と、ここで再び彼女が騒ぎ出す。

「ちょっと待ってくださいな。そんな簡単なことではありませんのよ!?」

 いやステフよ。よく考えてから話そうな。

「じゃあなんで俺達は普通に会話出来てんだよ」

「へ?」

 なんかこの反応、ガハマさんに通じるところがあるな。この子もアホの子か。

「……音声言語は一致してる……にぃ、おそい……」

 ということですよステフさん。ただね白?なんで俺の3倍以上のスピードで覚えてんの?赤い彗星なの?

「白〜兄ちゃんに天才と同じレベルの処理能力期待されても無理だよ?」

「ちなみに白って何ヶ国語喋れたりする?」

「十八カ国語の古文まで完璧に。特別なんだよ白は」

「すげぇなおい」

「……にぃだって……」

「それ言ったあとだと六ヶ国語とかめっちゃかすむわ。てか、何気に八も覚えたって意外だな」

「まぁな。国語学年三位舐めんな」

「……にぃ、おそい」

「それまだ言う!?いいか白、男ははやいよりおそい方がいいんだぜ〜」

「……にぃ、小さい」

「小さい言うなぁ!?」

 いいから先進めよ。てか早く覚えろ、何も出来んだろ。

 ステフを見ると、呆気にとられたようにこちらを見ている。

「すごい……」

 まぁ普通はそうだな。白は天才だし、空だって六ヶ国語を話せるだけの力がある。俺は今回たまたま得意分野だったってだけで、こいつらには及ばない。ステフも思っているだろうが、この先人類種(イマニティ)を救うだろう存在は、こいつらだ。

 白に教官を頼みながら言語理解を深める空。

「白、ここは古文の文法でいいのか?」

「……ただし……こっちは例外……」

 ……俺も手伝うかな。あんまり必要ない気もするけど。

「白、お前はなんでも知ってるな」

「……なんでもは、知らない……知ってることだけ……」

 おお、伝わった。

「おい、なんで白と八はそんな仲良くなってんだよ」

「「話しかけないでください…あなたのことが嫌いです」」

「やめてぇぇぇ実の妹に言われたら立ち直れないからやめてぇぇぇ」

 やっぱりこいつらとはウマが合う。

 あと空、その気持ち分かります。

 

 

 

 

「それで、わたくしに何か質問はありませんの?」

 読書もそこそこに、クッキーと紅茶のティータイムでステフはそう切り出した。

 いやアホの子に聞くことってあるか?

「まぁ大体のことは盗賊のおっさん達に聞いたしな〜」

 異世界転生初日。身ぐるみを剥ぎ返された盗賊三人衆に、俺達は引き出せる限りの情報を聞いた。この世界の生立ち、十の盟約、十六種族(イクシード)、位階序列、人類種(イマニティ)の現状。ある程度の知識は持ち合わせていることになる。

「あるとすれば魔法のことかな。どうすれば使える?」

 空の質問にステフはやや暗くなる。

「魔法は…人類種(イマニティ)は使えません。そもそも『精霊回廊』が無いため、感知することすらできませんわ」

 これまた厳しいな。

 つまり、魔法は魔法でしか対処できないってことか。

「だから、人類種(イマニティ)は勝てないと」

 ステフの感情を代弁すべく俺は呟き、ステフは小さく頷く。それを聞いたであろう空は複雑な表情を浮かべる。

 

(そうだろうと思ったよ)

 

 昨日のゲームで分かったが、魔法というのはやはりチートだ。少なくとも魔法が使えない俺達からしたら反則以外のなんでもない。それについても考えているだろう空白は、どのようにこの先を戦うか。ぼっちながらも、やはり気になる。私、気になります。

「じゃあ逆に聞くが、1番上手く魔法を使うのが1位なのか?」

 知ってるくせにそれを聞くか。こいつはステフに分からせたいのだろう。魔法云々よりも重要なことがこの国盗りギャンブルには、ゲームにはあると。

「いえ……1番魔法が上手いのは森精種(エルフ)ですわ。それに1位までいくと、そもそも存在自体が魔法、のようになっていますの」

 確か神霊種(オールドデウス)。位階序列1位の存在だったはず。

 存在自体が魔法って、それ人類種(イマニティ)にはそもそも見ることすら出来ない存在ってことにならないか?っべー、それマジっべー。思わず戸部っちゃったよ。

 休憩と腹ごしらえもそこそこに、俺達はまた調べものに戻る。

 

 

 

 

 

 

「情報が少な過ぎるぅぅぅ」

 そう嘆くのは童貞(多分)ニート(確定)18歳(いやおい)、空白の片割れ空である。

「……ほん、すくない……」

 もう片方の相棒、天才少女の白も静かに愚痴をこぼす。

 俺たち3人は1晩かけて本を読み漁ったが、なんとも情報が少ない。そもそも人類最期の砦であるエルキアの書物がこの程度の量なのがおかしい。国盗りギャンブルで本諸共取られたか?

