ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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お久しぶりです。
最近リアルに忙しくて更新大変でした汗
ここから今作はラストシーズンへ……はもうちょっとありますかね。




再開―リベンジ―

 今回のオチを語るために、俺はジブリールから事の顛末を聞いた。

 つまるところ、オーシェンド攻略戦は騙し合いのさらに向こうへ行ったことで勝利したという。

 前提としてだが、吸血種(ダンピール)水棲種(セイレーン)は協力関係にはなかった。彼らは各々が、各々の未来のために人類にケンカを売ったらしい。

 吸血種(ダンピール)は、盟約によって縛られた生活から抜け出すべく、女王の復活とそのゲームでの賞品『女王の全権』を欲しがった。

 対して水棲種(セイレーン)は、その暗躍すら考慮し、女王のゲームクリアは不可能だと分かった上で俺達を招き入れた。

 そう、このゲームは最初から三つ巴の賭博ゲームだった。

 吸血種(ダンピール)は『  』の勝利にベットし、水棲種(セイレーン)は『  』の敗北にベットした。

 そして、俺達はその二種族賭博に巻き込まれながら、自らの勝利に確信を持ってコールしたわけだ。

 結果として、空達は女王の覚醒条件を見つけゲームクリア。完全なるハッピーエンドに終わった。

 ……まぁ、この女王とか目覚めた後の特典については色々あったが、俺には関係ない。

 女王様が実はドМで愛されるより虐められたい系の変態だったとか、女王の全権=女王の全義務ってことで吸血種(ダンピール)の繁殖に協力させられそうになったとか、俺は知らない。

 全ては解決したのだ。

 だから今、俺達はごく普通の平凡で平和で平穏な平日を送っている。

 

「やぁ、久しぶりだね、比企谷八幡」

 

 ……。

 いや、平日にしてはイレギュラーだな。

「はち、こいつだれだ、です?」

「俺も知らん」

「でも、はちのこと知ってるみてーだぞ、です」

「似てる知り合いならいるが、あいつは獣耳も尻尾も生えてねぇんだわ。だからきっと人違いだな」

 ああ、きっと人違いだ。

 この目の前の虎のような耳と尻尾を生やしている少年が、俺の知っている唯一神なわけがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今朝はなんとなく早く起きた。

 畳の部屋で寝るのも、なんとなく懐かしさを感じて心地よかった。東部連合の文化って本当に日本に近いな。

 エルキアに戻ったステフやいのさんは、今頃社畜レベルをカンストしている頃だろう。ご苦労様です。

 怠惰な王様に習って惰眠を貪っていたんだが、たまに目が覚めることもあるよな。

 たまに起きたんなら、たまには東部連合の街並みでも見ようかと普段着に着換えたところで、いづなに見つかった。

 朝飯でも探すかって話になって屋台通りに繰り出したんだが、そこで俺達は見知らぬ獣人種(ワービースト)の少年に声を掛けられたのだ。

 ……いや見知ってはいるんだけど、だれだよこいつ。

「ひどいな~、わざわざ会いに来てあげたのに」

「わざわざ会いに来てくれたところ悪いが、わざわざ会いに来てくれるような知り合いに心当たりがねぇんだよ」

「そうかい。その分だと、探し物はまだ見つからないみたいだね」

「…………」

 あ、そう。

 今更不思議だとは思わないわ。こいつ神様だし、耳を増やすぐらいどーってことないんだろ。

 俺に話しかけ、フルネームを呼んだ虎耳虎尾の少年は、唯一神にして遊戯神テトだ。

「いづな、先に帰ってくれるか?」

「なんで、です?」

「クソガキにケンカ売られたからな。ちょっといづなには見せられないレベルのプレイする」

「ちょっと見てー、です」

「コンプライアンス的にダメです」

「こん……ぷりん、あいす、です?」

「そんな甘さの権化じゃないから。あとで焼き魚作ってやるから、な?」

「わかった、です」

 いづなは即答し、家の方へ走って行った。

「ぷっ……くっ、くくっ……」

 そんで、ケンカを売ったクソガキは笑いを堪えきれないらしい。

 

 ゲームの一つでもするつもりで来たのだろう。

 笑いきったテトは将棋盤のある店先までの移動を提案した。

「それで……くくっ、人に見せられないレベルのプレイっていうのは、ぷっ……どういうのかな?」

「変な意味もないし、する気もないからな」

 どうやら俺のジョークが気に入ったらしい。けどそこまで笑いますかね。ないわーそれないわー。

「はぁ……それで、何しに来たんだよ」

「何って、ゲームに決まってるじゃないか」

「決まってねぇし、やらねぇよ」

 厳密には現在進行形でゲームをしてるんだが、それもそれだ。

 俺はまだ、答えを見つけていない。

 比企谷八幡の欲しいものを、見つけられていないのだ。

「そんな事言わないでさ。ほら、せっかくだしヒントも上げるから」

 そう言って、カラカラと常盤の上に将棋のコマを広げるテト。

 こいつの表情は、一貫してゲームを楽しみたい子供のようだ。

「ヒントってなんだよ」

「決まってるでしょ。君の欲しい物の、だよ」

 もちろん、ボクに勝ったらだけどね。

 そう言いながら、無邪気な笑顔とともにコマを並べる。

 おい、それなんて無理ゲーだ。

 俺はチェスに関してはそれなりの腕があると思うが、それは別に強い訳ではない。

 単に、負けないだけだ。

 負けない。けれど勝てない。つまりは引き分け狙いの逃げ切り戦法。

 この方法なら、連勝でなくともランキングのレートは上がる。負けないからな。

 そんなやり方で現代ゲームをしていた俺が、チェスでもない将棋で遊戯神に勝てるわけない。

「参考までに聞いとくが、お前が勝ったらどうなる?」

「そうだねー。んー、そうだ!朝ごはんをボクも貰おうかな。実はお腹ぺこぺこなんだ」

「お腹ぺこぺこって今日日聞かねぇな」

 軽口で返したが、頭は別の事でいっぱいだ。

 こいつの言い分が謎すぎる。

 負ける気がないのは分かる。だからヒントなんて俺にしかメリットの無い賞品を提示できる。

 問題は、何故勝っても負けてもいいような条件なのかだ。

 俺と純粋に将棋がしたいってことか?なら条件を出す理由がない。

「目的は何だ、って聞いたら答えてくれたりするか?」

「そんな仰々しいものはないよ。強いて言うなら、負けっぱなしが気に食わないから、かな」

「負けって、俺はお前に勝ったことないだろ」

「確かにゲームで負けたことはないよ。でも、あれは完全に負けだからね」

「は?」

「こっちの話、ボクの個人的な過去の話さ」

 あ、そう。ならもう聞かねぇわ。

 別にこいつの過去とか興味はないし、動機が分かったのなら聞く必要もない。

 さて、帰るか。

 ゲームを受ける理由がない。

 勝ち目はないし、負けてもさほどデメリットはないがメリットは皆無。おまけに動機は逆恨みだ。

「悪いが、俺も腹減ったから戻る」

「えー!なんでさ!?」

「なんでさって、俺がゲームするメリットないだろ」

「ヒントが欲しくないのかい?」

「タダで貰えるなら」

「それじゃゲームにならないよ!」

「じゃそういうことで」

「あー!待って、待ってよ分かったから」

 まるで駄々をこねる子供のように縋るテトは、振り向いた俺に言う。

「少しだけ、先払いするから。それでもダメかい?」

「先払いってなんだよ。第1部と2部があんのかそのヒント」

「というより、序破急かな。あるいは起承転結」

「物語かよ」

「そう、物語さ。誰にも語られない忘れ去られた、無かったことにされた物語」

 それのどこがヒントになるのか。

 まぁ、しかし、タダというなら貰っておいても損は無いだろう。

 ただ話を聞くだけだ。

 俺が椅子に座り直すと、机を挟んで向かいにいるテトは帽子を被り直す。

「それじゃあ、拝聴願おうかな。寂しがり屋の魔女の話を──」

 そう言って、テトは飛車と歩兵を持ち上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―テト side―

 