「もういい。今日寝て明日頑張ろう」

「おい、もう日跨いで朝だわ」

『  』(俺達)にとっては、起きてから寝るまでが1日だ」

 何その新しい観点。

「てかお前ら、今日はまだやることあんだろ」

「あっ」

 本気で忘れてたのか空よ。白も空の呟きで起き上がる。お前寝る気満々だったな。

 昨日のティータイム。空はステフに聞いたのだ「どうして王になりたいのか」と。

 王族の権利、多額の財産、今までのキャリア、そしてエルキア。守りたいものは沢山あっただろう。だが、彼女は答えた。

 

「お爺様が間違っていなかったと……証明したかっただけですわ」

 

 笑顔で答えるステフ。前に空が言った言葉のように彼女の言葉にもまた、大きな覚悟と感情が感じられた。俺にはそれを完璧に理解することは出来ない。けれども、彼女のしたいことは、成し遂げようと努力したことは伝わった。

 努力は人を裏切らない。努力した分だけ、人は成長する。いつかした、雪ノ下との会話を思い出す。

 そして、努力は夢を裏切ることはある。ステフがまさにそうだろう。どう足掻いても、届かないものは、限界はあるのだ。

 だが、出来るものもいる。努力次第で、どうかすることができる奴らもいるのだ。

 ステフの言葉を聞き、空はスマホを起動させる。彼女には読めないだろう。だが俺には読めるし、むしろその決意を俺に見せているようでもあった。

 

『目標:とりあえず国王になってみる』

 

 ゲーマー兄妹は、エルキア王国の国王を目指した。

 

 

 

 

 

 

「そんで、クラミーの戴冠式が今日だと」

 めんどくさそうに言う空。実際今日中にどうにかしないとタイムアップだ。

「紅茶を……お持ちしましたわ……」

 なにやら不安そうにカップをおくステフ。どうした?あ、こいつまだ惚れてるのか。

 空は紅茶をゆっくりと飲み、出かけるかと提案する。

「リアクションしてやれよ」

「え?なにを?」

 向こうでまたステフがヘッドバッドしてるんだよ。多分自分がいれた紅茶なのだろう。可哀想に。

「……にぃ……乙女心、わかってない」

 その通りではあるが、それを男に求めるのは酷なんだよ白。

 大体、全ての行動はイケメンに限る、で片付くんだよ。逆説的に目以外はそこそこイケメンの俺は、大半の行動なら許されるという事だ。違うか。違うな。

 

 

 

 

 

 

 ステフを先頭に、俺たちは王宮の通路を歩く。いや、道が分からないから先導をね?

 と、前から来たのは……ベールが顔の半分を覆い、細身の体を紫を貴重とした衣服で包む、今日戴冠を許される次期国王候補、クラミー・ツェルである。

「今日が戴冠式ですのね……」

 力ないステフの言葉に、嘲笑しながらクラミーは応える。

「あら?私に負けてからずっとそんな恰好なの?ステファニー・ドーラ。それに、その後すぐに私に負けた男もいたの……なるほど彼女の従者で敵討ちがしたかったのね」

 いや全然全く。そもそも従者じゃない。誰かの下について仕事とか絶対やだ。俺は働く気は無い、働いたら負けだ。

「そう言えば、これはあなたの持ち物だったわね。返してあげるわ」

 ステフの着ていたドレスを見せつけるクラミー。ステフが手を伸ばすと、彼女はそのドレスを地面に放る。しゃがみ込み、涙を耐えるステフを無視して彼女は道を進む。

 ステフはドレスに手を伸ばし、だが、それより先にそのドレスは拾われる。

「これだから愚王の血筋と罵られるんだ」

 彼女のドレスを拾い上げた空は、それを持ってクラミーに歩み寄る。

 

「盟約によって行われた賭けは絶対遵守される。これはあんたのものだ…今はまだな」

 

 不敵な笑みと不吉な声で空は言い放つ。

 睨み合う両者、ドレスを乱暴に受け取ったクラミーは振り返り、早足で歩いていく。

 

「なあ白、兄ちゃんについて来てくれるか?」

「うん」

「即答かよ。兄ちゃんとしては結構覚悟して」

「……うそ……だってにぃ、楽しそう」

「……まぁあっちの世界よりはな」

 

 互いを信頼し合う空と白。その2人が今覚悟を決めた。

 そして

 

「八、お前はどうする?」

 

 俺はこいつらとは違う。信頼とか、仲間とか、そんなものはない。

 けど、俺は知りたい。『本物』を、『本物』とはどんなものかを。

 彼らを見ていれば見つかる気がする。形は違えど、あり方はその社会に受け入れられずとも、2人の関係はまた『本物』なのだと。

 だから俺は

 

「見届けるよ。お前らを」

 

 俺は空白の未来を、あり方を見届ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれれ?おかしいぞ?
最後の方は八幡キャラ崩壊かな。
評価って怖いですね。あげる度下がっていきます。
やはり情景描写をもっと入れた方がいいのでしょうか?基本知ってる前提で書いてはいますが、伝わりにくいかも知れませんね。
意見や感想、誤字報告よろしくお願いします。

追記
誤字指摘があり、直させて頂きました。

番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?

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