 

 

 

 

 むかしむかし、ある所に一人ぼっちの魔女がいた。

 魔女はいつも退屈だった。

 彼女は誰もが恐れる力と、永遠の若さを持っていたからだ。

 長く生きれば、やがて何もかもが虚無虚無しく思えてくる。

 圧倒的なまでに超越的な彼女にとって、その世界は灰色だった。

 

 そんなある日、彼女の元にある男がやって来た。

 誰もが恐れ、誰もがひれ伏し、誰もが対話を諦める魔女の館の扉を叩いたのは──一人の道化師だった。

 彼は言う。

「これは、随分と派手な女性がいたものだ」

 道化師の言葉に、魔女は思わず笑いそうになった。

 ここまで身の程知らずで世間知らずな事を言う者が、まさか目の前にいるとは──と。

 魔女は、その道化師に興味が湧いたのだ。

 それからしばらく、道化師との奇妙な日々が続いた。

 言葉を紡げば、返事が帰ってくる。そのまるで対等な会話に、魔女は新鮮さを覚えていた。

 道化師は色々な話をした。それも、魔女の知らぬくだらない話をいくつも持っていた。

 時には冗談を言って、魔女を唆そうとする。それがなんと滑稽で、面白いことか。

 

 気が付けば、魔女は彼との時間に違和感を覚えなくなっていた。

 まるで、ここに彼がいることが当たり前のように感じていたのだ。

 

 とある日、魔女は大いなる存在と出会った。

 彼は自らをも超える何かを持っていた。

 魔女は、その不可思議さに魅入られた。

 気になって仕方がない。自分もそれが欲しいと。

 

 ──ボクは、くるりと王将を盤に立たせる。

 

 魔女は彼と共に生きることにした。

 そうすることで、この灰色の世界が変わるかもしれないと思ったからだ。

 

 それから、幾分かの時が過ぎた。

 世界の色はまだ変わらない。

 やがて魔女は、胸の奥にぽっかりと空いた穴に気付き始める──。

 

 

 

 

 ―テト side out―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テトはそこまで語ると、コマを初期配置へと戻した。

 どうやら、体験版は終わったらしい。

「続きはWebでってことか」

「ボクとゲームをするなら、続きも聞かせてあげるよ。もっとも、結末を知れるかは君次第だけどね」

 イタズラっぽく笑う遊戯神。どうやらゲーマーは皆そろって性格が悪いらしい。

 続きが気にならないと言えば嘘になる。本当に、いい所でそれでは来週された気分だ。

 けれど、それ以上に俺は、この胸の奥にある感情の声を聞き流せなかった。

「……【盟約に誓って】」

 そう言って、歩兵を進める。

 俺を見て、テトは笑った。

「そう来なくちゃ。【盟約に誓って】!」

 テトもまた、コマを進めて応える。

 本当に楽しそうだな。羨ましいぜ。

 俺は一手ごとに、胸を締め付ける声がする。

 ──逃げるなよ。

 たった一言、たった一つの事だけを繰り返す、名も知らぬ感情の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご愛読ありがとうございます!
原作で言うところの『ノーゲーム・ノーライフゼロ』枠。
本来はいづなにテトが語るところを八が引き継ぎましたね。

これから更新速度どうなるか分かりませんが、多分私のモチベーション次第だと思います。
完結まで続けるつもりではいます。
気長に待っていただけるといいな〜と。


感想や高評価いただけると大いにテンションが上がる作者です。
次回もお楽しみに。

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